『何もいらない』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「お前さえいれば僕は何もいらない。」
彼は私を抱きながら外を歩いている
風に乗って花の香りがする
頭を撫でられる手の感触
私をすっぽりと収める彼の華奢な腕
彼は私のため、私は彼のための存在だった
「お前が僕を受け入れてくれるなら、僕はこの先も今の自分を受け入れられる。」
彼が私にすがるように抱きつく
「たとえ首がなくとも……」
心から私を信じる彼の姿が、私には暗闇に沈んで見えなかった
穏やかな晴れの日だった。車から降り、駅で友人を待ち、ゲームセンターへと向かった。
「何もいらない」
貴方がいてくれるなら
それだけで…
両手ひとかかえある、黄色くふわふわとした花のたくさんついたブーケがある。視界が遮られるほどたくさんの贈り物を、手近な椅子に座り見下ろした。
心がタップダンスを踊っている。足取りもこの花のように軽く、ともすれば家の中で箪笥にぶつかってしまうだろうと簡単に想像できた。ならば雲の上を歩むよりも、一度腰を据え、浮遊感に浸りきってしまおうとしている。
「……素敵」
いい香りに鼻をすんと動かす。目を閉じて、五感で喜びのもとを感じる。瞼を開けた先にあったマグカップにさえも微笑みがこぼれた。いつかの春の日、彼と共に買いに行ったものだ。
つい数十分前。彼が時計をちらりと見て、天辺を指した長針に反応して指を鳴らした。そこから覚めない夢の中にいる気がする。
『誕生日おめでとう。君と過ごす日は、毎日が春にいるようだよ。……願わくば、この花を飾ってはくれないか』
彼お得意の魔法で、あっと瞬きする間にわたしの腕に現れたブーケだって思い出の品だ。デートした日に、肩を寄せ合い仲睦まじく歩く老夫婦を、公園で見た時の。
『この花が大きく頷く頃に、また来よう。その時には永遠の約束を贈るから』
同じように頷いてくれると嬉しい。
彼が頬に羽根で触れたような感触を落として、わたしと黄色の花が部屋に残された。
「ふふ。この部屋、貰い物ばかりが増えてしまったわ」
最初からあなたさえいたら。この言葉は、みずみずしい花がうたた寝する頃に伝えよう。優しい香りを、もう一度吸い込んだ。
〈なにもいらない〉
あながしてくれなくても
してくれる人はいる
あなたに求めるものは?
なにもいらない
何もいらない
運命って本当にあると思うんだ。
いつもと同じようにだらだら動画をみてたの。そしたら、アイドルのMV?ってのが流れてきて。人数が結構多くて誰がどれか分からないし顔もよくわかんないしさ、飛ばそうとしたの。ちょうど、サビ前のフレーズ。伸びやかな通る声。高音が得意なのか力強い音を保ちながらサビへと導いっていった。その人に射抜かれた。雷に打たれたみたいに手が震えた。なんてきれいなんだろうって。
そこから、いろんな情報を集めてコンサートのチケット争奪戦に参加したり、ファンクラブに入ったり、推しのイベントにも行った。ここまで情熱的になれたものは初めてだった。推しが笑ったらにやけるし、涙を流してたらもらい泣きする。映画でカップル役とかやったら複雑な気分になる。自分で言うのもなんだけど、感受性が豊かになったと思う。幸せすぎて世界が輝いて見える。夢の国のお姫様もこんな思考回路なのかな、なんて思った。
アイドルオタクの友達もできた。他担かつ古参で、新規にも優しく教えてくれるし同担さんも歓迎してるって。こんな優しい人に推されてるの羨ましい。いや、アイドルになりたいわけじゃないけどね。友達の推しは人気高いらしくてリアコさんも多いみたい。まあ、私の推しも結構多いんだけど。過激な人がたまにいるからそこが怖いところだよね。
それは、突然だった。推しのツアー参加中止のお知らせ。チケットとってうちわも完成間近だったのに。なんで?体調不良とかなら心配だしゆっくり休んでほしい。運営からでた詳細情報を確認する。曰く、ツアー初日からある少数のファンの行いが目に余るもので現在対応に追われているとのこと。それだけで中止になるのか。チケットが無駄になってしまった。次は行けたらいいな。
後日推しが動画を出してくれた。ツアー参加中止に関して謝罪する内容だった。ストーカー行為等がおさまらず精神的にきてしまったらしい。それを聞いてその害悪ファンにとても激情してしまった。ファンですらないとも思っているが、推しがどんな人もヤサシサを持ってるなんて言うからなんだかもう怒るに怒れない。我々が害悪に怒るのは自由だが、罰をあたえるもどんな対処をするか決めるのも被害者である推しの権利だ。推しのためが全て推しのためになるわけじゃない。そこはちゃんとわかっている。
最悪だ。炎上した。いや、勝手に燃やされたというか濡れ衣の水が引火しやすいものだったというか、内容を説明するとまた別の害悪が自分は推しに押し倒された、むりやりだったのにこっちが悪いみたいになって裁判おこされているというものだった。ファンならそんなものがでたらめであるとわかるが、批判したいだけの奴らがどんどん嘘に嘘を重ねた情報を流して今に至る。ファンが必死で説明した文を投稿したため何も知らない人たちは納得してくれているみたいだが、批判者共は未だに事を荒立てている。
バーイベがきえた……チェキ会もなくなったし手紙も直接渡せないし推しの生の顔すら当分みられない。最近の推しの投稿は出演情報とか事務的なものだけ。頑張るとか楽しみとかもあんまり投稿しなくなった。大丈夫かな。オタク友達曰く他のメンバーが代打でやってくれてるけど推しの良さが際立ってるだけかも…って。推しはファンにもグループにも必要だよ。ゆっくりでいいから帰ってきて。
久しぶりに推しが動画を出してくれた。
内容は『グループの脱退について』
心臓を鷲掴みにされた気分だ。涙が溢れてきた。怒りなのか悲しみなのか絶望なのかわからない。情緒がぐちゃぐちゃなことだけは分かる。運営もっと対応できたんじゃないの。ファンだったらファンとして振る舞うべきだったんじゃないの。メンバーは助けてくれなかったの。推しがもっと用心していればさぁ!!
違うよね。分かってるよ。分かってるけど、この気持ちをどうしたらいいか分かんないよ。一介のファンは推しの決定を受け入れる以外何もできないんだよ。あなたが全てだったんだよ。人生にあなたが不可欠だった。あなた以外何もいらないって思うこともあった。健康大事だよって言うから生活は健康意識してたよ。努力する子が好きっていうから慣れない化粧もファッションも1から学んだ。あなたのお陰で普通の人間ですって思えた。だから、一人のファンとして、あなたに幸せな姿をずっと見せてほしかった。やめないでよ。ねえ。
世界が濁って見える。すべてがどんよりしていて楽しいなんて感じなくなった。なんかもう、生きてる意味、あるかな。まあ、死ぬ気はないんだけどさ。生きる屍?はは、言い得て妙だね。今日もだらだら動画をみる。友達が新しい推し探したらって言ってた。会えるかな。無理な気がするけど。
優しい音。ゆったりとしたテンポで曲が流れる。透明感のある声が胸を温かくしていく。
あなた以外何もいらない あなたがわたしのすべてで
笑う顔も泣いた顔もリアクションも優しさも何もかもが 大好きで 大切で 大事な思い出
前を向けない あなたのところに行きたい でもあなたは言うと思う 何より大事なのは自分だろって 頑張れるよって 大丈夫 信じてるって
気がつけば頬が濡れていた。意識するととめられなくなってついには過呼吸になりそうなほど泣いていた。こんなに自分に当てはまる歌があったなんて知らなかった。自分以外にも似たように感じている人がいた。それが今は酷く嬉しかった。その歌手を調べたいという欲が小さく芽生えた。
ありがとう推し。無欲から飛び出すきっかけをくれて。これからはもう何もいらないが無くなりそうだよ。
いるなぁ。
本当にいるよ、お金。
高額入らない。
お金だけじゃない
何もいらないなんて考えたことない。
どんだけ裕福にすごしてきたんだ。
何も要らないなら自分は自分も要らない。
なんのために生きて呼吸してるんだ
何で呼吸してイライラしたり笑ってんだ
感情があるってことは
何も要らないなんて言えんのか
臭い臭いに臭いわ!
いい匂いに食べたいわ!
本当に好きだった人から好きと言われたら、
なんも要らないから言うんだ?
みんなから支持されて尊敬されて、
その初心のままでも何も要らないか?
支持が増えたら➕0.01%でも求めないのか?
屁理屈大好き偏屈王で申し訳ない。
自分は一瞬の笑顔もほしいから。
分からない、その考え。
理解したいけど、要らないその考えと言われるな。
あ、すみません
餃子に あ、餃子はニンニクマシマシで
後、チャーハンと
卵スープで。
昨日は寿司を食べた
やっぱり、日本食もいいけど
またには コッテリも 食べたいよな
コッテリって言えば 焼肉とか
トンカツか! やっぱり唐揚げ…
あ、すみません 唐揚げ追加で!
この世界が明日終わるって時に
最後に何食べたい?って
聞かれたら やっぱりカレーかな
俺、カレーにチーズ入れて食うのが
一番好きなんだよね
カレーにチーズがあれば
もう 何もいらない
あ、すみません
春巻きと杏仁豆腐 お願いします
… あ〜 明日は 久しぶりに
おでんとかいいな〜
# 何もいらない
「何もいらない」
四時間目が終わり購買部へ向かう僕に
放課後、ちょっとでいいからさ。
家庭科室まで来てくれる?
幼馴染の香織が
廊下ですれ違いざまに早口の小声で
こちらを見ずに囁いた。
僕はドキリとした。
子供の頃は一緒によく遊んできたけれど
高校に入ったら香織は急に綺麗になって
同級生から人気も出たので、
僕はなんだか話しかけ辛くて
最近は僕の方から避けていたところがある。
なんだろう。何の用事があるんだろう。
気になって仕方なかったおかげで
その日の午後は
授業の内容なんて何も覚えていない。
放課後、「寄るとこがあるから」と
友達を先に帰らせて、急いで家庭科室へ行くと
そこに香織がハニカミながら待っていた。
「ゴメンね。急に来てくれなんて。」
僕はその表情にも声にも、妙にドギマギしながら
努めてクールを装った。
「べつに。んで、なに?用事ッテって。」
ヤバい。かんだ。
なんだよ、『用事ッテって』ってのは。
思わず脳内で自分にツッコミを入れる。
テッテ多いな、おい。
そんな僕に香織は気づかないのか
言葉を続けた。
「うん。あのね。あんた来週、誕生日でしょ。
それで今年は何をあげようかなぁって。」
僕は舞い上がってしまった。
この香織が僕に?誕生日プレゼント!?
正直、最近なんて話もしていないから
去年で僕達の、他の同級生たちより近い関係も終わりかなと思っていた。
心は舞い上がっていたが、声は努力して低く保った。
えぇー?
頬の緩みが止められない。
「わるいからさ。何もいらないよ。」
その気持ちだけで。
と、僕はクールにこたえた。
来たか、僕の時代が。
「じゃあ、自分で考えてみるね」と言って
香織も笑った。
これって脈アリもアリ。
アリ寄りのありだろう?!
僕はその日、空を飛んで帰った。うそだ。
誕生日当日、いつ渡されるのだろうと一日中どきどきだった。この待つ感じも醍醐味だ。だって「貰えること」が保証されているんだ。もらえるまでのこの時間を楽しまなくてどうする。
掃除の時間、箒で校庭を掃いていると、パンツのポケットのスマホが震えて着信を知らせた。香織からのLINEだった。
「HR終わったら裏門にきて」
その時の僕は、多分箒で空くらい飛べたと思う。飛ぶの2回目。
裏門は防犯上から施錠されていて、
普段誰も使わない。
カッコつけて少し遅れていくと
香織が待っていた。
そこで渡されたのは
赤いセロファンに金色のリボンで包まれたお菓子だった。
コロコロとした僕の好きなトリュフチョコレートのようだ。
「あまりうまくできなくて。ゴメンね。
誕生日、おめでと」
香織はそういうと可愛らしく小走りで去っていった。
僕は感動して、早速チョコレートの包みを開けた。
ん・・・・・?
チョコレート・・・ではないな。
なんだろう。
冷えて固くなった溶岩、かな?
それとも、炭?
一つ手に取ると、パラパラと消し炭が手につく。
それに今まで嗅いだことのない
脳が本能的に警告するような
毒物的な臭いもする。
わずかな可能性に賭けた僕は
勇者並みの勇気をふり絞って
ひとくちだけ齧ってみた。
まぎれもなく溶岩だった。
噛んでも噛んでも飲み込めず、口の中に苦味だけが残る。これはやはり口にするものではない。僕は隅の桜の木の下に吐き出して(これを養分に花を咲かせてくれ)、
何に使うものなんだろう?と考えた
なぜ誕生日に溶岩をプレゼントされたのかについても、皆目わからなかった。
冷蔵庫に入れると匂いを取るアレかな?
いや、この未知の物体自体が強烈な臭いを放っている。
そもそも脱臭効果があるのならば
まずは自分自身を脱臭しろや!ってとこだ。
脳内ツッコミが忙しい。
結論が出ないまま夕日が沈む方へ、独り歩いて帰宅していると
香織からLINEが届いた。
「味、どうだった?」
喰い物だったんかいっ?!
食い気味で脳内ツッコミが入る。
僕は急いでLINEを返した。
「わるいからさ(きもちが)。
来年からは何もいらないよ。」
その気持ちだけで。
カラスが「アホー、アホー」と鳴きながら
夕日の沈む方へ飛ぶのが見えた。
何もいらない
最近は無い物ねだりばかりしている
家族や友達を見ては
アナタにはあるけど私には無い
沢山あっていいなぁ~
幸せなんだろうなぁ~
それに比べて私は、、、
無い物ねだりしても仕方ないのに
無い物ばかり考えても仕方ないのに
逆に私にだけある物だってあるはず
結局何かはいる
何もいらないなんて言えない
だって生きていく為には必ず何かはいるから
何もいらない
本当は欲しいものがいっぱいあるはずなんだ。
でも、笑顔のあなたがいるこの一瞬が満たされていて、今は何もいらない。
待ちわびていた笑顔。
見れて良かった。
貴女がそばにいてくれるのなら何もいらない。けれど貴女が私の隣にいなければ私は本当の意味でなにもいらなくなってしまう。そう、命すらもいらなくなるのだ。けれど貴女はきっと私が死ぬところをみたくはないだろう。こんな何もない世界でどういきれば良いのかどうか教えてくれ。
2週間ぶりのお小遣い貰ったのに勝手に取られましたわw
しかも2週間で1000円てw お小遣い溜まっても溜まっても
「貸して」「貸して」いい加減にしろよ その金は俺が
稼いだ金 手伝った金なんだよ。お前らが勝手に取っていい
金じゃない。自分が取られたら文句言うんだろ?やばくね?
頭イってるだろ普通に
(ストレス発散、、、ごめん)
#何もいらない
この仕事について何度も経験したことだが、
未だになれない···
防護服を着ているのにも拘わらず、
扉を開けた瞬間の悪臭に、目の前にそびえるゴミ。
『足の踏み場もない』と言う言葉さえ逃げ出して
しまうかもしれない惨状。
今回の依頼人は、このアパートのオーナーだ。
入居者は70代男性。近所付き合いもなく、
独り身だったらしく、ここしばらく
連絡が取れないことに誰も気づかなかった。
一人寂しく旅立っていったらしい。
しばらくして、お隣さんからの苦情により発覚。
世の中ってものは上手く回っている。
人の嫌がることには需要がある。
まぁ、そのお陰で食うに困ることがない訳なのだが···
さて、今回もサクサクお片付けやりますか!!
この仕事をしてると毎回とは言わないが、
大抵あたるものがある。
生前の家主の大切な品だ。
本人には辛い思い出なのか、大切だったからこそ
『今』との落差を直視したくないのか、蓋付きの煎餅入ってたのかな?ってな箱に入ってることが多い。
プライバシー?そんなもの主張したいなら生きてるうちにちゃんとやっとこうぜ!!
遠慮なく蓋を開けてみると、ボロい巾着袋···
手に持ってみると、どうやら小銭が入っているみたいだ。
開けて数えてみると··········195円
一緒に作業をしていた親方が大爆笑!!
自分は目を白黒させながら意味がわからず “ぽかん”
親方曰く、
『あれは六文銭を現代の価値の置き換えた金額だな。未練なんかねぇから、早く川の向こうに渡せって言うメッセージじゃないか?』
それなら、船賃じゃなくてクリーニング代ぐらい置いていけ!!
私には大切な姉がいる。
姉の為なら何だってやる。
けれども姉は、『私なんかの為に』と言ってか
何時も遠慮をしている。
姉は身体が生まれつき弱い。
だから今日も病院にいる。
私は姉が居てくれさえすればいい。
姉が何時か、病院から出られる日が来た時の為に、
色々勉強して、家事もして、外の知り合いも、
沢山作った。
なのに姉は、『私の為よりも、貴方自身の為に時間を使いなさい。』と言った。
私は姉が大好きだ。
姉の為なら何だってやってやる。
だから、そんな事言わないでよ。
貴方以外何もいらないの。
私の隣に貴方がいてくれるだけでいいから。
お題〚何もいらない〛
何も要らない
ただ,僕から離れてくれ、
僕には君を幸せになんかすることが出来ないから。
他の人をさがしてよ、、、
昨日体調を崩して,倒れました。
血が止まらないようです、
重い話してごめんね
「おじいちゃんはねぇ、「何もいらない症候群」にかかってしまったんだよ」
「「何もいらないしょうこうぐん」?」
少年はきょとんとした顔で首を傾げる。
病院のベットからゆっくりと起き上がった老人は、そのしわくちゃの顔をさらに歪めて微笑みかける。
「そう、だからねぇ、もうお見舞いの品を持ってこなくても良いんだよ?」
「やだ!これ食べて元気になって!」
鮮やかな林檎を突き出すと、少年は自慢げな様子で
「林檎ね、商店街のお姉さんに特別に選んでもらったからね、絶対元気になるよ!」
少年の活力に負けた老人は、簡単に言い負かされ、
「はいはい、じゃあこれは後で看護師さんに剥いてもらいますよ。」
何もいらない
死ねるなら何もいらない。
死ぬなんて素晴らしいものをくれるのなら他には何もいらない。
ただ死が欲しい。
創作に必要なのはセンスだと信じて疑わなかった。だって自分には無いものだから。そう決めつけてしまえば心が落ち着く。最初からできないのであれば、たとえ傷ついたとしても言い訳ができる。
「月が綺麗ですね。」
どこかの著名人がいった言葉。僕には思いつけないささやかな告白台詞。
「雨が降ってきたな。」
雨に涙を隠す漫画の名シーン。僕には思いつけない心を揺さぶる描写。
この世界には沢山のセンスが溢れすぎている。そんな中、学もない僕が創作をしようとしていたという。
「はっ…、いい文章なんてよぉ…腐るほどあるんだ。埋もれたって自分の心ぶつけたやつが勝つんだよ!」
心の中の自分が叫ぶ。
「やりてぇんだろ?くさいセリフでも誰にも受けなくてもそれでもやりたい心は止まらねぇんだ!」
僕は。できないことを言い訳にしてやってこなかった。でも、
「「やってみたい!!」」
心と言い訳していた僕が噛み合った瞬間、何もなかった僕から一つの創作物が生まれた。
もうセンスとか周りの評価とかどうだっていい。なにもいらない。だって自分の作品が大好きだから!
ただ側にいてくれたらそれでよかったのだ。側に居てくれさえすれば、他には何もいらなかったのだ。
無理も無茶もしないで欲しかった。贅沢も栄誉も必要無かった。誰の許しもいらなかった。どこにも行かないで、ただ一緒に笑っていて欲しかった。泣いて欲しかった。
この小さな家で2人で暮らせればそれでよかったのだ。
「お兄ちゃんの、ばか」
昔から馬鹿な人だったのだ。忘れっぽくて、不思議で、どうしようもない人だった。
飛び出していって偉くなって、誰かの旦那さんになって、わたしのことなんて、忘れちゃうくらい馬鹿な人。待ってろなんてことば信じなきゃ良かったのに。
あんまりにも自信満々でその姿がまばゆかったから、つい、待っていてしまった。馬鹿の妹も馬鹿だ、本当に。
凱旋だ、パレードだ。結婚だ。
おめでたい。いい日だ。素晴らしい日だ。
騎士さま、騎士さま。
おめでとう、ありがとう。
ああ、なんて輝かしい日だろうか。
きらきらした日差しと花吹雪の降り注ぐ、明るくて華やかで幸福の溢れた大通りの隅で、誰かと微笑み合うの兄を眺めて笑った。
ただ側で笑って泣いて一緒に生きてほしいと願った人は、知らない男になってしまった。変わらないでと願った人は、わたしのお兄ちゃんはもうこの世のどこにも居ない。
わたしの愛しい兄は、今日死んだ。
ただの観衆の1人になんて気付かないまま通り過ぎていったきらきらと明るくて眩しい誰かに背を向けて、その足で住み慣れた街を出た。
どうせなら、いつか兄がつれていってくれた暗い海まで行こうか。何で兄妹になっちゃったんだよ、と静かに泣いてくれたあの海ならわたしの心も報われるだろう。
飛び込んだらあの日の兄に会えるだろうか、と笑う後ろでまだパレードの喧騒が響いていた。
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ぱちん、と泡が弾けるように意識が戻った。引きとどめる何もかもを振り払って慌てて駆け込んだ家は、うっすらと埃を被ってひどく冷たかった。
ただ一枚、扉に挟まっていた遠い何処かからの手紙に縋って飛び出した先で、海に落ちて死んだ旅娘の話を聞いたのが、俺の最後の記憶になった。
@なにかに物語の主人公に仕立て上げられた兄と血のつながらない兄の帰りを待っていた妹の話