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#何もいらない

この仕事について何度も経験したことだが、
未だになれない···

防護服を着ているのにも拘わらず、
扉を開けた瞬間の悪臭に、目の前にそびえるゴミ。

『足の踏み場もない』と言う言葉さえ逃げ出して
しまうかもしれない惨状。

今回の依頼人は、このアパートのオーナーだ。
入居者は70代男性。近所付き合いもなく、

独り身だったらしく、ここしばらく
連絡が取れないことに誰も気づかなかった。

一人寂しく旅立っていったらしい。
しばらくして、お隣さんからの苦情により発覚。

世の中ってものは上手く回っている。
人の嫌がることには需要がある。

まぁ、そのお陰で食うに困ることがない訳なのだが···
さて、今回もサクサクお片付けやりますか!!

この仕事をしてると毎回とは言わないが、
大抵あたるものがある。

生前の家主の大切な品だ。
本人には辛い思い出なのか、大切だったからこそ

『今』との落差を直視したくないのか、蓋付きの煎餅入ってたのかな?ってな箱に入ってることが多い。

プライバシー?そんなもの主張したいなら生きてるうちにちゃんとやっとこうぜ!!

遠慮なく蓋を開けてみると、ボロい巾着袋···
手に持ってみると、どうやら小銭が入っているみたいだ。

開けて数えてみると··········195円
一緒に作業をしていた親方が大爆笑!!

自分は目を白黒させながら意味がわからず “ぽかん”
親方曰く、

『あれは六文銭を現代の価値の置き換えた金額だな。未練なんかねぇから、早く川の向こうに渡せって言うメッセージじゃないか?』

それなら、船賃じゃなくてクリーニング代ぐらい置いていけ!!

4/20/2023, 1:33:03 PM