#木枯らし
“木枯らし、木枯らし、寒い道
焚き火だ、焚き火だ、落葉焚き
当たろうか?当たろうよ!!
相談しながら歩いてく”
#この世界は
あれは、本当に一瞬の出来事だった。
三が日も終わり、世間が新春ムードから落ち着いた頃
ようやく休みが取れて、近所の馴染みの神社に
お参りに行った。
境内には、華やかさの名残のように
増えた絵馬と、無数に結ばれたおみくじの数。
神社は、願いを言う場所ではなく、
今ある幸せを感謝、報告する場だといったのは
祖母だっただろうか…?
そんなことを思いながら、健康体で五体満足
ただ、近しい身内は全て送り出し
少し、家が広いことだけそっと心の中でこぼした。
微苦笑を浮かべながら、鳥居の端をくぐった瞬間、
薄布を割いて通ったような感覚……
小首を傾げながら振り返ると、そこには
本殿を飲み込む程の巨木
太い枝に座り、あの年頃には似合わないニヒルな
笑みを浮かべている童子
こんなに遠いのに、まるで耳元で言われたかのような
『いらっしゃい』
#揺れるキャンドル
年に一度やって来る灯籠まつり、
クリボッチの為か、対抗心なのか、
祭りは毎年クリスマス当日。
地元に残る若手、特に独身者にはイヤでも
お役目が回ってくる…。
まぁ、生まれた時から毎年ある祭り、
勝手知ったるなんとやら
今年も、古参のじぃばぁに
良いように使われるのだろう。
オレの仕事は、竹の切出し
普段使わない筋肉や筋が悲鳴を上げている
何とか必要分を切出し帰宅
玄関すぐの廊下で転がっていると、
母、帰宅。
重そうな買い物袋、邪魔そうな顔
ちょっとの生活費は納めているが、
居候息子は肩身が狭い…
両手を掲げて恭しく荷物を受け取る。
うん、満更でもなさそうな母の顔
台所まで運ぶ短い道すがら
母の言葉に時が止まった。
「みおちゃん、離婚して帰ってきたんだって」
#雪の静寂
この静寂を前にするとイヤでも記憶が蘇る
出会って、惹かれて、重なって、
ケンカして、離れて、また寄り添って、
永遠を誓って、喜びが二倍三倍になって、
このままがずっと続くと、人は永遠だと
本当に思ってた……。
いつもの朝、いつもの日常、いつもの冬
音もなく降り積もる白い悪魔
その中で鳴った着信音。
#君が見た夢
「先生、とうとう…、完成しましたね。これで、たくさんの人の命が繋がります。先生は、教科書に名前が載るかも知れません。」
「……いや、もしそうなったとしても、僕は辞退するよ。この研究は、友人である彼からバトンを繋いでもらったものだし、彼の前にも幾人もの先達者からの贈り物の結晶だ。人が、一人でなし得ることには限界がある。」