#夢見る少女のように
『ま、さきッさん…?真希さん!!来てくれたの?やっと、来てくれたのね。私待ってたのよ』
『……母さん、俺はまきだよ。あんたの息子の…、真希だよ』
このセリフを何度口にしたことだろう。
小さい時は、まだ正気に戻る間も長かった、
この頃、俺は似てきたのだろう。
来もしない、父親とは名ばかりのクズに………
ただ、母の顔を見ると、言えなかった。
その瞳はまるで、夢見る少女のようで
#傘の中の秘密
テストが近づくと立ち寄る町の図書室…
窓から見える景色は、一面のアジサイ
ふっと視線を上げた先に、
話したことのないクラスメイト
わざわざ雨の中、紫陽花を見に来たのかと
手元に視線を戻そうとした一瞬、
涙が流れるのを見てしまった。
慌てて顔を上げるが、もうその顔は深く
傘に隠れていた
#やさしい雨音
その人は、いつも狙いを定めたように
泣きたい時にやってくる…
雨が当たると、
大げさなほど大きな音がなる
傘をさして
#光輝け、暗闇で
人生において、幸と不幸は半々に来る…
この言葉を借りるのなら、私の人生の前半は
それは、それは、順風満帆で輝かしかった事だろう。
両親ともに高学歴、生まれたときから何不自由なく
食べたいもの、習いたい事、欲しいもの、
すべて手にしてきた。 それが崩れたのは、
突然の両親の死…。大学を卒業したばかり
だが、それなりの資産を残してくれていたので、
初めは困らなかった。はじめは………
20代、就職したがすぐに退職。
資産があると遊び呆けた
30代、金目当てにつるんでいた奴らを切った。
資産は半分になってた
40代、そろそろ結婚を考えるかという頃には、
資産も人も社会経験も何も手元に残ってない
50代、資産も底をつき、自宅さえ差し押さえになった
しかし、人生の終わりはまだ遠い
今、自分の半分の歳の子に恥をかき捨て、教えを請う
#風が運ぶもの
いつもならスムーズに進む道
『スミマセン…なんだか混んでるみたいで』
『たまにはこんな事もありますよ』
そういえば、
『日本までは何をしに?』
『春を届けに』
皆さん、もうすぐ春が届きますよ