#光輝け、暗闇で
人生において、幸と不幸は半々に来る…
この言葉を借りるのなら、私の人生の前半は
それは、それは、順風満帆で輝かしかった事だろう。
両親ともに高学歴、生まれたときから何不自由なく
食べたいもの、習いたい事、欲しいもの、
すべて手にしてきた。 それが崩れたのは、
突然の両親の死…。大学を卒業したばかり
だが、それなりの資産を残してくれていたので、
初めは困らなかった。はじめは………
20代、就職したがすぐに退職。
資産があると遊び呆けた
30代、金目当てにつるんでいた奴らを切った。
資産は半分になってた
40代、そろそろ結婚を考えるかという頃には、
資産も人も社会経験も何も手元に残ってない
50代、資産も底をつき、自宅さえ差し押さえになった
しかし、人生の終わりはまだ遠い
今、自分の半分の歳の子に恥をかき捨て、教えを請う
#風が運ぶもの
いつもならスムーズに進む道
『スミマセン…なんだか混んでるみたいで』
『たまにはこんな事もありますよ』
そういえば、
『日本までは何をしに?』
『春を届けに』
皆さん、もうすぐ春が届きますよ
#約束
愛してる 大好き だから、いい子で待ってて
すぐ帰ってくるから
仕事が忙しくて帰れないの ごめんなさい
ママとの約束ちゃんと守って いい子で待っててね
ママの一番の宝物
あなたがいないと
私は生きていけない
今夜はちょっと大事な用があるの
明日は必ず帰るから 約束する
ねぇ…、いつになったら約束は 守られるの?
#ひらり
夏を彷彿とさせる、刺すような日差し
そこに吹き抜ける、まだ冬の残り香を纏っている風
……また、この季節がやってきた。
あれは3年前
新しい生活の準備をしていた時だった
スマホに一通のメール
お世話になった恩師の突然の訃報
頭を鈍器で殴られたような衝撃だった
いつでも会いに行けると思っていた。
顔を見るまで、これは間違いだとも思った
斎場の敷地内、肌を刺す風と早咲きの桜
着慣れないスーツ、纏わりつく線香の香り
そこに舞う桜のはなびら ひらり
#誰かしら?
妻が私のことを忘れた。
連れ添って30年余り
やっと、様々なことが片付いて
これから先、短い人生
どちらが先に逝っても良いように
思い出を作ろうと思っていた矢先だった
医者からは、進行が早いだろうと言われた
何とかこれまで頑張ってきたのだが、ある日
『おじさんは、誰かしら?』
言葉に詰まった…
首を傾げる妻に、
『僕は、誰よりも君の側にいたい人だよ』
そうして、今日もまた彼女からの
誰かしら?に返事をする