何でもないフリ』の作文集

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何でもないフリ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

12/13/2024, 3:28:05 AM

「こちらでお待ちください」

促されて、椅子に座る。
室内は暗く、テーブルの上に置かれた小さなキャンドルの灯りだけでは、周囲の様子を窺う事は出来ない。

――今更気にする事でもない。

凪いだ心は酷く無気力で、ただぼんやりと揺れる炎を見つめていた。


「お待たせ致しました」

ことり、と置かれた白のマグカップ。
立ち上る湯気と共に漂う甘い匂いに惹かれるように、手を伸ばす。
暖かい。マグカップ越しに伝わるその熱を、暫し堪能する。
そっと持ち上げたマグカップに口を付ければ、優しい甘さに目を細めた。
変わらない、ココアの味。
幼い頃、寝付けない時に作ってもらっていた。自分だけの特別。
それを作ってくれたのが誰であったのか。今となってはもう、思い出す事は出来ないけれど。


「落ち着いたか」

かたり、と椅子引く音。
目の前に座る彼を見てまた一口、ココアを飲んだ。
ほぅ、と息を吐いて。小さく頷く。

「今度は何があった?」
「何も。いつもと変わらない。何でもない。大丈夫」

呟く声は、淡々として。

「あいつらか?」
「違う。私が悪い」

マグカップを持つ手に、少しだけ力が入る。
暖まったと思っていた気持ちは、やはり冷たいままだ。

「私が、皆の期待に応えられないから。弟達よりも劣っているから。だから褒めてもらえないのも、見てもらえない事も、全部私が悪い子だから仕方ない」

誤魔化すように、マグカップに口を付ける。
さっきまで甘かったはずのココアが、何故か少しだけ苦く感じた。
彼も、幻滅しただろうか。
お前さえいなければ、と彼も思っているのだろうか。

はぁ、と重苦しい溜息に、僅かに肩が跳ねる。

「変わらなかったか。分かっていた事だが」
「ごめんなさい」
「お前が謝る事ではない」

その言葉に、またごめんなさいを言いかけて。言葉ごと、ココアを飲み干した。
なくなってしまった、特別。終わってしまった、静かで暖かな時間。
帰らなければ、と顔を上げ、彼を見る。

「大丈夫。次はもっと上手にやるから。逃げ出さないように、もっと強くなるから」

口角を上げる。忘れかけた笑顔を、作ってみせた。
マグカップを置いて、立ち上がる。
彼は何も言わない。ただ静かにこちらを見ていた。

「帰る。今日もありがとう」

返る言葉はない。
怒らせてしまっただろうか。思わず目を伏せた。


「これ以上は、無理だ。止めるなよ」

低い呟き。感情を押し殺したような、声音。
はっとして顔を上げるのとほぼ同時。唯一の光源であったキャンドルの灯りが消えた。

「え?」

一瞬で何も見えなくなる。
マグカップも机も、彼も見えず、立ち尽くす。
ざわざわと、周りで複数の人の話し声がする。

――いつまで経っても成長しない、出来損ない。
――一族の恥だ。こんな凡庸では下の者に示しがつかない。
――視界に入るな。気分が滅入る

聞き覚えのある声。毎日のように聞いている言葉。
唇を噛みしめ、目を瞑る。
いつもの事。何でもない、些細な事だと、自分自身に言い聞かせる。
大丈夫だ。取り繕うのは慣れている。周りに悟られぬように、上手く隠せばいい。

――お前さえ、いなければ。

「ならば、その望みに応えてやろうではないか」

声が、止んだ。

「いらないというならば、我らがもらい受ける」

凜とした、彼の声。
その声に呼応するように、また複数の声がした。
先ほどの声とは違う、知らない声。
彼に賛同する声。歓声。笑い声。

否定する言葉は、ひとつもない。

「何で。どうして?」
「今のお前の言葉を聞く気はない。取り繕う事に慣れすぎて本心を紡げなくなった言葉は、意味を持たないからな」

ふわり、と浮遊感。
触れた場所から感じる暖かさと匂いは、とても懐かしい気がする。
思わずその温もりに縋り付く。背を撫でる手が優しくて、怖かった。

「やめて。帰る。帰らなきゃ。だって、私。私は」

これ以上は、駄目だ。
閉じ込めたものが溢れてしまう。隠せなくなってしまう。
そうは思うのに、縋る手が離れない。撫でる手に、もっとと願ってしまう。

帰りたくない、と。
泣きわめいてしまいそうだ。


「俺の作ったココアはおいしかっただろう?昔からずっと変わらず、好きだろう?」
「……好き。大好き」
「お前を愛そうとしない現世の一族と、お前を愛している俺の側と…どっちが暖かいだろうな?」

強く目を瞑る。
間に合わず零れてしまった涙を慌てて拭うが、さらに抱き寄せられて、止められなくなってしまう。

「泣け。我慢をするな」

優しい言葉に、これ以上抑える事は出来なかった。


「なん、っで。ずるい。ひどい」
「仕方がないだろう。あいつらがこれほどとは思わなかったんだ」
「わたし、だって、ずっと。約束したっ、のに!」

約束の言葉に、彼の相づちが止まる。
ああ、と苦い声が漏れて、ごめん、と小さな声に謝られた。

「あれは忘れろ。無しだ、無し。それに無理だろう。お前は笑えていないのだから」
「でも」
「駄目だ。もう此方側に隠すと決めたからな。もう花嫁姿とかどうでもいい。どうしてもって言うなら、俺が此方で探してやるから」

くすくす。からから。
笑う声がする。
ざわざわ。
声が波のように広がって。

「笑うな。お前らも同じ気持ちだろうが」

拗ねたように彼は呟き。
いくつもの肯定する言葉と共に、辺りが明るくなった。

知らない場所。広い畳敷きの部屋。
さっきまで座っていたはずの椅子やテーブルはどこにもない。

「さて、挨拶を済ませてしまうか。お前の部屋は用意してあるから、終わったら案内しよう」

下ろされて、促されるままに振り返る。
続き間に座る、たくさんの知らない大人達が涙越しに見えて、息を呑んだ。

「え?お兄ちゃん?」
「これからお前の一族となる奴らだ。仲良く…はしなくてもいいが、怖がるな」

ざわざわ。くすくす。
戸惑う声や、笑う声が響く。
優しい視線だけが此方を見ている。

「結局はお前も連れてくる事になったな。これなら下手に残すべきではなかったか」
「お兄ちゃん」
「此処では隠すな。取り繕う必要はない。笑いたい時に笑い、泣きたい時に泣け。それが此処での約束だ」

頭を撫でられ一方的にされた新しい約束に、困惑しながら涙を拭う。
はっきりと見えた彼らの顔は涙越しよりも優しく見えて、少し落ち着かない。

それでも。
前を見る。妖として在ると決めた兄に、恥じる事がないように。
昔見たテレビの記憶を頼りに、膝をつく。

「不束者ですが、これからよろしくお願い致します」

三つ指をついて、頭を下げた。



20241212 『何でもないフリ』

12/12/2024, 1:50:39 PM

小説
迅嵐



「お前が何でもないフリしてるのは知ってる」

それは自販機でブラックコーヒーを買うボタンを押した瞬間に言われる。

「......」

おれは無言で答えた。そんな様子を見た彼はニコリと笑う。

「目的も、方法も、詳しいことは何も知らないが、それだけは知ってるんだ」

そう言うと彼は手にしていたペットボトルに口をつける。

「そっか」

太腿のトリガーケースに触れる。もうそこには風刃は無いけれど、後悔はしていなかった、

はずだった。

全てを知るおれと、何も知らない嵐山。

真逆なおれ達なのに、どうしてこうもお前は見抜いてしまうのか。

「...知っててくれてありがとな」

「...あぁ」

頬を濡らすものを、嵐山は知らないふりをしてくれた。

12/12/2024, 1:04:43 PM

何でもないフリ

恥ずかしい
厚かましい
勇者を知った人間が
きっとどうにかしてくれるですますように
おかげで
でも木陰で
村人Aって感謝がどのくらいあるんだろうとか
そもそも感謝が必要なのかとは
おんなじセリフばっかり繰り返して
実は歯がゆい人なんじゃないかとか
よくよく考えてしまう

12/12/2024, 12:26:36 PM

「うおっ!」
幼馴染の踵には靴擦れ。
俺の顔を見て、沙希は「大丈夫だよ」と嘯く。

俺に何でもないフリなんかするな。
未だ、ヘラヘラと笑う沙希に何故かムカついた。

はぁ、とため息を吐いて、怒りを逃す。
アンガーマネジメント。確か6秒。


沙希をよく観察する。
申し訳なさを全身で訴えて小さくなっている幼馴染。
責めたところで、悲しませるだけだ。
思考は落ち着き、俺は小さな頭にポンと手を乗せた。

沙希が上目遣いで俺をそっと見上げた。

そう言えば昔は言いたいこと、やりたいこと、やりたくないことをたくさん言われたのに、いつから沙希は「大丈夫だよ」と言うようになってしまったんだろう。


沙希が鞄の中のポーチを漁る。
いつから入っているんだか。
シワだらけの絆創膏を1つ見つけて、沙希が恥ずかしそうに笑った。

「貼ってやるよ」
遠慮されたけど奪い取り、靴擦れに貼る。
痛々しい傷は目を背けたくなる。
だけど白くて肌理の細かい脚や締まった細い脚首に急にオンナを感じて、胸がドキッと熱くなった。

「ありがとう」
「ん。…なぁ。昔は何でも言ってきたじゃん。何で、何でもないフリするようになった?」

沙希を見つめる。
フイっと視線を外され、「そういうとこなんだけど」と強めに言った。

「俺さ。沙希に色々我儘を言われるの、面倒くせぇって思いながら、殆ど叶えてやってたような気がする。
それで、いつの間にか言われなくなって、面倒なことはなくなったけど…なんか、幼馴染じゃなくなったみたいな気がしてた」
「祐樹」
「俺さ…沙希の特別でいたいのかもしれない」


沙希は目を見開いて驚いている。
あまりにも沈黙が長い。
「なんか言え」と頬をぶにっと摘んだ。
柔らかくてもちもちとして、自分の顔とは全然違う感触に心臓が跳ねる。

「あ…私…、祐樹に迷惑をかけちゃいけないって…
祐樹、モテるから、私なんかがウロウロしちゃいけないと思って…」
「なんだそれ。俺と沙希が幼馴染なのは変えられない事実だろ。気にして縮こまる必要なんて全くねーよ」


沙希はまだ、踏ん切りがつかないらしい。
どう言ったら伝わるのか。
何でもないフリをするなって。

っていうか、言えば良いのか。


「沙希さ。何でもないフリをするのは禁止」
「えっ、」
「今日みたいに、俺のために何でもないフリをして、傷ついてても知らずにいるとか、そんなの嫌なんだよ」
「祐樹」
「俺にとって沙希は特別だよ。誰かに何か言われるなら、俺が二度と言えないように言い返してやる」
「やり過ぎだよ。…でも、ありがとう」


沙希がやっと笑った。
明るい笑顔は、まだ、男も女も関係なく駆け回っていた時代を思い出す。
俺も笑うと、「やっと笑ったね」と安心したように言われた。


「帰るか」
「うん」
「タクシー代は折半な」
「ケチ」
「幼馴染だから」
「……まぁ、そうだね」

視線を落として、寂しそうな顔をする。


「今後はどうなるかわからないけど。俺の気持ちも、沙希の気持ちも」

さっき見た、白くて肌理の細かい脚や締まった細い脚首を思い出す。
いつの間にか、大人っぽくなっていた沙希。
もっともっと知ってしまったら…幼馴染だ、と言えるだろうか。
沙希に「幼馴染」と言ったときに寂しそうな顔をされて、すぐにフォローした俺が。


……何でもないフリをしているのは、俺自身もかもしれない。

それでも、もう少し、沙希への気持ちが明確になるまでは。





何でもないフリ

12/12/2024, 10:24:16 AM

後輩は、何でもないふりが得意だった。

嫌味な上司に理不尽に怒られているのを見かけて、
咄嗟に割り込んでは庇ったことが何回かあった。
ほとぼりが冷めた頃、様子を探るように話を聞くと、
彼女は決まって「庇ってもらってすみません」と
申し訳なさそうに笑った。

定時であがりたいだけの人に仕事を押し付けられて、
二人で残業をしている時も彼女は愚痴を言わなかった。
それどころか、「手伝いましょうか」だなんて山積みに
なった自分のデスクを指差して気遣うように笑ってみせた。

いつ聞いても、彼女は決まって「大丈夫ですよ」と答えた。
名ばかりの教育係で、まともな事一つも教えられない自分を
気遣ってくれていることには、薄らと気がついていた。



定時を2時間ほど過ぎた頃、彼女は給湯室で紙コップを2つ手にとった。一つをコーヒーメーカーに置いて、迷わずにブラックのボタンを押す。静かな空間にコーヒーの注がれる音が流れはじめて数秒、彼女はぽつりと声を零した。

間違えた、と。

淹れ終わった後も切れ悪く出続けるコーヒーの滴下を眺めながら、彼女が溜息をつく。もう片方に持っていた空のコップをコーヒーメーカーの横に置いて、机にもたれかかる。

彼女がコーヒーを淹れるところは何回か見た事があるが、好んで飲んでいるのは紅茶だった気がする、と何となくいつもの残業風景を思い出す。自分の僻見もあるだろうが、彼女がコーヒーを淹れる時は、いつも…と、機械に置かれたままの紙コップを懐かしく眺めていると、そのコップを彼女がするりと取り出した。

そうして、ぐ、と一気に煽った。ブラックなんてよく飲めますね、だなんて言われた過去の記憶を疑っていると、飲みきった彼女が思いっきり顔を顰める。にが、だなんて呟いて紙コップをゴミ箱へ捨てる姿に、子供っぽさを感じて面食らう。こんなに負の感情を出している彼女を、自分は初めて見た気がする。見せてくれなかったのか、それとも、単に自分が引き出せなかっただけなのか。こんなの飲んでたら寝不足にもなるなあ、だなんて言いながら口直しだろう紅茶を淹れる姿に、なぜだか酷く心が揺らいだ。すり、と自分の目の下に残っているであろう濃い隈を撫でる。自分に向かって言っている、んだと思った。流石に、自意識過剰ではないと信じたかった。

彼女はそんな事も知らずにティーバッグをゆるゆると揺らして、溶け出していく色を静かに眺めている。濃くなったカップの底からバッグを持ち上げて、コーヒーと同じようにぽたりと垂れる水滴を眺めていた。

「…気づけなかったなあ」

また、ぽつりと言葉を呟く。
その言葉のように、ティーバッグから落ちる水滴のように、彼女の目から涙があふれてこぼれた。

息が詰まる。焦った心のまま、
咄嗟に指先でその涙を拭おうとして、
指がずるりと頬をすり抜けた。

「…本当に、大丈夫だったんですよ」

ぐす、と鼻を鳴らして、彼女が紙コップを掴む。
不安定な力が入って、中の水面がぐらりと揺れた。




何でもないふりが、得意だったのは。


「何でもないフリ」 白米おこめ

12/12/2024, 10:19:24 AM

何でもないフリ

急な目眩に壁に寄りかかり、目を瞑る

「まただ…」

ここ3ヶ月ほど急な目眩と耳鳴りに悩まされていた
仕事の繁忙期で休んでる暇なんてないから受診せずに放置していた

「主任、大丈夫ですか?」

「大丈夫、何でもない」

部下から心配そうに声をかけられ、笑顔で返す
「そうですか?」とまだ心配顔の部下に「ありがとう」と伝え、一緒に部署まで歩く
繁忙期さえ終われば、よく寝れば、なんて楽観視していた当時を悔やむが後の祭りである

「部下の為でも何でもないフリはするべきじゃないわね」

病院のベッドの上でそんな事を呟く

12/12/2024, 10:02:26 AM

赤い液体が流れていた
何でもないと君は言う
青黒く紫が滲んでいた
何でもないと君は言う
黄色や白が見えていた
何でもないと君は言う
不自由気に顔を顰めた
何でもないと君は言う

ある日バラバラに地に散った
僕を拾い上げ君は言う
何でもなく無いと君は言う
君みたいにヒトでは無いから
本当に何でも無かったのに

‹何でもないフリ›

12/12/2024, 10:01:48 AM

21何でもないフリ

大丈夫って言ったらダメだよ

きっと癖になるからさ

我慢することが常なら

慣れてしまう、普通になってしまう

もう自分のことをいつから見ていないのだろう

12/12/2024, 9:54:15 AM

【何でもないフリ】

朝日が眩しくて、目が覚めた。

隣には、見知った、いや、もう知りすぎた顔がある。

変わらない顔を見ると、なぜか安心する。

当たり前にいるから、いないのが想像できない。

何でもないフリで、もう一度目を閉じた。
                       fin.

12/12/2024, 9:48:36 AM

何でもないフリ



飲み会で

あまり仲良くない人たちに囲まれて

最初は頑張って話していたけど

だんだん話すことがなくなって

手持ち無沙汰になって

寂しくなっている時、

えっ?何でもないけど?

いまは黙っているだけですけど?

って顔して周りの雰囲気を見回している


たとえ心はささくれていても

平気な顔していられます

これくらい大丈夫です

大人なので

12/12/2024, 9:48:27 AM

この恋心に目を向けてはダメ。

なんでもないフリをして今日も貴方の隣の

"トモダチ"

を演じる。

12/12/2024, 9:45:22 AM

「何でもないフリ」

授業中、プリントをくれた君の手に一瞬触れた。
熱を持つ指先と、黒板より君の背中を見てしまう私。

12/12/2024, 9:42:06 AM

《何でもないフリ》

保全させていただきます。
 いつも読んでいいねを下さっている皆様にはいつも本当に感謝しております。
 この場をお借りして、御礼を申し上げます。ありがとうございます。

今、こちらを始めるきっかけになった創作に力を入れております。
こちらで色々とイメージを膨らませられたおかげで、内容が固まってまいりました。
本筋として力を込めておりますので、応援してくださると嬉しいです。

12/12/2024, 9:35:13 AM

この季節は道が凍るから、歩いているとたまに滑って体勢を崩すことがあるんだけど、周りに人がいるときだと少し恥ずかしい。体勢を立て直してからは何でもないふりをして再び歩き出すけれど、内心では早くこの場から立ち去りたい気持ちでいっぱいだ。

12/12/2024, 9:26:42 AM

結婚して、子供を産んでから
何でもないフリがうまくなった

感情をできるだけ抑えて

イライラしたら
お酒を飲めばいい

脳が麻痺して
どうでもよくなるから

あんまり深く考えないで
行動していればいい

12/12/2024, 9:25:51 AM

▶41.「何でもないフリ」
39.「手を繋いで」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
---
「ねぇ、あなた。ちょっといいかしら?」
「なんだ、もう寝たんじゃなかったのか」

晩酌をちびりちびりとやっていると、
妻のクロアが寝室から出てきた。

「明日は店、早いんだろう。どうしたんだ」
「ええ…でも気になっちゃって。あなた、この町で浮気してないわよね?」
「ごふっ」

しばらく噎せが止まらなかった。

「この町で、って…どこでもしてねぇよ。なんだ急に」
「だってあなた、森に行ってから考え事ばっかりしてるじゃない」

ハッと反応しそうになる体を抑え、何でもないフリはしたものの。
私なりに色々な理由を考えてみたのよ、だけど…と言い募る妻の言葉が動揺から耳を滑っていく。

「怪我もなく遅れて帰ってくるなんて、本当に浮気じゃないなら何なのよ…シブ?」

だめだ、立て直さねぇと。

「…本当に何でもねぇ。一緒に行った奴が森でコケたから、余計に休ませてから帰った。それだけだ」

じっと俺を見ていたクロアの表情から、
ふっと毒気のようなものが抜けて、

「わかったわ、あなたを信じる」
もう寝るわね、と寝室に戻っていった。

すまねぇな、クロア。
こればっかりは、お前が相手でも話すわけにはいかねぇんだ。

残った酒を干したら、やたらと苦い。
変だよな、ついさっきまで飲んでたのによ。

12/12/2024, 9:17:56 AM

なんでもないふり


な:かよしの人と…
ん:んー………
で:きるわ
も:もになりたくて
な: れるかな?
い:イギリス行きたい
ふ: 藤原佐為と(幽霊だから)
り:そうばかりの私


脳出血の私。


死柄木弔、エレンイェーガー、佐野万次郎、夜神月
真人が好き

特に死柄木

私と共通点が多い。結婚したら家庭を大事にする人になるんだな…

タロット、霊視とかでよく言われる結婚したら家庭を大事にする人。だと、

私の亡き父、死柄木を通して思っていたけれど
将来、笑いが絶えない温かい家庭にしたい。

暴力する人とは結婚したくない
 



だけど、周りから赤ん坊産むな。とか
病気持ちだから赤ちゃん産まないで

とか言われる🥲

私の意志では温かい家庭を持ちたい

来年に結婚する人と出会う。と言わるけれど
詳しくは自分から聞いていない。ワクワクが止まるから

来年には大震災が起こると予想する人も………

私に片思いの人3人ぐらい居たのね

12/12/2024, 9:03:09 AM

何でもないフリ




君はとても幸せそうに、
柔らかな笑みを、
浮かべるようになった。

小さい頃から、
君と俺は友達で、
まるで兄弟のように、
ずっと側にいた。

君は子供の頃から、
俺を頼ってくれてた。
だから、俺は君にとって、
一番の理解者だと信じてた。

だけど、大人になった君には、
大切な人ができた。
君に寄り添う、
俺の知らない男――
…君の恋人。

その姿を見て、
俺は心から、嬉しくて。
でも、その喜びに、
ほんの少しだけ、
針が刺す様な痛みが混じるんだ。

恋人と手を繋ぎ、
幸せそうに微笑む君。
俺は、何でもないフリをして、
余裕の笑みを浮かべる。
「俺は『兄貴』みたいな存在だから、
いつでも頼ってよ。」と。

分かってる。
本当は俺は、
『兄貴』なんかじゃなくて、
『恋人』になりたかったんだ。
だけど、この気持ちは、
もう君には、絶対言えないんだ。

いずれ来るだろう、
純白の衣装を纏った、
君にとって最高に幸せな日に、
俺は、何でもないフリをして、
微笑むことができるかな?

12/12/2024, 8:58:59 AM

No.199『何でもないフリ』

今日だって私は何でもないフリして笑うんだ。
結局そういう生き方しかできない。
そんな私が生きててもいいのかな?

12/12/2024, 8:50:38 AM

なんだかもう全てがどうでもよくなった。
ひたすら無心になって、目につくことも目を瞑って、聞きたくなかった裏話に耳をふさいで、問われたこと以上に口を開かず、ずっと同じような言葉を吐き続けた。

 社交性なんてものは昔からなかった。人といることが苦痛で混雑した場所なんて地獄でしかない。
人の声が隣で喋る同行者と同じ音量で聴こえるから何を話しているのかわからない。適当に無難な相槌しか返せなくて罪悪感と苛立ちで頭がおかしくなりそうだ。
人を前にすると何を話していいのかわからなくて面白くもないのにずっと口角を上げて笑っている顔を保つ。マスクをつけるようになってからは目元で喜怒哀楽を表せるようになった。何も言わずとも一時的に好感を得られるから便利でいつの間にか当たり前になった。
 こんなもの身につけたくなかったのに知らないうちに勝手に身についていた。

 何でもないフリはとても簡単だ。でも自分を殺す。
我慢に我慢を重ねて、何もよくないのに他人を許さなければいけない。怒るだけの気力もない、争うほどの意見もない。
これってふつう?それともおかしい?どちらでもいいけど変だと言われたらそれはそれで開き直れるから気が楽になる。何一つ解決してないのに楽になれる優しい薬のようで結構好きなんだ。

 今回で治療が終わる。命にかかわる大病だった。
よく死に直面すると人生観や死生観が変わると言うけど本当だった。私の場合1番大きくは変わったのは『どうせ死ぬならなんでもやっとけ』という心構えができたこと。
いつ死ぬかわからないなら今したいことをやってスッキリしたい。お金や時間との兼ね合いも考えながら計画するのは楽しかった。
まあ、何でもないフリをしなければいけない場面が多くてストレスはあったけど、それを差し引いてもいい体験だったなと思う。自分のことなのに他人事みたいなのはあんまり考えたくなかったから。それこそ何でもないフリだ。
 なんかもういつでも死んでいいよって思える生き方が幸せなのかもね。



             【題:何でもないフリ】

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