▶41.「何でもないフリ」
39.「手を繋いで」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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「ねぇ、あなた。ちょっといいかしら?」
「なんだ、もう寝たんじゃなかったのか」
晩酌をちびりちびりとやっていると、
妻のクロアが寝室から出てきた。
「明日は店、早いんだろう。どうしたんだ」
「ええ…でも気になっちゃって。あなた、この町で浮気してないわよね?」
「ごふっ」
しばらく噎せが止まらなかった。
「この町で、って…どこでもしてねぇよ。なんだ急に」
「だってあなた、森に行ってから考え事ばっかりしてるじゃない」
ハッと反応しそうになる体を抑え、何でもないフリはしたものの。
私なりに色々な理由を考えてみたのよ、だけど…と言い募る妻の言葉が動揺から耳を滑っていく。
「怪我もなく遅れて帰ってくるなんて、本当に浮気じゃないなら何なのよ…シブ?」
だめだ、立て直さねぇと。
「…本当に何でもねぇ。一緒に行った奴が森でコケたから、余計に休ませてから帰った。それだけだ」
じっと俺を見ていたクロアの表情から、
ふっと毒気のようなものが抜けて、
「わかったわ、あなたを信じる」
もう寝るわね、と寝室に戻っていった。
すまねぇな、クロア。
こればっかりは、お前が相手でも話すわけにはいかねぇんだ。
残った酒を干したら、やたらと苦い。
変だよな、ついさっきまで飲んでたのによ。
12/12/2024, 9:25:51 AM