『今日の心模様』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
本日はあいにくの朝からどんよりとした曇り空。鬱々とした灰色の厚い雲が、僕らの頭上を覆っていた。
そうして僕はとなりを歩く彼女を見遣る。
何だか雨が降りそうだねと、軽い調子で語り掛けてきた彼女の控えめな笑顔に向けて問い掛ける。
「昨日、何かあった?」
彼女の口端がぴくりと、一瞬だけ引き攣る。
僕はそれに敢えて気付かないふりをして空を見上げる。
「別に言いたくなければいいんだけど、もし誰かに話して楽になるなら、僕で良ければ聞くよ」
そう言った途端、となりから「うん……」と小さな返事が返され、すぐ後に鼻を啜るような音が聞こえる。
ぽつり、ぽつり、と。僕の鼻先に水滴が当たった。となりに視線を戻すと彼女の目から大粒の涙がこぼれ落ちていて、僕は急いで小脇に抱えていた傘を開いて、彼女と僕の頭上に翳す。
「何でわかったの?」
「ん?」
「何で私が今日落ち込んでるってわかったの?」
彼女は泣きながら僕に問い掛ける。
「だって君は分かりやすいから」
僕がそう答えると。
「そんなこと言うの君だけだよ」
と彼女はまた鼻を啜る。
私隠すの上手いはずなのに、どうして君には通じないのかな。
そんな独り言を呟いた彼女のとなりで、僕は今日の天気を予測する。
たぶん大粒の雨が降った後、それが嘘だったみたいにからりと晴れるだろう。
彼女の心模様と天気が連動していると気付いたのは、彼女と付き合うようになってしばらく経ってからのこと。本人すらも知らないこの秘密を僕は今のところ誰にも明かさずに楽しんでいる。
いや、僕以外の誰かになんて、絶対に教える気なんかないけどね。
【今日の心模様】
「今日はまだ起きてらっしゃいませんね」って、きみを担当する看護師さんが言ったの。珍しいなぁって思ったけれど、どうやら最近はそういうことが多いみたい。
最近、きみは夜が遅いって。
ぼくが帰ってから、お夕食、消灯時間が過ぎても。早く寝なかったツケが今日表れたみたいで、朝ごはんもまだって。
この個室には随分とお世話になっているはずなのに、きみの私物は少ない。
ここに来たての頃は、きみは「どうせきっと忘れてしまうのですから」ってほとんどをぼくの家に置いてった。おかげでぼくは毎日、鮮明に思い出す。
白い清潔なシーツの上で寝息をたてるきみは穏やかで、どんなときも変わらない表情。たまに眉間にしわができるけれど、くいくいって指で伸ばしてやる。睡眠が深いきみは起きないから、やりたい放題……なんて。
……ずっと気になってた。ベッドテーブル。寝るときは片しておくのに。そのまま。上には手帳が。
いままではなかったそれに、疑問とこころがざわざわってする心地。
人の手帳って勝手に見るのだめ。
分かってる。だから、ぎゅって目を瞑って。
カタンッってパイプ椅子が鳴ったのにだって、きゅってこころの模様が真ん中に寄るの。
****
薄い意識がようやく浮上して、シナプスがぴくっと瞼を動かした気配がした。暗闇を感じる前にもう、白い天井と遠くからは神経をチクチクと刺激するにおい。
知らない。
分からない。
そういう感情。
事実、何も思い出せない。不思議と恐怖とか焦りはなくて、どうしてそれに安心するのかも分からないけれど。
上体を起こして。
ぼーっと。
ふと視線を落とせばベッドの上にテーブルがあり、その上に手帳が。
表紙には「あなたへ」と。
あなた、とは誰を指すのか。しかし、この一室には自分ひとり。表紙の文字は天地が正しくこちらを向いていた。
だからこのあなた、というのを手帳の目の前にいる自分と仮定してしまおう。
ぺらり、とめくる。
箇条書きのそれは、情報だった。
自分が何者でここがどこでなぜここにいる必要があるのか、割と詳細に。
同じ内容が、何ページも。日付は違うから、きっと毎日驚きながら綴ったのでしょうね。カレンダーのバツ印と日付を照らし合わせれば、このページが昨日のものだと分かった。
同じようにわたくしについて。
それから――――重要、と何度も強調された箇条。そこにはわたくしではない、別の人物の存在が記されて。それがもう、詳細に詳らかに。
最後の行には『手の甲に、出来事を会話を忘れないうちに手帳に書き記しなさいと書いておくこと』と。昨日のわたくから今日のわたくしへ、そう指示されていた。
不思議な気分。
点々と色を置かれてそれをマーブル状に混ぜられているような。
自分のものじゃない文字たち。
知らないのに憶えているような、デジャヴとも言えばいいのでしょうか。夢を見たときのようでそうでないような、不思議な感覚。
この一室もそう。
ベッドの横にあるチェストの上の花瓶だとか、知らないキャラクターのぬいぐるみだとか、ベッド横のパイプ椅子とか。
わたくしの知らない存在が確かに肩を並べて、手を握っていてくれる。それを訴えかけて証明してくれるものたち。
「お早う」
「……はい」
入室の許可を求める声に返事を。
スー……と引き戸が開いて、その姿を見て、本当にシナプスがつながるような。ハッと。こころがぐるぐると、どんどん流れ込んでくる。
寂しそうにスマイルを浮かべるあなたに、あなたの名前を呼んでみた。驚くほど口馴染みがいい。すると、あなたはベッド横で膝をぶつけて。パイプ椅子を蹴飛ばす勢いで、床に膝を立てた。
ふふ、と笑みがこぼれてしまう。
思い出したわけではないんです、と告げれば、やっぱり悲しそうに。けれど、わたくしが広げていた手帳と手の甲を見て、目を見開いた。
ころころと顔の模様が変わってゆく。
晴れだったり雨が降ったり。
「う、……ぐすっ、…きみってばそういうところ、ほんと、そういうところ……っ!」
「あらぁ」
「あら、じゃあないよぉ! 知らない人に抱きつかれちゃうよ!!」
「どうぞ。あなたはわたくしのだいじなひと、もう分かっていますから」
「ゔぁあっ」
腕を回したあなたの背は少し冷えていた。
けれど、今日はあたたかい一日になるのだろうと、天気予報などなくても分かってしまった。
分かってしまったのです。
#今日の心模様
ざぁざぁ、とバケツを反したような雨が降る。制服を濡らす筈だった水滴は私を避けるように弧を描いては地に落ちる。
帰路につく足は止めずに、暗い空を見上げてここまで気持ちが晴れやかなのはいつぶりだろうか、等とらしくない事を心の中で紡いでみる。
途端、なんだか恥ずかしくなってきてごまかすように異様に傾いた傘を押し戻した。
「今日の心模様」
蓮の花を描いたよ。
花を描いた指先をふっと吹いて、絵師はまた万年床に潜ってしまった。怠け者の貧乏絵師め。蓮の花咲く胸中で毒づいたことを知ってか知らずか、仕事に出かけようとする背中を声が追ってきた。
「今日は早く帰っておいでね」
「あら兄さん、今日はいいのを咲かせておいでだ」
蓮の花に最初に気付いたのは、取引先の宿の女将だった。
「いいねえ、あたしも久し振りにこんなの咲かせてみたくなっちゃったよ。どこの絵師さんだい」
問われて、返事に窮する。何だかぽうっと胸が熱い。ふと女将が頬を赤らめた。
「あらやだよ、聞いちゃいけないやつだったかね」
やだやだと、年齢不詳の女将は少女のように袖で顔を覆う。覗いた目元が婀娜っぽかった。
「あの、もうし」
何とか注文を取って宿を後にしたところが、後ろから声をかけられた。振り返ってみれば宿の小間使いの娘だ。確か女将のお気に入りの、大人しいけれどよく目端のきく娘。
「兄さん、花びらを落とされましたよ」
おずおずと両手を差し出してくる。
「おや。君はまだ若いのに、こいつが見えるのかい」
からかうつもりはなく、ただ珍しいと思っただけなのだが、娘は火のついたように赤くなってしまった。ああ、そういうことか。
「娘さん、こいつは女将に渡してくれないか」
「あら、いいんですか」
「ああ、いつもお世話になってますからって」
娘はぺこりと頭を下げた。女将の喜び顔を思ってか、帰っていく足取りは弾むようだ。その足の下に赤い睡蓮の花が浮かんでは消えていることに本人は気付いていまい。
花びらを人にあげたと伝えると、絵師は眉根を寄せて、もじゃもじゃの頭を掻いた。
「何かまずかったか」
「まずい……と言うか……ねえ」
珍しく歯切れが悪い。
「何だ、はっきり言え」
「うーん……今頃、お熱い夜を過ごしてることだろうね、と」
「は?何を言って……っ」
突然、こみ上げた衝動の強烈さに膝がくずおれた。目の前の相手をがむしゃらに掻き抱きたい。邪魔な着物など引き剥がして肌に手を這わせて、それから……。胸の花が熱い。こういうことか。
「お前、何てことを」
「今日はお布団干してあるよ」
明後日の方向を向いてすっとぼけたことを言う。この野郎。
「……だって寂しかった」
急にしおらしく頭を垂れて、その目元が赤く染まっていたりするのだからたちが悪い。
取引先にヤバイものを持ち込んでしまったことは、とりあえず考えないことにしよう。他人の恋路を思い煩うのも後回しだ。
今は心模様のままに。
「今日の心模様は〜っ、うーん、テスト面倒臭い!」
「んな事言ってないで、さっさと支度しろー」
何でこの世にテストなんてものが存在するんだろうね〜など色々愚痴を漏らしながら居候は制服を着ていく。
「てゆーか、私、君よりも年上だよね!?敬語は!?」
「あんたのことを年上だと思ったこと1度もねぇよ…」
「そっかぁそれは残念」
ニコニコ笑顔で彼女は支度を済ませる。ふと、棚の上にある薬に気がついた。あれは確か、
「…これ、忘れてる」
しっかりと昼分のカプセルを渡した。終始彼女は困ったように笑うので、ほんの少し自分まで胸がチクリと傷んだ。
「…テスト、頑張れるといいなぁ」
「出来るだろ、あんた頭良いんだから」
「…そうだねぇ」
俺たちは2人並んで通学路を進む。
彼女に猶予がないことを知りながら。
_残り少ない居候
今日の心模様は晴れだ。
たまに訪れる心が軽い一日。
そんは日はなにか良い事があるのかもしれない。
いつか良い事があると信じてる。
ただ心が重い日の方が多い。
それを再確認させられる日でもある。
[今日の私の心象風景]
天井を眺めただけの日。それでも、浮いたり沈んだり。
たまに出てくる『今日の心模様』というテーマ
どうゆう法則で出てくるのでしょうか?
バグではないかと、不安になっております。
自分の言葉に違和感を覚える私は、
キャラを使い、小説(と呼べるのか謎)を
書かせて頂いております。
文才がないであろう私の文が、
皆様の高品質な美文の中に紛れ、
異物感を、放っていることに、
申し訳なく思ってはおります。
♡を推してくれた方、
この場を借りて、お礼を言わせて下さい
こんな風にしか書けない私の文に、
心を寄せて頂き、本当に本当に
ありがとう御座います!
宜しければ、これからも、
ネイさん、テイちゃん、マーくん(←末っ子)を
どうぞ宜しくお願い申し上げます*
“あー、てすてす”
“マイクテスト、マイクテスト”
“ゴホンッ”
“本日は晴天なり”
“私の心も晴天なり”
“あー、てすてす”
“マイクテスト、マイクテスト”
“終了”
誰もいない講堂にてマイクを置いた
『今日の心模様』より
心模様といえば、つい曇りだとか雨だとか、天気に例えがちだけれども、そのことに気が付いた今日の私は、ひと味違って、唐草模様だとか、市松模様だとか、何やら和風の模様が浮かび上がる。そんな単純な(伝統的な模様を甘く思っているわけではない)模様に例えられる程の心模様ではないんだよ、と言いたいところだが、様々なものを削り完成した模様の潔さ、美しさ、凛とした風情、そんなふうに生きてみたいと思った。
#今日の心模様は
今日の心模様は
晴れのち曇のち時々雨
悲しいことがあるとなんでも台無し
あらかじめ雨が降るってわかれば、まだ気が楽になるんだけど
折り畳み傘でも入れとけば気にならないかな
でもはじめから降られに行くみたいで少し悲しい。
「今日の心模様です」
テレビをつけると、アナウンサーの声がする。
「昨今の災害により国民の安全に心を痛めている、とのことです」
感情を排した言葉に、今日も太陽は見えないだろうなと珈琲をすすった。
この星に生命が誕生して幾万年。さらなる進化を遂げた私たち種族は、感情が自然現象とリンクするようになった。
といっても、平民の感情が周りに影響させる範囲は狭く、せいぜい半径1メートル範囲の空気を動かす程度だ。広い範囲での気象を操れるのは王家の血筋、なかでも現在即位している王のみが国を覆う空気に影響している。つまり、簡単に言えば王の気分次第で天気が決まるのだ。
それを利用して、専門家が陛下に気分をお聞きし分析して予報する「心模様」として、一般国民に天気を伝えるようになった。
マグカップを手にしながら窓から外を眺めると、空には厚い雲が覆われている。思い返す限り3年はずっと曇りのままだ。青空を知らない世代も多くなってくるし、太陽光がないことによる作物への影響について、ワイドショーなどで取り上げられていたことを思い出した。かくいう自分の子供ももうじき3歳になる。青空を知らない世代なのだ。
これも仕方ないのかもしれない。毎年のように国のどこかで災害が起きている。
それでも私たちは生きている。生きていくしかない。
昼寝をしている我が子をそっと撫で、1日でも早く青空が見れることを祈った。
何事も上手くいかなくて
落ち込む日
周りがキラキラ見えて
楽しい日
とてつもなく苦しくて
泣きたくなる日
怒りに任せて
人や物に当たってしまったり
特に何かあった訳ではないのに
何故か幸福感を味わったり
いろんな感情を持ち合わせている
毎日違う気持ちでいい
ボクの心模様は
雲のように形を変えて色を変えて
流れていくのだから
#今日の心模様
「今日の心模様」2023/4/23
他人の心模様は理解るのに
自分の心模様は覗けない
心模様とは明ける前の夜天みたいなものだと思う
星屑色の絵具を付けた筆で天の川を描いてみたり
炎みたいな黎明をひとつ
ランタンに閉じ込めて照らしても良い
決まりなんてないのだから
自分の心模様くらい
いつだって明るい模様でいたい
育って来た環境が違うから、自分の小さな物差しでその人を判断するなんて傲慢に他ならない。
仕事はともかく、プライベートはね。
でもさ。それが難しいのさ。
特に家族
特に嫁
子供が居ようがいまいが、僕は一生寄り添って高めあって、思いやりを持って、尊敬して、その時を迎えたい。
―今日の心模様―
(今日ではなく土曜日の話)
新しい美容室に行ってみた。
初めての場所はドキドキとワクワクが入り交じる。
その美容室はとても広々としていた。
白を基調として清潔感に溢れていた。
私の他にお客さんは居ず美容師さんと一対一という状況に緊張した。
だけど、美容師さんの柔らかな話し方と物腰に少しホッとした。
帰る頃には、だいぶ美容室の雰囲気にも慣れた。
髪もスッキリして気持ち良かった。
今日の心模様
令和5年4月24日 月曜日。
夏らしい青空、白い雲。
風は少し強いけど、夏の訪れを感じさせる。
去年の今頃、心模様は鮮やかだった。
運命の人と出逢い
夏に向けて燃え上がるように
恋は加速していった。
ただ無邪気に。
互いの好きを求め合い
互いに好きを伝えあった。
出逢って間もない二人だったけど、
本当に好きだったから
嫉妬も激しかった。
自分だけの人で居たかったんだろう。
初めての遠距離恋愛に
戸惑いながらも言葉を交わし
友達以上の階段を登り始めていた時期だった。
『心もよう』
ギンガムチェックに焦がれる私は 今日もなんだか落ち着かない 毎日が木曜日みたいな気分 私は私、他人は他人と言い聞かす そのリフレインがまた坩堝
歩き方 喋り方 お決まりのテキスタイル 泣くに泣けない曇天は私の心もようそのものだ
「今日の心模様」
月曜日は赤
火曜日は橙
水曜日は黄
木曜日は緑
金曜日は青
土曜日は藍
そして日曜日は紫
今日は日曜日
だからわたしの今日の心模様はむらさき
こうして每日紡がれた色によって
虹色の布がつくられて
わたしの涙をぬぐってくれる
あなたのこころをあたためてくれる
今日の心模様はくもり
私が気になってるあの人にLINEするから。
親友が好きなあいつにLINEするから。
LINEひとつ送るだけでどうしてこんなにも
心拍数が上がって、ドキドキして
緊張するんだろう。
こんなんじゃ、近づくどころか遠ざかってってんじゃん
私の本当の気持ちは、どれなの?
そんな事が心や頭の中でぐるぐる回っている。
さて、今日も上手くいくのでしょうか。