べし

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「今日の心模様です」
テレビをつけると、アナウンサーの声がする。
「昨今の災害により国民の安全に心を痛めている、とのことです」
感情を排した言葉に、今日も太陽は見えないだろうなと珈琲をすすった。

この星に生命が誕生して幾万年。さらなる進化を遂げた私たち種族は、感情が自然現象とリンクするようになった。
といっても、平民の感情が周りに影響させる範囲は狭く、せいぜい半径1メートル範囲の空気を動かす程度だ。広い範囲での気象を操れるのは王家の血筋、なかでも現在即位している王のみが国を覆う空気に影響している。つまり、簡単に言えば王の気分次第で天気が決まるのだ。
それを利用して、専門家が陛下に気分をお聞きし分析して予報する「心模様」として、一般国民に天気を伝えるようになった。

マグカップを手にしながら窓から外を眺めると、空には厚い雲が覆われている。思い返す限り3年はずっと曇りのままだ。青空を知らない世代も多くなってくるし、太陽光がないことによる作物への影響について、ワイドショーなどで取り上げられていたことを思い出した。かくいう自分の子供ももうじき3歳になる。青空を知らない世代なのだ。

これも仕方ないのかもしれない。毎年のように国のどこかで災害が起きている。
それでも私たちは生きている。生きていくしかない。
昼寝をしている我が子をそっと撫で、1日でも早く青空が見れることを祈った。

4/24/2023, 3:11:18 AM