『今日にさよなら』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『今日にさよなら』
朝から始まったデートはずっと楽しいままに夕暮れ時になった。手を繋いで帰り道を歩くふたりを夕焼けが照らしている。西日色に染まる雲を美しいとも思わず、ただ隣を歩く君のことを想って呟く。
「夕焼けを見てると寂しくなるのはなんでだろうね」
遠くの空を見ながら少し考えた君は言う。
「太陽の気持ちがうつっちゃうから、ですかね」
なるほどと思いながら地平線に沈みゆく太陽に別れを告げる。さよなら太陽。明日もきっと会えるよ。
駅に着いてしまったので帰り道はここで終わり。けれど繋いだ手を解く気が起きず、気の利いたことも言えないうちに乗る予定の電車が走り去ってゆく。
「太陽の気持ちがうつっちゃいましたね」
「うん、そうかも」
「でも、さよならしないとまた会えません」
繋いでいた手をするりと解いた君は小指を差し出した。
「約束、しましょう」
また今日みたいな楽しいデートができますように、と華奢な小指は私の小指を絡めて唱える。嘘をついたら針千本。
「……針千本はふたりで千本なのかな」
「それかふたりで二千本ですね」
うふふ、と笑いながら少し薄れた寂しさを抱えてデートを終わりにする。
「じゃあ、また」
「おやすみなさい」
手を振る君に手を振り返しながら、小指の感触を思い出していた。
起床しラインを確認すると、ずいぶん会ってない友人からの連絡があった。嫌な感がした。こういう感は的中するもんだ。送ってきたのは友人の姉だった。友人が急死したとのことだった。昨年末、自転車で交差点を渡っていたところ、左折してきたトラックの後輪に巻き込まれたらしい。高校3年間、いつも一緒にいた。あの頃のことが思い出され、涙が止まらない。仕事を休みたいが、休むことはできない。休んだところで気が休まるわけもない。仕事をしていたほうが気が紛れると思い会社に向かった。お客さんが来てもサービスに集中できない。軽いミスを数回してしまった。どっと疲れ帰宅した。帰宅と同時にラインが入った。いとこからだった。数年間格闘していた不妊治療が成功し妊娠したとの内容だった。彼女の苦労を知っていたので涙した。亡くなるものもいるば産まれるものもいる。悲しいことは忘れ、楽しいことを思い生活していこう。悪かった今日さよなら。楽しい明日へ。
今日にさよなら
楽しい今日も、嫌な今日も、時間は平等に今日を連れ去っていく。
ほら、今日もさよならの時間。
強い風に今日も連れ去られ、気づいた時には僅かな欠片が残るばかり。
今日の行方は、誰も知らない。
ただ、時が経つほどに褪せていくだけだ。
「よし、今日の仕事は終わり! では、さよなら!」
部屋から去ろうとするヒオン国国王クリスの肩を宰相であるキャロルがガシッと掴んだ。
「こら、まだ仕事の途中だろ?」
「だってさぁ……」
クリスは口を尖らせる。
「この書類の量、何!? もう3日徹夜しているけど、全く終わらないよ!」
クリスが指さす先には、大量の書類に占領された机があった。
「仕方ないだろ。お前は王位を引き継いだばかりなんだから。色々手続きがあるんだよ」
「それにしたって、量が異常なんだよ! 王子の時の何倍もあるじゃないか!」
「ケインはお前に甘かったから、少なかったんだよ」
「それでも多すぎるってば!」
「どうせお前ら魔族は魔力で体力を回復できるだろ? なら、何の問題もないな」
「精神に来るんだよ! 1日くらい休ませてよ!」
「あー、はいはい、じゃあ、仕事終わったら休ませてやるよ」
「それじゃあ、意味ないー!!」
叫ぶクリスを無視して、キャロルは彼を持ち上げて椅子に座らせる。
ブツブツ文句を言いながらも書類を処理し始めるクリスを見て、キャロルは片方の口の端を上げた。
実はこの書類の中で数日中にやらなければならないのは1割ほどなのだ。
あとは1年以内で十分間に合うものがほとんどである。
それをあえて、なったばかりの王にさせることで、今後の耐性や処理の速さをつけてもらおうという試みなのだ。
クリスで5代目になるが、全員文句言いながらもきちんと仕上げていたので、今回もなんだかんだ大丈夫だろう。
必死に仕事をする若い国王を見ながら、キャロルはのんびりお茶を飲むのだった。
(お詫び
以前、宰相をルイスとしましたが、キャロルでした。
すいませんでしたm(_ _)m)
一たび眠って、今日にさよなら。
タスクを終えた日は、何も考えず眠ることができる。
最近、悩み事が増えてきたけど、寝ている時だけは平和に眠りたい。
明日もいい日になるのかな。そわそわしながらも今日はおやすみ。
人生、なるようになる。
なるようにしか、ならない。
誰かが言っていた
「たとえ今が辛くても、絶対に幸せな事は来るから」
絶対に?幸せな事?幸せな事なんて人それぞれ。
恋人が出来たとして、もし、その恋人が詐欺師で
お金持ち逃げする人だったら?
全部嘘だったら?既婚者だったら?
それは、幸せな事じゃないよね?
好きな事をして、好きな物を買って、好きに生きてる人も居るのに
辛い辛い辛い事があってようやく手に入れた物が、幸せに直結しているとは限らない。
そもそも、なんで辛い思いをしないと
幸せになれないの?
誰が、その辛い思いをさせてるの?
自分で自分を辛い思いにさせたい人なんていないから、
周りのせいにするなと言われても、周りのせいな事があるのに。
幸せって何。
生きてる事が幸せだと言う人が居る
けれど逆に
生地獄と化している人も居る。
生きたくないのに、生かされている人。
生きたいのに生きられない人。
幸せって何。
彼に残された時間はあとどれくらいだろうか
病院のベッドで
管だらけになっている彼の手をそっと握る
今日にさよならなんてしたくない
このまま時が止まってくれたらいいのに
彼が生きてる
それがこんなに幸せなことだとは
彼が元気な時には気が付けなかった
自分はなんて愚かだったんだろう
大事にできなくてごめんなさい
せめて
彼に残されたわずかな時間だけは
一緒にいさせて
『今日にさよなら』
いつまでも絶えることなく
友達でいよう
明日の日を夢見て
希望の道を
空を飛ぶ鳥のように
自由に生きる
今日の日はさようなら
またあう日まで
信じあうよろこびを
大切にしよう
今日の日はさようなら
またあう日まで
またあう日まで
『今日の日はさようなら』
作詞・作曲 金子詔一
嫌なことがあると、今日にさよならを言いたくなる。難しいことは考えたくないんだ。
今日、弱い自分にサヨナラをした。
明日から、情けなくもみっともなくも、少しずつ歩いていく。
まだ弱いままだけれど、明日はきっと、今日よりは強い。
だって、今日の自分より一歩先にいるのだから。
「今日にさよなら」
少しの憐れみと後悔を残して
今日のわたしにさよならを
今日にさよなら。おやすみなさいをおしゃれに言ったようなお題だな。人生で一度も口にすることはないだろう言葉だ。
今日はジャンプの発売日なので感想をば。
最初に読んだのは呪術なんだけど今週は新連載が好みだったからそれから語りたい。
新連載のタイトルはアネモネだったかな。ジャンプでは珍しいパニックホラー。正確にはパニックホラーアクションらしい。ジャンプだからアクションは必須ということか。
ジャンプにはアクションのない作品もあるけどパニックホラーならあったほうがいいということかな。ホラーとアクションは相性いいだろうしいいんじゃないか。
実はこの作品が好みだったんじゃなくて作品のジャンル自体が好きなんだよね。パニックホラー好き。
絵柄はそこまで好みじゃないし一話ではなんとも言えないけどパニックホラーというだけで推しちゃう。ジャンル推しっすわ。ジャンプで生き残れるか怪しいけど期待。
で呪術だな。今週は中々衝撃的だったな。でも正直ひきは個人的に微妙というかまきパイセン好みじゃないからいまいちテンション上がらんかった。
鵺は今週は溜めで来週が見所かな。好評だからか余裕の話運びをしている。主人公の過去はなんであそこまで嫌われてるか納得できるものでよかったんじゃないかな。
最後はままゆうか。最近ずっといいね。一話できりよく話が進んでいるし新キャラのデザインがことごとくいい。やっぱり今のジャンプで一番好きだわ。
そういえば夜桜さんって漫画読んでなかったんだけど絵がうまいから最近時々読んでる。んで今週の最後のページめちゃくちゃかっこよかった。
なんかアニメ化もするみたいだしもしかして夜桜さんって読んだほうがいいか?もしかして面白いのか?
結構連載続いてるみたいだし面白いんだろうな。今度読んでみようかな。
もう寝るのか、一日は早いな
朝起きて、顔洗って歯磨きしたり、顔洗って
電車に揺られながら学校に向かって
その友達と話して、授業受けて部活して
電車に揺られて
帰ってからの時間が一瞬に感じる
今日もつかれたな〜
もう夜か、明日こそは話せたらいいな
そう思いながら布団の中に入る
今日の私にさようなら
明日の私、よろしくね
お題[今日にさようなら]
No.78
卑怯だったかね、見窄らしかったかね。
いい思いさしてやれなくてごめんね。
店の写真と違ったからね。
実物見せたら逃げられる顔だけどさ、少しは悪いと思ってンだよ。
でもそんな露骨に嫌な顔されると流石に傷ついちゃうんだもんねー。へへーんだ。
脱いで見なきゃどんなか分からない男のソレと同じにしてもらえないかね。ムリ? あ、そう。
とりあえず電気消しておくれよ。
見合うだけの値打ちはなくても使い道はあるからよ。
アンタも仕事終わりで疲れてたんだろうね。
23時半に部屋ン中でワイシャツ着てんだもん、ある程度察するよ。帰りの電車の中で買ったんだろ。
それなのになんというか、なんというかだな、ソソる女じゃなくてごめんね。
明日は男内でヒデェ女に当たったって嗤ってくれたらいいよ。
最近は可愛い子ばっかなのにどうしてあたしみたいな醜い女がいやんがだって不思議がってくれたらそれでいいよ。
使えりゃそれでいいって男もいるんだよ。
許しておくれよ。
今日は、ごめんね。とりあえずサービスすっからよ。
明日も、頑張って、笑顔で。
お題:今日はさようなら
今日にさよなら
なんてことない今日を繰り返す。
目が覚めるのは朝6時46分。そこから二度寝をかまして7時15分。制服はいつも通り。朝ご飯はトーストと目玉焼きとバナナ。朝の気温は11℃、最高気温は18℃の予報。家を出るのは8時3分。ホームルームの2分前に教室に駆け込む。
隣の席の友人と挨拶をする。その14秒後に先生が入ってくる。眠気を堪えて授業を受け、昼ご飯は3人の友人と一緒に。弁当の中身は白米と唐揚げとポテトサラダ。最初に食べるのは唐揚げ。午後一の古典の授業は開始26分後から19分間寝てしまう。
(タイムループってやつだよな)
この思考を開始するのは午後2時59分。48秒後に指名されるのでそれを待ってから思考を再開する。
(こういうのって、もっと劇的な1日を繰り返すものじゃないの?)
部活動は今日は休み。授業が終わった後は3人の友人に別れを言って、1人で帰路につく。校門を出るのは午後3時48分。
(変えようと思っても何も変えられないし)
駅につき3時56分の電車に乗る。運よく席が空いて、塾帰りらしき小学生とスーツケースを持った男性との間に座る。発車ギリギリにクラスメイトが駆け込んできて、相手は気まずそうに会釈する。
(この後だって何が起こるでもないし)
10分弱で降りなければならないのに眠気がやってくる。これもいつも通り。最寄り駅に到着した途端に目が覚めるから問題ない。いつも通り。
唯一、ここで見る夢の内容は毎回少し違っていた。自分は光る道のようなところに立っていて、目の前に誰かが立っている。これは共通しているが、目の前の相手のアクションが毎回違っていた。
「進みたい?」
今回は質問を投げかけてきた。この質問は4度目だ。
最初に聞かれたときは進みたくないと答えた。2度目は何も答えられなかった。3度目は質問には答えず「あなたは誰?」と聞いた。相手は「今日だよ」と答えた。
あぁなんだ、そういうことか。何百日分も時間を過ごして、ようやく理解した。
「進みたい」
今回はそう答えた。「今日」は寂しそうな顔をしたけれど、素直に道を譲ってくれた。前に一歩踏み出すと感じたことのない感覚が足の裏から伝わってきた。一歩、一歩と前に進むごとに景色が変化し、地面が広がり、視界が開けていく。もうずっと忘れていた感覚だ。
「さよなら、『今日』」
「うん、さようなら」
やがて視界が一色で染まっていく。どこかから聞き馴染んだ駅の音楽が聞こえてきてハッと目を覚ます。隣に座っているのはくたびれたサラリーマンと白髪夫人だった。最寄り駅についたのだ。慌てて電車を降り、スマートフォンで今日の日付を確認する。
「『明日』だ!」
思わず叫んでしまい、道行く人から奇異な目で見られる。それすらどうでもいいくらい久しぶりの感情でいっぱいになって、思わず輝く未知の世界の中で大きな大きな伸びをした。
今日にさよなら
そしていつも
今日にこんにちは、って言える自分でいられるといいな
楽しいことをいくつも数えて
あの子の笑顔を思い出す
さよならするのがさみしくて
えいやと今日の端っこ
ぶらさがって宙ぶらり
夜更かしする夜きれいだな
ずっと起きていれたらいいのに
今日にさよなら
私は不眠症だ。布団に入ってその日1日の嫌な思い出をリセットしようとしても、記憶に雁字搦めにされて眠りに付けない。私の心はいつもあの日に帰ってしまう。
2018年2月14日。バレンタインの日に私は彼氏に振られた。
あの日、私が丹精込めて作ったチョコレートケーキはゴミ箱に捨てられていた。ショックだった。
私の彼氏はいわゆるモラハラ男だった。
占いを見たり、自己啓発本を読んだりしていると必ずこう言われた。
「自己啓発本なんてのはな、努力できない奴が、努力しないで済む言い訳を探してて、そこに目をつけた出版社が出してる本なんだよ。」
確かにそうかもしれないと思った。だけど、3年間も一緒に過ごしてて1度も優しい言葉をかけられたことのない私の理解者は、本だけだった。
ゴミ箱に捨てられたケーキを発見した後、どうも記憶がはっきりしない。事故に遭って気を失ったからだ。
最後の記憶は、私と彼が車ごと崖から海に飛び込んで行くところだった。
2重の意味で彼を失って以来、日常は現実感を失い、意志が弱くなり、ふわふわと漂っているような感覚。
元々目立たないタイプの私は一層影が薄くなり、最後に職場に行った時、同僚は1度も目を合わせようとはせず、まるで幽霊にでもなった気分だった。
またあの日の事を考えていた。後悔ばかりが募っていく。
違う結末を迎えられなかったのか?
酷いことを言われたりしたけど、私は彼を愛していた。
背が高く、端正な顔立ちで、穿った事を言う彼のことをクールで格好いいと思っていた。
そのくせ、エクボを作って「かわいいよ。」などと言ってくるのだ。
彼との思い出の地をもう1度巡ってみたい。
今は叶わない夢だけど、解放される日は近そうだ。
「ねぇ、聞いてよ、仕事の同僚がさ、サボってばっかりいるの、同じ給料なのがバカバカしい。」
「そう思うのはお前のプライドが低いからだ。プライドの高い人間はレベルの低い連中の事など気にしない。むしろ同じレベルに下がらない様に努力する。同じ給料でもいい仕事をするのが当たり前なのさ、俺たちプライドの高い人間はさ。」
この言葉が今になって役に立つとは。私の刑期は短縮されて明日仮釈放だ。
だけど、私の心があの日の牢獄から解き放たれることはないだろう。
明日からどうやって生きて行く?とりあえず今日にさようならを言ってみよう。私の心がまたあの日に戻されると分かっていても。
「長文のお題だったから、5月22日の『昨日へのさよなら、明日との出会い』はよく覚えてるわ」
昨日にバイバイして明日と会うなら、「今日」は「どこ」にあるんだろなと思ったら、約9ヶ月後の今か。
某所在住物書きは過去の投稿分を辿った。
3月から「さよなら」は4回。上記と「さよならを言う前に」、「さよならは言わないで」、そして今回。
「突然の別れ」と「別れ際に」を入れれば、2ヶ月に1度は別離ネタが配信される計算となろう。
物書きは首筋を掻いた。失恋、夜逃げ、記憶喪失、食材使えずさよなら未遂。他に「さよなら」は?
「今日に『は』さよなら『を実行する予定』なのか、
今日『という日』にさよなら『する時間帯』か……」
――――――
最近最近の都内某所、某アパートの一室、夜。
あと10分で休日の「今日」にさよならして、平日の「明日」が挨拶に来る頃合い。
部屋の主を藤森といい、今夜は十数年来の親友であるところの既婚な野郎、宇曽野が遊びに来ている。
「8年前お前を壊して、去年お前がフった加元だが、あいつ、とうとうウチに履歴書出してきたぞ」
知覧の冷茶をひとくち。宇曽野が話題を提示した。
「ウチに、りれきしょ……」
渡された情報に、藤森はため息ひとつ。
目を細めた表情は、あきれとも、諦めともとれるチベットスナギツネであった。
宇曽野のいう加元とは、8〜9年前、藤森と恋仲であった筈の、すなわち元恋人。
先に加元から藤森に惚れて、藤森が加元に後から惚れ返すと、SNSでボロクソにこき下ろした。
鍵もかけぬアカウントで、批判を連投し、藤森の心魂をズッタズタに壊し尽くしたのだ。
理想の性格・性質・在り方と違う、と。
にも関わらずリアルでは、加元は笑顔を咲かせ真逆を言い、好意をささやいて藤森を引き止め続けた。
投稿に気付き、連絡方法を絶って離れて、追われて、職場を突き止められて何度も押し掛けられた藤森。
勝手に極が変わる磁石のような関係は、去年11月、曖昧ながら藤森がフって終わらせた、筈だった。
「まぁ、そもそも、『ヨリを戻す気はないけれど、それでも話をしたいなら恋人でも友達でもなく、他人として』とか言ってしまったのが私だ」
自業自得だな。藤森はいびつな、げんなりのスマイルでポツリ付け足し、茶に口をつけた。
ところで、本来ならば夏の飲み物たる冷茶。
冷水で抽出するので、渋味のカテキンや覚醒のカフェインが比較的少なく、穏やかに甘い。
季節外れに仕込んだ若草色のそれは、月曜火曜の規格外な暑さに備えてのこと。雪国の出身の藤森は、極寒には強いが、暑さにバチクソ弱かった。
「毎年4月の20℃で溶けるし30℃超でSAN値が吹っ飛ぶ」とは、藤森の後輩の経験則である。
「あれだけお前のこと、散々『地雷』だの『解釈違い』だの言い続けたのにな」
「どうせ所有欲と損失感情だろう?自分の所有物である筈の私が、勝手に手元から逃げて、あまつさえ自我持って『ヨリ戻す気はない』だから?」
「で、ウチに履歴書出して通って、じき最終面接だ」
「はぁ……」
「どうする?」
多分あの、お前の元恋人のことだから、職場でバッタリ出会った途端面倒なことになるぞ。
宇曽野は茶を飲み干し、2杯目を注いで時計を見る。
今日にさよならするまで、残り7分と少し。スマホの天気予報によれば、最高気温は18℃である。
「どうするかなぁ」
つられて己のスマホを見る藤森は、「実は高温予報は予測アルゴリズムのバグでした」が欲しくて、
数度スワイプし、何度更新しても変わらぬ数値に、
ため息を吐き、目を閉じ、小さく首を振った。
「さよなら私のハビタブルゾーン」
「木曜には最高一桁だ。我慢しろ雪だるま」
なあ明日は、
ふふ、もう今日になったよ。
あ、もうそんな時間なのか。
1日って短いね。
うん。あっという間だ。
たくさんの今日を見送って
たくさんの今日を迎えた
いつか最後の今日が来る日まで
また今日も
今日にさよなら