「よし、今日の仕事は終わり! では、さよなら!」
部屋から去ろうとするヒオン国国王クリスの肩を宰相であるキャロルがガシッと掴んだ。
「こら、まだ仕事の途中だろ?」
「だってさぁ……」
クリスは口を尖らせる。
「この書類の量、何!? もう3日徹夜しているけど、全く終わらないよ!」
クリスが指さす先には、大量の書類に占領された机があった。
「仕方ないだろ。お前は王位を引き継いだばかりなんだから。色々手続きがあるんだよ」
「それにしたって、量が異常なんだよ! 王子の時の何倍もあるじゃないか!」
「ケインはお前に甘かったから、少なかったんだよ」
「それでも多すぎるってば!」
「どうせお前ら魔族は魔力で体力を回復できるだろ? なら、何の問題もないな」
「精神に来るんだよ! 1日くらい休ませてよ!」
「あー、はいはい、じゃあ、仕事終わったら休ませてやるよ」
「それじゃあ、意味ないー!!」
叫ぶクリスを無視して、キャロルは彼を持ち上げて椅子に座らせる。
ブツブツ文句を言いながらも書類を処理し始めるクリスを見て、キャロルは片方の口の端を上げた。
実はこの書類の中で数日中にやらなければならないのは1割ほどなのだ。
あとは1年以内で十分間に合うものがほとんどである。
それをあえて、なったばかりの王にさせることで、今後の耐性や処理の速さをつけてもらおうという試みなのだ。
クリスで5代目になるが、全員文句言いながらもきちんと仕上げていたので、今回もなんだかんだ大丈夫だろう。
必死に仕事をする若い国王を見ながら、キャロルはのんびりお茶を飲むのだった。
(お詫び
以前、宰相をルイスとしましたが、キャロルでした。
すいませんでしたm(_ _)m)
2/19/2024, 3:42:32 AM