『二人ぼっち』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「二人ぼっち」
六畳半のアパートで
二人、毛布に包まれる。
世界中で一番幸せだったころのこと。
あの時間の
あの空間だけ
私は貴方と
2人だけの世界を
築いていたの。
「2人ぼっち」
ある朝、僕は太陽が眩しくて目を覚ました。
するとそこは、ヤシの木が一本だけ生えた
いかだ程のサイズの小さな島だった。
島の後ろには二方向に波が広がっている…
(…島が流れている。)
周囲の水はとても穏やかで、波が立つほど
流れが強い様には到底見えない…という事は
やはり、島の方が流れているのだろう。
ぐるりとあたりを見回すと、一人の男が
水平線の向こうを眺め、立ち尽くしていた。
僕は彼に質問する。
「この島はどこへ行くのですか。」
男は、少しも水平線から目を逸らさず言う。
『さあな。どこへ流れ着くと思う』
それが分からないから聞いたのだが…質問に
質問で返された。彼も分からないのだろうか。
「……大陸でしょうか。」
『大陸なんてものが見えるのか、お前には。』
どこか馬鹿にしたようにそう問われる。
僕は立ち上がって、どこまでも続く
青々とした水平線に目を凝らす。
「…見えませんね。」
『だろうな。』
「……。」
『……。』
穏やかな波の音だけが、この場に響く。
『…まあ…島が流れているなら、いずれ
どこかに辿り着くだろう。』
「…それまで、また二人ぼっちですか。」
そう僕が言うと、男はようやくこちらを見た。
『そうなるな。…やはり俺とは嫌か?』
彼は眉をひそめて笑う。
「…貴方の事は嫌いですが…僕等はどうせ
同一人物ですから。」
それは、一生切れる事のない腐れ縁。
…二人は顔を見合わせ、諦めとも嘲笑とも
つかない表情を浮かべた。
『はは、そうだな。こんな所にまで一緒に
来ちまうとは…全く、うんざりだよ。』
〈二人ぼっち〉
…ここで、私は夢から覚めました。
彼等は一体誰だったんでしょうね。
別々を向いてる私たちは二人ぼっち。
一人でいるより孤独な二人ぼっち。
貴方を好きになれたら、好きになり方がわかれば、はじめて笑えるのだろうか。
二人ぼっち
#二人ぼっち
貴方が心をくれた
私に鍵を渡してくれた
今までなかったゼンマイが
少しづつ少しづつ廻ってく
貴方は孤独が怖いけど
裏切られる怖さを知らない
私は孤独でいいけれど
裏切られるのに怯えてる
壊れたネジが外れてく
糸が首を絞めていく
歯車が少しずつ動いてく
どんなendになるのかな
「2人ぼっち」
優しい風の朝、私は公園を散策していた。朝の空気はいつも独特だ。冷たい風が頬を伝ったと思えば、いつの間にか暖かい風ご肌を覆っている。私はそんな風がある朝が大好きだ。そんな事を考えながら歩いていると、ある男の子が座り込んでいた。その男の子は、少し小汚い服を着ていた。
「どうしたの?迷子?」
「……?」
その少年は不思議そうにこちらを覗き込んだ。その顔には少し傷後あった。大丈夫だろうか?まさか捨て子では無いよね……?そうだったら警察に言わなきゃ。
「お姉ちさん、その……」
少年は微かな声で言葉を放った。
「一緒にお話しよ」
私は、少年のことを知りたくて、少年の話を聞いた。その少年曰く、少年は捨て子などではないが家庭が少しばかり貧しいらしい。その少年とのお話は何日も続いた。私はこのささやかな時間が大好きだった。
ある日、雨が降っていた。私はその日も公園に向かった。さすがに今日はいないだろうな、いたら逆にびっくりするし。……?!
少年は、いつものようにそこにいた。私は今日も少年と話す。だけどその日は何故か少し違うように感じた。まるで……「2人ぼっち」
#二人ぼっち
一人ぼっちでいる時より
二人ぼっちでいる時の方が寂しいなって思ったら
ちょっと立ち止まった方がいいかも
この人で大丈夫かなって一瞬でも思ったら
それは大事なサインかもよ
「ぼっち」って1人って事じゃないの?
2人ぼっちってどう言う意味なんだろう?
2人きりって言う言葉に変えれば分かりやすいのにね
私は1人の時間が長かったから
1人の時間が多かったから、
君に出会って甘えてしまった
2人の時間に甘えてしまっていた……。
あとがき 【落花妃】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
こちらまで目を通してくださりありがとうございます。初めてまして、作者の水蔦まりと申します。
✿【落花妃】について✿
当作は、別名義で某サイトに投稿している作品の、スピンオフとして書き上げたものになります。なかなか筆が進まず、気分転換にこちらを利用させていただきました。
より破天荒に、且つファンタジー要素の要である陰陽師の術なども、もっと丁寧に細かく描きたかったのですが……力及ばず。五十話を目標にしていたので、最後は駆け足になってしまったと反省しています。
リアンも……もうちょっとイケメンになる予定だったんですよ。ジュファの方がかっこよく描けたのは想定内ですが。
リ)「えっ⁉︎」
追加要素を加えて、いつか某サイトでも公開できたらいいなと思います。
リ)「かっこよさマシマシでお願いします」
ロ)「必要なくない?」
リ)「もう十分ってこと⁉︎」
ロ)「もっと面倒になりそうだから本気でやめて」
リ)「みっちゃんお顔が怖いぜ……」
毎日違うお題を戴く中、それに沿ってお話を描くのは思った以上に楽しかったので、またいつか、違うお話を描きに戻ってきたいと思います。
では、最後に小話を一つだけ。
✿ ✿ ✿
「それで?」
「? それで……とは?」
「ポンコツ」
「突然の悪口⁉︎」
「あんぽんたん」
「さらりと出てくる辺り、しょっちゅう呼んでましたね」
「だって、リアンだなんて、私は知らないもの」
「? と、言いますと?」
「私にとっては、今までずっと、良隆は良隆よ」
「……あの頃から何も成長していないと?」
「卑屈になるのもいいけど、いつまでもそうしていていいのかしら」
「またそうやって、僕を弄ぼうとして」
「本当にいいの? 二人ぼっちだけど」
「……?」
「今しかないかもしれないわよ? 気が済むまでできるのは」
「えっ。それって、もしかし」
「はいシンキングタイム終了〜」
「やっぱり弄んでるだけじゃないですか‼︎」
✿ ✿ ✿
素敵な一期一会に感謝を込めて。
またどこかで巡り会えますように。
#二人ぼっち/和風ファンタジー/水蔦まり
二人ぼっち
中学生のとき何かの機会で合唱曲を選ぶことがあった
確か「卒業生を送る会」用みたいなものだったと思う
私は自分が好きだった小学校で歌った曲を推薦した
どんな曲かを聞かれアカペラで歌うことになった
同じ小学校で分かる子がもう1人居たので
パートに分かれて歌うことにした
二人ぼっちの合唱だった
伴奏も何もなかったけれど
歌っている間に寂しさは感じなかった
広い世界のワクワクする感じがみんなに届けと思った
結局その曲は採用されなかったのだが
その時のことをまだ覚えているってことは
自分の中ではひとつの良い思い出なんだと思う
いや採用されなかったことを恨んでるのかもしれない
時折その合唱曲は今でも口ずさむ
―――With You Smile
どれだけ一緒にいる時間が長くても、
どれだけお互いのことを理解していても、
どれだけあなたに尽くしても、
私はあなたにはなれないんだよね。
好きな人≒憧れの人
恋愛感情と憧れの区別がつかない。
一緒にいたいとか話したいとか抱きしめて欲しいとか、
その先にはいつも「あなたみたいになりたい」があった。
それはお付き合いする方にもだし、応援しているアイドルや俳優さんや、アニメのキャラクターにまで共通する感情だったから、ああ、区別がついていないのかと。
認識出来て良かったと思う。
好きな人が私を想ってくれていればそれでいい、なんて言えるほど可愛い感情でもなかったし。
あなたと私さ、
そのままくっついて離れられなくなっちゃえばいいのにね。
左利きの人が好きなのは、利き腕じゃない方で繋がりたいからかもしれないね〜といった23:59
【二人ぼっち】
ふたりぼっちになっちゃったね。
そう君に問いかける。
僕たちは今逃げている。いわゆる逃避行というやつだ。
世界から、親から、友達から、警察から。色々な人から逃げている。僕はまだ逃げ続けていきたい。
そう思っていた矢先、星が光り輝く夜空を見上げ、君は突然「もう疲れた。終わりにしたい。早くこの星空に飲み込まれたい。」と言い出した。僕は胸がツンと痛くなった。同時にごめんねという思いが溢れて涙目になる。
ここで死んだら僕たちが負けな気がする。でもここで終わりにしたい。これが君の願いだとしたら僕は君の思いを尊重したい。
この星が光り輝く夜空の下で君と僕は手を繋いだまま飛び降りた。
負けたくはなかったが君が辛いのなら僕が必ず助けることが僕の夢であり、モットーだからだ。今回は負けたが、来世は絶対に負けないし、君みたいに辛い思いをした人を助けてあげたい。こんな事願うはずないのに、願うことを信じて目を閉じた。
『二人ぼっち』
お前はヒトリぼっちだ
病に倒れ、お前らに迷惑をかけた俺
そんな俺に、花を捧げてくれた妹。
俺のせいで、周りから孤立した妹。
もう俺は、この世に居ないけれど。
お前を、一人にさせてしまうけど。
生前、お前が俺にしてくれたように。
せめて、近くで見守るから。
俺だけは、傍に居るからな。
《二人ぼっち》
遥か高い空の上、練習機で憧れの教官と この長い下り坂を君を自転車の後ろに乗せてゆっくり下ってく 大きなお腹で独りティータイムの午後 囲炉裏の片隅で灰に突き刺さる火箸 アシタカとヤックルが何処までも駆けて行く 夫婦岩 御仏に見守られつつ座禅する 夕暮れのベランダ、干されっぱなしの靴下一足 右と左、平行線のまま錆びていく廃線のレール
「ふたりぼっち」
私の事を理解出来る人間なんていない、そう思っていたのに。誰にでも好かれる貴女が、大して愛想がいい訳でも頭が良い訳でもない私の傍に居座って、勝手に私の独り言を引き出して帰っていく。
自由気ままで傾聴力が低い貴女に、どうして私は慰められているのでしょうね。
チクタクという時計の音がこの部屋が静かだと物語る。1人の老人が縁側に座り空を見ていた。ぽかぽかと当たる太陽の温もりがとても心地よさそうに見えた。
「ねぇ、あなた。歩夢が今朝、ひかるさんと海斗を連れて帰って行きましたよ」と振り返りベットに横たわる老人に声をかけた。「海斗も今年10歳になったんですって。子供の成長は早いわね」なんて微笑んだ。
「歩夢なんて昨日ね。眼鏡がないないって言って大騒ぎしたのよ。頭にかけてあるのに全然気付かなくって。まるで、あなたを見てるようだったわ」そうベットの方へ歩き老人の手を握る。機械に繋がれた体は呼吸を繰り返すだけで握った手なんて握り返してはくれない。
「また、あなたと二人ぼっちになりましたね」悲しいような寂しいような顔をした女性の頬には涙が流れた。その雫が男性の手にかかった。その瞬間、少しだけ男性の手に力が入り握り返してくれたような気がした。それはまるで、『大丈夫』と元気付けてくれてるようだった。
幼なじみの西園寺小鳥は、文芸部の部長を務めているらしい。
『らしい』というのは、自分が部外者だから当然かもしれないが、実際に本人が部長として活動している姿を目にしたことが無く、あくまで伝聞の情報だからだ。
それによると、小鳥はいかにも育ちが良さそうな、のほほんとした雰囲気を醸し出しながら、その実、昼ドラに出てきそうな愛憎劇を執筆すると聞く。文芸部が学祭で配布する作品集が初見という人の中には、本人の見た目の可愛らしさと肉筆とのあまりのギャップに、まさに青天の霹靂と言っても過言ではない衝撃を受けて、一気にコアなファンになっている者もいるようだ。
こういった噂の類いには尾ひれ羽ひれがつきものだとも思うが、かく言う自分も、小鳥の作品の愛読者である。というか、自分―入江虎太郎は、小鳥の幼なじみであり、護衛役(見習い)なのだ。
西園寺家と入江家は、両家の長い歴史の中で主従関係にあった。
虎太郎の父は、西園寺グループの現・総帥、西園寺鷲智氏が小規模なグループ企業の常務に就任した時から秘書室の統括役として氏を支えてきた。その後、氏の役職が取締役などへ順調に変わっていく中で、虎太郎の父は右腕として適切な役職に就くよう氏に打診されてきた。欲のない父は、いまと同じ働き方以上のものは望まず、氏の秘書であり続けている。
長年の付き合いで、西園寺家の敷地内で開催される家族ぐるみの食事会や季節の行事に招かれることもあった。西園寺鷲智氏の愛娘である小鳥とは、よく敷地内を散策して遊んだものだ。
あれは、いつ頃だったか。
数十種類の薔薇が見頃を迎えたと、西園寺家から毎年恒例の園遊会に招かれた。
そうだ、高校入学後間もなく、クラスの同級生お互いがお互いを見定める、落ち着かなかった時期だ。
正直、あまり虫が得意ではないし、だるいと思ったけれど、時期を同じくして、小鳥が塞ぎ込みがちであると耳にしたこともあり、様子を見に行こうと足を運んだのだった。
その頃には、小鳥はただの幼なじみではなく、ご令嬢と護衛の主従関係にあっても、特別な存在として小鳥を意識するようになっていた。
「虎太郎さん、いらっしゃい。学校生活は慣れました?」
薄いミントグリーンのフレアワンピースにレースのカーディガンを羽織り、精巧な柄の日傘をさりげなく差して、小鳥は虎太郎を出迎えた。
「まぁまぁですね。小鳥様こそ、気疲れなさっているのではありませんか?」
小鳥は容姿や家柄のことでどうしても周囲の注目を浴びやすい。それはクラスメイトだけではない。保護者は元より、教員や外部講師、大学生のボランティアグループ、地域住民…学校に関わるありとあらゆる人たちが、好奇の目で彼女を見るのだ。むしろ生徒たちの羨望の眼差しの方が、まだ好感が持てる。
ふぅと溜め息をついた小鳥は、確かに疲れているようだ。
虎太郎はさりげなく庭園に視線を移し、できるだけ朗らかな声を意識した。
「今年の薔薇はいかがですか?作庭の専門家が見学に訪れるほど見事であると伺っておりますが。」
小鳥は右手の人差し指を顎に当てると、少し思案してから虎太郎に目線を合わせた。顎に人差し指を当てるのは、考え事をする時の癖だ。
「そうね、昨年は冷え込みが強くて、ガブリエルの数が少なかったでしょう?今年は苗床を変えたり、他の品種の病気に気を配ったりして、だいぶ数が増えたようだわ。とても可憐でうっとりするような美しさで、虎太郎さんも見とれてしまうと思うわ。ぜひご覧になってくださる?」
ふふっと小鳥が向ける笑顔には、無理をしている様子は感じられなかった。
小鳥が先導し、連れ立って庭園を歩き、時々立ち止まっては、目の前の薔薇の種類と特徴を、まるで音声解説を流しているのではないかと思うほど流暢に説明していった。その声が心地よくて、虎太郎は園遊会に来た目的を忘れてしまいそうになる。二人だけで過ごすこんな時間も、悪くないなと思った。
西園寺小鳥 × 入江虎太郎
『二人ぼっち』
私はいっつも結局一人ぼっちのつまらない人間だ。
そんな私を変えてくれた人がいる。
彼女は、どんな時でも私のそばにいてくれた。
黙って私の話を聞いてくれた。
友達を作るのが苦手な私にとって、唯一無二の大切友達だった。
ある放課後、彼女に悩みを打ち明けたことがある。その時も彼女は黙って話を聞いてくれた。
「私は、いつも一人ぼっちな人間だ。」
そう言った時、彼女は一瞬悲しい顔をして、こういった。
「あなたは一人ぼっちじゃないよ。私がいるじゃない。二人ぼっちだね。」と。
二人ぼっちか。確かに、そうかもしれない。
その時はそう思った。
けど、やっぱり私は一人ぼっちだ。
1人で部屋に籠っているただのぼっち。
あれ以来、彼女とはあえていない。
そもそも、元々彼女はいなかったんだ。
彼女は、私が作った“イマジナリーフレンド”だった。
『二人ぼっち』
「お前の今一番叶えたい願いを一つ叶えてやろう。その代わり、お前の二つ目の願いはおれがもらってやろう」
今、目の前にいる悪魔から、突然そう告げられた。この世に悪魔がいたという事実にも驚きだが、その悪魔がなんとも頓珍漢なことを言ってきたことにも驚いた。
「…そういう時、普通『願いを叶える代わりに命をもらう』っていうのが定石じゃないんですか?」
「確かに普通はそうなんだがな。流石に何千年も命ばかり食らっていたから、飽きがきてしまったのだ。だから、人間の感情を食らうことにした。するとどうだ。人間の願いのなんと美味なことか!人間側も願いを忘れて何不自由なく生きているようだし、お前たちの言葉で言う『うぃんうぃん』というやつさ」
悪魔がWin-Winの関係を築いていいのだろうか。人間の欲望に対して、命という他の何物にもかえられないものをいただくのが悪魔というものだと思っていたのだが。最近は悪魔もアップデートするようになったらしい。それがいいことなのかどうかは自分にはわかりもしないが。
「さて、おれがお前の願いを求めているのは十分わかっただろう。早くお前の一番叶えたい願いを言うのだ」
「二番目の願いは言わなくてもいいんですか?」
「二番目の願いは必要ない。一番目の願いを叶えた時点でわかるからな」
「はぁ、そういうもんですか……」
「ほら、早く言え。その願いがおれの糧となるのだから」
そうは言われてもな。自分は今ビルの屋上で飛び降りようとしていたところで、願いも何も未来すら考えていなかった。そんなところに現れるとは、この悪魔はだいぶ抜けているのかもしれない。いや、もしかするとわかっていて自分の前に現れたのかもしれない。それなら、この悪魔の想定通りに動いてやるのもまた一興だろう。
「じゃあ、自分を死なせてください」
「は?」
「もともと自分は死にたくてここにいるんです。だから、なんの問題もなく自分を死なせてください」
「それが、願いなのか?」
おや、随分と困惑している。もしかして、本当にただただ偶然自分の前に現れただけだったのか?だとしたらとんだおマヌケな悪魔だ。
「いや、ほら、折角願いを叶えられる機会が目の前にあるのだぞ?もっと生産的な願いを言ってみろ」
「ちゃんと生産的じゃないですか。なんたって死体がうまれるんだから」
「それは生産的とは言わない!」
なぜ自分は悪魔から正論を言われているのだろう。おかしなものだ。これではどちらが人間なのかわからなくなってきそうだ。少しおかしな気分になってきた。
「どれだけ悪魔さんに言われても、自分の願いは変わりません。自分を死なせてください」
「…本当に、それが願いでいいんだな?」
「ええ、問題ありません。後悔もいたしません」
「…わかった。その願い、叶えてやろう」
そう言うと、悪魔は自分に覆いかぶさり、あたりは一切の闇となった。自分の意識は、そこで途絶えた。
なんとも酔狂な人間だった。己の欲望のままに生を楽しむことができる手段を与えてやったというのに、それを無碍にしたのだから。この人間が叶えた願いは、到底一人では叶えられないものではなかったのに。わざわざそんな願いを悪魔たるおれにした。本当に不思議なものだ。
まあいい。とりあえずこの人間の願いは叶えたのだ。二番目の願いをいただくとしよう。さてさて、コイツの願いは、と……。輪廻転生することなく、世界を見届けたい、だぁ?余計わけわからんぞ、コイツ。まさか、死にたいと思っていたのも、この世界に嫌なことがあったからではなく、この世界を見続けたいと望んだからだとでもいうのか?確実にその願いが叶う可能性だって限りなく低いというのに?
…いや、この二番目の願いが美味であるのは、人間が無意識に願っていることであるからこそのもの。ということは、この人間は意図して願っていたわけではない。となると、この人間は何故かわからんが死にたいと思い、ちょうど目の前に都合よく殺してくれそうな悪魔が現れたから、願いを叶えてもらったと。そういうことになるのか。いやわからん。
とりあえず、この願いはありがたくいただくとしよう。……うむ、予想通り、いや予想以上に旨い。命は食い飽きたとはいえ、やはり命を天秤にかけたものは限りなく旨い。ここ数百年で一番の味ではないだろうか。
さて、願いはいただいたことだし、この残ってしまった魂はどうしたものか。今まで願いを叶えた人間は普通に日常生活に戻していたから、日常生活に戻れないコイツの処遇には困ったものだ。せっかくならこの魂も食らってしまってもいいが、対価を既にいただいている以上これ以上コイツからもらうわけにもいかない。放置でもいいが、そうすれば天使どもに連れていかれることは想像に難くなく、それはおれの意に沿わない。
そうだ。コイツはおれが飼ってしまおう。どうせ捨てられた魂だ。おれが食らう以外で何しようがコイツに文句を言われる筋合いはない。ちょうど話し相手も欲しかったところだ。なんせ人間の願いを食らうようになってから、他の悪魔どもにも敬遠されていつも一人だったからな。わけもわからず死を望んだコイツと、魂を食わないおれ。外れものの二人でちょうどいいではないか。
おい、喜べ人間。これからお前は、おれのしもべだ。せいぜいおれが他の人間どもの願いを食らうさまを共に見続けているがいい。