ある朝、僕は太陽が眩しくて目を覚ました。
するとそこは、ヤシの木が一本だけ生えた
いかだ程のサイズの小さな島だった。
島の後ろには二方向に波が広がっている…
(…島が流れている。)
周囲の水はとても穏やかで、波が立つほど
流れが強い様には到底見えない…という事は
やはり、島の方が流れているのだろう。
ぐるりとあたりを見回すと、一人の男が
水平線の向こうを眺め、立ち尽くしていた。
僕は彼に質問する。
「この島はどこへ行くのですか。」
男は、少しも水平線から目を逸らさず言う。
『さあな。どこへ流れ着くと思う』
それが分からないから聞いたのだが…質問に
質問で返された。彼も分からないのだろうか。
「……大陸でしょうか。」
『大陸なんてものが見えるのか、お前には。』
どこか馬鹿にしたようにそう問われる。
僕は立ち上がって、どこまでも続く
青々とした水平線に目を凝らす。
「…見えませんね。」
『だろうな。』
「……。」
『……。』
穏やかな波の音だけが、この場に響く。
『…まあ…島が流れているなら、いずれ
どこかに辿り着くだろう。』
「…それまで、また二人ぼっちですか。」
そう僕が言うと、男はようやくこちらを見た。
『そうなるな。…やはり俺とは嫌か?』
彼は眉をひそめて笑う。
「…貴方の事は嫌いですが…僕等はどうせ
同一人物ですから。」
それは、一生切れる事のない腐れ縁。
…二人は顔を見合わせ、諦めとも嘲笑とも
つかない表情を浮かべた。
『はは、そうだな。こんな所にまで一緒に
来ちまうとは…全く、うんざりだよ。』
〈二人ぼっち〉
…ここで、私は夢から覚めました。
彼等は一体誰だったんでしょうね。
3/21/2024, 3:28:42 PM