朝、起きれば最初に目に入るのは猫。
机の上で、だらりと身体を伸ばして寝ている。
昼、ご飯を作ろうと台所に立てば足元に猫。
構って欲しいのか、忙しい時に限って喉を鳴らして私の足にじゃれついてくる。
夕方、窓を開けてやれば窓辺に猫。
何をそれほど熱心に見ているのか、窓の外へ向ける視線を全く逸らさないのは少し面白い。
夜、風呂場の扉の向こうに猫。
どうやら私の姿が見えないと寂しがるらしく、足拭きマットの上に、猫のお気に入りの小さなぬいぐるみが届けられている事がよくある。
深夜、朝と同じ机の上に猫。
人の生活する時間と合わせてくれているのか、我が家の人間達が寝静まると猫も眠りにつく。
なかなか素直になってはくれないが、人を好いてくれているのはよく分かる。
どうだ、うちの猫はこんなにも可愛い。
〈誇らしさ〉
すっかり日が暮れて、夏とはいえまだ少し肌寒い夜。
私は中庭の池の上で蛍火が揺れるのを、遠くから聞こえる人々の騒めきと共にぼうっと眺めていた。
「おかあさん。蛍が祭りから逃げてきた。」
「ほんとうだ、うちにも来るんだね。」
「来年も来るかなぁ?」
「どうだろう、来るといいねえ。」
…この町に越して来て、初めて蛍を見たあの頃。母とこんな会話をしたのが懐かしい。
毎年蛍の飛ぶ頃に開催されていた大きな祭りは、すっかり規模が縮小してしまったけど…
それでも、蛍は変わらず飛んでいる。
今でも毎年 来ているよ。
〈あの頃の私へ〉
世の中、子供のままでは見れない物が多い。
その中でも、雨の日の深夜は特に好きだ。
雨粒でぼやける電灯。
道端で雨を浴びる小さな蛙。
目が眩むようなコンビニの明かり。
車のヘッドライトで浮かび上がる水溜まり。
雨粒が落ち、瞬きする程の間に消えてしまう
波紋を眺めると すぐに時間が過ぎていく。
…そんな夜を出歩ける大人は、少しだけ素敵だと思った。
〈子供のままで〉
鳥のさえずりは風に運ばれ
風は草を撫で枝葉を揺らす
野山の歌に耳を傾け
ただ暮らすのも生きる意味
〈生きる意味〉
私は小さい頃から、春になると
決まって見る夢がある。
それは、黄緑の若葉が茂る 陽射しの温かな
花畑で、どこかの日陰に1つだけ咲く
"青い花"を探す夢。
その花弁は夏空を閉じ込めたように青く、
ガラスみたいに透き通っていて柔らかい。
太陽にかざすと、雪のように溶けてしまう花…
青い花は毎年違う所に生えていて、毎回
「今年は咲いていないのかもしれない」
と不安になったりする。
でも、いつも夢が終わる前には必ず
その花を見つける事ができる。
「良かった、これで今年も春が来る」
と安堵して、昨日よりも少しだけ暖かく感じる
部屋で、目を覚ますのだ。
〈1つだけ〉