『三日月』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「インナーチャイルみたいだよね」
誰かがそう言った。
インナーチャイルドとは内なる傷ついた子供時代の自分、自分の意識の中にいて、リアルで生きる私たちを応援してくれている自分。
全てが満ちているとき、そして、全てが影に隠れ切っている時、私たちは心身に不調がもたらされる。
つまりは、傷の全てをさらけ出しているとき。
つまりは、自分という存在が隠れきっていて、誰にも見つけてもらえないとき。
そんな時に、私達の心身は不安定になったり、不調になったり、そして苦しくなったり。
半分では裏表が半々で、自分を偽って明るく見せているようにも見える。
それが例え、苦しい時でも。
大部分が心地よく安らかな影で、自分が隠れていて、でも全く誰にも見つけてもらえない訳ではない、3日分だけ輝いているくらいが丁度いい。
傷ついた子供、傷ついた自分にとって、それくらいで丁度いい。
テーマ『三日月』
朝月夜に貴方は何を思う?
縁側で風鈴の音
もう冬だというのに
見上げれば輝く三日月
私を拒んだ静電気
今夜はスコッチパイでも食べましょうか
窓の結露に指を添えて
描きましょう 2人だけの三日月
ドアの奥の貴方には
まだまだ遠い様だった
最後に残ったのは
萎んだ月下美人と 朝焼けに光る三日月
お題 三日月
三日月
夜空を見上げれば、そこには月がぽつん、と浮かんでいた。欠けたその月は三日月と呼ばれ、月の象徴とも言われる形をしていた。
この星から見える月の見え方は、綺麗だと誰かが言っていた。本物の月は欠けてすらいないのに、その一部が影に隠れてしまって欠けているように見えるのだ、と。
欠けているのにその美しさは満月をも上回り、儚さを兼ね備えていた。
だから、と誰かは言ったのだ。
だから、たとえ未完成で不完全に見えたとしても、それが本当かどうかなんてわからない、と。
欠けて見えても、それすらもうすでに完成されているのだろう、と。
そのことに誰も気づいてはくれないんだよ、と月に座るその人は寂しそうにそう言ったのだ。
テーマ“三日月”
クロワッサンは三日月という意味だと
誰かに聞いた。
けれど、私が知っているクロワッサンは
三日月型では無く
似てる……かなぁ?という印象だった。
ひし形のクロワッサンを良く見る。
スーパーやコンビニで売っているのも
どちらかと言えば
ひし形のクロワッサンだろうと思う。
そもそも、日本では三日月のクロワッサンより
ひし形の方が多く作られているんだろうなと
思った。
闇に浮かぶ。
金色に染まる三日月。
僕は君を想ってる。
今日はあえて聞かないでおくよ。
君の応えを。
ぱちんぱちんと音がした。
硬いものを切っている音だった。
そっと覗くと、父が座り込んで、新聞紙の上で、足の爪を切っている。
襟口が緩んだTシャツと毛玉がついた短パンに、たるんだ腹のだらしない姿が見えて、ため息が出た。
友達のお父さんたちはあんな様子ではない。
皆、若くて、細身で、ちゃんとしている。
髪も黒々としているし、皺もない。
何かといえば、送迎をしてくれようとするが、できるだけ断っていた。
正直なところ、誰にも見られたくない。特に口が軽くて噂好きの子とか、SNSに豪華な旅行を載せている子には絶対、見られたくない。
敷いている新聞紙から、切った爪が飛び、床に落ちるのが見えた。
ゾッとする。
気持ち悪い。
行ってきます、の挨拶もせずに家を出た。
帰ってきたのは夕食の時間を過ぎた頃だった。
家の鍵が空いている。
怒られるかと思ったが、家の中はがらんとしていた。
不審に思って、母に連絡をすると、繋がらない。
リビングのテーブルの上には、食事の準備がしてあった。食べ始めた様子はない。
なんとなく落ち着かず、麦茶を冷蔵庫から出してグラスに注ぎ、口をつけたが飲み切らずにシンクにおいた。
母からの着信だ。
電話をとってすぐ
「どうして家にいないわけ?…なんなのよこれ」
とつっけんどんに口火を切った。
「…あのね…お父さん、急に倒れたのよ。あんたを迎えに行こうかなと言ってたんだけどね、そのあと急にね」
声が出ない。
母は続けて喋っていたが、内容がよくわからなかった。
ただ、部屋の床に、父の爪が落ちていた。
白く濁ったような色で、
三日月のような形をしている。
朝感じたような嫌悪感は感じない。
今はただ、「三日月だ」と思った。
「疲れた〜」
身体をソファーに埋めて明かりのついた天井を見上げる。
今日も、心の中で叫ぶ。
残業……キツすぎ!
入社してから二年。相変わらずの仕事量に頭がオーバーヒートしそうだ。
全く………あの上司、散々私に任せてきやがって!
次の日に上司のカツラを皆にバラしてやるんだからね。
何か食べようかな……。
でも、今はそんな気分じゃないんだよね。
「あーあ。癒しが欲しい……」
よし。とりあえず猫と犬の動画でも見てよう。
鞄からスマホを取り出して電源を入れる。
パッと光り、ロック画面が映った。
パスワードの入力を完了してホーム画面に変える。
「あ…………通知来てるじゃん」
SNSからだ。通知の主は私の好きなアーティスト。
刺激的な演奏が私の心に痺れたからだ。
SNSを開いて早速、確認。
「ライブ配信のお知らせか」
もう、知っているからそこまで重要ではなさそう。
他に重要そうなのは無いだろうか。
探れば探るほど、あっという間に時間が経った。
暫くスクロールしていると、天体関係の情報が流れてきた。
内容は今夜の月を語っているものだった。
「今夜は三日月か………」
そういえば駅から出たとき、三日月が見えた。
綺麗だなと思いつつそんなに気にしていなかった。
何となく気になる。身体を起こしてカーテンをめくる。
「わぁっ」
今日は快晴だったから星空をちゃんと観測できる。
窓を開けると冷たい風が入り込んだ。
「寒っ!」
季節を感じる。
こうやって、天体観測したのは幼少期以来だ。
確か、小三の頃に友達と一緒に流れ星を見に行った。
「何を願ってたっけ……」
忘れてしまった。いや、単に流れ星を見てただけかも。
「………夕食の準備しよう」
そう思いながら窓とカーテンを閉じて、キッチンに向かおうとした時、引き出しが開けっ放しの棚にぶつかる。
引き出しから何かがヒラヒラと落ちてきた。
薄い水色の短冊だ。
刻まれた文字を見つけて、目を丸くした。
『ギターリストになれますように』
三日月〜♪
と歌ってしまう。今は年末年始の疲れが喉に出て、歌えないけど。
満月より三日月のほうが好きだな。あの不完全な感じ。よく見ると、藍色の中にお月様を隠している。
自分のことを月に例えてくれた人がいた。ずっと心に残っている。
その人は太陽みたいな人で、遠くまで声が響く、素敵な魅力の持ち主だった。
元気かな?太陽。
また歌ったり、笑い合いたいね。
月より。
一方的に語る愛は愛とは呼べない
愛ってさ
受け取る側と
お互いに共有できた時だけ
愛と呼ぶんだと思う
それ以外のものは
一方的な『恋』に過ぎない
太陽というスポットライトで
月は周期的に顔を変える
三日月はその中でも異色
横顔のような、憂い顔のような魅力を覚える
人間で言うチラリズムのような背徳を覚える
なら
人間関係というスポットライトで
貴女も周期的に顔を変える
三日月のような魅力を覚える顔は
僕の知らない夜にしか見えない
「三日月」
満月より欠けている月の方が好きだと思った。
満月も確かに綺麗だが、まるい月はあまりにも綺麗すぎて親近感が湧かない。
月に親近感も何もないかもしれないが、欠けている方が身近に感じられる。
無意識に人と月を重ねてしまったのかもしれない。
完璧な人よりも、どこか苦手な部分や嫌いなものがある人の方が身近に感じられる。
完璧な人が悪いと言っているわけではない。
ただ雲の上の存在なきがして親近感が持ちにくい。
月も人もどこか欠けている、欠点があるからこそ、より美しく見えると思った。
弱みや苦手も時には隠さずさらけ出した方が、
その人がより美しく輝く時がある。
欠けてる月も、少しづつ日を重ねる事に丸くなっていく。
その過程が、人でいう努力の過程のようで少しづつ成長していくそんな様子を表しているように感じられた。
逆に満月から少しづつ欠けていく月は、困難や苦難が襲いかかり調子が出ない時期なよう。
それでもいつか必ず満月になるのだ。
努力はいつかどんな形になろうと報われる、
そんな事を教えてくれているように感じた。
夜空に輝く月を見てそんな妄想をしてみた。
みわくてきな ひかりをはなつ
かげをかかえた そのからだ
づいぶんながく じくうをこえて
きれながすがたで みりょうする
『三日月』
君が三日月だったから
私の心を突き刺した
君が半月だったなら
君が満月だったなら
こんなに深くは刺さらなかった
この傷が癒えるには
三日月《さんかげつ》はかかるだろう
三日月
先月に久しぶりに
綺麗な三日月を見た
満月や満月に近いと
目につきやすいが
三日月が綺麗だと
思ったのは久しぶりだった
月を見ていると
なんだか気持ちがホッとした
三日月
とは少しかけ離れた保育所の記憶。
いつも十五夜の日は、みんなできなこ団子を手づくり。
そのかすか残る「楽しかった」残感は「月」という漢字を感覚的に肯定してくれる。
三日月って、なんで2日目でも4日目でもなくて三日なんだろうと思ったりもするけど、やっぱり3って切りが良いからかな?
二日目の月のことは繊月っていうみたいだけど、あんまりメジャーじゃないもんね。「せんげつ」だと「先月?」とかなっちゃうけど、「三日月」は「みかづき」だけだし、音の響きも良いよね。
まんまるなお月さまも見てテンション上がるけど、三日月の形もテンション上がる!(本当は三日のじゃなくても)猫の爪で夜空を引っ掻いたようなあのシャープな形が美しい。
昔の人は三日月の夜に何を考えてたんだろうか。月が控えめな分、星の輝きも美しかっただろうな。
三日月
私はオルフェンズの三日月が好きだ。
敵が殺してくれ!
って言ったら
殺してあげる優しさ。
好き。
『三日月』
「すごい。あの三日月、燃えてるみたい。」
見上げた空に沈みゆく三日月が、オレンジ色に暗く染まっている。
「大気圏突入してるみたいだな。」
昔見たSFアニメを思い出し、ちょっと高揚感を覚える。
「月っていろんな顔があるから、毎日一緒に生きてる気がする。」
月の満ち欠けに、生きてることを重ねる彼女の眼差しは、生き生きと輝いている。
「女性の心変わりと一緒かな。」
なんとなく口をついた言葉に、彼女は途端にムッとする。
「私は心変わりしないもん!」
子供っぽい拗ね方が可愛い。クスッと笑いを溢して、彼女の頭を撫でた。
「コロコロ変わる表情は可愛い。」
「もー!馬鹿にしてるでしょ!」
クスクス笑って、そんなことないよと取り繕う。
「光が当たる角度によって、いろんな表情が見れるのは楽しいよ。」
まだへの字口をしながら、ちょっとだけ納得したように押し黙って、
「……でも、私の気持ちは変わらないんだからね!」
俺に向き直って、じっと俺の目を見つめる。真面目なところは変わらないな。
「うん。ずっと、そうだといいな。」
あの月がたとえ燃え尽きてしまったとしても、ずっと、地球の傍に在って欲しい。
「君の満ち欠けをずっと見守っていたいよ。」
彼女はやっと満足したように、フフッと笑って、笑顔を綻ばせた。
三日月のような目をして。
テーマ:三日月 #58
ナァーン
「どうした? こはく」
俺は壁を引っ掻こうとしている黒猫、こはくに言った。声をかけるとこはくは俺の方を見て
ナァーン
もう一度鳴く。壁のある方にはカーテンの掛かった出窓がある。カーテンを開けたいのか? 俺はそう思ってカーテンに手をかける。
窓の外には暗い夜が広がっていた。星が綺麗に輝く中、一際目立つのは三日月だった。
ナァーン
こはくが鳴く。出窓には少しスペースがあるためそこに下ろしてやるとこはくは尻尾をピンと立てた。
「こはく?」
俺がそう言うが何も言わない。俺はどうしたものかとこはくの目を見た。カッと開かれた丸い目を見て何も言えなくなった。
急に何も考えられなくなった。
「…きて。起きてよぉ…」
そういう声が聞こえる。俺の体は揺すられた。
「ん…。なんだ?」
俺は目を覚ますと同時に妙な感覚に陥る。
なんか、体がおかしい。それに…俺は一人暮らしなのに…。じゃあ、今のは…?
「よかったぁ…起きてくれた。主人!」
俺は体を伸ばした。その時俺の姿が人間じゃないことを知った。黒く、毛むくじゃらな体。それは……。
「あれ…。俺…。猫…?」
「ごめんね、主人。ワタシ、化け黒猫なの。月が三日月になると人間の姿になっちゃうの…。それで…なぜか主人は猫に……」
「は…?」
俺は信じられなかった。
え…? 嘘だろ?
ってか、ここにいる女は誰だ…?
「えっと…どちら様?」
「え、主人。わからないんですか?」
主人とさっきから言われているが…。いつメイド喫茶に足を踏み入れたのだろう…。
にしてもこの女の服装…。何処か見覚えのあるような…。
「わたしはこはくですよ! こはく!」
「こはくはうちの猫で…」
猫…そう。今の俺にそっくりな…。
「は? ってことは俺が猫になってる間、こはくが人間ってことか?」
「だから! さっきからそう言ってるじゃないですか!!」
「でも、本当にこはくなのか…?」
「この目が私の証です」
そう言ってズイッと寄られる。きれいな顔立ちの女に寄られ少し焦ったが、目ですぐにわかった。
これはこはくだ。って。
「なんだかわからんが…。なっちまったのはしょうがないしどうにか耐えるしかないなぁ…」
「すみません…。私のせいで…」
いや…そんなことない。気を聞いたことを言おうとしたが、口には出てこなかった。こはくが化け猫なんて知らなかったし。
正直に言えば混乱で、頭が回らなくなっていたからだ。
これからどうするか…。
満月から段々欠けて
月は三日月になる
三日月になった月はいずれ
夜空に消えてゆく
以前美しく輝こうとしていた月
もう欠けていくばかりになった月
私たちが満月の月の光を
無責任に眺めている時
もう月は欠け始めている
私たちが三日月を少し
欠けてきたと認識した時
もう月は消えかけている
私というただ消える
ばかりになった人間
月という欠けていく
ばかりになった宇宙の星
何処か似ているけれど
そんな三日月が好きだけれど
でも、絶対に交わらない
だって三日月はいつか必ず
満月に返り咲くのに
私は貴女がいないと満月には
なれないのだもの
儚く消えた後、また必ず光り輝く月と
貴女の傍という幻想の中でしか
満月になれない私
だから私は三日月を
大好きだけど大嫌い