風鈴

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「疲れた〜」

身体をソファーに埋めて明かりのついた天井を見上げる。
今日も、心の中で叫ぶ。

残業……キツすぎ!

入社してから二年。相変わらずの仕事量に頭がオーバーヒートしそうだ。
全く………あの上司、散々私に任せてきやがって!
次の日に上司のカツラを皆にバラしてやるんだからね。

何か食べようかな……。
でも、今はそんな気分じゃないんだよね。

「あーあ。癒しが欲しい……」

よし。とりあえず猫と犬の動画でも見てよう。

鞄からスマホを取り出して電源を入れる。
パッと光り、ロック画面が映った。

パスワードの入力を完了してホーム画面に変える。

「あ…………通知来てるじゃん」

SNSからだ。通知の主は私の好きなアーティスト。
刺激的な演奏が私の心に痺れたからだ。

SNSを開いて早速、確認。

「ライブ配信のお知らせか」

もう、知っているからそこまで重要ではなさそう。

他に重要そうなのは無いだろうか。

探れば探るほど、あっという間に時間が経った。

暫くスクロールしていると、天体関係の情報が流れてきた。
内容は今夜の月を語っているものだった。

「今夜は三日月か………」

そういえば駅から出たとき、三日月が見えた。
綺麗だなと思いつつそんなに気にしていなかった。

何となく気になる。身体を起こしてカーテンをめくる。

「わぁっ」

今日は快晴だったから星空をちゃんと観測できる。

窓を開けると冷たい風が入り込んだ。
「寒っ!」
季節を感じる。

こうやって、天体観測したのは幼少期以来だ。
確か、小三の頃に友達と一緒に流れ星を見に行った。

「何を願ってたっけ……」

忘れてしまった。いや、単に流れ星を見てただけかも。

「………夕食の準備しよう」

そう思いながら窓とカーテンを閉じて、キッチンに向かおうとした時、引き出しが開けっ放しの棚にぶつかる。

引き出しから何かがヒラヒラと落ちてきた。

薄い水色の短冊だ。

刻まれた文字を見つけて、目を丸くした。


『ギターリストになれますように』

1/9/2023, 1:29:32 PM