『モンシロチョウ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
モンシロチョウ
前は綺麗だった。ひらひらまって
今は随分と見なくなったし
蝶集めの箱に入れられたのを見て
なんとなく抵抗がありみなくなった
もっと羽ばたいて欲しいなんて言える義理でもないけど
モンシロチョウ
アゲハチョウも素敵だけど
モンシロチョウも素敵だわ
白くてかわいいモンシロチョウ
ヒラヒラヒラヒラ飛んでるの
だけど学校の教材になるのだけは
お断り!
私は自由に気ままに飛んでるの
甘い蜜をちょうだい
あなたは何を望むの
軽い振舞いがお好き
それとも透き通る肌
甘くない蜜でもいい
抱きしめたいのなら
折れないようにして
でもきっとあなたも
そう
もっと近くで眺めて
知っているんだから
あなたは後悔するの
私に口づけできない
私にもっと近づいて
あなたは後悔するの
これに口づけなんて
あなたは後悔するの
熱い胸に釘を刺して
―――――――――
(モンシロチョウ)
彼は雪が好きだと言った。
春が近づいて、雪もほとんど解けて、
僅かに残ったそれも、時期に全部解けて。
だから私が「寂しいね」と言うと、彼はこう返した。
「春にも、雪はあるんだよ」
まるで今日のために用意したかのように
雲ひとつない空と
一面の菜の花畑
鮮やかな青と黄色のコントラストで
満たされた世界は
今日すべて私たちのもので
ふたり無邪気に螺旋を描いて
上昇していく
どこまでもどこまでも
富める時も
病める時も
一緒にいられたらいいよね。
あなたを生涯
愛し抜くことを誓います。
◼️モンシロチョウ
綺麗なお花畑にたくさんの蝶々がいたの
優雅に空を舞うオオムラサキ
透き通る青い羽のモルフォチョウ
黒と黄色のシマシマ模様のアゲハ蝶
珍しい子から毎年よく見るような子まで沢山の子達が居る中で「モンシロチョウ」の「君」が目に入った
なぜか目がはなせなくて
もっと近づきたい
君の好きなお花はどんなお花?
そっちへ行かないで
私の方へ来て
離れていかないで
「モンシロチョウ」の「君」に言葉が通じるはずもなくどんどん空高く遠くへ
気づいたら太陽の光と共にいなくなっていたよ
『モンシロチョウ』
ここは教会の裏にある寂れた墓地。
かつて美と力を持っていた人間の肉体が、
ウジ虫の餌食となっている場所だ。
殉教者はこの忘れ去られた場所で一人、
せっせと掃除をしていた。
伸びきった雑草を抜いて蜘蛛の巣を取り払い、
濡らした雑巾で墓石を丹念に磨く。
聞こえてくるのは虫の鳴き声と鳥のさえずり。
足元には可愛らしい草花が揺れ、墓地全体が
穏やかな静けさに包まれている。
ふと殉教者は作業の手を止め、気配を感じた方へ
視線を向けると、木陰で道化師がロリポップを
ぺろぺろと舐めていた。
「😋🍭」
この者はワタクシと同じ
「†漆黒ノ闇倶楽部†」の団員だ。
道化師はスタスタと殉教者の方へ近づいてきて、
彼の顔を覗き込んだ。
「😟?」
(訳:何してるの~?)
「掃除をしているのですよ」
何せここは人が滅多に訪れないものだから、
自分以外に彼らの面倒を見る者は誰もいない。
身寄りのない者も、生前栄華を極めた者も、
行き着く先は皆同じ。やがて人々から忘れ去られ
土に還るだけだ。
「ふう」
作業を終えて一息つく殉教者の背後に
いつの間にやら道化師が立っていた。
手にはシロツメクサやタンポポ、イヌノフグリ
やサンガイグサなどが握られている。
「おや、花を摘んできてくれたのですね。
ありがとうございます、スタンチク」
「😆🌼」
墓標に花を添えると、殉教者は
土の下に眠る者たちへ祈りを捧げた。
彼の真似をして道化師も隣で手を合わせる。
「😑🙏」
(訳:おててのしわとしわを
合わせてしあわせなーむー)
二人の頭上に白い小さな蝶がひらひらと舞う。
東の宗教では蝶は生まれ変わりの象徴とされている。
もしかしたらこの蝶たちは、肉体から
抜け出した魂を天の国まで連れて
行ってくれる使者なのかもしれない。
どうか彼らが安らかな眠りにつかれますように───。
【モンシロチョウ】
白くて綺麗だし可憐で気まぐれ
虫は苦手だけど
モンシロチョウだけは見ていて少し嬉しくなる
今日も風に乗って気まぐれに舞うモンシロチョウ
私のところに来てくれてありがとう
モンシロチョウ見せつけてきた時は普通に殺意湧いたよ。
久しぶりにモンシロチョウを見かけて懐かしいことを思い出した。
昔。具体的には小学一年生か二年生の頃、国語の物語でそんな感じの話をやった。詳しい内容はほとんど覚えていないが、温かい話だったような気がする。
今思い返してみると、小学生の頃にやった物語は温かい話が多かったような気がする。年齢があがるにつれて難しいことが分かるようになるからなのか、温かいお話は減ったような気がする。もちろん、全くないとは言わないけれど。それに、それが悪い事だとは思わない。
でも、少しだけ寂しい気がする。本当に幼い頃見ていたテレビ番組の歌を聴くと、懐かしさとその他のたくさんの感情で心が揺れて泣きそうになるのと同じように。幼い頃、あんなに輝いて見えた、綺麗に見えた世界がどんどんと輝きを失っていくみたいに。
だからこそ、僕はいつまでだって、夢を見ていたい。いつか人生の緞帳を下ろすその時までは、夢を見続けていたい。そして願わくば、他の誰かにも夢を見せ続けたい。
テーマ:モンシロチョウ
「素敵な女性になりたい」
彼女はそう言って何処かを見詰めていた.
「私ね,18になった瞬間から始めたの」
「お金無くてさ。
親公認なんだよ(笑)やばいっしょ?」
声を笑わせるので背いっぱいな詰まった声に
僕は思わず抱きしめた.
なめらかにグラデーションのかかった瞼
僕を吸い込むような真っ黒な瞳
それなのにどこか鮮明さを感じさせる睫毛
アゲハ蝶の様に素敵な貴女は風俗嬢だ.
僕には貴女を捕まえれなくて,
でも,貴女に触れたくて触れられたくて.
春の貴女に逢えないのだろうか.
モンシロチョウの様な優しい貴女に.
-「モンシロチョウ」
【モンシロチョウ】
ジャンプして空へ飛び込む。
上手く風に乗れなくて必死で羽音を動かした。
落ちてしまえば、飛ぶ浮力が足りなくて上がるのが大変なのだ。
羽音をさせて飛ぶのは無作法だが、落ちてしまうよりは良い。
へたくそ、と誰かが言った。
知っているよ、そんなこと。
……。
羽を必死に動かしたのに結局地面に落ちた。
着地すら失敗して落ちたのは茶色の地面。最悪だ。
この身体は歩くことも上手くはなくて、のそのそと重たく感じる足を動かす。一刻も早く逃げなければ、きっとわたしは網に捕まってしまう。
飛んでても飛ぶのが下手で上手くなくて捕まってしまうのに、歩いてたら格好の餌食。
敵は網だけじゃない。
早く飛んで、自由な空へ行きたいのに、何故、下手な
んだろう。
夢なら覚めればいい。
目を閉じれば、いつも通りに空を飛べる。
……。
変な感じが胸に広がる。けど、さっきも下手だけど飛べてた。
だから、大丈夫。
そして目の前に広がる街を見下ろす。
これは夢なのか、現実なのか、見たこともない高さから見える風景。
いつも通りなら大丈夫。
そのいつも通りがいつの事か覚えてないけど、大丈夫と言えば大丈夫。
だって、黄金色に輝く空とビル街。
私はこんな風景を知らない。だから、ここはあたしの夢なんだと思った 。
今のあたしが人なのか、羽の生えた蝶なのか分からない。
わたしもあたしも、誰も知らない変な夢。
そしてわたしは一歩踏み出して空へと飛び出した。
ヒヤリと背中に嫌な感覚がして飛び起きた。
高層階ビルから落ちるリアルっぽい夢をみた。
夢の中の自分はピーターパンのように空を飛べると思い込んで、とても楽しくフリー落下を楽しんでいた。
飛べたのか落ちていたのか、もう分からない。
夢でも空を飛べていたら、楽しかっただろう。
……もう1度見られないかな?
二度寝を決めた私は2度目を決めて布団の中に潜り込んだ。
目を閉じる前、白色が部屋の隅で羽ばたいたような気がした。
【モンシロチョウ】
虫は苦手だった。
その例に漏れず、蝶々も苦手だった。
きっかけは、幼い頃に見た昆虫図鑑だ。
昔から虫が苦手だったので、ページを繰るたびにくっきりと鳥肌を立たせていた。
しかし、子供特有の好奇心からだろうか、その手は止まらなかった。
ぱらぱらとページを捲ると、小見出しがチョウ目に移り変わった。
手はぱたりと止まった。
ちらと見ただけで目に飛び込んでくる、ぴったりとひらいた姿の、大きな羽。自然界でひときわ目を引くであろう、鮮やかな色遣い。生命の写し鏡のような神秘的な模様。細くともぴんと存在感のある触角。
ぱっと見て、きれいだと思った。
ページの隅を軽く摘んでいた指は離され、いつの間にか図鑑を両手いっぱいでがっしりと掴んでいた。
見入った。
しかし、きれいだ、と思って眺めていた蝶の模様に、一瞬ではあったが、こわい、と思ってしまった。
そこから連鎖するように、他の全ての蝶たちの模様に一瞬で恐怖の念を抱く。模様だけではない。蝶の一匹一匹が、すべて同じ格好で羽を広げられ、整然と静止して並んでいる。今までの昆虫たちも、確かにそうだったはずだ。
しかしなぜだろうか。その時はそれを、特段異様だと感じた。
そのうち、見開きいっぱいの蝶たちがこちらをじろりと見つめていると錯覚して、ばたりと図鑑を閉じた。
それきり、昆虫図鑑は本棚の端っこから動けないままで、いつのまにか消えてしまった。
もちろん今日に至るまで、昆虫図鑑には触れていない。また、自然が豊かな土地に住んでいるわけではないので、それ以降、昆虫図鑑に出てきた昆虫たちを実際に見ることはほとんどない。今となっては大抵の虫が嫌いとなってしまった私にとっては、願ったり叶ったりなのたが。
しかし、モンシロチョウはよく見かける。よく家の庭先にひらひらと現れては、草花を渡り飛んで、目を離した隙にどこかへと消えて行く。と思ったら、再びふらりと現れてまたひらひらりと、実に楽しそうに舞っている。
特に、春のこの時期の晴れの日は、よくモンシロチョウがやって来る。今もまさにそうだ。モンシロチョウが、家の真ん前にある庭においでなすっていた。
春風に舞うのに飽きたのか、草っぱに乗り羽を休めるモンシロチョウを、興味本位で覗き込んだ。
春の陽気に浮かれて、昔日の幼心がぽっと芽吹いたのだ。
ぱたりと閉じられたまま、ゆらゆらと微妙に動く羽。派手とは言えない、素朴な白色。キャンバスに点を落としただけのようなかわいらしい模様。でもしっかり見てみると、かなり細かい特徴を持った、やっぱりちょっと神秘的かもしれない模様。
ただ、きれいだ、と思った。
こわい、とは思わなくなっていた。
幼い頃の自分が何を思って、異様に蝶を怖がったのかは分らない。もしかすると、私は成長するにつれて尊い感性を失ってしまったのかもしれない。それでも、私はモンシロチョウを、素直にきれいだ、と思った。
ただそれだけのことだが、何故か胸が暖かくなるような気がした。
まじまじと見ていると、休憩は終わったのか、モンシロチョウは飛び立った。
そしてまたさっきと同じように、気の赴くままに、ひらひらりと飛んでいった。
休日に日頃の運動不足を感じ、
せっかくだしとジョギングへ。
暖かな日差しと涼しい風の中でも、しばらく走ると汗もでてくる。通りかかった公園のベンチで休憩。
青い空を眺めていると、白いモノが視界を横切る。
フワフワ、フワフワ
穏やかな風に身を任せるように白いヤツが飛んでいる。どこの花畑へ行くのだろうか。
そんなことを考えながらも
私は休憩を終え再び走りだした。
モンシロチョウ。
モンシロチョウが
綺麗だなと
思ってたのに。
カマキリと
バッタは
今でも触れる。
アマガエルも?
虫取りしてた
子供の頃は
夢中になってた。
「モンシロチョウ」
大きなつばのある帽子に、それはいた。
見つけたときは白いリボンだと思った。
しかし、それはゆっくりと羽を動かし
まるで自分はここにいるぞ、と
アピールしているようだった。
美しい女性の帽子に止まる紋白蝶。
美しいのは彼女か、それとも。
「モンシロチョウ」
アニメなどのモンシロチョウは、穏やかな日のワンシーンで使われたりして、ほのぼのとさせてくれます。
しかし、現実は農家にとっての困り者となっています。
モンシロチョウは野菜に卵を産み付け、青虫が葉っぱを食べてしまいます。
ただ、モンシロチョウ事態は蜜を運んでくれるので、一概には害虫とも言いきれないので、難しいものですね。
「モンシロチョウ」
蝶のように舞い、という言葉に代表されるように美しさと言えば蝶というイメージがある。
美しさにもいくつか分類があり、色っぽいとか妖艶のような美しさではなく、触れるだけで崩れてしまう砂の城のような儚さ、強さや生命力を感じさせず、守ってあげたいと思わせる不思議な魅力があり、それこそ一種の「美しさ」だと思う。
小学生のとき、モンシロチョウを幼虫から育てたことがある。特段虫が好きだったという訳ではないが、どんな風にサナギになって、蝶になるのか。ものすごく興味があった。
生活の中でサナギや蝶の状態は見たことがあったが、実際に変化する瞬間を見たいと思った。
正直幼虫からサナギになる瞬間は全く覚えていない。時間も経っているし、予想通りの変化で記憶に残らなかったのだろう。しかしサナギを破って蝶になった瞬間はものすごい衝撃を受けた。見惚れていた。
モンシロチョウ
菜の花畑を舞っていた。
ユラユラと。
おばあちゃんと女の子が椅子を並べて座っていた。
女の子が駆けてくる。
逃げなければヤバいのかも知れない。
けれど、もう少し菜の花畑を待っていたくて
まだ、ちょっと足の遅そうな小さな女の子になら掴まらないだろうと、菜の花の黄色い花弁にしがみつきながら食事をとっていた。
女の子はそっと私の羽をつかんだ。
あっ、しまった掴まった。
女の子は私の顔をまじまじと見つめた。
「お願いします、離してください」
私は女の子の目を精一杯見つめた。
すると、女の子は。
「気持ち悪い、チョウチョの目ってブツブツいっぱいあって気持ち悪い」そういって振り回すように離された…。
「酷いわ、私は蝶よ!気持ち悪いだなんて」
「勝手に掴まえて、振り回した挙げ句に」
私は腹立ち紛れに、女の子の顔めがけ羽ばたいてやって、白い鱗粉かけてやった。
女の子は、怖がって逃げて行った。
私は、また菜の花畑を自由に飛んでいた…という夢を見た。
狐狗狸さんで前世はモンシロチョウと出た日の夢だった。
2024年5月10日
心幸
「虹」かける
晴れ渡る空 通り雨知らせる電子音
走り終えた鼓動がいつもより早い
なんだ?この胸騒ぎ
晴れた先にはそびえたつ雲
ふとボールがきれいな弧を描く
あぁ、そうだ
探しに行かなきゃと思いがあせる
開け放った窓
雨の匂いが通り抜ける
風で朝キメた前髪が崩される
なんだ?このざわめきは
乱暴にめくれたページ
ちらっと「に」と「じ」が輝いた
あぁ、そうか
四角い空に大きな弧を描いてみる
この感じはなんだろう?
この感情の名前がわからない
この風はなんだろう?
この風の行方が見つからない
意味はなに? 目的はなに?
そんなことはいいからさ
意識が遠のく前に…次の呼吸をしなきゃ
さぁ!雲が裂けて光が差す前に行こう!
その感情のそれでいい
その気持ちのままかけるんだ
さぁ!その風に身を任せて突き進もう!
とにかく、いいからさぁ!全力前進 未知創造
鮮やかな虹を見つけに行こう!探そうよ!
空が急に重くなる
あっという間にいつもの土砂降りか
雨は自由に道をつくるけど
雨が止んだら消えてしまう
でも私はどうだろう?
この気持ちは消えそうもない
もうこれ以上待てないや
今から行くから待っててね
暴れ舞う風が問う
雨の後に何があるか知ってるかい?
ああ僕だって気付いてる
ただ踏み出せないだけなんだ
裂けたページをもう一度眺めてみる
やっぱりそうだよな
そうか自由に虹をかければいんだ
そうだ、風に思いを乗せてみよう
どれだけの人が雨の後に虹を探すのだろう?
僕や私だけじゃないはずだ
本当はみんな気付いている
ただ分からないことが怖いだけなんだ
そりゃ、そうだろうと雨が歌う
それでもやるしかない、と風が奏でる
その胸の中にかかる虹を信じるんだ
その強い思いは確かだから
やったもん勝ちだ、さぁ、行こう!
その気持ちのままやってみればいい
全力でまっすぐ 突き進もう!
その勢いで誰も見たことのない
自分だけの虹を描こうよ!
いいから、そんなに考えるなよ
色とか形とか結果なんて…そんなの関係ない!
いいから虹に向かって駆けようよ
思いをそのまま言葉で伝えるんだ
そう自分だけの虹を描けばいいんだ
思いはきっと届く!
風に乗ったノートの切れ端が羽ばたく
そこには虹の中で鮮やかに染まる二人が寄り添っている
以下、背景ウラ話
(設定ストーリー)
<わたし(スポーツ女子)>
夏から秋へと少しずつ進んでいるんだろうけど、屋外でスポーツをするにはまだまだ過酷な気温が続いている。真夏日が減って少し過ごしやすい日が増えたと朝の天気予報でも聞いたけど、天気が不安定でこの頃は帰り際にやってくるゲリラ豪雨にも気をつけてと言っていたっけ。それはそれで困る。
市街地から少し離れたちょっと小高い丘の上にある高校のグラウンドでは、熱中症対策で制限されていた屋外の部活動が解除され、みんな青春を浴びるように思い思いに汗を流している。
今日のグラウンドは金曜日だからサッカー部と陸上部が優先的に広く使う事が許されていて、それぞれが邪魔しないようにキレイにふたつに分かれて使っている。
そんなことはどうでもいいんだけど、ガチ体育会系部活動特有のあの掛け声、なんだかわからないし、なにあれ、鼓舞しているのか?それとも、ヤジなのか?もやはあれは誰にかけている呪文なんだ?いったい何の言語なんだよ…
そんなの真剣に考察する必要ないんだけど、とにかくなんだか頭がおかしくなりそうだ。
ねぇねぇ、アレ見て!なんかいつものゲリラ来そうじゃない?もしかして呼んだでしょ?
スタート地点に戻りながら冗談を言っていると、右腕のスマートウォッチの電子音が遠慮せずに割り込んでくる。はいはい、いつもの雨雲レーダーの通知でしょ。
って今日は何色かな?ヤバ!赤いのがこっち向かってるって!あと15分後に降り始めるらしいよ。
じゃあ、今日はこれで最後の一本だね。
ところでさぁ、最近なんでこんなにゲリラ豪雨が多いんだろう?
えっ、あれでしょ?何だっけ?何とか現象とかってウィキペで見たよ。
でさぁ、雨が降った後って、なーんかアレ期待しない?あぁ、別にその…本気でそんなこと思ってる訳じゃないけど、なんていうのかな…その、なんか見つけると思いが届くような、願いが叶いそうな。そういえば最後に見たのって、いつだったっけな?
あれ?何考えてるんだろ、私は?なんかすっごい恥ずかしい事言いそうになってる…やば、熱中症かも…
その時、今まで全然気にしてなかったのに、急に向かいのサッカー部のイミフな掛け声とともにボールが飛び交っているのが横目に入る。
そのうちの一つが灰色の空にキレイな弧を描いた。
急にドキっとして、鼓動が早まった気がした。
えっ?まだ2、3本しか走ってないし、まだまだウォームアップなのに。
いや、そんな感じとは違うことぐらいさすがに私だってわかる。じゃこれはなんだ?
あっ、ゴメン!なんかちょっと今日は体調が悪いみたい。やっぱり次の一本やめるわ。それにほら、ゲリラ豪雨がマジでヤバそうだし、すぐに止めて撤収した方がいいと思うんだ。
ホントゴメン、先にあっちでクールダウンのストレッチしてゆっくりしてるね。たぶんちょっと休めば大丈夫だと思うから、ゴメン、片付けお願い。明日か明後日か今度一緒に帰ったときいつものあれ、おごるからさぁ…
一呼吸で一気にまくし立てて、最後の「さぁ」が相手に届く前に汗だけ残して校舎の影に溶けてしまった。
<ぼく(ふつうの男子>
放課後のガラガラの教室にポツンと一人で何かノートに書き込んでいる。教室は昼間のざわつきがキレイに片付いていたが、蒸し暑さだけは体にまとわりつくように残っていた。
机につっぷしてぼんやりと外を眺めながら、さっきまでのエアコンの余韻で過ごすのは無理だなと、窓を勢いよく全開にする。と同時に埃っぽい湿った匂いを乗せた風が勢いよく吹き込んできた。当然、優しくもない風はアレンジのかなり効いた髪型へと変えられ辟易する。
風はそのまま机に放置したノートのページをいたずらにめくる。
床に落ちる前に伸ばした手の先で二文字だけ輝いているのに気づく。「に」と「じ」だけが意思を持って飛び込んでくる。
それはすぐに鼻の奥にツンと刺激を与え、外の景色がさっきまで眺めていた雰囲気とは違う感覚にさせる。
あの風は何か叫んでいたような、何か訴えていたように感じたけど、あれは何だったんだろう?
ところで僕はここで何をしているんだ?
いったい何なんだ、この感情は?名前を付けるとしたら何て言えばいいんだろう。
いや、そんな分析や説明を考えてる場合ではない感じがする。
どれくらいの時間考えていたんだろう…いや、何も変わってないし、秒針はまだそこにある。
それよりもなんだか息苦しいな、あーそっか呼吸を忘れていた。危ない、危ない。
これ以上考えてもしょうがない、身体の力を抜いてあの風に身を任せるのがいいみたいだ。
そして、僕は無意識に自然とこうするのが今は一番いいみたいだ。
空に向かってバイバイするように腕を伸ばして大きな弧をいてみた。
<雨と風>
いいねぇ、まさにこれが青春ってやつだね!
でも、それだけじゃまだまだ足りないでしょ!
せっかく気づいたその感情、そのままじゃもったいないよ。
何も考えずに思いのまま飛び出しちゃえばいいんだ。
何も怖がらずに言葉にすればいいんだよ。
だってさ、雨の後には…知ってるだろ?
いいから、先の事なんて考えないで見つけてみなよ!
自分だけの虹をかければいいんだよ!
〈そして…〉
ゲリラ豪雨特有の風もかなり強かったが、彼女は普段の脚でそれくらいじゃ押し負けない。
いや、豪雨とか強風とか彼女を止めることなんて誰にもできそうにない。今の彼女が持つ信念と強い意志に勝るものなんてあるわけがない。
ただ、今さっきまで走り込みをしていた彼女の服装でこの豪雨の中を走れば、周囲の男子共はそれに目を奪われてしまうのは仕方がない。
だけどそれでも、彼女はそんな露わな自分の姿を知ってるのか、それもまたホントの自分らしさだと思うことにした。そうすることで彼女は全力で前に突き進める。
そう、あの瞬間から待つことなんてみじんも思っていなくて、今から行けば間に合うと信じてそれを走る力にしていた。
突風に惑わされた彼は大きめに腕を振りかざした後、しばらく風と会話していたようだ。
なんとなくだけど、それはこう聞こえた。
「雨の後に何があるか知ってるかい?」
いや、何か違う。聞こえたんじゃなくて、自分の中で歌のように響いたんだ。
そう、そんなことは自分が一番わかってる。
ただ、ちょっとこれまで感じたことないような感情に戸惑っていただけなんだ。
そんなことはいいか僕は何をしたらいい?
手の下にあるノートにもう一度意識を戻して、深呼吸をした。
すぐに白紙のページを開いて、おもむろに破り割いた。そこに蛍光ペンで何も考えずに思いを描いてみた。
一本の弧を描くと、そこから先は急に気分がとても楽になって、同時になんだか恥ずかしいけどこれまで感じたことない心地のよい感情に変わっていのがはっきりと分かった。
それでこそ、青春だね!
それでいいんだ、今の君たちにはその強い感情を正直に受け止めて未知創造の先へ突き進めばいい。
理解できなくてもいい、だって論理や計算で解けるようなものではないから。いや答えは一つではないし、そもそも答えがあるなんて概念を考えることじゃないから。
とにかく、今はその感情のままやればいい。
ただ、ただそれでいい。
そうすれば、どんなことが起きても(結果になっても)この先大丈夫だから…自分を信じて。
〈… End〉
豪雨と風は天気予報の通りすぐに通り過ぎた。
「雨の後には…」
空にはまだ分厚い雲があったが、徐々に雲が避けていく。
陽光はずっとその奥で待っていた。
「今からやるから待ってて」
彼は破ったノートの1ページを折りたたんで、手に持ったまま何気に窓枠に手をかけて空を眺めていた。
風の勢いはだいぶ弱まっていたが「今だ」と、ちょっといたずらに奏でた。
彼の手から奪った1ページはフワリと浮き上がり、窓の外へと舞い飛んだ。
それを見ていた彼は心なしか晴れ渡る気持ちでスッキリしていた。
空を見上げた時、陽光が差し込んできて何かが起きるのだと、そんな期待がこみ上げた。
その頃、校舎の屋上にびしょ濡れの状態で彼女は空を眺めていた。
勢いよく校外に飛び出たして走りながらどこに行けばよいのか考えていたとき、豪雨の中ではずっと歌が聞こえていた。その歌に導かれるように自分の呼吸だけを重ねていくと、気がついたときには見覚えのある高い場所にいた。そこはまぎれもなくいつもの学校のいつもの屋上で、言葉にならない何かに期待を抱いていた。
風のいたずらで彼女の視界にあの1ページが舞い込んで、思い切ってつかみ取った。
ちょっとクシャッとなった1ページを広げると、そこには虹の下で幾重にも重なった色で2人が染められていた。
空には二段に重なる虹がかかっていた。
遠くのその虹の下には寄り添っている2人の幻影がぼんやりと見えた気がした。