『タイムマシーン』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
もしもタイムマシーンがあったら、
あのときのあなたに会いに行けるのかしら。
もしもタイムマシーンがあったら、
わたしと出合う前のあなたに会えるのかしら。
もしもタイムマシーンがあったら、
あなたに言った酷い言葉も取り消せるのかしら。
だけどきっと、
タイムマシーンがあったとしても、
あなたの心の内がわかるわけじゃない。
タイムマシーンがあったとしても、
わたしの気持ちが伝わるのかはわからない。
だからきっと、
タイムマシーンなんてなくてもいいの。
今すぐ走ってあなたのところへ行くわ。
タイムマシーン
「あらあらこんな傷を作って、痕が残ったらどうするのよ」
「心配無用よお母さん。その時はタイムマシンに乗ればいいんだから」
22世紀初頭、科学の粋を結集し、人間の全身を原子レベルで過去の状態に巻き戻す装置が開発された。外見から内臓、それに記憶まで巻き戻してしまうさまから、小難しい装置名の代わりにタイムマシンと呼ばれていた。
「全くいい時代よね。私の指も元通りにできたら良かったのに」
「なんで失くしたんだっけ」
「工場のアルバイトでコンベアに巻き込まれたのよ。学生時代の話」
「タイムマシンは1年までだから無理ね」
様々な理由から、タイムマシンで1年以上遡ることは禁止されていた。タイムマシン側にも、それを防止する機構が組み込まれていた。
タイムマシンを使用すると、巻き戻した時点のスタンプが、暗号化されて全身に刻印される。たとえば12/31に364日分巻き戻せば、肉体の時間は1/1として記録される。しかし、12/31から遡行できるのは1年前の12/31までなので、もう一度タイムマシンを使用しても今度は1日しか戻せない。どうやっても1年以上前には戻れないのだ。
『お母さん、お母さん』
夕食の食器洗いの手を止め電話に出ると、せかせかとした娘の声が聞こえてきた。
「どうしたのよ、何かあったの」
娘は今日、彼氏とデートすると言っていたはずだ。
『彼が、彼が、死んでしまったのよ』
「え、あなた今どこにいるのよ」
『彼の家よ』
「救急車は呼んだ?すぐに呼びなさい」
『無理よ』
「落ち着きなさい。深呼吸して、そうしたら119にかけるの」
『私が殺したのよ』
息を呑んだ。しかしすぐに平静を取り戻した。
「わかったわ。そこで待ってなさい」
母親が家に着き、娘について部屋に入ると、滅多刺しにされて臭気を放つ男の死体が横たわっていた。
娘曰く、デートの待ち合わせ場所に彼は来ず、電話にも出ないので心配になって家に行くと、知らない帰ってくれと門前払いを食らったという。ショックで玄関先に泣き崩れたところ、迷惑そうにしつつ家に上げてくれた彼だったが、自分のことを忘れてしまったかのように他人行儀に話すので、堪えられなくて殺してしまったらしい。今日は娘の誕生日だった。
母親は娘をなだめ、てきぱきと男の死体をビニールシートで梱包する。
死んでいようがバラバラだろうが、肉体は過去と繋がっている。肉体に刻まれた過去の痕跡を遡れば、生前まで構築し直すのは造作もないはずだ。生死は人が決めた線引きであり、実態は原子の集合体でしかないのだから。
死体と娘を車に乗せ、家に戻る。
男の死体をタイムマシンのカプセルに寝かせ、遡行時間を設定する。7時間で十分だろう。実行ボタンを押し、いくつかの警告に同意すると、作動音が鳴り始める。電気自動車の走行音程度の静かな音だ。無事動いていることに安心して、母親は寝ることにした。娘はそばで見守るらしい。
母親が布団でスマホを見ていると、娘が血相を変えて寝室に入ってきた。タイムマシンがエラーを起こしたらしい。急いで駆けつけディスプレイに表示されたエラーコードを見て、母親はハッとした。
見覚えのあるコードだった。肉体を1年巻き戻して、更に1年巻き戻そうとしたときに見たものと同じコード。
壁に掛かった時計はちょうど12時を回っていた。母親はすべてを悟った。この男は昨日1年分遡ったのだ。そして、日付が変わって遡行期限が1日分更新されることで、当初戻ろうとしていた時点が1年と1日前として扱われることになってしまったわけだ。
どうすることもできず、点滅する表示灯をただ見つめた。泣きわめく娘の声が頭蓋骨に響いた。
2023/01/23
次の日
次の日
次の日
次の日
次の日
次の日
ある日僕の意識は途切れた
次の日
次の日
次の日
今日は何日だっけ
「タイムマシーン」
「あの時やり直せたらって思ったことある?もし過去や未来に行ける機械があったら使いたい?」
君はいつだって突拍子もないことを言い出すんだ。さすがに考えたことくらいあるが、今の自分を否定する結果になるから過去は変えたいなどと思わない。もし、死んでいった戦友を助ける術があったとしても必ずどこかで埋め合わせが起こるだろう。全てはなるべくして起こった事。
それに過去が変わったら君に会うことがないまま過ごす可能性が高い。そんなの君を知った俺には堪えられそうになかった。変えるとは何かを失うことでもある。
「未来だって気にならないと言えば嘘になってしまうけど、俺はどちらにも行きたいとは思わないな。」
まるで俺の答え知っていたのかのように君は穏やかに笑っていた。
「いつも前を向いてるからそう言うと思ってた。」
分かってるのにわざと聞いたのか。君は俺を理解してきたみたいだね。そうこなくては。
「未来でも見てきた?」
「まさか。読んだ本に蝶の羽ばたきひとつで世界が変わるって書いてあったから、私達が会えたこと実はすごいことなんだなって。」
もし機械が本当にあるなら使いたい人間はごまんといるだろう。君の話したようにほんの些細なことで君との関係が変わってしまうなら…
「…誰かが使う前にその機械を壊しておかないと」
「例えの話しだって…!」
実際にあったら俺は、機械が存在する限り何処へでも破壊しに行くだろう。慌てだす君に冗談だよと、向かい直した。
「過去は教訓になり学びを与えてくれる。そうやって積み重ねて、欲しい結果は自分で掴むものだよ。君が良いって言うならこの先も俺と…どうかな?」
この先は君次第。とりあえず首を長くして待つことにするよ。
頬を染めはじめた君は俺に何て言うのだろう?いくつも予想をたてるけどわからないから未来は面白いんじゃないか。
あ、でも「君の未来の旦那様だよ」と小さい頃の君に会って言ってみたかった。
『タイムマシーン』があったなら
タイムマシーンであの頃の家族に逢いたい。
守れなかった私の心を守ってあげたい。
笑顔を守ってあげたい。
ずっと好きでいたいのに。
大切な人や、ものが壊れると悲しんだりする。
それと似たような感じに私の家も古くて脆くてすぐにでも
崩れそうな家。
壊したくないな、でも死にたくもないな。
思い出いっぱいの家はいつしか無くなるから。
それまで、この家に居させてはくれないだろうか。
タイムマシーンがあればずっとその時にいたい。
でも過去は過去なんだ、それぐらい許してよ。
未来に歩くのはもう疲れた。
ただ、過去は知っているから。
こんな私の思いは逃げているだけなんだ。
未来がある私はわがまま過ぎかな。
もう、タイムマシーンあるなら連れてって。
#タイムマシーン
タイムマシーンにのって
行きたい未来を
なくしてしまった私は
どう生きればいいの…
タイムマシーンで
Let's go!
どうする?
行き先は
過去?
未来?
その前に
行ったきりになるのか
覗いてくるだけなのか
記憶はこのままなのか
消されるのか
そこ大事
例えば過去へ戻り
記憶を持ったまま
生き直すなら
そこで新たに
何を選び
何を得て
何を望み
何を叶え
誰を愛し
誰に愛されるのか
捨てなければ
得られなかったものを
諦める事は出来るのか
時空を超え
違う世界線を生きる
何を生き甲斐に
何をどのように変え
どう生きていくのか
新たな選択肢を前に
見誤らず悔いなく
上手く生きていけるのか
きっと
今と大して変わらない
こんな私の事だから
「タイムマシーン」
あら、お帰りなさい
見ないお顔の方もこんばんは
私のお話を聞きに来てくれたの?
嬉しいわ
じゃあ、早速お話を始めましょうか
そうだわ、最初から聞きたいのなら
昨日のものが残ってるから、そこから聞いてね
私ね、彼に一目惚れだったのよ
私は人と顔を合わせるのが苦手なの
だからずっと下を向いていたわ
前からの友達とは前を向いて話せるけどね
最初は彼から話しかけてきたの
メールの方でね
一緒に遊ばないかって
電話をしてネットで遊んでいたのだけど
私はまず彼の声に惹かれたわ
とてもかっこいいの
次に、彼の性格
とても優しくて、そこで顔を知りたくなったの
学校の日、声を頼りに彼を探したわ
私、耳がいいのよ
そして見つけたの
彼は、とってもかっこよかったわ
そして可愛いの
人に囲まれながら笑う彼の姿に
私の心は一瞬で奪われたわ
その時は大変だったのよ
見ただけで顔が真っ赤になっちゃったみたいで
隣にいた友達に凄く心配されたの
彼の周りには人がよく居るの
男友達も女友達も
私は彼と女子が絡む度に嫉妬をしたわ
最初は羨ましいって焼きもちを焼く程度だったの
でもね、最近は自分でも度を超えてると思うわ
彼と絡む女子に、昔からの友達もいたの
他にも、新しく友達になった子もいたわ
その友達たちに対して、殺意が湧いてしまったの
私って最低だわ
人を殺す度胸もないのに殺意が湧くなんて
そもそも友達に対して
こんな気持ちが湧いてしまうなんて
自分が嫌になったわ
こんな事を考えてしまう自分が嫌いなの
だから必死に抑えてるのよ
私が誰にも危害を加えないように
絶対に何も起こらないように
少し話を戻すわね
私は不安になったわ
彼が絡んでいる女子の中に
彼の好きな人がいるんじゃないか
私は眼中にないんじゃないかって
それでも彼は私と夜に電話をしながら
一緒に遊んでくれるのよ
共通点も多いから、話題には困らなかったわ
そこで私は気づいたの
彼はたらしなんだわ
彼に対しては失礼だけれど
私は彼に惚れた女子を少なくとも一人知っている
彼女は私の為に諦めてくれたのだけど
本当に優しい子よね
彼はきっと天然たらしってやつなのよ
確かに、あんなにかっこ良くて、性格がいい人に
ちょっかい掛けられたら気になるわよね
私だって、そのたらしに引っかかった一人だもの
それぐらい分かるわ
いつだか私は不安が頂点に達して
つい、彼に聞いたわ
私は皆や貴方の足を引っ張っているんじゃないかと
でも、彼は優しく慰めてくれたの
自分の方が足を引っ張っている
なんて事も言ってくれたの
全くそんな事はないのだけどね
そして、私は彼の言葉に
心が暖かくなって、涙を流したわ
やっぱり彼は優しい
でも、私はこの不安について話したこと
相談したことを後悔してるの
だって面倒臭い女だなんて思われたくないじゃない
もう思われているかもしれないけれど...
あぁ、やり直したい
こんな時にタイムマシーンがあったら
やり直したい所からやり直す事ができるのに
他にも、今まで私は沢山間違えてきたの
間違えた所は分かっているのよ
だからこそやり直したい
本当にタイムマシーンがあったらいいのに
やだ、もうこんな時間だわ
貴方もやる事があるでしょうし
今日はここまでね
私のお話を聞いてくれてありがとう
またね
私へ!忘れちゃダメ!
私は私を信じてる。
だから私は私を信じてくれる人が大好き
私を信じてくれなかった人に対して
私はすごく寂しいなぁって思う。
これは私を否定された気分になったから。だと思う。
私で自分を守ろうとする人がいた。
私を信じてくれたから、
私に頼み事をしてくれたり、私を見てくれたり、
私と一緒にいてくれたんだと思ってた。
でもそれは、色々な面で間違ってた。
あの人はいつも人に囲まれてて、
頭も良くて、足も早くて、にこにこしてる
誰が見てもおぉ!ってなる人だった。でも
私といる時は、いつも寂しそうにしてた。
可哀想だと思ったから、隣に座った。
あの人は笑ってくれた。
私は信じられてるって思って嬉しかった。
でも、いつの日か私は気づいたことがあって、
あの人はいつも私を疑ってた。
疑うって信じてる人にするのかな、
あの人にどうして疑うのか聞いてみた。
あの人は人を信じられないって言った。
人を信じられない。悲しいことだと思った。
私が信じるをわかって貰えるようにできるのでは?
って思ったから実行した。
これが信じるってことって、私の思う信じるとか
物語に出てくる信じるとか、身近な人の信じるを
沢山教えさせてもらった。
でも、結果として出た答えは、
自分の信じるが分からない、だったらしい。
あやふやでも自分の考えがない状態で、
たくさんの意見を聞きすぎたかな、
そう考えて申し訳なくなって謝った。
そしたらあの人は、ゆっくり頑張るって言ってくれた。
ゆっくり、ゆっくり、
きっとあの人にもこの気持ちが分かるようになる、
私は信じてた。
あの人は嘘をついてた。私に、皆に、
あの人は自分の存在を私の、皆の信じる気持ちを使って
証明させたかったらしい。
別にこれはいい。納得した。問題はこの後
あの人は私たちのことを嫌っていた。
しかも、大嫌いって言ってた。
どうしてなのか、気になった。
でも、聞かなかった、いや、聞けなかった。
あんなに頑張ったのに、とか一瞬思ったけど
よく考えれば余計なお世話だったし、
私ってウザかったのか、と思った。
私はあの人に謝って家に帰った。
あの人とはもう会わなくなった。
それから気づいたことがある。
私はあの人に酷いことをしていたってこと。
私があの人を使って自分を正当化していたこと。
もう謝った。でも、罪悪感を感じてる。
だから私は自分の考えをしっかりと表明させた。
私は私を信じる。
あの人みたいな人って結構いたし、
そのおかげで耐性も前よりはついた。と思う。
相手の意見を尊重する。
自分の我を通し続けるのは無理たから
多面的な意見を沢山知る!
私なら大丈夫!何時でも信じる心を持つ!
「タイムマシーン」
未来へ行き、あなたとの歩んでいるか見たい。
天才的な頭脳を持つ俺は、若くしてタイムマシーンの制作に携わっていた。とは言っても、まだ試作段階だ。
小型の試作機にマウスを入れて、一日後の未来へと飛ばす。今でこそ成功しているが、これが人となるとそうもいかない。
絶対に失敗は許されない。故に、慎重になる。俺は助手と二人で、数年にも及ぶ研究を続けていた。
ある日、人間用のタイムマシーンを起動する、最終チェックを行っていた時だ。
突然、研究室の扉を開け、一人の老婆が飛びこんできた。老婆は、ヨボヨボの足腰と棒切れのような腕からは想像もつかないほどの力で、俺に抱きついた。
醜い顔に、ずっと風呂に入っていないであろうベタベタの髪、悪臭が鼻をつく。何かを叫んでいるが、歯がない口からは何を言いたいのか聞き取ることが出来なかった。
考える暇もなく、俺はテーブルの果物ナイフを手に取り老婆を刺した。
殺人を犯すことよりも、このまま揉み合いになりタイムマシーンを壊してしまう方が、よっぽど恐ろしいことに思えたのだ。
あっけなく老婆は死んだ。まったく、一体どうやってここに迷いこんだのだろう。迷惑なやつだ。
そんなことを考えていると、ちょうど使いに出した助手が戻ってきた。一見すると、非常にまずい状況だが、俺は至って冷静だった。
長年一緒にいたのもそうだが、俺よりもずっと歳上の彼は、とても強い忠誠心を持っていた。
俺の思考を読み取っているんじゃないかと思うほど、常に先回りをして準備をし、快適な空間を作り上げ、必要な案を出してくれる。タイムマシーンの研究に、彼は必要不可欠な存在であった。
だからこそ、俺は落ち着いて彼に言った。どうせ身寄りもないであろうこの老婆の、後始末をしておくようにと。
彼は……助手は、一瞬悲しそうな表情を見せたが、淡々と老婆を担ぎ、部屋を出ていった。
……さて、後は俺の知ったことではない。研究の続きを始めよう。
それから月日は矢のように流れ、ついにその日はやってきた。
完成した、巨大なタイムマシーンの試作機。マウスの分も含めると、これは二台目だ。
だが、これに乗るのはマウスではない。人間だ。それも、俺が自ら実験体となり、数日先の未来へと飛ぶ。
これが成功すれば、ゆくゆくは数年先……いや、未来旅行だって夢ではない。この実験には、人類の夢が詰まっていた。
いざ実験を始めようとした矢先、彼女が息を切らして研究室に飛びこんでくる。どうやら、俺を心配して彼女も一緒に実験へ参加したいらしい。
俺は少し悩んだ……が、彼女とは将来を約束しあった仲。この実験を一緒に乗り越えてこそ、絆も深まるというものだ。
彼女と二人、タイムマシーンに乗りこみシステムを起動させる。少し不安そうな彼女の手を、俺はギュッと強く握った。
……覚えている記憶は、そこまで。身体が、異常に熱くなったのを最後に、俺の意識は途絶えた。
目を覚ますと、俺一人。タイムマシーンであっただろう部品と、数十年前の日づけが記載されている、捨てられて間もない雑誌。
未来どころの話じゃない。俺は、過去に飛ばされてしまったのだ。しかも、タイムマシーンも彼女もいない。
一部の部品しかないということは、残りのタイムマシーンは彼女の元にあるのだろうか。
しかし、どこにいるのか場所が分からない。そもそも、同じ年代にいるのかすら怪しい。もしかすると、俺よりもずっと過去まで行ってしまったのかもしれない。
俺は、彼女を探した。最後に握ったあの手。絶対に離さないと、守ってみせると誓ったのだ。
過去の世界で生き抜くために、生まれて初めてバイトも始めた。住所不定の男を、雇ってくれるところなんてほとんどない。だが、運良く気のいい飲食店の店主が、こんな怪しい俺を引き取ってくれた。
衣食住には困らなくなったが、俺の頭の中には常に彼女の存在があった。
今、どこで何をしているのだろう。腹を空かせていないか。住むところもない女性一人、危ない目にあっていないか。毎日、そればかりが気がかりだった。
そんな時、運命を変えるような出来事が起こる。
俺が……過去の俺が、来店したのだ。懐かしい。まだ、学生だった頃の俺だ。
あの頃の俺は、まさかこんなことになるだなんて、思ってもいなかっただろう。涙をグッとこらえて、俺は必死に俺に取り入ろうと奮闘した。
俺の考えていることは、俺自身が一番よく分かる。
俺は俺の信頼を得て、過去の俺はこの店の常連となった。
そして、俺は俺に言われた。
タイムマシーンを作ろうとしている。助手になってくれないかと。
俺は二つ返事で了承した。
タイムマシーンが完成すれば、消えた彼女を探しにいける。そうして、元の世界に帰ろう。彼女と一緒に。
それから毎日、あの研究漬けの日々が始まった。
と言っても、俺にとっては全て過去のこと。タイムマシーンの研究は、順調すぎるほどに進んでいった。
このままいけば、もうあと幾日もしないうちにタイムマシーンは完成するだろう。
高齢とは言わないまでも、中年のおやじと呼ばれるまでは歳をとってしまった。あの日、あの事故さえ起こらなければ。そもそも、タイムマシーンを作ろうとしたこと自体、間違いだったのか。
……よそう。今更、そんなことを言ったって無駄だ。
早くタイムマシーンを完成させ、一刻も早く彼女を探しに行かなければ。
俺に言われた備品を買い足し、研究室に戻ると……俺が、知らない老婆を刺し殺していた。
知らない……いや、違う。俺も歳をとったように、彼女もまた、歳をとっていたのだ。
力なく横たわる彼女。あぁ、こんなおばあさんになって、一体どれだけ過去に……。
そいつ、片付けておいてと言い放つ俺に、俺は言い返す気力すら残っていなかった。
彼女の亡骸を抱きしめ、研究室を出る。
俺たちはやっと、一緒になれたのだ。
もしもそんな機会があれば
あんな初恋、もうしない
もっといい人好きになって
もっと幸せになりたかった
けど、そんな機会ないのだから
私は、その記憶を美化して
心に閉まっておく
それが、1番いい方法だと今は思う
指の隙間から覗いたくらいの未来から、君がどんな子供を孕むのだろうと考える
ぺたんこの腹がぽこっと膨らむのは多分少し不愉快で、でもやっぱりきれいなんだろうと
そう思うだけにして、ひだりの薬指の第二関節をゆっくりとなぞった
【タイムマシーン】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
1/21 AM 8:40
「もしもタイムマシーンがあったとして。
子供の頃に戻って、牛乳いっぱい飲んだり
運動一生懸命したら、わたしも宵ちゃん
みたいなナイスバディになれるのかなぁ」
「……人の体ガン見しながら何言ってるのよ」
「だって~、一緒にお風呂入るの
久しぶりだから~。
見なきゃ損でしょ、宵ちゃんのヌードは」
「あのねぇ……」
「あ、背中流そうか?
ついでに色々触っていい?」
「却下。まったくもう、魘されてた割に
全然元気じゃない」
「……やっぱり、すごく心配させちゃった?
でも本当に、自分ではうなされてるの、
分からなかったの。ごめんね」
「……別に。ちょっと驚いただけで」
「ふ~ん?」
「何でニヤけてるのよ」
「愛されてて嬉しいなぁって思ったから」
「そんなこと言ってないわ」
「言ったも同然だよ?
もー、宵ちゃんったら照れ屋さん」
「はいはい、大好きよ、愛してるわよ。
……これで満足?」
「もうちょっと感情込めて欲しかったけど、
わたしも照れちゃいそうなので、良しと
しましょう」
タイムマシーンが完成した。
しかもこのタイムマシーンは自分の願ったタイミングに行くことができる代物だ。
そこで自分の最期を見に行くことに決めた。
これからどんな人生を歩むのだろう。
このタイムマシーンで大金持ちになるのだろうか。
それとも素敵な女性と巡り会い、その子供たちに囲まれて、最期を看取られるのだろうか。
いやきっと両方だろう、間違いない。
ニヤニヤする口元を抑え、スイッチを押した。
・・・・・・
ドンッ!!
着いた・・・・・・のか?
さっきと風景が変わってない。
・・・時計を見た・・・・・・同じ時間・・・だな?
正確には10秒経っている。
・・・何か違和感、ゆっくりと下を見る。
・・・・・・赤い血が流れ出ていた。
よしっ!成功
・・・ドンッ!!
#8 『タイムマシーン』
さあ、まずは16年前からだ
私は覚えているよ
あの日間違った選択をした
母親に進められた習い事に
行こうとしなかった私
今頃英才教育が花開いてただろうに
お次は11年前
まぁここは良かったのかもな
悩みどこだけど一つ助言できるとしたら
さぼってもいいんだよってことだけ
伝えておくかな
そして次は8年前だ
ここでは言いたいことが山ほどある
細かいことは後でリスト化するとして
一番に伝えるべきは
固定観念は捨ててまずは
いろいろ見てみるといいよってことだな
そして、5年前だ
もっと未来を見据えて行動しててほしかった
後悔ばかりの人生
それでも今それなりに楽しいって思えるなら
過去の選択も悪くなかったのかな
未来に希望があるのは
タイムマシーン開発への期待じゃなくて
自分の変化に対する期待が
胸の中でぞくぞくしてるからだ
#タイムマシーン
非現実的なものを見たとき、自分は呆然とするのではなく、思わず笑ってしまう人間なのだと初めて知った。
目の前にあるものは、時間遡行仮想装置――いわゆるタイムマシンらしい。
搭乗者であるSの反応に構うことなく、開発チームの主任である高齢の女性博士が装置の説明を始めた。
「あんたに乗ってもらうコイツは、私達の最後の希望だ。人が愚かだったのか、臆病だったのか。そんなこたぁどうだっていい。ただ、取り戻したいだけなんだよ。取り戻すための希望がコイツで、コイツを動かせるのはあんたしかいない。だから、あんただって希望だ。分かるかい」
時間遡行仮想装置のラボには、Sが見たこともないほどの人数の大人たちがいた。むしろ、この島にこれだけの大人がいたのかと感心すらしていた。
この時点で、恐らく自分は場違いな思いを抱いている。非現実的な装置を見て笑ってしまったり、大人数を目の前にして感心してしまったりと、内心を知られればふざけているのかと怒られるに違いない。
自分の意志に関係なく、最後の希望とやらを握らされる。真っ当な説明もなしにタイムマシンに乗せられ、大人たちが取り戻したいらしい何かを掴まなければならないらしい。
こんな馬鹿げた話があるか、とSは憤慨した。せめて、取り戻したいものとやらの説明をすべきだ。タイムマシンなどという非現実的なものに搭乗させられるのだ。タイムトリップしたあとの自分の命を果たして保証してくれるのか。
大人たちに問い詰めたいことは無数にあった。
Sが声を荒らげて問おうとしたとき、映像で見たことがあるだけの島の長が穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。
「君が叫びたいことは分かる。私達が何を取り戻したいのか。こんな信じ難いものに乗せられて、自分は生きていられるのか。ああ、全て分かるとも。そして、我々が理解していることが君の叫びの答えだよ」
長に同調するように、大人たちが揃って穏やかな眼差しをSに向けた。眼差しは冬から春に移ろうときに吹く生温い風にも似ていた。濁った春が体の内側を弄っているようで、あまりにも気持ちが悪い。
一刻も早く、この生温く濁った風よ、止んでくれ。
しかし、Sの願いが叶うことはなかった。気色の悪い季節の移り変わりは深まっていき、大人たちは均一な微笑みを浮かべながら拍手し始める。
「一度目の君がその憤りを叫んだ。二度目の君に疑問を知っていると告げたら、絶望のあまり脳波が乱れてしまい、遡行可能なスコアに届かず、仕方なしに圧縮するしかなかった。そこで、三度目の君だ。二度目の君に告げたように、三度目の君にも告げよう」
――短時間の範囲でなら、我々は既に時間遡行を可能にしている。君が私達の思う反応をしない度に、私達は時間を巻き戻しているのだ。時間を遡っても死にはしない。現に、私達は生きているのだから。
腹の底から嫌悪が湧き上がり、Sはそのまま昼食に渡された大好物のドーナツを吐き出した。三日振りに食べたものだったのに。唾液と胃液にまみれたドーナツはあまりにも惨めだ。
「吐くのは初めてだ。もしかしたら今回の君が私達の希望を掴んでくれるのかもしれない」
生温く気持ち悪い視線がどんどん熱を帯びていく。
再びこみ上げる吐き気。Sは喉を締めて迫り上がってくるドーナツの残りをきちんと認識した。今まさに吐き出す、というタイミングで口元に手を当て、形が残ったままのドーナツを受け止める。生理的嫌悪感。一刻も早く手放したい気持ちと、自分に纏わりつく気持ち悪さをまとめて押し付ける勢いで、Sは吐瀉物を長に投げつけた。長の背広に無惨なドーナツがべしょりとくっつく。
「三度目の君はそうなるのか――ふうむ、君の反省を活かして、四度目の君にはドーナツを与えないでここに連れてこよう。私もある程度の憎まれる覚悟はあるが、ゲロを投げられていい気はしないからね」
四度目の自分はドーナツを食べられないらしい。
三度目の自分が大人たちの身勝手な遡行でなかったことにされようとしているのに、Sは四度目の自分によく分からない同情を向けていた。
タイムマシーン
タイムマシーンがあれば、社会の歴史は
課外授業で勉強できる
刀で斬られるのは御免だが
藁草履は履いてみよう
移動手段は徒歩になるが
それなら峠の茶屋で団子を食べよう
病室のドアを開けると、今日も親友はベッドに腰掛け、幸せそうな笑みを窓の外に向けていた。
今日は一体、どの過去に心を置いているのだろう。
最初は運命の出会いだったと語っていた結婚間近の恋人と、次に懸命に支えてくれた両親と、最後に辛抱強く待ってくれていた新しい恋人と……ショッキングな離別を三度も経験した親友は、現実に生きることを放棄してしまった。
無力な自分がひたすら腹立たしかった。例えば何度声をかけても、ずっと過去を生きている親友にはなにも聞こえていない。担当医もいろいろと手を尽くしてくれているが、傍目には変化がみられない。
「でも、あなたにとっては現実に戻るほうが苦しいんだよね」
わからなくなる。少しでも長く生きてほしい、またお互いに笑い合いたいと願っているからこそ、毎日少しでも回復するようにと祈っている。
親友にとって苦しいのは今だけ。治ればきっと——でも、それは本当に?
いったい、親友の未来はどうなっているのだろう?
自分こそ、今すぐタイムマシーンを手に入れて過去に戻りたい。
親友に降りかかる不幸すべてを振り払ってあげたい。
数日前花瓶に生けた花を捨てて、新たな花を挿す。
「花の世話するの好きだったのに、また、枯れてたよ」
響いた声は、それだけだった。
お題:タイムマシーン
『タイムマシーン』
未来に行く?過去に行く?
未来を見て幻滅したらどーしよ
過去に行って何を変える?
今までの生き方を変えて
未来が幸せとは限らない
人生一度きりだからいいじゃない
後悔しない選択をして
間違えたら修正して
死ぬ時に幸せだったなって
思えたら結局OK!
だから私はタイムマシーンなんて必要ない!
変えなくていい。知らなくていい。
私の幸せは私の生き方次第だから