『タイムマシーン』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「例えばさ、過去とか未来に行けたとして」
急に話しかけられ、ぴくりと肩が跳ねた。
視線を向けるが、彼女はテレビを見たまま。テレビを見れば、ちょうどタイムマシーンで過去や未来に行くドラマが流れている所だった。
「どうしたの?」
問いかけるが、返事はない。それきり彼女は何も言わずにテレビを見続けていた。
それほど引き込まれる話なのだろうか。そんなことを思いながら、手早く洗い物を終えて彼女の隣に座る。けれど彼女の表情は、テレビから目を逸らさずにいるものの、とても退屈そうに見えた。
「つまんないね。この話」
「見てないから分からないけど、つまらないなら見なければいいのに」
「だって退屈だから」
退屈を紛らわそうとして、退屈なテレビを見ている。そんな矛盾した行動に苦笑しながら、テレビを消した。
それに彼女が何かを言うことはない。ただぼんやりと、消えたテレビの黒い画面を見つめ、何度か瞬きをしてこちらに視線を向けた。
「過去とか未来に行って何かを変えた所で、意味はあると思う?」
問われて首を傾げる。仮想の話を気にするなど、彼女にしては珍しい。
「意味があるから、過去や未来に行くんじゃないの?」
意味がないのなら、行く必要はないはずだ。そう答えると、彼女は僅かに眉を寄せ画面の消えたテレビを一瞥する。
「そっか。意味があるって信じてる場合もあるのか……」
「どういう意味?」
「だって何を変えたって、今は変わらないじゃない」
今は変わらない。その意味を分かりかねて眉を寄せれば、彼女は例えば、と宙を見ながら告げた。
「テレビの話だけれど、過去に行って恋人の危機を救うとするでしょ。テレビの中じゃ、きっとこの後元の時間に戻って二人は結ばれるんだろうけど、そんな奇跡なんて起きないから。過去にいなくなる誰かをその時点で救っても、別の時間で同じことが起きるだけ。未来も同じ……というか、未来に干渉した所で、今に影響はないでしょ?」
「そうなの?」
「そうなの……運命っていうのかな。人には、そういった初めから決められたものがあるみたい」
どこか遠くを見る彼女の横顔は寂しげで、泣くのを耐えているようにも見える。話題を変えるべきかと口を開きかけ、けれども何かを言う前に彼女はこちらを向いて微笑んだ。
「ね?それを知っていると、過去や未来に行く話なんてつまらなく感じるでしょ?」
「まあ、確かに。干渉しても変わらないなら、空しいだけかもね……じゃあさ、干渉するんじゃなくて、干渉されるとしたら?予知や宣託を受けて、訪れるはずの結果を変えることもあるだろう?」
それも意味がないことなのだろうか。静かに目を見返すと、きょとりと幼く瞬いた目が、次第に楽しげに細められていく。
くすくすと笑う声。小首を傾げ、彼女は当然のように囁く。
「見たもの、告げられたものが、本当に未来の出来事なんて、誰にも分からないよ。夢で見たものは所詮は夢。現実にとてもよく似ているから、そうなりたければ行動を近づけて、逆になりたくないのならば、遠ざけるように行動する。誰かから告げられた言葉もそう……行動を起こすための理由に使われる、都合のいいものってだけ」
「え……?」
思わず、彼女を凝視する。今までの彼女からは、出てくるはずがないと思っていた言葉だった。
「何?変な顔して」
「いや。だって、宣託を大事にしていただろ」
「大事だよ。とっても大事……前に進むことができる理由になるもの」
小さく呟かれた言葉に、息を呑んだ。
彼女が過去を見ず、前を向いている。その変化がすぐには信じられない。
彼女は長い間、過去から抜け出せずにいた。ここにいる理由でさえ、その過去から宣託を受けたのだと言っていたはずだった。
――未来で再会するために、今を生きる。
彼女はそれ以上を語らない。それ以上の理由が必要だとも思わなかった。
幼い頃から一緒にいた幼馴染が、もう一度隣にいてくれる。過去だけでなく、今を見ている。
自分にとっては、それが重要だった。
「あんまり、じろじろ見ないでよ」
「だって……まるで、過去よりも今の方が大切に聞こえるから」
「聞こえるんじゃなくて、そう言ってるの。過去を忘れたわけじゃない。でも未来にまで過去を引き摺ることが苦しい時がある……過去や未来のような遠いものに手を伸ばすより、今と手を繋いでいる方が幸せなんだって、気づいちゃったから」
目を逸らしながら彼女は言う。落ち着きなく手が服の裾を弄っている。
何かを誤魔化す時の、彼女の昔からの癖だ。じわじわと赤くなっていく顔を見ると、途端に悪戯心が沸き上がってくるのは、自分の悪い癖でもあった。
「今気づいたの?それとも大分前から?」
「い、いつだっていいじゃないっ!」
耳まで真っ赤になってしまった彼女の頬を、笑いながらつつく。ぺしりと指を払いのけ、拗ねた顔で背を向けられて、耐えきれずくすくすと笑い声が漏れた。
「っ、ばか!最低!」
「ごめんごめん。お詫びにさ、明日どこかに出かけようか」
背を向けたままの彼女に声をかけるが返事はない。
またやってしまった。悪い癖だと自覚しながらも治らないことに、密かに嘆息する。静かに立ち上がりながら何気なくテレビに視線を向け、彼女との話を思い出す。
もしもタイムマシーンがあったのなら。それで過去に行けたのなら。
確かに意味はないのだろう。過去に行き、彼女と初めからやり直しても意味はない。傷をつけないように動いた所で、きっと彼女は別のどこかで過去に手を伸ばし出すのだろう。
「――なら、いいよ」
「え?」
不意に小さく聞こえた声に、彼女を見る。微かに涙を張った目をして、彼女はこちらを睨みながら呟いた。
「だから、明日水族館に連れて行ってくれるなら許してあげるって言ってるの!」
彼女の言葉に目を瞬き、しっかりと頷いた。手を出せば当然のように繋いでくれることが嬉しい。
「分かった。じゃあ、明日は朝から水族館に行こうか。せっかくだから他にも色々な所に行こう」
「仕方ないから付き合ってあげる」
素直でない彼女に、小さく笑う。まだ拗ねた顔をしながら彼女はこちらを見つめ、同じように笑った。
「なら、明日は寝坊しないでね。タイムマシーンなんてないんだから、過去に戻ってやり直しなんてできないよ」
「そっちこそ寝坊しないでよ!タイムマシーンがあったとしても、使わせてなんかあげないんだから」
目を合わせ、笑い合う。繋ぐ手が暖かい。
この温もりを離してまで、過去に戻る意味は確かにないだろう。
そんなことを思いながら、繋いだ手を離さないようにきゅっと握りしめた。
20260122 『タイムマシーン』
「タイムマシーン」
たまにこの人はひょっこり未来にやってきてしまったんだろうか、と思うことがある。
この世にはいろんな人がいるというがコンビニの店員をやっていると身に染みて実感する。
勝手に名札を見て親しげに名前を呼んでくるセクハラジジイ。
「あら、これ孫が好きなキャラクターの。これくれるの?え?お菓子買わないともらえないの?ケチねー」と勝手にキャンペーンの商品を持っていこうとするババア。
なんも聞いてないのにマッチングアプリでどんな子とデートしただの、女優が整形しただの、雑談の話題が終わり散らかしている常連ジジイ。
それが許されてた前時代から間違ってタイムマシーンに乗ってしまったんだろう。前世が虫だった可能性も捨て切れないけれど。
そういう人たちはきちんと元の時代に帰さないといけない。
この時代にそぐわない考えや価値観を持っていては生きていくのが難しい。
これは優しさなのだ。私はジジイをタイムマシーンに乗せて扉を閉めた。
タイムマシーンに乗って、和室で泣いている小さな私の味方になってあげるんだ。窓の外から、バカにしてる男子2人を、追い払ってやる!テレビのある部屋にいる両親には、「娘が泣いてるのに、なんで助けないんだ?」1人で乗り越えなきゃいけないんだっていうけど。その前に、助けてあげなきゃ。昔から、いじめられてたの、知らなかったのかな?かわいそうじゃん。かわいそう。なんで助けてあげなかったのよ!倒れるまで説教して、バカじゃない?そんなに父親が怖かったのかな?今では、優しいみたいだけど。だから、良かったよ。だけど、今の私なら、怒るね!男子2人に塩まいて、両親にも塩をまく!妹にも怪我させて!塩まく!あの脅迫した気持ち悪いやつ、塩まいてやる!厳しい中で生き抜いた私、偉い!
「貴方の涙が溢れる前に。」
貴方はいつも教室の端の方で泣いていた。
黒くて肩の下程まで伸びた髪の毛が嗚咽に合わせて揺れていた。
貴方の側には誰もいなかった。
あの頃の貴方には肩を優しく掴む友達も背中を優しく擦る友達も、なにも聞かずに側にいてくれる人なんていなかった。
一人きりだと寂しく泣く貴方は暗い顔をしている。
貴方から目が離せなくなったのはいつ頃だっただろう。気がついたら貴方を見つめていた。
僕が貴方の側に居れたのならば貴方も僕も少しは幸せだったかもしれない。
でも、出来なかった。
恥ずかしかったんだ。
貴方に瞳に僕が写ること。
ごめんね。僕が弱かったから。
あの頃から三年が経った。
貴方は幸せにやっているだろうか。
いつかまた会いに行かせてほしい。
胸を張って「大丈夫」だと無責任に言えるようになったら。今はまだ心からの「大丈夫」はでてこなさそうだけど。
「貴方の涙が溢れる前に。」
世界が待ち望んだタイムマシーンがついに完成した。
記念に抽選で当たった人に無料試乗を提供するとのことだったので試しに応募してみたら、まさかの大当たり。
それでこの間、試乗に行ってきた。
けど、今と違う時間を見るって、そんなにいいもんじゃなかった。
過去は記憶にあるくらいがちょうどいいし、未来も思い描いているだけのほうが、生きる理由ができていい。
それに思ったんだ。
お前と生きてる「今」が一番幸せなんだって。
【タイムマシーン】
タイムマシーン
時間の継ぎ目に
そっと置かれた銀の箱
触れた指先が震えるのは
未来よりも
過去のほうが重いから
ひとつ蓋を開ければ
忘れたはずの声が
埃のように舞い上がり
胸の奥で
まだ名を呼んでくる
進むために
戻りたくなる夜がある
戻らないために
進みたくなる朝もある
タイムマシーンよ
もしも私を運ぶなら
昨日でも明日でもなく
“いま”の少し手前へ
心が追いつける場所へ連れていけ
そこに置き忘れた
小さな勇気を拾ったら
私はまた
今日を始められるから
眞白あげは
しんとした空間に密やかな振動が起こる。シャーペンを走らせていた手を止めて、君が画面を覗き込んで笑った。
――ごめん、行くね。
小さな声で囁いて君が荷物をまとめ始める。聞こえない振りをすると、君はさっきより近づいて
――ごめん、行かないと。
と肩に手を触れる。あたたかな息が耳の後ろにかかる。
辞書のたくさん並んだ書棚のあたりを見て、私は聞き分けよく頷く。
放課後の図書室で背中をまた見送った。タイムマシーンがもしもあったら。あの子より先に出会っていたら。あんなふうに君を呼び出すのは私だったのかなとか思う。
『タイムマシーン』
※この物語は最後まで見ることを推奨しています。
「また会社で失敗してしまって…ほんと、消えたい
気分ですよ…(笑)」
「そうなんですね…では…これからとある話をしますね。これは最近、私が体験した話です。」
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私は仕事帰り、いつも通り改札を抜け、駅の出口に向かって歩いていました。暗くなってしまった静かな夜の中、星がきらきらと輝いていたのを覚えています。
大きい通りへ出て、住宅街に入りました。
時刻は20:12分、その日はかなり早く帰れた方でした。
今日は何のドラマを見ようかな〜…そんなことを
考えていると、公衆電話が見えてきたんです。
だけど、問題は公衆電話の横にあるものなんです。
「え…タイムマシーン…?」
この世界は好きなタイミングでタイムマシーンが
使える。一応戻れるのは自分が生きているときの時代のみだ。
「え、普通コンビニの横とかじゃないの?
なんでここにあるんだ?」
通常であれば、コンビニエンスストアや公園の近くに設置してあるが、ここは公園もなければ学校もない
ただの辺鄙(へんぴ)な住宅街。
「公衆電話の横って珍しい…変なところにあるなぁ…
なんか設定とか、入ったときの雰囲気とかが違うからここに設置してあるのかな?」
私は中の構造がどんなものなのか気になり、
重たい鉄製のドアを引っ張り、中へ入りました。
開けた扉を閉じて、機械の中を見渡したんですけど、
普通のタイムマシーンと変わんない気がしたので
出ようとしました。
扉に再び手をかけたその瞬間、視界の中にあるものが入ってきました。
日記のような小さなノートがあってその場でしゃがんでノートを手に取りました。
そのノートには「管理ノート」と書いてありました、
修理人が置いていったんでしょうかね…
中をパラパラと開くとこんなものが書いてあったんです。
「XXXX年X月X日 扉のサビ部分を修理
XXXX年X月X日 異常無し
XXXX年X月X日タッチパネルの汚れを除去
XXXX年X月X日 異常無し」
などとこのタイムマシーンの点検をまとめたものでした。「なーんだ…面白いものが見れると思ったのに…」
次のページをめくると同じような内容。
その次のページも、またその次のページも。
1番後ろのページをめくると違う内容が書いてありました。
「利用者記録
XXXX年X月X日 〇〇 〇〇さん
XXXX年X月X日 △△ △△さん
XXXX年X月X日 ✕✕ ✕✕さん」
記録された人数が少ないということはきっとこの
タイムマシーンの利用者記録を付け始めたのは最近
ということ…いや、修理のページがかなり多いから、きっとこれまで利用した人数がそもそも少ないのでしょうか。
下まで見ると「※タッチパネルの修理マークを押すと
詳細を見ることが可能」と書いてありました。
つい興味が出てしまい、タッチパネルのある方向を
向き、画面を押し、操作を進めました。
「へぇ〜…タイムマシーンを使った理由が見れるんだ…なんだか悪いことしてる気分…」
上から順に、
「XXXX年X月X日 〇〇 〇〇さん
過去の失敗を成功に変えるため」
(あ〜…よくあるパターンね…)
「XXXX年X月X日 △△ △△さん
母親の死を止めるため」
(たまにあるやつか…)
「XXXX年X月X日 ✕✕ ✕✕さん
友人を殺すため」
(えぇ…こっわ…)
合計3人しか記録されていなかったです。
点検のページが多いのは、ずっとここに設置していたから。利用者数がこんなにも少ないのは変な場所に
置くから、きっと誰も入りたがらなかったからでしょう。
タッチパネルの1番下に赤い文字で、
「関係者以外、この詳細を見たものは1週間以内に
誰かにこの話題を話さないと死ぬ。
誰かにこの話をしたら語り手は死を逃れられるが、
その代わりに聞き手が死ぬ。」
変なものを見たと思い、そのあと私はタイムマシーンから出て、家へ帰りました。
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最初にも言った通り、これは私の実体験の話です。
少し話題を変えますね。
ところで、なぜわたしがこのはなしをあなたにしたかわかりますか
テーマ 「タイムマシーン」
題名 「耳にすれば最期」
タイムマシーン
今日は父の誕生日
生きていれば何歳だっけ
即答できなくてゴメンネ
昭和ひとけたの人だから生年月日が出生日と
あっていたかも疑わしい
それでも今日タイムマシーンってお題をもらったのは何かの引き寄せかもね
実母との縁が薄かったのが性格に出ていた父
母親の愛に飢えていた寂しがりやさんだった
「タイムマシーンに乗ってお父ちゃんの出産に立ち会ってきたよ
私が生き証人だよ
おばあちゃんに抱かれた瞬間をみてきたよ」って…
父の人生のスタートを焦がれていた母親の温もりで包んであげたいの
誕生日のサプライズプレゼントを持ち帰るから
じゃあ出発するね〜
「タイムマシーン」
2回目という圧倒的有利な状況で進んでゆく人生、あの時と選択が変わるだけでこうも良い方向に変わるものかと実感していた。しかし昔に戻る前にあった大切なものは今の自分にはないということにも気づかされるのであった。
「タイムマシーン」
睡眠を取らなくなって約一ヶ月は経つだろうか。研究室に引き篭って何事かをしている時郎は、昼も夜も分からないカーテンを締め切ったままの部屋の中であらゆる工具をこねくり回りしたり、資料の山を漁ったりして日々を過ごしていた。がらくたとなった機会の部品に寄っかかったまま、時郎は数ヶ月前の月のまま変わっていないカレンダーを目を眇めるようにして横目で一瞥した。
─頭が重い。
今まで蓄積してきた分のツケが遂に回ってきてしまったのか、今日は今までよりも─彼に日数という概念はないに等しい─頭が重く、変な風に痛んだ。
─流石に眠らないと駄目か。でも……。
時郎はしばらく逡巡した後、大きく息をついて蹌踉とした足取りで研究室の一角にある仮眠のための粗末なベッドに横になった。次第に瞼が重くなっていき、やがて視界が真っ暗になると、ふと過去の記憶が脳内に蘇ってきた。
普段の時郎は夢や過去の記憶を見ることが全くない─見ないように意識しているために、時郎は夢や過去の記憶を見ることに対しての耐性がついておらず、多少の不快感を覚えたが、今は長時間の睡眠不足により脳が麻痺していたために、時郎はふとその過去の記憶に浸かってみる気になって瞼を閉じた。意識が段々と輪郭を失っていくのが分かる。
睡眠不足で霧がかった時郎の脳内に浮かんだのは、時郎のよく知る人物だった。時郎の唯一の友人で旧友であった時子が、目の前で畳の上に座り何かの分厚い図鑑のような本を熱心に読んでいる。
「時子……姿勢が悪いよ」
時郎の注意に、時子はいつも通り子供らしかぬ艶笑を浮かべて時郎を見つめた。
「ごめんなさい……でも、面白いものを見つけたのよ」
時子は本を抱えたまま時郎に手招きした。時子は隣に座った時郎に肩を寄せ、床にあるページを開いたまま本を置いた。
「これよ」
時子が指さすところを覗き込むと、そこには「タイムマシーン」と見出しが書かれていた。時郎は首をひねり、この「タイムマシーン」なるものの面白味を模索しようとした。
生来文字の羅列が苦手な時郎には、時子の読んでいる本の面白さも本を読むという行為自体の面白さも理解ができなかった。
「「タイムマシーン」。これを使えば、過去にも未来にも行けるのよ。凄いでしょう」
「過去、未来?」
「そうよ。私達が今生きてる時代よりもずっと前の時代にも行けるし、今の時代よりも更に先の時代にも行けるなんて……ロマン溢れる夢みたいな道具だわ!」
時子は天井を仰ぎ、夢見心地な表情でうっとりとしている。時子はこんな幻想的で抽象的なことを信じているのだろうかと、幼少期の時郎にはその表情や仕草が非常に不思議に見えて仕方がなかった。
「将来こんなものができれば、私、絶対に未来に行くわ」
「どうして」
「大きくなった時郎に会いに行くのよ。時郎はどっちに行きたい?」
時子は首をかしげて時郎の目を覗き込んだ。
「僕は─」
ばち、と目が覚めた。随分と長いこと寝てしまったようだった。大して柔らかくもないシーツに身を預けたせいでより身体の節々に痛みを感じたが、何故か頭だけはすっきりとしている感覚がする。
ベッドから起き上がると、部屋が真っ暗なことに気が付いた。カーテンを締め切っているせいか、余計に暗く見える。時郎はシーツにくるまったままボタンのスイッチを押しにいった。
スイッチを押すと、数秒の間の後に目の奥を突き刺すような光が灯った。目の奥がずきずきと痛んで眉間に皺が寄った。
「……そうだね、僕は……」
時郎はシーツを丸めてベッドに投げると、部屋のほとんどを占領している大きな機械に近寄った。機械に触れると、心地よい金属の冷たさが指先に伝わってくる。機械の周りには、その機械をあらゆる面から写したぼろぼろの設計図が大量に散らばっている。その雑多の中に、光を反射して煌めく何かが置いてあるのが時郎の目に入った。
痛む腰を守るように慎重にしゃがみそれを手に取ると、それは木製の額縁に入れられた写真立てだった。中にはフレームの硝子越しに笑っている時子の写真が入っている。隣にいるのは……時郎だろうが、硝子の上から黒く塗りつぶされていて分からない。
「僕は……」
時郎は硝子に全力を込めて指を押し付けた。指が潰れる感覚がし、ぱきんと硝子が放射状に砕けた。押し付けた指の腹に、少しの痛みとざらざらとした感覚がする。時郎は指の腹をフレームの縁に擦り付けて砕けた硝子を落とし、写真立てを埃を被った机の上に伏せて置いた。
「僕は─「過去」に行くよ、時子……」
─君がまだ生きていた、あの「過去」に……。
時郎は機械に寄りかかって、深く頭を項垂れた。
タイムマシーン
「ねえ、タイムマシーンに乗れたら、どこに行きたい?」
リビングのソファでくつろいでいると、唐突にキミに聞かれる。
「え?急にどうしたの?」
「今読んでる小説の内容が、タイムマシーンに乗って、過去と未来を変えようとする奴らの陰謀を阻止する。って感じなの」
「へえ、そうなんだ」
だから、聞いてきたのかな。と納得し
「俺はタイムマシーンに乗れたとしても、どこにも行かないよ」
俺の考えを答える。
「え、どうして?過去に行って、歴史上の人物に会ったり、未来の自分に会ったりできるよ?」
俺の答えが意外だったのか、キミはそう言うけれど
「だってさ、過去や未来に行って、今が変わったらイヤだから。キミといる今の幸せが、なかったことになるのは辛すぎるでしょ」
俺がそう答えた理由を話すと、キミは俺に抱きついたのだった。
ーーもし、タイムマシーンがあったら…。
考えると、私はとても怖くなる。
未来にいくのは良い、『過去にいく』のが怖いのだ。
想像する。
過去の『過ち』を無くそうと、過去に戻ることを。
けれど、その『過ち』は誰かにとっては過ちではないかもしれない、
むしろ、都合が良いことかもしれない。
すると、そこで争いやいざこざが起きる。
タイムマシーンを使えるのが、世界で自分一人だけなら良いと思った。
でもそれはそれで、まるで『神通力を得た英雄』のような気持ちになってしまい、自分ひとりの都合だけで使うことに良心を痛めるだろう。
3回だけ使える、というような回数制限付きのほうが有難い、それなら大歓迎だ。
ここまで考えて、タイムマシーンが存在することは面倒くさいという結論になる。終わり。
間に合うか分からないのでスペース確保で🙌🏻
終わったら出します
題材【タイムマシーン】より
タイムマシーンに乗れるなら。
過去に戻りたい。
そして、ずっと君の隣にいたい
【タイムマシーン】
愛媛県公式『インターネット安心安全ガイド』内、子どものための、家庭でのスマホ利用ルールの例から抜粋。
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・学校のルールを守る。
・知らない人からの着信やメールは無視し、返信しない。
・SNS等に書き込むときは、悪口やうそなど無責任なことを書き込まない。
・自分や友だちの名前や住所など個人情報は書き込まない。
・インターネットで知り合った人と実際に会わない。
・夜の9時以降はスマホを使わない。
・食事中や人と会話しているときに、メールしたりネットを見たりしない。
・困ったときはすぐに相談する。
など
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パッと見て、多くの危険を防ぐことができる良いルールに思える。言葉の定義を厳格にすれば、穴も塞げそうだ。反面、このルールに則ってインターネットを使っても、少しつまらないような気はする。
1項ずつ見ていく。
>学校のルールを守る。
実質は意味のない条項かもしれない。学校の顔を立てて設けた項目のようにも思える。
>知らない人からの着信やメールは無視し、返信しない。
迷惑メール、勧誘等の電話への予防と思われる。
少し修正したい。
知らない人から着信やメールがあった際には、インターネットで検索、または保護者に照会し、安全な連絡先であることが確信できる場合のみ応答、返信をする。
なお、知らない人との電話、メールで発信可能な内容は、下記、「SNS等に書き込むことができる内容」と同様とする。
>SNS等に書き込むときは、悪口やうそなど無責任なことを書き込まない。
少し追加したい。
SNS等とは、「SNSおよび自分以外の他者が閲覧可能な場」をいう。「投稿時には自分のみが閲覧可能であるが、今後他者の閲覧ができるようになる可能性がある場」も、「自分以外の他者が閲覧可能な場」に含む。
なお、SNS等に書き込むことができる内容は、下記の条件を全て満たすものとする。
・個人情報を含まないこと。個人情報とは、「自分、または他人の、住所、氏名、電話番号、サービスのパスワード、年齢、性別、およびそれらを推測できる情報」のことを指す。
・悪口を含まないこと。
・意図的な嘘を含まないこと。なお、ハンドルネームを使用することは嘘に含まれず、むしろ必須である。また、楽しむことを目的とした創作など、明らかにフィクションと分かるものについては、嘘とは別物であるとする。
・いかなる契約についても、結ぶ旨を含まないこと。特に、金銭や財物の受け渡しを行う旨を含まないこと。
>自分や友だちの名前や住所など個人情報は書き込まない。
上記、「SNS等に書き込むことができる内容」に記したことと重複する。
>インターネットで知り合った人と実際に会わない。
下記の文を追加したい。
「なお、自らの保護者が同伴する場合は、保護者の判断のもとインターネットで知り合った人または「知らない人」と会うことができる」
>夜の9時以降はスマホを使わない。
幼い子にはそのままでよさそう。
個人的には、「スマホの使用は、夜間に8時間以上の睡眠時間を確保できる範囲で行う」としたい。
>食事中や人と会話しているときに、メールしたりネットを見たりしない。
それぞれの家庭で譲れないルールというものがあるだろう。このルールもその一種だといえる。
>困ったときはすぐに相談する。
ルールに穴があったときの救済措置として有効だと思う。なお、困ったときかどうか自分で判断がつかないときは、困ったときであるとする。
全項目見終わったけれど、もうふたつ、項目を追加したい。
・このルールは必要に応じて、またスマホ使用者の年齢に応じて改正する。
・このルールは、ある年齢(成人に達したときなど)において完全に撤廃し、その後は自己の判断により行動する。
ちょっと厳しすぎるなー。
「好きですっ、付き合ってください!」
振り絞った僕の言葉に、軽く頷いて笑ってみせた彼女ーー早川美波と僕が迎える、一度目の夏だった。
「それで、河野くんは夏休みの予定あるの?」
「いや、特には。早川さんは?」
「あたしもー。そだ、一緒に夏祭り行かない?」
「あのーー僕はいいけど、早川さんって花火嫌いじゃ?」
僕の言葉に早川さんははにかんで、それから「まぁね」と答えた。
そうして迎えた夏祭り。早川さんは浴衣姿が美しかった。簪を挿したお団子だから、うなじが見えてどこが淫靡でさえあった。
「ほら、河野くん!綿あめ買いに行こっ」
彼女の方から手を繋いで、あれやこれやと引っ張られて連れ回される。リードも何もないけれど、天真爛漫な早川さんが可愛かった。
「はい、嬢ちゃん。ガム一個ね」
祭りが始まってから30分は経っただろうか。早川さんと射的をしていれば、僕の予想に反して5発中2発も当てた。どうだと自慢げの早川さんに、僕は素直に称賛の言葉を伝えた。店主が僕らを微笑ましげに見ていた。
そして、最後に僕に花火を見た。土手に座り込んだまま空を見上げ、五月蝿いからと耳を塞ぐ早川さんの口を塞いだ。
驚いた様子の早川さんだったけれど、すぐに積極的にキスを返してくれた。
つぅと糸が引いて、僕は少し赤らんだ早川さんの顔をまじまじと見る。
「早川さんーーいや、美波さん、好きだよ」
美波さんの返事も待たずにがばっと抱きしめると、耳元で柔らかく「私も瑞貴くんが大好きだよ」と言ってくれた。
あの夏祭りから1ヶ月が経ったころ、僕らは別れる羽目となった。どうやら僕に問題があったらしい。美波は教えてくれなかったけれど、なんとなく判った。
絶望している僕の元へ、怪しげな商人が来た。なんでも、何回でも使えるタイムマシーンがあるのだとか。値段は高かったが、やり直してから返すと言えば承諾してくれた。
そうして、僕と美波の迎える2度目の夏が来た。
同じ日々を繰り返す。僕は美波に振られ続け、やり直しを繰り返す。いつだって美波は僕のどこが悪いのかを教えてくれない。気持ちは決まって夏祭りの一月後だった。
僕がどれだけ美波の好みを知り尽くして、してほしいことを先回りできても、美波には届かない。
これでもう、何度目の夏だろう?1000を超えてから数えることをやめた。
今日は美波に振られる日だ。いつも通りGPSを確認して、それからメッセージも見る。ちゃんと真っ直ぐ来てくれているようだった。何回と同じことを繰り返しても不安で仕方がない。
漸く姿を現した美波は、好きになった頃とは違って窶れていた。それが余計に好きだった。
「ごめん……いきなり話したいことがあるなんて」
これも一語一句違わず聞き続けた台詞。僕は笑って「そこのカフェで聞いていい?」と指し示した。
美波は下を向いて、それから小さく頷いた。別れると判っているけれど、まだ美波は僕の彼女だ。だから、ぎゅっと腰を抱き寄せ、僕に寄りかからせる。このぬくもりを失いたくない。
「それで、話って?」
「そのーー別れてほしいの」
「ん、いいよ」
僕があっさりと認めると、美波は一気に顔をあげた。その顔には嬉しさというより疑念が渦巻いているように見える。
「え、そんなあっさりーー?」
美波が驚くのも無理はなかった。確かに1度目の頃は泣いて、縋って、何でもするからと繰り返していたし。
「まぁ、美波の選んだことだから。でも、理由だけ教えてくれない?」
どうせ駄目だろうと諦めつつ訊いてみると、なるほど。初めて理由が判った。
「だって、瑞貴……重いから……」
「重い?」
酔狂な声が出た。重くなんてないと思っていたから。詳しく問えば、スマホのGPS共有、予定カレンダーの共有、誰と何をどの程度話したかの共有あたりが該当するらしい。
僕は「ありがとう」と言って、席を立った。勘定を済ませて、例のマシーンに乗り込む。今度はもっと前ーー美波が小学生の時に戻ろう。そこで僕は美波に正しい愛を教えなくては。
それから、そこに戻れば投資で借金もチャラになるだろうし。
待っててね、美波。僕が報われて、2人で幸せになれる日はすぐそこだよ。
タイムマシーン
ドラえもんいないかなあって、
机の引き出しを開ける癖が未だになおらない。
今年で10年目。
19世紀、ある科学者が時を渡る術を発見した。
行き先は21世紀。その頃の地球は、ひどく困窮し、争いの絶えない酷い状態であった。
科学者は帰ると、今度は、地球を救う術を探し始めた。
結果、その術は見つからなかったが、彼の行動のお陰で現在の地球は彼が見たほどのものではない。
たった一人の行いが未来を変えたのだ。
あー、やり直したい。時間を巻き戻せたらと思う。ひょいとタイムマシーンに乗って、その時に戻る。でも、また同じことを繰り返す。たとえそこを回避できたとしても、結局同じ結果が待っている。
なんかそんな気がする。そもそも自分が変わっていない。心の準備ができていない。それなら、時間がだいぶ経ってから、またやり直す? その頃には、なんでやり直そうと思ったのか忘れているかも。戻れないから、いいのかもしれない。
「タイムマシーン」