未知亜

Open App

 しんとした空間に密やかな振動が起こる。シャーペンを走らせていた手を止めて、君が画面を覗き込んで笑った。
――ごめん、行くね。
 小さな声で囁いて君が荷物をまとめ始める。聞こえない振りをすると、君はさっきより近づいて
――ごめん、行かないと。
 と肩に手を触れる。あたたかな息が耳の後ろにかかる。
 辞書のたくさん並んだ書棚のあたりを見て、私は聞き分けよく頷く。
 放課後の図書室で背中をまた見送った。タイムマシーンがもしもあったら。あの子より先に出会っていたら。あんなふうに君を呼び出すのは私だったのかなとか思う。

『タイムマシーン』

1/23/2026, 9:44:35 AM