『ジャングルジム』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
〜
そして夜が明けて、明日がやってきた。
けれども明日は訪れた途端に今日に変わってしまった。
次の日もまた次の日も明日は来なかった。
私は永遠に今日に閉じ込められて、そこから一歩も動けなかった。
〜
そして今日も私はここにいる。
明日になったら何をしようか?なんて架空の明日を夢想しながら。
詩(お題)
『ジャングルジム』
ジャングルジム
そこはまさに野生の森だった
弱き子供は
撤退するしかなかった
ジャングルジム
それはまさに人生の予言だった
ゆずるばかりで
逃げ続ける情けない俺だ
ジャングルジム
ジャングルジム
せめてそこのてっぺん登って
月じゃなく
太陽をつかんでみたい
「登ってみろよ!ノロマ!!」
「お前なんかにこっち来れるかよ!ははは!!」
ジャングルジム。それは力あるものが上へと進み、力の無いものは下の方にいるしかない。上に行けば行くほど落ちた時の危険は上がる。ただそれでも皆、上を目指す。だが、なかには他者の影響を使って上がる者もいる。ジャングルジムの上を眺める私は幼いながら社会とはこのようなものなのかもしれないと思っていた。
月日が流れ、自分はごく普通のありふれたサラリーマンとなった。会社も社会もジャングルジムと同じだ。しかし、違うところもある。それは全て実力であり、結果のみが答えにしかならないということだ。力なく登ったように見える人にも他者を味方につけるという別の力があり、登ったものが何らかの影響で落ちたのなら、その時見た高さが過去関係なく結果として見られる。未だヒラで結果を出せてない自分はジャングルジムの競走にも参加出来ていない。登るということは踏み台にされる危険性もあるということを孕んでいる。
仕事に、人間関係に疲れた私は夜の公園でジャングルジムに登った。さすがに子供がいる時間に大の大人が占有するのは気が引けた。上から見た景色は子供の頃よりもちっぽけに見え、ビルが建ったからか狭苦しく感じた。それでも心のどこかで何かから解放されるかのような安心感を感じた。今この瞬間子供だったのなら、ジャングルジムの頂上という抗いがたい魅力の虜になっていたことだろう。
ジャングルジム
何もかも、上手く行かなくて、
全部、嫌になっちゃった時は、
庭の片隅にある、
大きな木に登るんだ。
大人になって、木登りなんて、
誰もやらないから。
此処はボクだけの、
秘密の場所。
公園で遊ぶ子供達が、
ジャングルジムに登る様に、
ボクは、慣れた身の熟しで、
木に登っていく。
高い木の上から見ると、
嫌になった事なんか、
ちっぽけに思えて。
少しだけ元気になれるから。
そして、ボクの足元には。
突然姿を消したボクを、
心配そうに探してる…アイツの姿。
一番早く、ジャングルジムの
一番上迄登った子供の様な、
不思議な優越感に浸って。
ボクは、木の上から、
ボクを探す、アイツを眺めて、
こっそり微笑むんだ。
「ジャングルジム」
ここだった思い出の場所は
私「ねぇ!いつもここに居るの?」
君「うん、僕一人だから」
私「ひとりじゃないよ!私がいる!」
君「え?遊んでくれるの?でも、僕男なのに可愛い
から気持ち悪いでしょ?」
私「気持ち悪くなんかないよ!可愛いのっていい
じゃん!素敵!実は私もさ、女なのにかっこい
い格好するなよって言われてるんだぁ」
こんな会話から友達になり君と私はいつも一緒にここの公園のジャングルジムでお話をしながら遊んでいた。
気ずけば、私は可愛い君に友情では無く愛情を抱くようになっていた。
この気持ちを君に伝えたらもう友達じゃ居られなくなるのかな?私はずっと言えず時はすぎ私と君は高校生になっていた。小学生の頃から君といるけどやっぱり君は可愛い男の子で私の好きな人だ。
そんなある日君は学校に来なくなった、私は心配して君の家に行った。
でも君のお母さんが「少しの間休むだけだから心配しなくていいわ。」と会わせてはくれなかった。
君が居ないと学校に行く意味が無いじゃないか。
会いたい。
そんなある日君のお母さんが家に来てついてきて欲しいと言われた。
着いた場所は病院だった。そこにはもう冷たくなった君と一通の手紙があった。
「𓏸𓏸へ
僕もう長くないんだって。
本当は直接言いたかったけど無理そうだから
手紙にするね。
僕は君に隠していたことがあるんだ。
実はずっとかっこいい君が好きだった。
これを言ったら君を困らせるからずっと一緒に居たかったから言えなかった。ごめん。そして
ありがとう。」
なんだ、同じ気持ちじゃんw
私は泣きながら言った。
こんなことになるなら言っとけばよかったなぁ
好きだよって。
「私がそっちに行く時君はまたジャングルジムに居るのかな?」
通りすがった公園でふとジャングルジムが目に入った。
懐かしいな。
ジャングルジムを見ると、あの日を思い出す。
あれは夏の日のこと。
セミがやけにうるさかったことを覚えている。
幼なじみの男の子とジャングルジムで遊んでいた。
私が手を滑らせて落ちそうになったとき、その子が助けてくれたんだ。
遠い遠い、夏の日の思い出。
淡い初恋の想い出。
あの子はあれから引っ越してしまって
告白もできずそのまま。
元気にしてるかな?
別の人のヒーローになっているのかな?
私にとってのヒーローは、今でも君、ただ1人だけなのに。
『ジャングルジム』
㊾ジャングルジム
はじめは下をくぐるので
精一杯だった
1段1段登れるようになって
てっぺんまでいけた時の
あの風景を忘れない
きっと
ジャングルジム
「おい、早く登ってこいよ。お前が絶対好きな眺めだぜ」
そう言って、ジャングルジムに登るのが怖かった私に手を差し出してくれた小学生の時の君。
「ほら、掴まれよ」
久しぶりに彼と来た公園。私はあの日からジャングルジムに登るなんて怖くないのに、君と同じ景色を、君の温もりを、君のかっこよさを独り占めするために今日も怖がるふりをする。
ねえ、気付いて?
昔、住んでいたマンションにはそれなりに大きい共用の庭みたいなものがあって、そこにふたつのジャングルジムがあった。ひとつは滑り台がついてて、もうひとつはアーチ状になってた。
当時は身体能力も低く、周りの子達がヒョイ、ヒョイとジャングルジムの隙間をくぐりぬけて遊んでいるのを見ると自分もそこで遊んでいるような感覚になって好きだった。
今でもジャングルジムで遊ぶ子供たちを見ると、こちらもジャングルジムで遊んでいるような気分になる。とても、懐かしく感じて、切なく感じる。
大きかったジャングルジム
大人になった今でも少しだけ大きく感じる。
友達と遊んだ記憶もタイムカプセルを近くで埋めた記憶も
今となれば眩しくて美しい記憶だったな 。
ジャングルジム。
私は、頑張っても二段が精一杯だった。秋の空きっと高くてどこまで高くてキレイだろうな。
限界なんか決めたらダメですよね~。
今日は、蒼さんのゲーム配信を見た。蒼さんの家族と楽しそうにおしゃべりされていた。
とりま『こんにちは🎵』と、挨拶をしたの。キレイな女性の声だった✨️🎵
お子さんのことをお話しされてはりました。蒼さん、イクメンなんた……。リスナーさんから、聞いて知っていたけど、なんとなく…🥺
お父さんだから、こんな私にも親切にして下さっていたんだね✨️(_ _;)
蒼さんのお仕事大変ですよね~。蒼さんは、私にとっては近所の歌の上手いヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。お兄さんで、時には先生のような口調が好きです🎵
おちこぼれのジャングルは、てっぺんまで登れないね。そんな私なの。
蒼さんは、ポジティブ✨️で、私は、後ろ向きだヨ(笑)叱って下さい(。>﹏<。)
何時もみたいに、エンムのマネで『あんずさんは、愚かだなぁ~💜』と、言って下さいネ(。>﹏<。)
そしたら、私は幸せです……。そして、蒼さんの柑橘系のお声で頑張れ〰️🎵✨️と、叫んで下さい🎵
私の夢醒めます、多分。
でも、これからもファンでいます🎵(;_;)
時々の関西弁も大好きです💛✨️🎵
なんか、疲れたから、お母さんが聴いているカンさんの『まゆみ🎵』という歌を聴いた。
なんとなく、凹んでいる私に寄り添ってくれたんだ。爽やかで、優しく、慰めてくれたんだよ。
このぐちゃぐちゃした気持ちを受け入れてくれたの。イイなぁ〰️✨️(;_;)ジーン💧
終わり
ジャングルジム
頭も身体も硬くなった大人は
通り抜けられないし
頭も身体も重くなった大人は
てっぺんまで登れない。
夢をあきらめた大人には
ジャングルジムは登れない。
ジャングルジムなんて名ばかりの鉄の塊。
しかしながら、あの小さな樹海は今も私達を、牢のように待ち続けるのだ。
小学校に入学した時、大きなジャングルジムを見上げた。
空に届きそうなくらい大きくて、登ったらどこまで行けるのだろうとわくわくしていた。
でも1年生は登っちゃいけなくて、登れるようになったのは小学校3年生の頃だった。
ずっとずっと思いを馳せていたジャングルジム
一段一段にしっかりと足をかけて、その山に登った。
ふと次の棒がないことに気づいて慌てた。
しっかりと両脇の棒を掴んで、方向転換して棒に腰掛けてみた。
大きな白雲、澄んだ青空、眩しい新緑
視界いっぱいに広がる自然に目を奪われた。
ねぇ、5歳の私
あの頃憧れたジャングルジムは、こんなにも壮大な景色を教えてくれるんだよ
暖かな風が、私の成長を祝福してくれた気がした。
私は子供の頃、ジャングルジムが大好きだった。
一方、他の遊具はあんまり好きではなかった。
鉄棒も雲梯も登り棒も、好奇心を掻き立てることはなかった。
腕や足を思いっきり使う遊具の中で、
何故かジャングルジムだけ楽しかったのである。
それは、遊び方の多彩さが大きかった気がする。
外側から山登りのように遊ぶも良し、
内側から洞窟探検のようにくぐり抜けるも良し。
一番下の層に入口みたいな穴があって、
中が迷路になっていたり。
鬼ごっこや隠れんぼでは、
ジャングルジムの中で待機することで
時間稼ぎの罠に見立てたり。
他の遊具ではこんなにバリエーションは無い。
近年は、老朽化や事故の危険性から
その姿をめっきり減らしたと思う。
だが、ジャングルジムからもらったあのワクワクは
いくつになっても消えることは無い。
公園内を見渡せる筒抜けの檻のてっぺんで
日が暮れて星空が幕を上げるのを眺めた。
呼ぶ声はまだ聞こえてこない
もういいよと宛名もなく呟く
探して欲しいと願いを込めて
鬼なんて居ないと知りながら
夜空を睨み上げて、もう一度
「もう、いいよ…」
諦観を混ぜた情けない声は
濁世へと飽和し跡形もない
少しの苛立ちに任せて蹴り脱いだ靴は
追い討ちをかけるように、嬉々として
明日も君だけは雨だろうと告げていた。
ー ジャングルジム ー
ジャングルジムから飛んでみたって、
ちょっと膝を擦りむくだけ。
てっぺんに立ってみたって、
不安感だけ募る、
実際大したことのない高さ。
ジャングルジムの上に立って喜んでも、
この年じゃ白い目向けられるだけ。
昔は無邪気に登って遊んでたのに、
成長したら閉じ込められたみたい。
ジャングルジム
父母と離れて暮らしたころの
小学校の校庭の
隅っこにたつジャン グルジムに
うす紅色の花びらが
二ひら三ひら 降りかかる
一人で登るシャングルジムの
勝ち気な少女の残像は
誰にも見せない涙顔
楽しいことがいっぱいの
懐しいこといっぱいの
小学校の友達の
誰も知らない少女の涙
何十年ぶりかに集まって
思い出語る同級生と
今日は母校の閉校式
息子をつれて普段訪れない公園に来た
息子は保育園の先生と時々来るらしく
ジャングルジムがお気に入りらしい
駆けだす息子の行く先に
ジャングルジムがあった
久々に見ると小さく感じた
大人には狭い格子の中に
息子は難なく入っていき
少し苦戦しながら登っていく
パパも入って、という息子に
パパは入れないよ、と応える
息子はひとりで挑戦を続ける
もう遊べるようになった息子と
もう遊べなくなった自分に
微笑ましさと寂しさを感じる
いつの間に大きくなったんだろう
〜ジャングルジム〜#8
朝起きて、ご飯を食べて、歯磨きをして、靴を履く。
「お母さん!早く行こう!!」
「あきら!待って待って!お迎えのバスまだ来ないよ!」
「もしかしたら早く来るかも!」
バタバタと準備をして幼稚園のリュックを背負って玄関前にスタンバイ。
もう玄関を開ければ出発できる!
「も〜、、最近準備早いね?何か幼稚園でいい事でもあるの?」
「ジャングルジムのぼるの!次こそゆう君に勝つの!」
それは最近の日曜日のこと。
お母さん、お父さんといつもより少し大きめの公園へ行った。そこの遊具は滑り台、ブランコ、砂場にタイヤの上を歩いたりする遊具、何より大きなジャングルジムがあった。
近くの公園にはブランコと砂場しかなくて、僕にはそれだけでも楽しいが詰まった世界だったのだけど、大きめの公園に行ってからはその世界が広がった!
だって、滑り台はまだ分かる。タイヤの上を歩くのだって、幼稚園にあってみんなで冒険ごっこをしたりして遊んでる。
でも ジャングルジム!!
幼稚園にあるのはちっちゃくて大したことない、みんなもあまり遊ばないやつが、あの公園には大きいのがある!
初めて大きいジャングルジムで遊んだ時、お父さんに捕まらないように上手くくぐったり登ったりしてとっても楽しかった!
そして
「一緒に遊ぼ!!」
その時。ゆう君に会った。
初めての子なのに笑顔で声をかけられた。僕はびっくりして固まってしまった。
「お、あきらお友達?」
下から鬼のフリをして僕に手を伸ばしていたお父さんに声をかけられるが、びっくりが勝って上手く言葉が出ずに首だけ振った。
「えっと、、君の名前は?」
「ゆうだよ!はじめまして!」
「はじめまして。あいさつができて偉いね。あきらも、自己紹介。」
「!、あ、あきらです。。」
「あきら!よろしくね!遊ぼ!」
「すみません!うちの子が何か?」
お父さんの後ろから小さめの女の人が心配そうに声をかけてきたが、お父さんが事情を話すとほっとしたようだった。
話を聞くと、最近ここら辺に越してきた子らしい。
お母さんも来て、お母さん同士で楽しそうに話してる。
「せっかくだから一緒に遊んでごらんよ。」
お父さんも疲れたのか完全に僕とゆう君だけで遊ぶ雰囲気だ。
…大人のこうゆう時の、僕苦手なんだよな。。
どうしようと視線に困っていると、ゆう君は元気に声をかけてきた。
「ジャングルジム好き?俺好きなんだ!ジャングルジムで鬼ごっこしよう!」
「…!うん!僕も、ジャングルジム好きだよ!鬼ごっこしよう!」
なんて事ないセリフから僕たちは太陽が赤くなってお母さんに声をかけられるまでずっと鬼ごっこをしていた。
「ゆう君ジャングルジムほんとに早いね!追いかけるの疲れちゃった。」
「ふふん。コツがあるんだよ。」
ゆう君の動きはほんとに早くて。登るのも潜りながら逃げるのも、鬼を交代して追いかけてくるのも早かった。僕は何度も捕まったし、何度も追いかけた。
くやしい。
「ねぇ、次のお休みの日もここに来る?また鬼ごっこで対決しよう!」
「うん!またしよう!」
対決 という言葉になんだか自分が大きな敵に立ち向かうテレビのヒーローになったような気分になって、次の約束をした。
いや、ゆう君は敵じゃないけど。
それでもそれが楽しくて。
それから僕は毎日幼稚園の小さなジャングルジムに登ったり友達を誘って小さなジャングルジムで鬼ごっこをしたりして特訓したのだ。
僕たちはそれからその公園で会った時はいつも対決をした。
勝ったり負けたり。コツやこうした方が良いとか話しながら。時には他に遊ぶ子と一緒になってみんなで遊んだり。
もちろん疲れて2人でおしゃべりするだけの時もあった。幼稚園が違うから、自分の幼稚園はこう。園の友達でこんな遊びをした!などお互いの事を話した。
いつも元気なゆう君と話すのは楽しくて、遊ぶといつも気がついたら時間が経っていて、、ゆう君は僕の中ではヒーロー達をまとめるリーダーのようなキラキラとしたかっこいい存在で。
気づけば僕たちは親友だった。
1年間くらいそんな日々が続いていたが
僕たちのお別れは突然だった。
「え!!ゆう君引っ越すの?!」
僕と一緒にお母さんもびっくりした。
いつも通り、日曜日に公園に行くと泣きすぎて目と鼻が真っ赤なゆう君と手を繋いでいるゆう君のお母さんが公園の入口にいた。
「そうなんです、、夫の急な転勤で、、せっかくこんなに仲良くなったのに、いきなりでごめんなさいね。。」
「まぁ、まぁ、本当に驚いた。いつ引っ越すの?」
「1週間後には、、」
「そんな急に…!大変ね、、」
お母さん達の会話が勝手に進んでいく。
引っ越す?てことはゆう君とバイバイってこと?ジャングルジムの対決は?遊べないってこと?もう、
会えないってこと?
「…っ。っうぅ。」
ゆう君はずっと泣いていて目が合わない。
それで、もう一生会えないんだと思って僕もボロボロと泣き出してしまった。
2人してヤダヤダと声を出して泣くもんだから、お母さんもあたふたしてふたりが落ち着くまで背中をさする。
落ち着いて来て、ゆう君のお母さんがお茶を買ってきてくれた。
ゆう君と2人でベンチに並んで飲んでいると、ゆう君のお母さんはしゃがんでふたりと目線を合わせると、ゆっくりと話し出した。
「あきらくん。ゆうにも話したんだけどね、私たちは、引っ越すけどずっと会えなくなるんじゃないんだよ。すぐには会えないかもしれないけど、何年かしたらまたここに戻ってくる予定なの。」
「???」
「あきら、ふたりは今幼稚園に行ってるでしょう?次は次は1年生になって小学校に行くよね。小学生になって、何年かしたらゆう君は戻ってくるんだって!」
だから一生バイバイじゃないんだよ。
お母さんの言葉に僕は少しほっとした。
その後引越しの準備ですぐに帰らないといけないとゆう君達は帰って行った。
また、絶対に遊ぼうね。
と言葉を交わして。
*
月日が経ち、俺は4年生になった。
朝になり気だるげに起きるとお母さんに早くご飯を食べなさいと怒られる。夏休みくらいゆっくり寝させてくれればいいのに。夜に隠れてゲームをしたからめちゃくちゃに眠かった。
「そういえば、幼稚園の頃仲良かったゆう君て覚えてる?」
「ゆう…?あぁ、ジャングルジムで遊んだ子か。」
「そうそう。夏休み明けに転校してくるって。戻ってくるてさ。昨日ゆう君ママから電話あったよ。」
「ふーん、、え!?戻ってくるの!?」
「だからそう言ってるじゃない。本当に仲良かったわよね〜」
のほほんとお母さんは言うが、なんというかここまで時間が経つと逆に気まずい。
どんな子になってるんだろ。やな奴とかになってたらやだな。ゆう君は、俺にとって憧れだったし。
「…ねぇ、ゆう君のことなんだけど、、」
「うん?なに?」
急に静かにお母さんが話すもんだから聞き返すと、ちょっと間を置いて ううん。なんでもない。無くはないけど。。 と何やらぶつぶつと言っている。
「??」
「あ、そういえばちょっとお使い頼まれてくれない? 後で でいいから」
「え〜〜〜」
「いいじゃない。運動運動!1週間後学校だよ?最近ゲームばかりだしたまには散歩にでも行ってきなよ。」
会話の途中の間が気になるが。
散歩は嫌いじゃないし、まぁいいかとお使いも承諾した。
空は青く晴れていた。
少し吹く風が心地よい。
近くのスーパーで牛乳と、ホームセンターで掃除用の詰め替えを買う。…これ絶対今じゃなくていいでしょ。
さっきの会話を思い出す。
ゆう君戻ってくるのかー。
どんな会話しよう。
さすがにジャングルジムは、もう小さいし。
ゲームのフレンド申請でもして、、あれ。ゲーム機ってなに使ってるのかな。てか持ってるのか?
そんなことを悶々と考えてると気づいたら、昔よくジャングルジムで遊んでいた公園まで歩いていた。
あの頃、遠くにあると思っていた公園は実は割と近くの近所だった。小さい頃なんてものはきっとこんなものだろう。
「懐かしいな、、ん?」
公園は珍しく子供がいなくて、ジャングルジムの近くに、ゆう君のお母さんが1人、何やら遊具を見つめて立っていた。
声をかけるか迷ったが、何となく足はそっちに向かった。
「あ、あの。えっと。ゆう君のお母さんですか?お久しぶりで…」
声にピクリと肩を震わせこちらを向くその人は。
ゆう君の
お母さん
じゃない……!!!
「あ!すみません!!知り合いに似ていて!」
はっっっず!!!なんで俺声かけた!?!
人違いとか!ジャングルジムの近くにいたからって!!
あー、うー、とワタワタしてるとこちらの様子を伺うようにその人は声を掛けてきた。
「…あきら君?」
「…え、あ、はい。えとなんで名前、、」
「………ゆうだよ。」
「……………え。」
「だから、ゆうだよ。ジャングルジムで一緒に遊んだ。」
「……………………ん????」
風が吹き、伸ばしてある長い髪がふわりと流れる。
頭の中は真っ白だった。
*
「あーーー、言えなかったなぁ。。」
あきらを、買い物に行かせ、リビングで独りごちる。
ゆう君はゆう 君 じゃなくて、ゆう ちゃん なんだよ。
そう言おうとしていたのに。
お年頃の我が子になんて言えばいいのか分からなかった。
この発端は初めてゆうちゃん達と会った時だった。
子供同士の挨拶を終え、あきら達はジャングルジムで遊んでいる。遠目でそれを確認しながら新しいママ友と話が弾んだ。
「え、女の子なんですね。ゆうちゃん。」
「そうなんです。」
短髪に、小麦色の肌、青い短パンにTシャツ。
「てっきり男の子かと、、大変失礼しました。」
「いえいえ、よく言われるんです。それに、あの子も正直自分のことを男の子と思ってるみたいで、、」
「え?」
話を聞くと。
髪を伸ばすのも、スカートも、女の子らしいものが苦手らしい。かわいいよりかっこいい。おままごとより戦闘ごっこ。
「園ではまだそこまで浮いたりしてないみたいですが、敏感な女の子達とかには距離を取られたりしてるみたいで、、ゆうはあまり気にしてないみたいなのですが、親としてはこれからが心配です。」
自分の子が感じることを否定してあげたくない。
「すみません、急にこんな話を、」
「っいえいえ!驚かなかったと言えば嘘になりますが、そういった感覚の子もいらっしゃると言いますし、、親として心配になるのも分かります。」
「ありがとうございます。あの子にちゃんとこれから考えていってもらいたいと思っていて。。あの、それでなんですが、遊ぶ時とかにあまり女の子云々は本人に言わないで貰えると、、」
「……分かりました。ゆう君に合わせるようにしますね。」
「!ありがとうございます…!よく近所の方にはこの件で色々言われていて。。」
ゆう君ママはオドオドとこちらの様子を見ながら話をしてくれた。
、、きっとこれまでたくさん悩んだろうな。今この時も。
普通ならきっと、女の子は女の子らしく。
男の子は男の子らしく。って親は言ってしまうだろう。ゆう君ママはそれを否定せず、自分の子が選択するのを待っている。色んな機会を作りながら。
強いひとだな。
私だったら同じことが出来たかな。
親の言葉というのは子供にとって、時には足枷になってしまうと思うから。
家庭の事情に色々言うのもおかしいし、何より本人達は友達として楽しそうに笑っている。
それで今はいいじゃない。
とはあの時確かに思っていたが。
いざ数年経つとなんと説明すればいいのやら。
電話によると今ゆうちゃんはボーイッシュな部分はあるが、自分を女の子として自覚し、拒否することもなく過ごしているらしい。
「…とりあえずあの時の事情と経緯を素直に話すか。」
あきらが帰ってくる前に自分なりの答えを出し、リビングの掃除のために椅子から重い腰を上げたのだった。
*
「…落ち着いた?」
「な、なんとなくは」
公園のベンチに2人並んで座る。
ゆうちゃん?さん?から、当時のことを聞いた。
あの時は自分は性別がよくわかっていなくて、遊んでる時も特に何も気にしてなかったこと。
だから髪が短かったのも、なんでそれを周りの子に変と言われるのかもよく理解出来なかったこと。
そうか。そう言うこともあるのかもしれないと話を聞いていて思った。
「今は自分は女だってわかってるし別にスカート履くのだってなんとも思わなくなったけどね。」
「そ、そっか。」
いや、それはいいとしてこれはどうすればいいんだ。正直クラスの女の子ともそこまで喋らないし、名前だってなんてら呼べばいいのか。。
「驚かせちゃったよね。ごめんね。」
「い、いや!大丈夫。…あの、とりあえず、なんて呼べばいい?」
「え?んんん。普通に、ゆう でいいよ」
ゆう。呼び捨て。まじか、あんまり慣れないな。
ていうかまだ変に緊張する。だってあの頃の憧れは実は女の子で、しかも、
しかも、ゆうは可愛かったから。
むず痒い。いけない感情をもってしまったようで。
「っあ〜!スッキリした!本当は、緊張してたんだよね!絶対私のこと男だと思ってるだろうし、なんて話そうって、転校決まった時からずっと迷ってて」
ゆうはなにか吹っ切れたように、先程から打って変わってペラペラと話し出す。そういえば、昔からおしゃべりだったな。
思わずくくっと笑ってしまった。
「え?え?なに??」
「いや、、俺もびっくりやら緊張やらでなんて言えば分かんなかったけど、結構変わんないんだなって。」
元気なところも、楽しそうに喋るのも。
その後、しばらく当時のジャングルジムでのことやこれまでの小学校のことを話した。
気づいたら時間が経っていて、お昼のチャイムが鳴る。そろそろ帰らないとお母さんに心配されそうだ。
「そろそろ帰るか。」
「そうだね、帰ろっか。」
公園の前で別れる。
あの頃のように。
「じゃあ、あきら!新学期からよろしくね!」
「うん。こちらこそ。」
「同じクラスだといいね!」
「それは、、どうかな、、」
「え!!なんでよ〜!」
カラカラと2人で笑う。
今度こそ手を振りお互いに家へと向かった。
もやもやしながらなんとなく歩いていた道も、
帰り道はなんでか足が軽かった。
早く新学期来い なんてらしくないことを思った。
*
驚いていたなあきら君。
でも昔から人から向けられることが多かった嫌悪感ある表情は一度もされなかった。
否定も、変に気遣う素振りもなかった。
記憶に薄い、ジャングルジムのあきら君。
あれから数年たってはいるが、
変わらないでいてくれた。
なんだか心が暖かいな。ほかほかする。
変なの。
「夏だからかなぁ、」
正体不明なこの 暖かい感情 は、いずれ形を変えて私を悩ますことになるのだが、この時の私はそんなこと知る由もなかったのだった。
きっかけは『ジャングルジム』。
それと
変わらないでいてくれた君だった。