『カーテン』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【カーテン】
大切な仕事に一区切りついたからメシに行こう、とおまえはおれを誘った。
何の気もなく応じたら、高級ホテルに連れ込まれた。
清潔な制服のボーイさんに案内され、高層階の豪華なVIPルームに通される。
「メシじゃねーじゃん」
恥ずかしくて悪態をつくおれに、おまえは「ルームサービスでメシ食うの。晩飯と朝飯の両方」と平気な顔だ。
「おれ、泊まりの準備してねーよ。コンタクトとかさぁ」
「大丈夫、用意してるから」
おまえが珍しくカバン持ってると思っていたら、そういうことか。
照れ臭くて多分真っ赤になってる顔を隠すため、おまえに背を向けてカーテンを開けた。
大きな窓からは、まるで夢みたいな夜景が広がっていた。
黒いベルベットに宝石をばら撒いたような光が美しい。
いつも暮らしているトーキョーが、どこか遠くの知らない国の街のようだ。
思わず見入っていたおれの肩を、おまえの優しい腕が抱く。
「ここの夜景気に入った?」
「うん、チョー綺麗。なんか外国みたい」
「本当は一緒に旅行行きたかったけど、スケジュール厳しいじゃん。だから、その代わり、な」
夜景の綺麗なホテルで2人で一晩過ごす。
カーテンは開けたままで。
誰も知らない2人を、誰かに知られてもいい。
#カーテン
猫が登るアトラクション。
明るい内に閉めると…そこは素敵な星空。
ランダムに施された穴によるプラネタリウム。
そろそろ“裂け目”になりそうなので、買い替えを検討している。
【カーテン】#71
一枚の布を隔てたその奥に
底知れぬ気配を感じた。
それがどうにも治らないもので
どこにいようがカーテンの閉まった部屋は
恐ろしさが増しているように思える。
そして今まさに
ノック音のようなものが聞こえた。
布団に包まり、全身を丸めて強引に入れた。
足の一本も出していなく、横向きであった。
それが間違いであった。
背中に感じるはずの布団の重さは
まるで無重力であるかの様に感じなかった。
横向きに寝ているからとはいえ
少しは触れている感覚はあるのが妥当だ。
金縛りにあってはいないが、
自らそれを起こしているように
全身のパーツひとつすらも動かさずに
「すぐに消えてくれ」
と願うばかりであった。
気がつくと
朝日は私の目覚めを知らせていた。
昨晩の出来事など無かったように
華やかに日光を浴びたカーテンが舞う。
舞う?
とことん心配性な私は
毎晩、窓の鍵は閉めていたはずだった。
ロング
初めて会った時から
風で舞う君の髪に見惚れ
顔を見ることができない
※カーテン
夜尿意で起きた私はお手洗いに向かった
お手洗いを済ませて帰って布団に潜る
優しい月光がカーテンの隙間から見える
今日は三日月か、いい日だったな~
今日も私お疲れ様、おやすみなさい そう独り言で
話眠りに入る
窓側の席で眠る君を眺めた
秋の風が気持ちいいね
キラキラと照らされる横顔が愛おしい
早く目を覚まさないかな
カーテン
こどもの頃の異様なまでのカーテンの内側への興味、惹かれ方は、なんだったのだろうか。
グルグル巻きになったり、隠れたり。
ときにはレースカーテンに包まれお姫様みたいになったり。
1番覚えているのは、幼稚園のホールにひかれていた、黒くて大きな遮光カーテンが強い風に吹かれてぶわっと広がった光景は、それはそれは壮大なものだった。
そう思うと、カーテンは幼い身体をすっぽりと包んで隠してくれる、秘密基地のようなものだった。
『カーテン』2023,10,12
淡い光がゆれている。朝が来ているのだ。
微睡みの中で、それまで見ていた夢がぼやけてゆく。
『――んおにいさまー!』
『おだてな――も、わた―がはらう――』
目覚めると、ぺらぺらの薄いカーテンが朝日に透けていた。いつも通りの平日の朝。支度をし、急いで出勤すると、隣の席から、いつもの声が掛かった。おはよう。
『おはようございます。』
今日も先輩より遅れてしまった。気まずくて謝罪をしたら、先輩はうふふ、と笑う。いいよ。私、近いの。と言って。
優しくて、明るくて、いい人だ。入社してからずっと、その印象は変わらない。何度目だったか部署の飲み会で、嫌な事とかストレスが溜まったらどうしているんですか、と聞いたことがある。先輩は目を細めて笑い、
『夢で素敵な男の子に会って癒やしてもらうの。』
と言っていた。はぐらかされたのだと思う。
そう言えば、揺れる光の中に居る夢は、入社して今の部屋に住み始めてから見るようになった。いつもぼやけている、でも優しい、多分、いい夢。
先輩のキーボードが軽快な音を立てる。どうしてか、にやりとした悪戯な笑顔を見、自分をからかう明るい笑い声を聞いたような気がして、その横顔から慌てて目を逸らした。
…そんな姿は、見たことがない筈なのに。
まだ人も疎らなオフィスの窓越しに、淡い光がゆれている。
先輩の目尻が濡れたように光っている。
……働こう。
よく働いてたくさん稼いで、いつか、ご飯を奢ると言ったら彼女は頷いてくれるだろうか。
【カーテン】
カーテン
薄い、本物のレース越しに黒髪が跳ねて、陽の光を増幅させるきらきらのぐっしゃり笑顔が飛び出すんだ。
朝方のまだ私しか起きていない時間に、偶々起きてしまったからと遊びをし出す。パジャマのボタンが幾つか掛け違っている、黄色のくまがいく段劣る笑顔でプリントされていた。
かくれんぼだよ、どこにいるでしょう!なんてばればれの問題をわざと見逃してやると、ここだよ!と声が上がった。
そんな日常があった時もあった。と早朝正座し、漆塗りの黒い観音開きを開く。笑顔と対面し、いつまでもここにいるね、かくれんぼだからいつまでもそこにいてはいけないんじゃないと聞いた。笑うばかりだ。
チーン、とおりんを鳴らした。今日も見つけにきたよ。
ピンポーン。
ドアホンで応答すると宅急便の配達らしい。
ご苦労さまです。ハンコを押して荷物を受け取る。
品名:ログインカーテン
そういえば買ったかも。
夜な夜なお酒を飲みながら、変なテンションでポチッた覚えがある。
PCを起動する度に替わるログイン画面の壁紙。
そんなコンセプトの商品でカーテンを開ける度に窓からの景色が替わるとの説明がある。
使用してみると思いの外、満足度の高い買い物だった。
昼間っから観える満天の星空
海中に渦を巻くような魚群
夏なのに深々と降り積もる雪景色
在宅勤務が捗る逸品だ。
ただ一つ、ホラーな壁紙を混ぜるのはやめて欲しいです。
カーテンを開けた瞬間に目が合ってゾッとしました。
カーテン
簡単な任務だと言われて渡された仕事は、思いの外時間がかかった。原因はわかっている。自分の隣で水に濡れた子犬のようなしょぼくれた顔をしているアンネのせいだ。厳密に言えば、アンネが悪いのではなく、部下の力量を正しく量ることのできていないギルド長が悪いのだが。
半日でギルドまで戻ってこれる計算だったが、もう空はすっかり暗くなっている。自分はともかく、疲弊しているアンネをギルドまで無理やり連れ帰る理由は一つもなかった。ナハトはそこら辺で適当に宿を探すことにした。一晩泊まれるのならどんなところでも構わないだろう。
「……とはいえ、これはさすがになァ……」
方々を探してようやく見つけた宿は、ベッドが一つ置いてあるだけの狭い部屋だった。ソファなどはない代わりだろうか、そのベッドは普通よりは一回りくらい大きいベッドだ。
「オレ、適当に外で寝てくるから、この部屋はアンネが使えな」
この世の終わりとでも言いたげなほど暗い表情をしていたアンネは、彼の言葉に弾かれたように顔を上げた。ナハトの服の裾をがっちりと掴むと、もげるのではないかと心配するほど横に首を振る。
「い、嫌です! ナハトさんがこの部屋を使ってください。わたしが外で寝ます」
ナハトは溜息をつくと、アンネの額を指で軽く弾いた。
「バーカ、ここら辺、そんなに治安よくねェし。お前が外に行くのは絶対ダメ」
「でも……今日の失敗はわたしのせいですし、それなのにわたしがベッドを使って、ナハトさんが外で寝るって、気が引けます……」
「あれは別にお前のせいじゃねェよ。どっちかと言うとあいつの采配がアホだったんだ。だから気にすんなって」
ナハトはそう言って慰めるが、アンネは消沈したままだ。
「けど、お前がそんなに気にすんだったら、一緒に寝るか?」
冗談のつもりで口にした言葉に、アンネが身を乗り出して頷くものだから、彼は後に引けなくなってしまった。その方が問題があるような気がしたが、ナハトは深く考えることを止めた。
カーテンの向こうでアンネが寝る仕度をしている。彼も取り敢えず、着けていた装備を外して部屋の隅に置くと、ベッドに横になった。まあ、自分がベッドの中に辛うじて収まったので、小柄で華奢なアンネならば、余裕だろう。
仕度を終えて戻ってきたアンネが、ナハトの横に遠慮がちにもぐり込んでくる。しかし、安心しきったのかすぐに寝息を立て始めた。
その彼女のあどけない寝顔を見ていると、なぜか鼓動が早鐘を打ち始める。今晩は眠れそうにないとナハトは溜息をついて、目をつむった。
ごめんなさい
あなたには毎日、
昼夜を問わず
お世話になってるけど、
じっくりと向き合って
考えてこなかった
今度の休みに
洗ってあげるね!
カーテンへ
まー
生まれる前から全否定されてきたので、今更どうにかしようなんて考えてなんかいない。
楽しいだとか、嬉しいだとか、そんなものはいらない。
美味しいものが食べたい。
ブランド物の服やアクセサリーが欲しい。
そんな汚らわしい欲も必要ない。
地位も、名誉も、金も、何もかも、どうでもいい。
無感動にこの場に居るだけ。
このくだらない世界が終わるまで。
テーマ「カーテン」
深夜1時。
置き去りにされたタバコをふかしながら
缶ビールをあおる。
カーテンの隙間から漏れ出る信号機の色が混じりあってサイケデリックみたい。
ヒビ割れたスマートフォン。
真っさらのトーク画面に一言。
「くたばれ」
最後の一本は湿気って火がつかなかった。
酔っていた自分が気持ち悪い。
吐き気がする。
『カーテン』より
風に吹かれ、なびくカーテン
窓から吹き込む春風は、まるでこれからなにかがはじまるような、そんな予感がしてくる風をしていた
新しい出逢いがありそうな、新たな物語がはじまりそうな、そんな一日
窓のサッシに手をつき、太陽と春風を全身で浴びていると
コンコン
ほら教室の扉をノックする音が聞こえてきた
ずっと一人で行ってきた部活動に新たな部員が来たようだ
ぼくは急いで扉へと向かった
『カーテン』2023.10.12
カーテン
風になびくカーテンが、隙間から光を差し込む。
カーテン
お隣の部屋のカーテンはいつも閉まっている。そこだけが息をしていないような、世界だ
「ただいま〜」
「おかえり〜」
この呼応がなされるようになったのは今から丁度1年前のことである。籍を入れた二人は心機一転、この家に越してきたのだ。
「今日の晩ごはんは一体何でしょう!」
「んーー…カレー!」
「残念 curry and riceでしたー」
「一緒じゃん!」
今までずっとこんな愉快な会話が聞こえてきていたわけではない。時には喧嘩し、口を利かなくなったり、仕事の折り合いがつかず、二人が一緒にいれないこともあった。
「そう!見てこの観葉植物。ちみっこくて可愛くない?」
「え、かわいい。そこの窓際においとこ。」
そういって主人はここに紅葉を色づけたコキアを置きに来た。ふと振り返って外を見ると、そこには暖色にライトアップされた紅い木々が見える。もう秋が街に入り込んできているようだ。
「覚えてるか?1年前の今日、あそこの紅葉の下でなにがあったか。」
「忘れるわけないじゃない」
妻が枕詞のように返す。
「そうか、それはよかった。」
全く関係のない私が懐旧の念を覚えてしまう。
「昔話は余興に取っておきましょう。」
「そうだな、それじゃ」
「「乾杯」」
プシュッといい音を立てて缶ビールが泡を吹き出す。それとほぼ同時に、窓からの秋風が私にあたり爽籟をおこす。私もまたこれから、この場所から二人の物語を見ていくのだろう。この窓の【カーテン】として。#2
窓をあける
カーテンをゆらし風が通り抜ける
乾いた心地よい風だ
やっと次の季節にうつったのだな
街のざわめきが聞こえる
遠くから運ばれてくるにおいもまた
部屋の隅で止まっていた時が
風に煽られてくるくると流れ出す
心の中も風が吹き抜けていくようで
きもちがいいね
「カーテン」
#226
晴れた昼間のカーテンが好き。
空色が写った白のカーテンが、とても爽やかで、嫌な事も少し忘れられる。
夏の植物のグリーンカーテンも爽やかで綺麗。
夕方には夕日が写ってオレンジ色になる。
思ったより、カーテンでも季節を感じられるかも。