しろくま

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【カーテン】

大切な仕事に一区切りついたからメシに行こう、とおまえはおれを誘った。
何の気もなく応じたら、高級ホテルに連れ込まれた。
清潔な制服のボーイさんに案内され、高層階の豪華なVIPルームに通される。
「メシじゃねーじゃん」
恥ずかしくて悪態をつくおれに、おまえは「ルームサービスでメシ食うの。晩飯と朝飯の両方」と平気な顔だ。
「おれ、泊まりの準備してねーよ。コンタクトとかさぁ」
「大丈夫、用意してるから」
おまえが珍しくカバン持ってると思っていたら、そういうことか。
照れ臭くて多分真っ赤になってる顔を隠すため、おまえに背を向けてカーテンを開けた。
大きな窓からは、まるで夢みたいな夜景が広がっていた。
黒いベルベットに宝石をばら撒いたような光が美しい。
いつも暮らしているトーキョーが、どこか遠くの知らない国の街のようだ。
思わず見入っていたおれの肩を、おまえの優しい腕が抱く。
「ここの夜景気に入った?」
「うん、チョー綺麗。なんか外国みたい」
「本当は一緒に旅行行きたかったけど、スケジュール厳しいじゃん。だから、その代わり、な」

夜景の綺麗なホテルで2人で一晩過ごす。
カーテンは開けたままで。
誰も知らない2人を、誰かに知られてもいい。

10/11/2023, 9:39:33 PM