『やるせない気持ち』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
やるせない気持ち。
頑張って頑張って、限界までやっているのに誰も見てくれない。
隣のあの子はにこにこしているだけで褒められて評価されてゆく。
いつか誰かに言われた、可愛げがないという言葉。
じりじり私をしめつけてゆく。
できることなら私だって可愛がられて愛されたい。
→短編・風鈴丘
夜、ひと気なく静まり返った風鈴丘に、一面の花風鈴が咲いている。
透明な花びらに様々な差し色が美しいスズラン科の花だ。
丘を渡る夜風に、花々はチリンチリンと涼しげな音を鳴らす。
この丘に名前がなかった頃のこと。
一組の夫婦が一輪の花風鈴を植えた。
毎年一輪ずつ増やしてゆこうと二人は決めた。
慎ましい生活での唯一の贅沢であり、夫婦の絆の証でもあった。
「心豊かなご縁が続きますように」
花風鈴の花言葉である「繋がる」にあやかった願掛けだった。
毎年毎年、花風鈴は数を増やしていった。
花の数が増えるように、夫婦も家族を作った。
丘を訪れる人々と共に、夫婦家族も花風鈴の音楽に耳を傾けた。
時が過ぎ行き、年老いた夫婦に代わって、その役目は子どもや孫へと引き継がれた。
花風鈴は丘を埋め尽くすほどに増えていった。
やがて家族は一族へと拡がり、夫婦は色褪せた写真にその姿を残すばかりとなった。
一族の誰かが丘を買った。
風鈴丘と名付けられたのはその頃だ。
現在、風鈴丘への立ち入りは有料である。
丘をぐるりと囲む高いフェンスが侵入者を見張っている。
写真映えするスポットとして有名で、多くの観光客が忙しなく往来する。
花風鈴を管理するのは専門の園芸業者だ。
所有者一族は遠い都会へと引っ越していった。
夫婦の想いは、まだ風鈴丘に残っているだろうか?
テーマ; やるせない気持ち
「お前はどうしたいんだよ」
それがわからなきゃ何もできない。私の手を無理やり掴んで彼は言った。
まず離してほしいと言った。お前が話したらな、と彼は言う。とにかく手を離してくれなければ、まともな言葉も浮かんでこない。そもそも求めていることなんてもうないが。
「お前が許さないというならそれでいい。ただ謝らせてほしい」
本当に後悔しているし、反省もしている。同じ過ちは二度としないと誓う。近づくなと言うならもう姿をみせないようにする。して欲しいことがあれば聞く。だから、
「ならそれでいいじゃないか」
彼の話を遮って言葉を返す。
「後悔も反省もできたんだろう。ならそのまま過ごしていけばいい」
「しかし、」
「して欲しいことなら、今、手を離すこと。反省したというなら、今後出会う人に同じことはしないでしょう」
何も言わなくなった彼の手が緩む前に無理やり手を抜きとって、再び背を向けて歩き出す。
事が形式上収束したようにみえたあと、わざわざ目の前にきて改めて話そうとしてくるなんて彼はましなのかもしれない。先に言った私の“お願い”も、“許し”と受け取って、自分のなかで終わったことにはしない人なのかもしれない。それでも。
謝られたら私が困るのだ。許さないとて一生引きずられては私も引き摺るだけ。許したとて忘れてもらっては腑に落ちぬ。
この世は地獄ではなく、罰を受けて禊を払い、犯した全てを清算させることはできない。そして私は彼の地獄に判決を下し、次の生を歩む手伝いはしたくない。
この思いを晴らすための望みを強いて述べるなら、時間を戻して全てなかったことにする。いっそ私たちが出会わなかった過去にする。実現不可能な話。
彼が抱える思いは、その後悔と反省やらは、案外すぐ消えるかもしれない。似たようなことをまた犯すかもしれない。何も信じられなくて先が見えない。
私の不透明な思いは薄くなるとは思えないが、この先の人生で湧く思いと一緒に濁らせたまま抱えていくしかない。浄化する方法はない。
これ以上、綺麗にすることは出来ない、何をしても余計なことでしかない、どうにもならない話なのだ。
【やるせない気持ち】
ケータイ片手にしかし手持ち無沙汰な、まさに今です。
劇的なもののない漫然と平和な深夜、私はとてもやるせないです。
寝ろ。
やるせない気持ち
ねぇ、生きさせてくれないかな
心を持つことを、諦めさせないでくれないかな
頼み事が多くてごめんね
半生で見つけた気づきも望みも
口に出したら消されてしまうことを学んだよ
手先が動かなくなるほど冷たい日に
存在そのものが許されないことを学んだよ
わかり合う世界を空想しながら眠りについて
怖い、と泣く夢を見て目覚めた時、息が切れていた
私は情けないから
大半が失望に埋まった脳を抱えて
まだ人生にしがみつくよ
あんなにおしゃれだったひと
今はお仕着せの寝衣を着せられて
美味しいものが好きだったひと
今はチューブから栄養を流し込まれて
静かにベッドに横たわっている
毎回たった10分間の再会は
ほとんどが一方通行の話で終わる
それでもほんの少し口元が綻ぶから
私のことはわかっているのでしょう
長年の経験や知識はすでに削ぎ落とされて
じきに私のことも忘れてしまう
もうすぐ遠くへ行ってしまうひと
(やるせない気持ち)
叱られてよく俯いた
綺麗な言葉を右から左へ
隠したナイフを尖らせた
どうやって家まで帰ったっけ
耳が熱かったのは何でだろう
「神様は可哀想。」
そう思ってしまう私は、罰当たりかな?
【なりたい自分】
人生で一度は書いた事があるであろう、このお題。私は少し悩み、役者と書いた。私の席に群がった友達は、皆笑いながら言った。
「役者なんて、無理でしょ。」
私は、笑顔を貼り付け言う。
「そんな事ないでしょ。」
冗談のように否定する。そうすれば皆すぐに忘れてしまう。本当に、考え足らずの相手は疲れる。
私には、これと言って夢はない。しかし、なりたくないものはある。それは、傍観者だ。只傍らで他人の人生を眺めるなんて、まっぴらごめんだ。そんなの最悪な趣味だ。でも、同情する。他人の人生の行く末は決めれず、口出しする事もままならない。そんなやるせない気持ちが募るのだろう。本当に可哀想な存在だ。
「神様は可哀想。だって何もできないんだから。」
私は、そんな可哀想な存在になる気はない。そんなものに成り下がるくらいなら、私は人生の役者でいたい。笑っていたい。それが例え、苦しいものでも、悲しいものでも。
それに、人間誰しも役者だ。神様に劇を見せるための存在だ。時には感情を揺さぶり、嘘を付く。そんな役者だ。
やるせない気持ちが溢れた時、きっと人は心を失うのだろう。
お題:やるせない気持ち
タイトル:強がり
しまった
気づけば身体中がだるい
何だか吐き気もする
歩きだそうとしても
無音のストップがかかる
それでも動かねば
どうにか方法を…
っ、今度は頭痛がしてきた
はぁ、仕方ない
しばらく休ませてもらうとするか
そうこれは仕方ないことなのだ
仕方ない仕方ない…
別に不満なわけではないが、俺とL○NEやdisc○deで繋がっている全ての友に伝えたい。
お前ら塩対応すぎ!!
「w」(数は問わない)のみの返事とか「それな」「わかる」とかの一言返事、
返信に困るんだよ!!!!!
これからよろしく的な一言だけ交わして止まってる相手3,4人居るし。みんな俺から話しかけんと話してくれんし。
そんなに俺のこと嫌いかよ?!?!?!
一人だけだよ、俺のオタ話に塩対応せずほぼ同じ熱量で付き合ってくれる優しい人…🥲返信がとんでもなく遅いのには目をつぶるよ。
やるせない。非常にやるせないです。
オーギュとこの森の家でいっしょに暮らすようになって数年が過ぎた。
出会ったときのひどい火傷はもう跡形もなく治っているけれど、オーギュはもっとずっと深い傷を内に秘めていた。
そのことはオーギュには言葉にすることすらできないようだった。
身に降りかかった凄惨な出来事――そのおぞましい記憶――そういったものがオーギュの心身を蝕み苦しめていることに、私は初めから気づいていた。
それがどんなものであれ、私はオーギュの負った深い傷を癒していくつもりだった。
けれど、私が得意な癒しの魔法も強力な薬草も、オーギュの深い傷の前には全くの無力だった。
あの場所に閉じ込められていたときどんなことがあったか、闇魔術の使い手たちにどれほどの仕打ちを受けていたのか、オーギュが言葉を紡げるようになった今ならわかる。
けれども、それらを知った今でもオーギュが受けた傷の癒し方はわからない。
オーギュをぼろぼろに傷つけ壊した者たちにどんなに怒りを燃やしたところで、オーギュの傷を癒やすには何の役にも立たない。
私ができるのはただ、いつもオーギュのそばにいて寄り添い見守り支えていくことだけだった。
今夜もオーギュを腕に抱いて眠る。
明日もまた、オーギュは悪夢にうなされて目を覚ますのだろうか。
大切な人の悪夢一つ止められない。
魔法というのはなんと無力なものなのだろうか……。
(フリートフェザーストーリー いつかのできごと篇 #4 : お題「やるせない気持ち」)
だってネ、赤ちゃん産んだってネ、あたしじゃどうしようもなかったんだもん。ほらだからあれよ、アレ、愛ゆえの決断、とか、あるじゃないホラ。
ね。
だから、ね。
やるせない気持ちがいつも付きまとう……嫌だな。でもその気持ちはどこにも行ってくれないし、いつも私と隣り合わせなのがちょっとむかついてしまう。いつかそんな日々がなくなって幸せが来てくれたらいいのにって多分みんなもそう思うよね。
「もう、行くのか?」
成瀬が来年東京に行く、そう聞いたときは実感が沸かず適当に流していた。別れの言葉も、俺の気持ちも。
…去年からわかっていたはずなのに、なぜ俺は言わなかったのだろう。
「ねぇ、遥斗…」
名前を呼ばれ、はっと顔を上げる。これが最後のチャンスだ。
しかし俺の声は俺の意思に反抗し、発したはずの言葉には音が乗らなかった。
「あの、な。成瀬…俺、」
それでも無理矢理音を乗せた声で俺は言う。
「…っ俺!成瀬のことが」
そこまで言い、顔をあげる。すると、電車のドアが閉まっていくのが目に入った。
「遥斗…ばいばい」
俺が、最後まで言えなかったばかりに……。言えたら、"またね“とその言葉が聞けたのだろうか。
過ぎていく電車を横目に、俺はホームを去った。
そんな、やるせ無さだけが残る夏だった。
#やるせない気持ち
やるせない気持ち
叶奈ちゃん。いつも神社にいた不思議な娘。あれ、神様的なやつだったのかもしれない。一緒に虫捕まえたり、飯食ったりしたなぁ。
でも、親が仕事の都合で引っ越すことになって、叶奈ちゃんとはお別れになっちゃった。
叶奈ちゃんは、
「私は大丈夫。でも、、いつか、またここに来てほしいな。ダメ?」
俺は確か、、。
「わかった!絶対、絶対大人になったらまた来るね!!」
って答えたっけ。
んで、叶奈ちゃんはお守りって言って、なんかの種みたいなのをくれた。手に渡った瞬間、叶奈ちゃんはどっかに行った。
それから引っ越した先で、すぐに友達もできた。テストも満点を取って、、。中学では大会で優勝できた。高校受験は第一志望に入学できて、彼女も。
貰った種は、どうしたらいいのかわからなかったんで、ダイソーで買ったプラケースに入れ、部屋に飾っといた。約束を忘れないために。でも、結局タンスにしまってそのまま忘れていた。てか、上手くいってたのお守りのおかげだったのかな?
大学生生活も何もなく順調に過ごしていたころ、ふと約束を思い出した。本当に急に。今まで忘れていたのに。猛烈に、「叶奈ちゃんのところにいかなきゃ!」って思った。夏休みに入る直前だったので、夏休みに入ったらすぐ行けるよう準備をすすめた。
懐かしいなぁ。この木。セミの抜け殻スポットで乱獲してたっけ。この家。超怖いおじさんが住んでいたんだけど、、。ピンポンダッシュで度胸試しに使われてて可哀想だった。この道。よくタバコの吸い殻とかペットボトルが落ちてたからボランティア活動(強制)で拾わされてたな。
っと、、到着。のはずだが、、。
ない。
聞くと、俺がここに来る一年前に解体が決まったらしい。で、俺が思い出したあの日、ちょうど解体が終わったそうだ。すぐに行けばよかった。ずっとずっと待っていたんだろう。俺が来ると信じて。だが、もう叶奈ちゃんが完全にいなくなる時に、思い出させてくれた。これの意味って、、。
帰って種を見た。この種、多分梅の種。だけど、、。割れちゃってる。
ちっちゃな植木鉢を買ってきて植えてみる。生えてくるはずもなく。
託してくれたもの、全部なくなっちゃった。あの娘の遺したもの、あの娘も全部無に帰しちゃった。
やるせない気持ちって、こういうこと言うのかな?
あなたはわたしのなに?
わたしはあなたのなに?
わたしはりゆうがひつようなの
りゆうがなけれはいきてはいけない
八月のあの日
やるせない気持ちを抱きながら
心はまだ、あの日、あの夏、あの八月に
お題:やるせない気持ち
課題が終わってなくてやるせない気持ちです。
(使い方あってるのかな?!一応調べたけど。)
「ロディ。お待たせ、行きましょうか」
「ロディさん。おはようございます」
いつもの待ち合わせ場所にあらわれたのは、整った容姿をしたそっくりな双子だった。
「ううん。待ってないよ、おはよう」
いつもと調子を変えないように気をつけながら挨拶をかわす。
目敏いサンドラに少し怪訝な目線を向けてくるが、にこりと笑ってかわす。
ジェシカは、、、まぁ僕に興味ないので少しも気に留めている様子が無かった。
しいというなら、僕を怪しんでいるサンドラを気にかけているようにも見えた。
僕の前でいつものように仲良く戯れ合っている2人を見下ろしながら連日見ている悪夢を思い出す。
満足そうに笑いながら冷たくなっていくサンドラ
全身を片割れの血で染め上げ呆然としているジェシカ
そんな2人に何もできず駆け寄ることもできない僕
この状況を見てもなお勝ったことを馬鹿みたいに喜ぶ白陣営たち。
夢にしてはリアルで。でも現実にしてはあまりに荒唐無稽な出来事。
不気味な屋敷に数日間閉じ込められ、突然役職を振り分けられ、勝てないと死ぬというデスゲーム。
あぁ。思い出すだけで吐き気をもよおす。
嫌いだ。嫌いだ。人間が嫌いだ。
本性を隠す人間が嫌いだ。
「…ロディ?大丈夫?」
声をかけられたことに気づきハッと顔を上げると目の前にサンドラの顔があった。
っちっかいっっっ。思わず顔をのけ反らせ視線ごと逸らす。
「っねぇ。ジェシカ!君のお姉様距離感どうなってるの??」
「えぇ?私のお姉様に文句あるんですの?」
「ロディが隠し事してるからだよ?ずっとぼーってしてるし!」
寝不足の頭ではいつものように思考が纏まらずサンドラのチクチクに反射で反論できない。
じとっと目で「やめろ」と抵抗しているとまた、遠くの方から元気な声が聞こえた。
「おーーーーーい!おはよう!!いやーみんなはやいねっ!」
「エマ遅い。早くしないとおくれちゃう!」
「エマさん、おはようございます。」
「あのねあのね!あたしね、パン買ってきたの!!
並ばないと買えないやつなんだよ?
すごいでしょー!選んでいいよ!!」
いつものエマを見て落ち着いたはずの動悸がまた一気におかしくなる。
呼吸がままならない。
視界がぼやける。
意識が遠のく。
思考が纏まらない。
自分の煩い心音以外何も聞こえない。
苦しい。苦しい。助けて。嫌だ。たすけっ
「っ!」
呼吸が荒れ、過呼吸状態になっている口を塞いだのはサンドラの口だった。
「!!!!???!!?!?!?////」
「ちょっ。ちょっ、お姉様!?きt。…汚いですわよ!」
「はえー!やっと付き合えたんだ!ロディ?」
っ!?!?
ちがっ。え??
なんで?まだ付き合ってないのにキッ。キスなんて!
理解が追いつかないのと、恥ずかしさと、息苦しさで、生理的に涙が止まらない。
「っプハ!本で読んだの。過呼吸を手っ取り早く過呼吸を止める方法!」
ドヤ顔で誇るサンドラに思わず涙目で睨んでしまう。
…こっちがいったいどんな気持ちを君に向けているのか分からせてやろうか?
何か思うことがあるのか、察したエマがニコニコと笑いながら隣に近づいてきた。
「あのね、ロディ。2人で話せない?」
「……。いいよ、場所少し離れようか。
ごめん、サンドラ、ジェシカ。ちょっと先に行ってて!」
「? 分かった。早く追いついてね」
「お姉様、行きましょー!」
さっきのキスもそうだし、エマと2人きりになるのにも微塵も気に留めていめていないサンドラを見て、やっぱり、まだ脈なしか〜と落ち込む。
「っと。このあたりでいいかな?
なあに?エマ」
「あのね。違ったらごめんね。
ロディはさ、最近怖い夢を見ない?
殺し合いみたいな?騙し合いみたいな」
これは、驚いた。まさかあの悪夢を見ている人が僕の他にもいるなんて。
でも、意図が分からないし、なぜ気づいたのかも分からない。
言葉を続けようか迷っているエマに、表情だけで先を促す。
「…。私はね最近ずっと夢に出てくるんだ。
怖いよ。現実で起こったわけないのに、ヤケに鮮明に見えるの。
今日、パン買ってきたのもね、、誰かあの夢を見た人いないかなーって思って。…ごめんね。あそこまでなるとは思わなかった」
心から申し訳なさそうにしているエマをみて、本当に同じような共有している人がいるんだと実感した。
「…あの反応を見る限り、あの2人はやっぱり覚えてなさそうだな、、ま、覚えていない方がいいんだけど。
特にジェシカの方は、、」
きっともう立ち直れない。
「うん。私もそう思う。だから今回が最後の賭けだったの。夢で会ったことのある人にあう約束を取り付けてこのパン作戦やったんだけど、反応したのはロディだけだった。誰も反応しなかったら、私の気のせいで片付けようと思ってたんだけど、、ねぇロディ。あれは本当に夢。だよね?」
夢。…だと断言したい。あんなものを本当に起こったなんて認めたくないし、信じたくもない。
でも。断言できないほどリアルで。
ここに同じ体験をした人がいて。
悪夢で会った人たちが本当に存在していて。
「ねぇ。エマ。僕は君が好きだよ。」
「はぇ?」
「それでね、サンドラが好き。ジェシカも好き。
でもあんな夢を見てから人間がすごく嫌いになった。
人と関わるのがすごく怖くなった。
でもね、少なくとも君たちは最後まで嘘をつかなかった。
人を貶めようとしないかった。
最小限の被害で。みんなで屋敷を出ようとしてた。
少なくとも僕目線はそう見えた。」
横目でエマを見ると静かに頷き先を促してくれた。
「最終日。あの屋敷から出られたあの日。
ジェシカが狼に食べられた夜の次の朝。
サンドラはあからさまに態度がおかしかった。
最初は大切な双子が亡くなってしまったから動揺しているだけだと思った。
でも、明らかに破綻の連続だった。喋れば喋るほど破綻してた。
それはもう。笑っちゃうくらい破綻してた。
多分本人も何言ってんのか分かってなかったんじない?」
重い話になりそうだから、わざと明るい口調に変えてみたが、声が震える。多分、ここが外じゃなかったら涙は堪えきれてなかっただろう。
エマも静かに涙を流しながら聞いてくれる。
はは。エマらしくない。いつも能天気なくせに。
空気読めてないような的外れなこと言うくせに。
…いや、違うか。こう見えてエマは周りはみえていた。
アホキャラというものを率先してやっていた。
あの屋敷でも。…まぁ、ほとんど素なんだろうけど。
「それで、嬉々とした白陣営たちが時短でサンドラ吊ったじゃん?
僕ね。何もできなかった。サンドラともジェシカとも沢山話したのに。サンドラが狼ならジェシカは絶対食べないって断言できたのに。何も言えなかった。
あの空気に呑まれて、発言も反論も投票すらなにもできなかった。
最後にね。本当に最後にね、サンドラちょっと笑ったんだ。
んで、サンドラの死体からジェシカがでてきてもう大騒ぎよ。
サンドラの血で真っ赤に染まったジェシカが呆然とサンドラを見てるんだ。
泣きもしないで、喋りもしないで。
ただ心底驚いたように見つめていた。
僕ね。実は役職イタコだったんだ。知ってる?イタコの役割。
死んだ人の役職を見れるんだって。
1回だけね。
僕はずっと使ってなかったからせめてと思ってジェシカを迎えに行くついでに見たんだ。
サンドラの役職見たんだ。
…市民だって。呪われだって。人狼だって。
あはは。笑えるよね。
ジェシカに聞いたんだ。サンドラは君の役職を知ってたのかって。
静かに首を振ってたよ。知らなかったんだって。
でもね、サンドラは多分気づいてたんじゃないかなって思うんだ。
あそこでジェシカが食べられてないとその日吊られてたのはジェシカだ。
最後の最後まであの子はジェシカを守ったんだ。
自分が狼にされて混乱してたはずなのに、、」
うん。うん。とエマも涙を隠さず溢す。
僕ももう堪え切らず大量の涙を溢していた。
「ねぇ、エマ。あれは忘れちゃダメだと思うんだ。
少なくとも覚えている僕たちだけは。
それだけ。聞いてくれてありがとう。
本当にスッキリした。」
「うん!!あたしも!沢山泣いてスッキリした!
ま、あたしパン焼いてただけだけどね!!
さ、早く2人のところ行こ!追いつかないと!」
パッと立ち上がり駆け出すエマの後ろ姿を見て、思わず笑ってしまう。
本当に忙しない子。でもエマのおかげであの屋敷でも正気を保っていられたよ。
夢の中のロディ。大丈夫もう苦しまない。
もう忘れようとしない。無かったことにしない。
もうやるせない気持ちなんてない。
「エマ!ほらもっと走って!!置いていかれるよ!」
お題「やるせない気持ち」
ロディ視点
配役⤵︎
サンドラ:呪われし者(覚醒済み)
ジェシカ:赤ずきん
ロディ :イタコ
エマ :パン屋
私には3つ上の姉がいる。
姉は中学時代生徒会長をやっていたらしい。先生からの信頼も厚く、姉が卒業すると同時に入学した私はすぐ様有名人となった。
"出来ない妹"として。
姉は勉強が出来た。学年上位の成績を残していた。
姉は運動が出来た。運動会で団長として活躍していた。
姉は芸術が出来た。絵は入賞し歌は上手かった。
ありとあらゆる才能を、あの人は持っていた。
母には姉と同じ高校に進学しろと言われた。その方が制服代を浮かせられるからって。
この辺りじゃ有名な進学校。勉強の出来ない私からしたら雲の上の存在。高嶺の花な姉と同レベルになれ、なんて。
__嗚呼。本当、遣る瀬無い気持ちになる。
私には3つ下の妹がいる。
妹は小学校の頃から独創的なアイディアであっと人を驚かせたらしい。ボランティアにも積極的に参加していて、他地域にも行く事があるからか、クラスメイトが何故か妹を知っていた、なんて事もよくあった。
大好きだ。
妹は気遣いが出来た。人の体調不良にすぐ気付いた。
妹は手伝いが出来た。母と共によく台所に立っていた。
妹はお世話が出来た。近所の子供の遊び相手になっていた。
ありとあらゆる思いやりを、あの子は持っていた。
あの子が母から私と同じ学校に行けと言われているのを見て、申し訳なかった。私は流され易い人間だ。薦められるままに高校を受験して、薦められるままに通っている。
私というブランドをあの子が背負わないように、私は私を抑えなくては。高校では生徒会には入らない。何にも関心の無い、一般女子高校生でいよう。
__嗚呼。本当、遣る瀬無い気持ちになる。