『もう一つの物語』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ここじゃなくて
別の場所で産まれていたら
もっと違う人生だったのかな?
〚もう一つの物語〛
人の数だけ物語がある
人は己以外の、もう一つの物語に触れたときどう感じるだろうか
嫉妬や憎悪、優越感、愛着、親近感、様々あるが、その勝手な決めつけや偏見によって人を傷つけたり苦しめたりするようなことはしたくない
だからこそ、曇りなき眼を養っていきたい
もう一つの物語
あの時、違う選択をしていればどうなったんだろう。
なんて、もう何回思ったか。
あの時、高校を県外にしてればどうだったのか。
あの時から小説を書き始めていたらどうなったんだろう。
あの時、あの子に声をかけてすごく仲良くなっていれば私の生活は変わったのだろうか。
あの時、親や周りに自分の考えを言っていればどうなったんだろう。
とか、色々わからない未来のことを考えてしまう。
せめて、未来を選べたらいいのになぁ。
こうしたら後々どうなるかが分かれば最善の選択ができるのに。
でもそれじゃ人生簡単、すぎる?
あとこれからの一つの物語どんなふうになるんだろう。
不安だらけだ。
これからどんな仕事に就く?
これからどんなふうに生活する?
どんな顔でみんなと過ごす?
人生は迷うことばっかりだなぁ。
疲れる。
分からないことだらけの人生だけど、
こうして書いてどうにか頑張っていこうかな。
僕が君の隣で笑っていたいと願う物語と
君があいつの隣で笑いたいと想う
もう一つの物語
アナザー・ストーリーズ
何が不思議かっていうとね、僕以外のほとんどの人間がこの世界という存在に疑問を抱いていないという点なんだ。動物はいいよ、ただ本能に従って動いているだけなんだから。問題は人間なんだよ。何で人間だけがこんなに知的な考え方ができるのにそれをやろうとする人間は少ないんだろうかな? そこが本当に不思議なんだよ。みんなただこの世に生きて、そして死んでしまうのは当たり前だと納得してるのかな? 僕はそうじゃない。
僕はタバコを吸う。そして今日を少しだけ振り返ってみる。
今日の昼休みの後、そう、数学の時間だ。僕はある思考実験をしていた。ほとんど教科書やノートには目を向けず、ただ、教室の黒板の上の方、天井に近い辺りをじっと見つめて思考を巡らせていた。僕はいちばん右端の前の席に座ってて、クレイ先生はそんな僕に目を付けて、「聞いているのかね?」と注意したけど、僕は「イエス」と答えて再び思考を続けたんだな。
『僕は今、授業を受けている。少しだけ眠いのは、昼食の後だったからだろう。さて、僕は今、広大な宇宙の小さな星のそのまた小さな大陸の隅っこで、こうして授業を受けている。こいつは不思議だ。僕は本当にこの世界に存在しているのか証明できるものがなあんにも無いじゃないか。
僕はこうして黒板の上を見ているけど、僕のすぐ背後の世界がどうなっているかなんて、観測しようがない。もしかしたら、暗黒が広がっているだけかもしれない。だけど、僕が消しゴムなんかを落としてみせて、それを拾いながら後ろを見るとちゃあんとそこには教室とクラスメートが存在しているんだ。だけど再び僕が前を向くとすぐ後ろで暗黒が口を開けて僕を飲み込もうとしている。
そもそも、時間は存在しないんじゃないかと僕は仮説を立てているんだ。本当は宇宙も世界も存在しない、あるいはもう一つの僕の物語、アナザー・ストーリーがあってもおかしくないし、いや、むしろいくつものパラレルワールドがあるんじゃないか。それが存在しないとどうして言えよう。だけど、こんな話をしても誰も興味を持たないんだ。つくづく不思議だ』
タバコを吸い終わり、僕は机に向かった。僕の背後は常に暗黒が口を開けているのを感じる。そして、時間は完全に停止して、もう一つの世界の僕が物語を上書きしようと企んでいるんだ。
こんなことばかり考えているのは、今日は僕が生理だったからかもしれない。これだけはどうしようもない。
もう一つの物語
物語には表の顔と裏の顔があると思う。
私が過去に書いた小説もそうだ。
テーマに表と裏がある。
言うなれば二種類のセントラル・クエスチョンを常に念頭において書いていたということになる。
読者から見た話が表。
書かれた内容だけで判断できる内容。
描写したいことに忠実に、過不足なく書き記す。
たとえば喧嘩した二人が仲直りできるのかだったり、想いを打ち明けられるのかだったり、そんな内容を中心軸にストーリーが展開していく。
筆者から見た話が裏。
書かなくても(書かないことのほうが多い)私は登場人物の背景ほとんどすべてを知っているので、彼らが真の意味で分かりあえるのかどうかや、主人公のついたたった一つの重大な嘘について気づけるのかどうかが裏テーマの分かれ目になる。
書きながら私が楽しむ部分も裏だ。
矛盾した感情を内包する一人の葛藤を見つめながら「さあ、ここからどうするの?」と、先の展開を知りながらマッドサイエンティストのように注意深く観察して、問題を次々とぶつけてやる。
私の意地悪さが出る部分でもあり、読者には決して悟られないようにしている部分でもある。
読者からはありがたいことに好評頂いていて、「この先どうなるの……!?」と期待の声が寄せられる。
ありがたい。ありがたいけど申し訳ない。
私の感情実験の産物を有り難がってくれるのが誠に申し訳ない気持ちだ。
いつか、この裏の話を表に出したいという気持ちもなくはない。
けれど今はまだ、もう一つの物語は語られないままにさせてほしい。
嫌われるのはまだ、怖いのだ。
何か一つ選択をする度に、選ばれなかった物語が消える。それは自分が自分の意思で選ばなかった物語でもあるのだが、それでも後悔が残ることはある。そうして布団の中に蹲りながら、有り得たかもしれない可能性について、ウダウダと思いをめぐらせることも少なくないだろう。
しかし、人は決してその物語に手が届かないことを知っている。知っているからこそ、それに伴う困難をことごとく棚に上げて、都合のいい部分だけを掻い摘んで、作り上げた物語を夢想する。
そのようなただ甘いだけのインスタントな妄想に耽溺している時間を不毛だと切り捨てる不届き者もおろうが、それでも私はこの活動をやめる気はない。なぜなら、それに勤しんでいる間だけは苦いだけの現実から目を背けていられるからである。
周りから見れば、生産性のない空虚な生活だろうけど、現実の苦味を実感し続ける生活よりマシだと僕は思うのだ。
空想の中の僕は能力や人格に補正がかかっていて、やることなすこと全て上手くいく。対して現実の僕は小心者で、能力も低い。能力をあげるための努力すら、面倒ですぐにやめてしまう。
だから、仮に神様か何かに、過去に戻って自分の選ばなかった物語を体験させてくれると言われても、僕は断固として断るつもりだ。
勿体ないって?冗談じゃない。上手くいくなら勿論いいが、現実はそんなに甘くない。どのみち僕は行動出来ずに、惨めな気持ちをもう一度味わうだけだ。
それだけじゃなく、今僕が心の拠り所にしている妄想も二度と出来なくなってしまう。上手くいく想像すら出来ずに、絶望的な気持ちで布団にとろけていくだけのモンスターが出来上がってしまう。
だから、あの時に戻ってやり直せたら、だなんて不可能でなおかつメリットの薄い愚かな望みを僕は抱かない。分布相応という言葉を知らない小二の頃にも先んじてそれを実感していた僕には、そんな誘惑は通じないのだ。
「じゃあやらないってことでいいか?」
「やらせてください!!!!」
これほど自分の体が軽快に動いた瞬間を知らない。
言い終わるころには、すでに土下座の体勢が形成されており、聞いたことないボリュームの返事が部屋に轟いた。
部屋といっても、自分の部屋ではない。
白の壁に囲まれただだっ広い部屋である。
部屋の中央、宙空には全身白タイツのオジサンが浮いていて、その見下す先に僕の土下座がある形である。
なぜこんなところに来たかは分からない。
この白タイツが誰なのかも分からない。
だけど、「お前を2020/8/24に戻してやろう」などと話をもちかけられては、僕はそれを断ることは出来ない。
なんなんだお前、と呆れた様子の白タイツに、さらに二段階ボリュームをぶち上げた「頼んます!」を追撃した。
これもまた都合のいい夢なのかもしれないけれど、それでもお願いせずにはいられないのだ。
2020/8/24は僕の幼馴染である山城ひかりの命日の1週間前なのだから。
散々述べ立てた能書きも、全部帳消しにしていいから。
もう一度後悔することになっても構わないから。
「……戻してください。あの時に」
次は絞りカスのような声しか出なかった。
白タイツはダルそうに頭の後ろを小指でかいた。
「こっちは最初からそのつもりで来てるんだけどな。情緒不安定野郎が。喚きやがって」
暴言を散らしつつ、手に持った時計を見る白タイツ。
行ってこい、と聞こえた時、頭の奥が痺れる感触があった。
脱水症状の時に似ているな、と思いながら、僕はドロドロになっていく視界を他人事のように眺めていた。
もし、今暮らしてるこの楽しい生活が
「1つの物語」だったら。
本当の「現実」じゃなかったら。
夢の私を現実だと思っていたら。
夢の中は色々なことがあるし、
嫌な夢を見ることがある。
追いかけられる夢とかよく見るし
夢の中で夢を見る...
そんなのありえない……
と信じたい…
この生活が全て全て夢だったら
そもそも生まれて…ない…?
じゃあ夢じゃないね…!
そう信じた私の話の正解は
不正解だった。
「もう1つの物語」
※これはフィクションです※
正解はあっていないということなので、
「私」は生まれてきていないということにしました。笑
ちょっと怖いですね。
私、こういうゾッとする話好きなんです。
あと「もっと読みたい」200ありがとうございます!
今日誕生日だったけど宿題めっちゃやりました笑
もしも
時間がたっぷりあったなら
有り余る程のお金があって
自由に使うことが出来たなら
あなたは何をしたいですか?
いつのときも
人生の主役は自分なのです
『もうひとつの物語』
たった一つの物語ではなくとも、よいではないか。いくつもの分岐点があって、一つの道を選んでも、二つの道を選んでも、その度に新たな物語を始めるのも、よいではないか。壮大な長編作品にしなければ、と物語を続けることに苦しみ、諦め、止めてしまうくらいなら、短編でも掌編でも、その寄せ集めでも、自分の言葉で物語の幕を下ろせることの方が、よほど幸いで、尊いことだろう。
/お題「もう一つの物語」より
『もう一つの物語』があったなら、
あなたと…闘ってみたい。
〚もう一つの物語〛
もう一つの物語。
世の中には、もう一つの物語がたくさんある。
人を含め、物の数だけある。
でも私は一つしか知らない。
そう、自分のだけ。
だから考える。
自分以外の、もう一つの物語を。
だからってそれは本物とは限らない。
いや、
それすらもまた別の、新しい物語。
終わりのない話である。
それが、それこそが、もう一つの物語
仕方ないことだとは、思う。
いつだって主役は一握り。
大多数は、どこまで行っても脇役だ。
脇役にさえ、なれない人がほとんどだろう。
だから、書きたくなったのかもしれない。
主役ばかりが見ている世界が全てじゃない。
脇役が見ている世界に、スポットが当たってもいいじゃないか。
脇役にもなれない人達が見ている世界が照らされても、いいじゃないか。
”もう一つの物語”
それは主役だけじゃない、たった一人の物語。
もう一つの物語
僕はある日好きな人に告白した。
その好きな人は僕の幼なじみで小さい時から仲が良かった。
告白が成功するために僕は彼女を夏祭り、文化祭、休日の遊びなどに誘い、彼女と過ごすことが出来た
まぁー、結果は振られけどね。
その人は自分に気があるんだと思ってた。完全に自惚れてた。
友達から聞いた話だけど、僕のこともとから嫌だったらしい。なんかすごく悲しくなった。自分の勇気を踏みにじられたと感じた。
しばらくして僕はまだ新しい好きな人が出来た。
次の恋をするのは思ったより素直にできて、告白した幼なじみとは今友達の関係まで回復してきてるし、 今が普通に楽しい。
新しく好きになった人は彼女とは全然タイプが違ったけど、次の告白は絶対成功させようと、僕は猛アピールした。そして時が経ち、僕は告白をした。
すごく不安だった。また前のように振られるんじゃないかと...そんな不安が心にあった。
でも結果は...成功だった!
僕は嬉しかった。嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
人生で初めての彼女はこの彼女で良かった。
心からそう思えた。
そしてそれから僕は高校生活を楽しんだ。
そして高3の...ある日
前に告白した彼女。僕の初恋の彼女が、幼なじみが、交通事故で...亡くなってしまった。
衝撃的すぎて言葉が出なかった。彼女はいつも明るくて、元気で、クラスの光だった。
きっとこれから幸せな人生を歩むんだなってそう思ってた。でも現実は違った。
僕は幼なじみということもあり、彼女の部屋の掃除を手伝うことになった。
ひとりで掃除をしていると、彼女の机の中から
一冊のノートを見つけた。
「日記」
そう表紙に書かれていた。僕は気になりそのノートの中を見てみた。僕はその日記を見て頭が真っ白になった。
(今日は幼なじみのあいつと夏祭りに行った。
初めて一緒に行こうと誘われてちょっと嬉しかった。気合を入れて浴衣を着たりした。あいつはなんも言ってなかったけど。...どう思ってたのかな。
今日はあいつと文化祭を見て回った。文化祭もあいつと初めて一緒にいたな。どのクラスの出し物もすごい面白かった。2年3組のお化け屋敷ではあいつビビり散らかしててばっかおもろかったw色々あったけど、あいつとまわれてちょっと良かったかも...
...今日は友達の楓さんが恋愛の相談をしてきた。
楓さんはあいつのことが好きらしい。
ぶっちゃけ意外だった。あいつ大してイケメンでもないし、もやしみたいな体なのに、モテるんだなって思った...。...楓さんの恋友達なんだから絶対に叶えてあげなきゃね。多分私なんかよりずっと良いしね。
......今日あいつに告白された。すごくびっくりした。一瞬ほんとに私なのかと疑うレベル。
...でも、その、すごく嬉しかった。あいつが私を好きでいてくれていたのが嬉しかった。心のどこかでわかっていたのかもしれない。多分私は、私もあいつのことが好きだった、と。だから私は返事をしたかった。「私も好きって」返事がしたかった。
だけど楓さんの事を思うとなんだか自分が裏切った感じがして、横取りした感じがして、とても怖かった。楓さんは親友と言っていいほど、大事な友達。
そんな彼女の願いを台無しにするなんて......
ごめんやっぱ私には無理だ。台無しにするなんて無理だ。あいつに言っちゃった。「ごめん好きな人いるから。」って冷たい態度取っちゃった。
今まであいつがどんなことをしてきたのか、どんなに頑張ってきたのか。私には分かる。その努力を私は台無しにした。友達からなんでふったの?って聞かれた時もなんて言えばいいか分からなくて、最初から嫌だった。あいつは好きじゃないとか焦って言っちゃって...
私は馬鹿だ。最低だ。
ホントはあいつの事好きなのに、大好きなのに。
言葉にできない。
あぁ、苦しい悲しい、辛い。...あいつに好きを言いたい...。)
日記はそこで途切れていた。
気付けば僕の目からは涙が溢れていた。
なんだよそれ。あいつが俺の事好きだったなんて...
友達のために自分の気持ちを殺して。告白を断って、優しすぎんだよ。あいつは...。
なぁー...。戻ってこいよ。戻ってきてよ。そしてまたいっぱい話そうよ......。
もしあいつが友達より僕を選んでいたら、もし、楓が俺の事を好きじゃなかったら、今の彼女とじゃなくて、幼なじみのあいつと付き合ってたら、どんな人生を歩んでいたんだろう...。
僕はそう思った。
もうひとつの物語🗝
10/29「もう一つの物語」
待っている。ここで。勇者が我を倒さんと現れる刻を。
我は魔王。かの国々の連合軍に敗れ、配下を殺され、遥か遠き地に追いやられ封印されし者。
憎しみしか、ない。我を成すものは。
生まれながらの憎しみ。迫害される中での憎しみ。全てを奪われた憎しみ。打ち倒された憎しみ。
待っている。ここで。我が勇者を葬り、完全なる復活を遂げ、地上の全てを滅ぼす刻を。
(所要時間:6分)
「reverse」
覚悟はできた。あとは、この薬を喉の奥に流し込むだけ。
私には両親がいない。4年前、私が中学2年生のときに父が母を殺した。逮捕された父もすぐに獄中で死んでしまった。残された私は祖母に引き取られることになった。祖父は随分前に亡くなっていた。両親を失って4年が経つが、この4年間を生きられたのは祖母のおかげだ。感謝してもしきれない。けれど、その祖母もつい1週間前、死んでしまった。
祖母が死んでから自殺を決断するのに、時間はかからなかった。両親がいなくなった当時も、私のことを人殺しの子なんて揶揄する同級生もいた。祖母が亡くなってからというもの、私には、私がまるで死神、いや、神なんて高尚なものじゃない、死を纏った化け物かのような目を向けられる。憐れみの感情すら感じなかった。
ごめん、おばあちゃん。おばあちゃんがくれたこの4年間を無駄にしてしまうかもしれない。でも、すぐにまた会えるよね?
大量の薬を手に取る。これだけ飲めばこの世から消えられるよね?
怖い。でも、薬を口へ運ぶ手は止まらなかった。口を開けて、水と一緒に飲み込むだけ。
そのときだった。
パチンッ
「どうしてそんな愚かなことしようとするわけ?ほんとに君たちの考えることは理解できないよ。」
振り返るとそこには白のTシャツに、グレーのジャージを身につけた中性的な面立ちの男が、大量の薬を持って立っていた。私が持っていたはずの薬だ。取り返そうと、手を伸ばそうとしたが動かない。
「あ、君が動かせるのは首から上だけだよ。今は僕が時を止めてるからね。君の首から上は僕の時間軸に取り込んじゃったから動かせるけど。」
「薬、返してよ!私は今から死ぬんだから!」
私は叫ぶ。どうして私の邪魔をするの?というか誰?幻覚?こんなに残酷な人生を与えておいて、こんな時までうまく行かないの?
「死んで何になるのさ。死後の世界なんてないし、ましてや死が救済なんてことがあるわけないでしょ。」
「あんたに何がわかるのよ!これ以上生きてても意味がないの!死ぬしかないのよ、私はっ!」
「はあ」
男がため息をつく。
「だから、死んでも何にもならないって。僕は君を助けに来たんだよ。」
「助けに来た?ふざけたこと言わないで、同じことを言って私に寄ってきたひとがどれだけいるか。1人残らず本当に助けるつもりなんてなかったわ。早くそれを返してよ!」
結局そういうことよね。この男は私の何を求めてるのかしら。金?体?
「助けに、というのは違ったかな。君に新しい選択肢を与えに来た、とでも言っておこうかな。」
男は真剣な顔で言った。
「どういうことよ。」
「君の母親は、君の父親に殺され、その後父親も獄中で亡くなった。そうだね?」
どこから調べてきたのだろうか。まあ、私の周りにいる誰かに聞けばすぐにわかることだし、知っていてもおかしくない。
男は続ける。
「君はそれが本当だと思っているのかい?」
「どういうことよ」
「君は真実を知りたくないか、そう訪ねてるんだ。」
わけがわからない。どこかのカルト宗教の勧誘?でも現に私の体は動かない。ああ、私は本当におかしくなってしまったんだ。
私が口を開く前に彼はさらに続ける。
「答えてくれないみたいだね。それか混乱してるのかな?まあ、どっちでもいい。見ての通り、そして君が今体験しているように、僕は時間を止めることができる。そして、僕は時間を遡ることもできる。残念ながら未来へは行かないけどね。つまり、君を連れて4年前、君の両親が死んだときへ遡れば真実がわかるんじゃないか。そういう話だ。」
「何を言ってるの?私の母は父に殺され、父も刑務所の中で死んだ。それが真実よ。警察もそう言ってたんだから。」
「はあ、全く物分かりが悪いね。」
そう言って彼はポケットから何かを出し、それを手のひらに乗せたままパンッと手を叩いてみせた。すると手のひらのうえには1cmほどの青白い球が現れた。
「これを飲んでしまえば、君は4年前のあのときに戻ることができる。どの場所で目が覚めるかはわからないけど、戻ったら僕もきっとそこにいる。」
そういって青白い球を私の目の前に置いた。
「君から盗んだ大量の薬も置いておくよ。どちらを選ぶかは君次第だ。もし過去に戻ることを選んだなら、そこでまた僕と落ち合おう。君が新たな選択肢を掴んで、君のもう一つの物語が紡がれることを願っているよ。じゃあ、また会おう。」
そんな言葉を残して、彼は突然消えてしまった。
彼が消えたあと、すぐに私の体は自由を取り戻した。
どうすれば良いんだろうか。一度は死ぬと決めた覚悟ももう失われてしまったようだ。仕方ない。球を飲み込んでしまおう。はなからもうどうなってもいい、そう思っていたのだ。
そうして私は球を手に取り胃の中へ流し込んだ。
私の体が、心が、運命を逆行する。
【93,お題:もう一つの物語】
人生はいろんな選択の繰り返しなんだ
あの時こうすれば良かった、こうしなければ良かったって
当たり前のように小さな後悔を重ねる
でもそれと同時に、
あの時こうして良かった、こっちを選んで良かったって
同じくらい幸せも重ねるんだ
きっと、僕らが今存在する世界は
たくさんの世界の中の一つにすぎなくて
『あの時選ばなかった方のもう一つの物語』も、無数に存在しているんだろう
だけど、もし『もう一つの物語』を見れるとして
僕はあまり見たいとは思わないかな
少なくとも生きているこの間は
満足に生きられた、幸せだったって思いながら眠りにつくんだ
そしたら他の世界を見に行こう
たくさんの人、一人一人の人生物語
エンドロールまで眺めたら、また別のものを
僕の人生も、他の人が見たときに「いい話だね」と言ってもらえるよう
納得がいくよう生きなくては
わたしに
もう一つの物語があるとしても
きっとその内容は
現在の物語と
ほとんど変わらないでしょう
どちらも主人公は
あなたとわたし
あなたと出会い
あなたに恋をして
あなたもわたしを
愛してくれる
幸せな日々の連なり
ただ
物語の最後だけは
大きく違って
この言葉で終わってほしい
ふたりは末永く
仲睦まじく
幸せに暮らしましたとさ
メデタシメデタシ
# もう一つの物語 (316)
"もう一つの物語"
もう一つの…って事は、《もしも》の物語か?
《もしも》こうだったら、《もしも》あぁじゃなけりゃ…そういう物語か?
思った事はあるけれど、けれどそうじゃなかったから《今》があるって思ってるから、そこまで考えた事はない。
けれど、生体的な《もしも》なら、ちょっとは考えた事はある。例えば、俺が盲目だったら。耳が聞こえなかったら。体のどこかを自由に動かせなかったら…。
あと、…俺が女だったら。今の俺との差異が一番少ない《もしも》の話。
俺が異性だったら、なんて想像しづらいけど、多分まともな女じゃない。身を置いている社会が社会だから、男装して男の演技をして女である事を隠して暮らしてそう。
それ以前は…、なんか自分で言うのもなんだが女っ気なさそう。化粧なんて全くしなさそうだなぁ…。やったって軽くで、メイク道具は周りの同性より圧倒的に少なそう。
あとお洒落にも興味無なさそうだから、持ってる服なんてシンプルなのばっかりだろう。俺がこうなのだから、動きやすさ重視で簡素なものばかり好みそう。俺の性格で考えると、きっとそんな感じだろう。
女の俺可愛げ無さすぎだろ。
「……」
そこまで考えたら、身体は?
身長は平均より少し高めか。体重は……「もっと食べろ」って言われる位軽いだろう。肉付きは、いくら女性ホルモンで丸みを帯びているからって、絶対薄い。だから胸も尻も小さい。
魅力まで無さすぎだろ女の俺。
「……」
なんだろ、なんか複雑。
自分で書いてて凄ぇ複雑。
「もうひとつの物語があるのなら」
生まれてからいなくなるまでの間は物語であり「人生」
だよね。
どんな物語にするかは分からないし、どんな物語
にするかその人の勝手。
ただ、後悔が現れないような物語にして欲しい。
もうひとつの物語があるのなら、同じ過ちがない幸せ
な物語にすることは出来るよね。
だって、ふたつあるんだから。
ただ、もうひとつの物語はないから自分がやってきた
ことがほんとに後悔しない物語になるのかきちんと考え
て欲しい。
物語はたった1回だけ。最後に生まれてからの物語が
最後に「幸せだった。」と思えるような物語にして。
―物語はたったひとつだけなんだから―