『ひなまつり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
我が家にも雛人形がある。妹が嫁ぎ姪たちが成長してからは、ガラス戸棚に並べて飾って置いてこの時期に戸を開くだけ。それすらも近年は忘れていた。
桃の節句を前に偶然帰省していた妹が、雛人形の並んだガラス戸棚を開けている時、母が言った。
「雛人形をしまいっ放しにしてると目を病むっつーから…」
“すぐ片付けないと婚期が遅れる”という迷信は聞いていたが、これは初耳だ。
母は昨年11月、網膜に小さな出血があり手術をした。本人は認知症が進んで手術したことを忘れてしまっているが、潜在意識下で目の手術と雛人形を関連付け、罪悪感を覚えたのかも知れない。
#ひなまつり
ひなまつり
奥座敷の薄暗がりの中に、私の背丈よりも大きな雛壇を見つけた。
胸の奥をひやりとした手に握られたように感じて、ひゅっと息を呑んだ。
「電気もつけないで、よく見えないでしょう」
祖母が後ろからやってきて、電灯の紐を引いた。
ぱっと明るくなる。
白い蛍光灯の光の下で見るそれらは、しらじらしく澄ましていた。
赤い布が被せられた段々の上に、たくさんの人形と入りとりどりの小物が置かれている。甘い色味のあられが入った市販の袋を祖母は手に取って、私にくれた。
「ニナちゃん連れてくるっていうから、じいじと2人で今朝組み立てたんだよ」
「いいのに」
「せっかくあるんだから、たまには出さないともったいないだろ」
母と祖父母が背後で話しているのを聞き流して、私はあられの袋を抱きながらじっと観察する。
上の段に行くにつれて、人形の数が減る。
5人から3人。3人から、最上段は2人。
おだいりさまとおひなさまだ。
保育園で歌ったひな祭りの歌で覚えている。
家にも、小さな2人きりの雛人形があった。
ほんとうの雛飾りはこういうものをいうのだろうか。
それからの記憶は曖昧だ。
私はひとり、奥座敷で昼寝をしていたらしい。
ふっと目を覚ますと、薄暗い雛壇の最上段でからころと小さな音を立てて、橙色の灯りが回っていた。祖母がつけた電灯は消えている。
しばらくその灯りが回るのを見ながら、私はぼんやりしていた。それまで見ていた夢の続きかもしれないと思っていた。しかしその夢がどんな夢だったか、思い出そうとすると消えていく。夢の尾を掴めない。
『にな』
誰かに呼ばれた気がして、声のする方を見る。雛壇の後ろからのような気がする。
『にな』
もう一度呼ばれて、私は雛壇の横を通る。
雛壇を覆う赤い柔らかな布が、ゆらりと揺れた。
その隙間から、雛壇の下に、真っ白な顔。
『にな』
紅を引いたような鮮やかな唇が私の名前を紡いだ。
眉下で切り揃えられた前髪。
手招きをされ、私は近づいていく。
私が何を考えたのか、何も考えていなかったのか、それとも考えることを許されなかったのか、いまとなってはわからない。
---以上が、私がこの世ならざるものを見るようになった契機である。
小さな命。
自宅の寝室で僕と妻の淑恵と赤ちゃんの3人で過ごしている。
淑恵は難産の末、出産した。
女の子だ。
名前は多幸にした。
沢山の幸運があるようにと願ってだ。
我が子ながら可愛い。
顔は淑恵に100%似てもらいたい。
そうすれば美人で人生を有利に展開出来る!
ただし、スト−カ−などにつきまとわなければいいんだけどね…。
女の子の顔は高確率で父親に似る。
嘘だと思うなら調べて下さい。
僕に似たら普通レベルだな。
もしそうなら仕方がない。
娘には運がなかったと諦めてもらおう。
僕は多幸を抱きかかえた。
彼女が成人になるまでしっかり育てなければ…。
それまでは絶対に死ねない。
小さな体から感じる鼓動に喜びと共に責任を感じた。
「Love you」
と僕は多幸に言った。
「英語で?あなた、キザね」
淑恵が話し掛けてきた。
「色々あって最近毎日投稿してないから(書いて)のアプリのテ−マが溜まってんだよ。これで消化しょうと思ってね…」
「はあ?そんなズルは駄目よ!貴方の作品を楽しみにしてる方がいらっしゃるんだから!1つ1つ丁寧に書きなさい!!」
「ですよね。テ−マ(Love you)は思いついたので近日書きます。お楽しみに!?」
「ところで」
「ところで?」
「菱形の餅を食べる日だった」
「昨日だけど」
「そうだけど。伝統食だねー」
「売ってないけど」
「いや売ってるらしい」
「売ってないけど、場所によるのかなー?それか自分で」
「それは無理。餅は厳しいでしょ」
「うん、あ、ひなあられはだいたい売ってる」
お題『ひなまつり』
〈ひなまつり〉
桃の節句。女の子の幸福を、願うんだって。
でもわたし、しあわせと呼べるものの大半は、
あなたにあげるの!そう、決めてるんだよ。
今だって、変わってないの。
ひなあられの桃色のとこだけ、あなたの大きい
手のひらに乗せてあげた、あの日から。
だから、大人ぶるのはやめて、こっち向いて。
つやめく桃の花は、あなたに首ったけだもの。
「ひなまつり」
おめかしした子どもたちの笑い声
今日はひなまつり
子どもたちに平和を残せるだろうか
午後からも仕事だ
ひなまつり
ひなまつりを、よく知らない。
でも、ひなまつりに食べるらしいあの甘いお菓子。
色とりどりで、甘かった。
幼い時に大好きな人と食べていた。
そのときに貰った両開きの小さなひな壇。
…結局、今年も開くのを忘れてしまった。
ひな祭り
段飾りのお内裏様
お雛様の被り物が止まらずに
父がイライラしてたっけ
今の流行は2段まで
3人官女がにっこりと
大臣達はどこ行った
長持なしは今風だ
松屋町の人形店を巡ったのも
ずいぶん前だなあ
ひなまつり
女の子の雛人形が飾られる。
とても綺麗でどれも個性的だ。
小さい頃は少し怖かったその人形も今ではとても綺麗だと思える。
その子の成長とともにその人形に対する気持ちも変わってくるのだ。
みんなはどんな雛人形だったのか。
33.
『こうなるなら好きにならなきゃよかった。』
そんな後悔がたまに襲ってくる。
思ってもないこと言って傷つけて。
勝手に期待して傷ついて。
本当は大好きなのに。
こんなこと言いたくないのにっていつも後悔するのに。
自分の思いとは裏腹に言うつもりもなかった酷い言葉ばっかぶつけて。
大好きで、大切な恋人も、自分も傷つけて。
あーあ。また思っちゃう。
『こうなるなら好きにならなきゃよかった。』
『ひなまつり』
いつもは箱の中で
おひなとダイリン
ラブラブできるのに
ひなまつりだけは
離れて座りましょうとか
マジありえなくない?
【ひなまつり】*GL
「ゆっか〜、雛人形飾った?」
「あー、うん、ママがなんか張り切ってた」
真里が「いーなぁ」とボヤく。彼女の家は母親が早くに亡くなったので父だけの片親家庭であり、子供も真里と兄と弟の男ばかりの家だ。高校生になるくらいまではお父さんの姉、おばに当たる人が一緒に住んでいたが、真里が高校生になった頃に別居してしまった。今でも同じ市内にいるので会うこともある。彼女は、不思議な人だったな、と思う。
裕香の家はごく一般的な四人家庭だ。父母と弟の家庭で、両親は共働きながら、母の方がイベント好きなために、十二ヶ月間何もないということがほとんどない。六月の何もない初夏でさえ、何かしらやっている気がする。
そんなことなので、母はひなまつりの時期は毎年、早めの雛人形を出して、あれこれと飾り付けている。お代理様とお雛様だけの略式のものだが、曽祖母の代から受け継がれているとかで、十二単のあたりは見てみると多少古びているが、最近デパートで見かけたようなプリント生地などは使われていない。真里は、それを見に来るのを楽しみにしている。覚えばそれは小学生の頃からだった。家が近所で、親同士に何かあって交流があるのも手伝い、ひなまつりの前後に一緒に食事をする日がある。
「そっか〜」
「またマリ呼びなって、ママが」
「毎年呼んでくれるのマジ嬉しいんだけど」
へへへ、と照れ笑い。あとで何かちょっとしたいいお菓子を持ってくるところまで含めて定期イベント化している。
「ウチ男ばっかで、雛人形もどこにあるかわかんないしね、マジで嬉しいんだよね〜」
真里いわく、「確かにあるはずなのに、何度押入れやクローゼットを探しても見つからない」らしい。真里が三歳の時の写真には写っているのは裕香も見たことがあった。
「まぁいいんだけどね、出したら出したで、すぐしまわないと婚期が遅れるとかいうしさー」
ちょっとしたくだらない話でも話すように、彼女はそう笑った。それを、裕香は「だよねー」と笑って受け止めるが、ほんの少しだけ気持ちが沈む。母親はひなまつりが終わると、必ず翌日の夜には人形を片付ける。理由は先ほど真里が述べた通りだ。裕香の結婚遅れるの嫌だもんねー、と、彼女も朗らかにそう笑う。
しかし裕香の結婚というのは、きっと二人が考えるようなものではないのだ。
裕香は出て行った真里のおばさんが、同じくらいの年齢の別の女性と手を繋いで歩いているのを見たことがある。それも、数回。部活の帰り、寄り道で、少し遠回りして立ち寄るスーパーの横の暗い路地。相手の女性から頬にキスをされて、満更でもなさそうに微笑むおばさんを見て、裕香は自分もそっち側なのだなぁ、と自覚していた。
結婚という言葉に期待されるものを想うたびに、ほんのわずかに、呼吸が苦しくなるのだった。
大人になったら無関係
そう思っていたある年
オフィスですれ違った中年女性が
気持ちよさそうに歌ってた
あかりをつけましょぼんぼりに〜
自分に関係あるとかないとか
オフィスで鼻歌なんてとか
そんなちっぽけな思い込みが
気持ちよく砕けていった
#ひなまつり
前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
ここに今年の3月1日から、都内在住の稲荷子狐が、週休完全2日のスケジュールで、御狐修行に出されておりました
が、
実はこのコンコン子狐、まだまだガチモンの子供でして、初めて親元から離れて独りぼっち。
「さびしいなぁ。さびしいなぁ」
前回投稿分で、そんな子狐の寂しい夜に丁度良い、
優しくて噛み心地が良くてブンブン振り回せる楽しいオバケおもちゃが爆誕。
今回のおはなしでは、更に寂しさを解消すべく、
子狐ルームに何故か存在しておった隠し部屋のキッチンを使って、ご近所挨拶用のお餅を作ります。
そうです。「ひなまつり」です。
菱餅ヨモギ餅さくら餅。柏餅も作る予定です。
「うんしょ。うんしょ」
コンコン稲荷子狐は、五穀豊穣が大好きな狐。
稲荷狐となるために、お餅の修行もするのです。
東京の実家たる稲荷神社から、もち米とキネとウスとを持ってきて、お餅をつきます。
「ぺったん、ぺったん!もひとつ、ぺったん!」
稲荷子狐には、稲荷狐の餅つき歌がありました。
「このもち、子ぎつねつくもちにあらず、ぺったん!
みけの神、とこよにいますウカサマの、ぺったん!
かむほき、ほきくるほし、とよほきもとほし!」
母狐から教わった難しい言葉を、ぺったんぺったん歌いながら、由緒正しいらしいウスとキネで、お供物として貰ったお米をつくのです。
味を整えて、色を整えて、形も整えて箱にポン!
ひなまつりのお餅を4時間かけて作りまして、
最後に稲荷狐の御利益をコンコン少し振りかけて、
さあ、出発!
子狐がこれからお世話になるであろう、管理局アパート(仮称)のお隣さんに、ご近所さんに、
お餅を配りに、行きました。
「こんばんは!こんばんは!」
ピンポンピンポン!
コンコン子狐がアパートの、左隣の部屋のドアの、インターホンを鳴らします。
「となりに、ひっこしてきました!
菱餅ヨモギ餅さくら餅、どうぞ」
「あれ、俺、いつの間に奥多摩に帰ってきたっけ」
子狐ルームの右隣は、きっと、ここが隠しキッチンに改造されておるのでしょう、
しっかり施錠されておって、入れませんでした。
子狐ルームの左隣は、きっと、子狐と同じく東京から管理局に通勤しておるのでしょう、
寝ぼけたような様子をして、ドアを開けました。
「そうか。今日は、ひなまつりか……」
「ひなまつり!ひなまつり!
ウカノミタマのオオカミサマの、ごりやくたっぷり!キツネのおもち、どうぞ」
「俺、女じゃないんだよ」
「さくらもち!かしわもち!ごりやく、たっぷり」
「そうかそうか。うんうん。1個ずつください。
色違い厳選のオトモに丁度良いや」
おいくらですか。 おだい、いりません。
稲荷子狐の部屋のお隣さんは、最後まで頭がポワポワで、確率がどうとか御利益頼んだぞとか、
なにやら、最後まで言っておりました。
「こんばんは!こんばんは!」
ひなまつりのお餅をコミュニケーションツールに、
コンコン稲荷子狐は、次のお部屋へ向かいます。
「となりのとなりに、ひっこしてきました!
菱餅ヨモギ餅さくら餅、どうぞ」
御利益たっぷりのお餅は大盛況。
寂しさ解消を目的にお餅を作った子狐は、目的どおり、ちょっとだけ、寂しくなくなりましたとさ。
毎年準備であれこれ考えて、
どんな料理をお供えするか、
いつからおひなさまを飾るか。
組み立て方を毎年あれこれ考える。
7段飾りのおひなさま。
私が生まれた時に幸せを祈ってやって来たおひなさま。
子供の頃は、おひなさまを見に近所のおうちを友達と回って子供達はお菓子をもらう。
今はもう子供達はやってこない、
無くなってしまった風習。
それでも毎年ひっそり飾られるおひなさま。
年に数日間、あれこれ準備して毎年同じようなやり取りをして両親が飾ってくれる。
娘の幸せを祈って購入したあの日のことを、思い出したりはもうしないかもしれないけど、それでも毎年数日かけて準備をして飾ってくれる。
もう何十年も目にしていないけど、まだまだ毎年飾って欲しい。
愛情という目に見えないものを、無償の愛を沢山もらっていることを今では感じている。
ありがとう。
ひなまつり
桃の節句の食品売り場には
なぜか桜のお菓子がいっぱい
日本人は桜が大好き
桜 蛍 線香花火
風鈴の音 手のひらの雪
望んでも消えてゆく光と音に
自らの自然の命を感じる
お祝いをしよう 今日の節目に
陽射しを知る背中が
風を知る耳たぶが
礎を知る母指球が
時を知る律動が
今ここに生まれた証
ありがとう おめでとう
赤ん坊が動ける年齢になれば、畑仕事を手伝い、やがて家や冬の間の内職をやり、年下の子守をする。そして年頃になれば出稼ぎにいく。家庭を半ば強制的に作らされ、半年に一度帰ることで縛り付けるんだ。
それが娘だった場合。女余りだった場合。
彼女達が村に帰ってくることは稀だった。
つまりそういうことだ。
派手な色の着物に、
極上な物を持って、
お澄まし顔で佇む。
子どもが子どもであれるように。
これからも健やかに育ちますように。
子どもを過ぎた人間の祈りと、
神の恩寵が入り交じるこの日。
子どもたちに幸多からんことを。
「ひなまつり」
ひなまつり
女の子のお祝い
女の子は私だけ
お母さんが家に来た
お父さんは除け者
お母さんは散々私たちを裏切っておいて
都合の良い時だけ戻ってくる
私たちは許してはいけない
でも、嬉しかった
昔、お母さんと私が共依存していたからかもしれない
お母さんのいる家が、懐かしくて楽しかった。
もう、戻れない。
また壊されてしまうから。
また殺されてしまうから。
母はどんなに忙しくても、雛人形を飾っていた
私が生まれたときに、親代わりの人から贈られたという七段飾りの豪華な人形
親鳥縁が薄かった母は雛祭りを祝う余裕などなかった
そんな母にその人は「あなたも一緒に成長するんだから」と
その人に報いるために、毎年飾っていた、ちらし寿司を作っていた
母亡き後、雛人形たちは押入の中で出してもらうのを待っている
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うちも親王飾りが押入の中にずっと眠っています……
(同居以来、姑が「何で飾るのよ」とヒス起こしてたんで)