『はなればなれ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「転校しても、ずっと友だちだからね」
毎日のように一緒に登下校し、毎日のように放課後一緒に遊び、毎日のように大好きだった。
ずっと友だち、ね。親友くらいにはなれていたと思っていたのに、僕だけだったのだなと泣いてしまったのを覚えている。
にしても、彼女がどこに行ってしまったのか知らないし、知る由もないし、知る気もない。過去の人間関係に囚われずに、前に進もうと決意したから。だというのに。
「久しぶりだねっ」
彼女は突然目の前に現れてそう言った。
「ねねね、昔みたいにどっか行こうよ」
「特にここら辺行って楽しい所ないよ」
「いーの! 君と遊べるだけで楽しいんだから」
後ろ髪を引かれる思いになった。前に進もう進もうとしているのに、彼女は僕を過去へと引っ張る。どうして、と思う間もなく、彼女は僕の手を引いて歩き出そうとする。
「この街も随分かわ……」
思わず彼女の手を振り払ってしまった。折角割り切った思いを、思い出したくなかった。
「なん……で? 友だちだったじゃん」
本当に友だちだったのかね。もう僕は知らない。
「バイバイ」
じゃあね、ではなく、バイバイ。二度と会いたくないということだ。彼女にもう会うことはないから、僕はまたちゃんと前を向けるようになるのだ。
#はなればなれ
小学五年生。
四月八日はクラス替えの日だ。
私は、一年の頃から仲良しな久美ちゃんと同じクラスになりたかった。
校長先生の長くて眠くなる話が終わり、いよいよクラス発表の時間。五年生は皆、多目的室へ向かった。
誰と同じクラスになるのか。胸の中はずっと不安でいっぱいだった。
久美ちゃんとは同じになれなくても、ようこちゃんやマキちゃんとは同じになりたかった。二人とも久美ちゃんほどではないが、仲良しだ。多目的室でも当然隣同士に座った。
先生が一組から順番に名前を読み上げていく。
一組の時点では私も久美ちゃんも呼ばれなかった。でも二組の発表のとき、久美ちゃんの名前が呼ばれた。心臓がドキッと跳ねる。次に、ようこちゃんも呼ばれ、マキちゃんまで呼ばれた。私は祈りながら名前が呼ばれますようにと両手を合わせた。
けれど、私の名前だけが、最後まで呼ばれなかった。
私は四組。
ひどいショックだった。
もう一度クラス替えをやり直してほしいと願った。でも、そんなことが叶うはずもない。
久美ちゃたちと、
「休み時間は絶対に遊ぼうね!」
と約束したが、その約束は果たせなかった。
四組では席替えするためのルールで、休み時間はクラスの全員で遊ぶ必要があったから。
時々、遊んでいる最中にこっそり抜け出したが、すぐにクラスの子に見つかってしまい、久美ちゃんたちと遊べなくなった。話も全然しなくなって、仲良しだった子が遠くなってしまった。クラスが違っただけなのに、私たちははなればなれになってしまったのだ。
悲しくて仕方がなかった。どうして私だけ違うクラスなんだろう。久美ちゃんとようこちゃんとマキちゃんが更に仲良くなったように見えて、自分だけのけものになった気分だった。
だけど、いつしか四組にもいい友達ができた。毎日遊ぶことでクラスに絆も生まれた。だから私はいつまでも嘆くのをやめ、同じクラスの子と遊ぶことに専念したのだ。
この先もきっと、数えきれないほどの別れがあるだろう。そして新たな出会いもある。私はその出会いを大切にしていこうと胸に深く刻んだ。
離れ離れになるのは悲しいです。数十年後にはまた会えるかもしれないけど、どんなに親友だったとしても、記憶に残ってなきゃ意味が無いから
こんにちは♪
たまには普通にダラダラと書いていこうと思います♪
てかねぇ、今スッゴイ雨降ってる
実は僕ねぇ、結構雨好きなんですよ♪
もうどのぐらい好きかって言うと、
今すぐ家飛び出して濡れながら
踊り子のように舞い踊りたいくらい好き(笑)
え…!じゃあ今すぐ行ってこいって!?
え…!なんで?
え…!雨は好きだけど濡れるのは嫌いですけど何か!?(笑)
↑↑↑↑
矛盾炸裂ww
だって風邪ひくの嫌だし…今の時期の雨冷たいし…コロナ疑われるしw
嫌なことづくしだよね~(*´∀`*)。。♪
じゃあ雨好きとか言うなって感じだよね〜w
まぁそれは置いといて♪
この間、饅頭屋さんで初めて作りたてのあわまんじゅう食べたんですが
最初ビックリしちゃいましたよ!
作りたてってこんな熱いんだと思って
いつもスーパーとかでしか買ったことなかったから
いつものように頬張ったら、まぁ大変!
唇に張り付いたあわまんじゅうがジワジワと熱して
タラコ唇のように火傷するかとおもった(笑)
皆さんも作りたての饅頭食べるときは気をつけましょうね!!
え…!そんな失敗するのはお前だけだって??
ちょっとまってよぉ!!!!
そんな褒められたら僕照れちゃう!!もぅテレにテレちゃう(//∇//)
テレっちゃうーーーうーーうーーぅ…ぅ……
(笑)
はい、今日は終わりにしましょう…頭おかしくなってきたんでww
じゃねん(^o^)ノシ
私の心と身体が、離れ離れ。
私の気持ちと行動が、離れ離れ。
はなればなれ
私と心ははなればなれ。
私は元気なのに心は元気じゃない。
いつか一緒になって、
元気になればいいなぁ。
11/16 はなればなれ
四六時中一緒にいるわけではない。むしろお互いに単独行動を取っていることの方が多いはずなのに。
「何故どいつもこいつも、あいつの居場所を俺に聞く」
「なぜって、そりゃねぇ」
確実に知っているか、誰よりも正確に予想できるからなのだが、本人に自覚がないのだろうか。
少し考えた後、これは自覚がない方だなと一人頷いた。
「何を一人で納得している」
「たとえばね、戦さ場で乱戦になってはなればなれになったとするじゃん? どんなに混乱した状況でも絶対に見つけられるでしょ?」
「………………」
そんなことはない、と言おうとした口の形そのまま固まっている相手を見て、ほらね、と肩をすくめて笑ってみせた。
「そこで否定できないのが、あんたのかわいいところだよね」
絶対に見つけ出せるし、見つけ出す。そういう男であることを、仲間たちみんなが知っている。
11/15 子猫
青年の腕の中で、丸くなって寝ている子猫が一匹。胸元をよじ登ろうとしている子猫が一匹。上を向いてみゃあみゃあと鳴いている子猫が一匹。
「捨て猫を拾うヤンキーみたいな男が捨て猫を拾って来たな」
門前の掃き掃除の手を止めて淡々と所感を述べれば、相手はああ?と不満げな声を上げた。
「誰がヤンキーだ。あと捨て猫じゃねぇよ」
「誘拐か」
「子猫なんか誘拐してどうすんだよ……任務中、化け猫に押し付けられた。引っ越し先が見つかるまで預かっててくれだとよ」
「普通の猫に見えるが」
「山に捨てられた子猫を放っておけなかったんだと」
子猫たちが自力で生きていく力を身に着けるまでは面倒を見ようと思ったが、そのためにはもう少し安全な住処が必要だと考えたらしい。しかし子猫を三匹も抱えて山中を探すのは難しいと考えていたところに通りかかったのが、任務を終えて帰る途中の青年だった。
「有無を言わさず強引に押し付けられたんだよ。狐には報告済みだ」
寝ている子猫を起こさないように抱え直し、よじ登っている子猫を掴んで腕の中に戻し、みゃあみゃあ鳴いている猫の口に軽く指を添えて吸わせながら青年はため息を吐く。
こんな血生臭い匂いの取れない男に預けるなんてどうかしているとこぼした愚痴を、聞いているのかいないのか。もう一人は納得した様子でもっともらしく頷いた。
「なるほど、捨て猫を拾った化け猫の頼みを断れないヤンキーみたいな男か」
「増やすな増やすな」
「はなればなれ」
どうして どこへ
どこいった?この片割れがないと
ご飯が食べられない
お気に入りのお箸なのに
早く食べたいのに 割り箸もないのに
おーい、お箸の片割れどこ?
【はなればなれ】
中学校を卒業して高校生になったとき、
小学生の頃からいつも一緒に過ごしてきた
友達がそれぞれ違う高校に行き、離ればなれに
なった。
寂しさもあったけど、頻繁に会って遊んだり
もするから楽しいのは変わらなかった。
なにより、私にとって新しい環境で人に出会う
というのは、そう何度も経験できるものではない。
「一期一会」
大好きな言葉です。
きみが決めたことだから
もちろん応援するけれど
はなればなれになるのは
やっぱりさみしいな
#はなればなれ
#32
―――「はなればなれ」
はなればなれってなんだろう。
学校を卒業して、友達と離れた時?
彼氏・彼女と別れた時?
大切な人が亡くなってしまったとき?
いいえ。違う。
自分が「1人」なってしまったときだと思う。
だって周りに誰も助けてくれる人がいなくなってしまった時、せかいに1人取り残されて、
「せかいの人とはなればなれ」になってしまうから。
なら私は、何度もはなればなれに色んな人となってしまっても、「世界にはたくさんの人がいる。」「きっといつか話を聞いてくれる人がいる」と考えるようにしたい。
時間が迫り狂う中君は
「ねね、今度どこ行こうか」
と嬉しそうに問いかける君に僕は笑顔で答える。
「次は地上で会おう。今度こそ君を見つけ出す…きっと…いや絶対。」
もう枯れ尽くした涙を堪えながら伝えた。
君は目を隠しながら笑っていた。頬には一筋の光が見えた。
「うん、わかった。それじゃあまたね。」
彼女は光に呑まれ静かに消えた。
白い花が咲く美しい箱庭の中で君とまた出会えた。
君といる事が僕の幸せ全てだ。…………好きだ。
また何千年と時が経った時、君が僕を思い出すまで待ち続けるよ。
「はなればなれ」
遠く離れていることに
心は馴染み 痛みももうないけれど
悲しみは
繰り返しわたしの夢を訪れる
朝の冷たい雨のように
「はなればなれ」
#251
明け方のほの明るい世界で、薄衣を纏い眠る娘。
肩まで毛布を掛けると鼻にかかった子供のような声がした。
「おはよ…」
「うん」
寝てないのかとか問われる。寝れるわけがない。こんな半裸の彼女の隣にいて眠りこけられる男がいるものか。
「何もしてこなかったね」
「してほしかったのか」
返事はない。薄蒼い髪が垂れ下がってくる。寝起きの乾燥した唇が触れてくる。遠くで鳥の声がした。
「はなればなれ」 はなればなれになる朝
#はなればなれ
昨日は忙しくて更新できなかった。毎日書くつもりだったのに、一週間もせずに記録が途切れると凹むけれど、まあ、ここは私を待ってる人などいない場所だから良しとする(夫が休みの日は書かないから毎日投稿というのとは少し違うし)。
さて、今日のお題ははなればなれ。
生きてれば離れ離れになる人も増えていく。そろそろ半世紀近く生きなんとする私も、数限りなく離れ離れになった人が(たぶん)いる。覚えてないから多いか少ないかもちょっとわからないんだが。
「はなればなれ」と聞いて一番最初に思い浮かぶのが姉だ。
私は三人姉妹の末っ子で、一番上の姉とは9歳、真ん中の姉とは7歳離れている。そう言うと頼んでもないのに、「お母さんは貴女が欲しくて産んだのよ」とフォローされることもあるが、一番上の姉の時、母は20歳であり(19歳で結婚した)、上の姉2人は母にとって若い継母が育てたようなもんだから、文字通り私は欲して生んだ子なんだろうと思っている。父が男児を期待していたから、女児と知れたときに要らん子になった可能性はなきにしもあらずではあるが。
さて、そんなわけで、年が離れて生まれた私は当たり前のように母親べったり、分離不安激強、完全内弁慶に育った。
そして、姉たちからは、本当に可愛がられなかった。わはは。めちゃくちゃ暗くて喋らず何を考えているかわからない糸目の座敷童みたいな妹なんて可愛いわけないもんなぁ。
太っていること、暗いこと、喋らないこと、などを姉から指摘されまくり、それはそれは姉、特に真ん中の姉が怖かった。恐怖の対象でしかない感じ。
子供の頃の私といえば、小児アトピーがひどくて、水風呂と洗面所を磨くことが大好きな根暗、自分の意志を出さない(出しても否定されるだけだし)、どんくさい、好きなことは寝ること、勉強ができたわけでもなく、太ってて運動が嫌い。ああ、列挙すると可哀想だな。
姉はとても怖い人で、母方の叔母もそれに輪をかけて怖い人だった。今思うと、叔母は正義感の強いまともな人だったのだが、「きちんとしない」ことをよく怒られた。
母方の祖父母の家に行くと、みんなでご飯を食べる。その時に近所のコンビニまで飲み物を買いに行かされるわけだが、それがシャイガールで人見知りな私にはめちゃくちゃハードルが高かった。1人で行動するのが苦手なのだ。それをもじもじ嫌がっていると、叔母に強く叱責され、半泣きでコンビニに行ったことを思い出す。
2人の「怖い人」がいて、私は家でも祖父母宅でも縮こまって妄想の中に逃げていた。
次姉は私のことが明確に嫌いであり、捨てる予定の服が入った段ボールを見ていたら、「あんたにあげるくらいなら捨てる。触らないで」と言われたこともあるし、私が高校に入ったあたりからは件の叔母が結婚して家を離れたこともあって祖父母宅に住んだ(何せ都内だからそっちの方が良かったらしい)から、高校に上がってからは話した記憶もない。
そんなこんなで、私が知りうるかぎり、長姉が31歳で結婚した時に会って以来、はなればなれだ。
そう。次姉とは、20年以上会っていないばかりか、どこに住んでいるのかも知らない。
一時期母は姉の所在を調べようとしたらしいが、「なんか戸籍がウチから抜けてるから結婚したらしい」としかわからなかった。
時は経過し、母方の祖父の遺産相続でくそほど揉めて最終決着まで15年を要し、長姉が離婚して出戻り、私が結婚し、父は「遺言書を作りたい」と言うに及んだ。
遺言信託で公正証書遺言を作る段となって、はじめて次姉が東北の某県にいること、結婚して苗字が変わって○○になっていることがわかった。
今も次姉とははなればなれだ。向こうも会いたいとは思っちゃいないだろうし、覚えているかすら微妙。
私は何回か性格がぐいんぐいん変わり、アトピーも治ったし、母とそっくりな痩躯になった。
できれば、二度と会いたくないとも思う。相続関係が滞りなく済めば、会う機会もないから願いは叶いそうかな。
兄弟だから、姉妹だから、寂しくないの?
ないです。全然。
はなればなれも良いものよ。私自身子供がいない身だから遺言書をきっちり用意して、お互いの身元引受人とかにならないことを切に願う。
2023・11・17 猫田こぎん
はなればなれ
はなればなれになっても
必ず再会できる
そういう人
あなたにはいますか
#はなればなれ
はなればなれって
辛いよね
それを埋めようとするのが
言葉であって
言葉は難しくて
特に今は文字での会話が多いから
尚更難しい
なので、
文字での会話には必ず
「ありがとう」を添えるようにした
はなればなれ
?新憲法発布(現行の実状に合致した)
第一条 天皇は国民バラバラの象徴!
第二条 言論の自由
出版その他一切の表現の自由
は、これを保障しない!
第三条 国民だけは納税の義務を負う
企業は脱税の権利はない!
第四条 国民だけは勤労の義務を負う
首相は国会で居眠りしてもか
まわない!
第九条 武力の行使は、国際紛争を
解決する手段としては、
永久にこれを放棄しない!
前項の目的を達するため、
陸海空軍その他の戦力は、
これを保持する!
第十一条 基本的人権は、永久の権利
として、現在及び将来の国
民に与えられない。
59作目
どちらかと言うと尊皇攘夷派の
徳博😯
追記
子供の頃の学校の先生が言っていた。
「戦前は大政翼賛で皆な仲良しだった。でも、それが敗戦原因なので戦後はバラバラ政治にした」とか?
その先生たちはアメリカに負けた派の講和派だった。
自分は戦争続行派のあと三カ月続けば米国本土に重大な危機をもたらせ帝国が勝利してた派
(帝国の勝利は直後の連合軍の調査団や米国の現在の軍事専門家が皆認めているらしい)
超右で保守的な人達は、「共産党の故、宮本元委員長は昭和天皇の敵将だから長生きさせる」と言っていた。
107歳?ぐらいで亡くなった?
赤桟敷して“呑む打つ交う”から除名してたみたい!(打つはゴルフ⛳とかも?)昔の人は粋だね!お前百までワシャ九十九まで!昭和天皇は98歳?
若いのが、迂闊に関わると青叩きされてた。
今日はここまでで おわり
#103 はなればなれ / たそがれ(10/1)/ 通り雨(9/27)
もっと人の世の境界が曖昧であった頃。
都に、刀に憧れるおなごがおりました。
当時の刀は造るも振るも男の道。
それでも未子の娘に甘い鍛冶屋の父と道場に住み込みの次兄は、小さい子の言うところだからと、したいようにさせていましたけれども。
やはり、色んな意味で力の弱いおなごには大変厳しい夢でございまして、
ある日とうとう、見かねた母が言いました。
「そろそろ刀はやめて、娘らしく大人しゅうなさい。このままでは嫁の貰い手がなくなってしまうよ」
暇があれば鍛冶場に入り浸り、そうでなければ刀を振るようなおなごでは、とてもとても、と。そういうわけです。
いつか言われる日が来ることは、おなごも頭では分かっていたけれども。まるで自らの肉体と魂を離ればなれに引き裂かれるような心地に、おなごは泣きながら家を飛び出してしまいました。
泣いて走って、走って泣いて。
さすがに疲れ果てて自然に涙も乾いた頃には。
「ここ、どこ…?」
広い都のこと、気づけば右も左も分からぬような通りに立っていたのであります。
現代に比べて灯りの弱く少ない時代ですから、
日の傾くとともに暗くなっていきます。その早いことといったら。
雲のない夕暮れの、その終わり。
空の端に赤が残るものの、
もう互いの顔も見えない。
それが、たそがれの時でございます。
おなごが心細さに顔を俯け、白いうなじが晒されますと、
そこを目掛けて、ひと雫ぽたり。
「雨?でも雲は…」
ハッと顔をあげれば、
不思議なことに人通りは既になく。
ぽつり、ぽつりぽつりと増えていく雨が、
女子の着物から心にまで、恐れと共に冷たく重くしみ込んでいきます。
言い知れない何かを感じたおなごが後ろを振り返りますと、少し離れたところに長身の男が立っておりました。
雨と日没で顔は見えず、しかし立ち姿に気品があり、美丈夫であるように感じられました。
「あなたさまは…」
「迷子か」
短く男が問いかけました。
「恥ずかしながら…でも、まだ帰りたくないのです」
「ふん…心も迷子とみえる」
「母に、女に刀の道は成らぬと。しかし私には、魂が求めるものを離すことができないのです」
本来ならば女子にとっても家にとっても恥である夢を、この男には素直に話してしまいました。
しばらく、沈黙が流れていきました。
やがておなごの視線が男から足元へ下がり、やはり諦めねばならないのか、と心の中で問いかけたときでございます。小さくではありますが男から声がかかりました。
「…は、なれば、なれ」
「え?」
「お前は…なれば、なれと言ったのだ。お前は、刀を捨てたくないのだろう?なれば、おれの嫁になれ。おれは人の世とは異なる処にいる。故に刀の道に進もうが咎める奴などいない」
驚きに再び視線が男へと戻りました。
突然の求婚、しかも人の世と違うとは何のことでしょう。
じっと見つめてもおなごからは顔が見えません。だからこそ男の話が実感としておなごの中に入ってくるのです。
(選ばなければいけない…人か、刀か…)
「なれば…」
(お父様、お母様、兄様たち、ごめんなさい、ちよは、ちよは…)
「そこに刀があるのなら、なります。あなた様の嫁に」
「よかろう、名は」
「ちよにございます」
「ちよ、千夜だな、良い名だ。じっとしとれ」
男は、無造作に近づいてきました。ちよの避ける間もありません。このまま家族とは別れかと、ぎゅっと目を瞑りましたが。
「迎えに来る。家のものと別れを済ませておけ」
ふうっ。
感じたのは、位置的には男の吐息なのでしょうが。
それにしては湿りの無い風が、雨でじっとり重く濡れていた髪をさらり、と揺らしたのでごさいます。
慌てて目を開けると、男もなく雨もなく。
ちよの髪も着物も、先ほどまで濡れていたとは思えないほど乾いています。
それだけなら、日暮れの通り雨が見せた夢か幻かといったところでしたが。
男の迎えに来るという言葉。
何より、いつの間にか小指に巻き付いた赤い糸。
それが、ちよをごく弱い力で引っ張っているのです。まるで、道を教えるように。
これに従えば家に帰れるのでありましょうが、
同時に人の世との別れの道にございます。
しかし、ちよは迷いなく糸の示すとおりに歩き出したのでありました。
---
語り口が統一できてなかったので修正しましたが、
昔話風の三人称風になりました。難しいですね笑
【はなればなれ】
「好きです」
そう言った彼
「私も好きです」
と言った私
今
「好きだ」
と泣く彼と
「好きよ」
と泣く私
彼の名前の彫られた墓に
手を合わせた孫たち
そしてまた
「ありがとう」
と泣く彼と私