『ないものねだり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
無いものばかりを欲しがるより、
有るものに感謝をせねばね…
(ないものねだり)
3月の最後。年度末最終の1週間が始まった。
これが終わったところで、学校みたいに春休みが心の疲れを癒やしてくれるでもないし、正直な話、また次の新しい年度が始まるだけでしかない。
たったそれだけの1週間が、また始まった。
職場の昼休憩の休憩室では、相変わらずお昼のニュースが、ただただダラダラ、流れ続けてる。
今日の話題は、春休みに行きたい都内のレジャー施設と、イベント情報。
都心の近場で森林浴とキャンプができる。そんなキャッチの小綺麗などこかで、かわいいレポーターが、森林をバックにクレープにかじりついていた。
いいなぁ。
私も経費でスイーツとお肉食べて森林浴したい。
「先輩って、東京来る前、ああいうことしてたの?」
田舎出身という先輩に、ちょっとだけ八つ当たりしてみると、少し顔を傾けて、意味と意図を推測して、
「似たようなことであれば。釣りはやらなかったが」
魚釣りのプールに移動を始めたレポーターを観て、
「公園には山菜が豊富だったし。遊歩道はほぼ山か森で、散歩場所には困らなかった」
春は自分で山菜採って肉巻きだの天ぷらだのに、な。
なんて、それがあたかも、普通の出来事のように。
いいなぁ。
きっと1個500円とかの山菜タダで食べてたんだ。
「なんで東京なんかに出てきちゃったの」
「諸事情。なにより向こうには仕事と金が無い」
「人間、仕事とお金のために生きてるワケじゃないよ。きっと精神衛生の方が大事だよ」
「ごもっともだが、私からすれば、何でも手に入る東京が、田舎の自然を欲しがるのと一緒に見える」
「隣の芝が青いのかな。ないものねだり、みたいな」
「たしかに」
適度に田舎で、QOL高くて、仕事もいっぱい選べる場所、どこかに無いかなぁ。
ふたりして似たことを考えたらしく、私と先輩で、ほぼ同時にため息が出る。
昼休み終了まで残り20分。私達はまた、お弁当を突っついて、時折おしゃべりする行為に戻った。
『ないものねだり』
自分の願いが
ほんのわずかでも
誰かの希望に繋がりそうなら
“ないものねだり”
やってやろうじゃないの
電気だって、飛行機だって、電話だって
きっと、“ないものねだり”から、産まれたんだ
私の“ないものねだり”が、誰かの希望と
つながり、虹になる
その虹を見た人が
あぁ、素敵だな、ドラマチックだなって
希望がふわっと湧いてくる
そんなふうになれたらいいな
(そろそろご飯かな)
宿題も一段落し、居間に行ってみると、コタツで横になっている父がTVを見ているようだった。近づいてみると予想通りの熟睡ぶりだった。
「消しといて!」
キッチンでカレーを作っている母が大声で短く叫んだ。キッチンから居間までかなりの距離がある。僕は肩をすくめた。
(起こすだろ…)
リモコンに手を掛けようとするとそのCMは始まった。
宇宙からの攻撃で大破壊されるニューヨーク、洞窟のなかでドラゴンと戦う原住民の女性、レースでライバルを追い抜こうと必死のマンガキャラクター…
一つ一つの流れる細かい内容は頭に入って来なかったが、そのCMは短時間で視聴者にこれでもかとダイナミックな情報を与えていた。
画面に釘付けになり、全身に衝撃が走っていた。数週間食べていない人にご飯を与えてみるとこんな感じなのだろうか。
CMが終わった瞬間に父のことなど気にせずキッチンに向き直り母に絶叫した。
「プレステ5かっけ~!」
遠目からでも母がカレー作りの手を止め腕組みをしながら僕を睨んでいるのが見えた時、僕は必死で笑みを浮かべて見せた。
「ねえねえ、あれとってえ」
棚の上にある本をとってもらおうと後輩に強請る私。
「……いいけど自分でとれるじゃん」
「と、とれるけどさぁ。でも憧れるじゃん。背が小さくて届かないから、あれとってぇ♡ って言うの」
身長の低い子が羨ましいと思っていた。
身長が高いと自分でなんでもとれちゃうし、バスや電車のつり革によく頭をぶつけるし……いいことなんてひとつもない。
「そんなこと言って、背が小さかったら小さかったでチビってからかわれるからやだって言うじゃん」
「えー、そんなことないよー」
「そんなことあるの。そういうのをないものねだりって言うんだよ」
後輩のくせに生意気で、私よりも背が高くて。
でも……そうか。
「ないものねだり……か」
言われてみればそうかもしれない。
背が高ければ低い子を、背が低ければ高い子を羨ましいと思ってしまう。
身長を伸ばす方法ならともかく、身長を縮める方法なんてないし。
「そういうきみは、ないものねだりしてないの?」
「あるある。もっとかっこよくなりたいでしょ、モテたいでしょ、彼女ほしいでしょ」
そんなこと言って、顔面強くて先輩からモテまくってるの知ってるんだから。
彼女はいないみたいだけど。
ていうか、彼女がほしいならいくらでも選べるじゃん。
どうして誰とも付き合わないんだろう。
「……嫌味?」
「あは、やっぱそう聞こえる?」
棚の上にある本を私に渡すと、急に真面目な顔をする。
「そんなのはさ、本当にモテたい人からモテないと意味がないんだよね」
あまりの美しさに思わず本を落としそうになる。
……瞳の色、綺麗だなぁ。
「モテたい人が……いるの?」
「どうかな。今のままで充分かも」
きっと高嶺の花が好きなんだ。
手の届かない存在に憧れて、 やきもきしてるんだ。
「うまくいくといいね」
#15 ないものねだり
ただそこにある青
空が青い。
でも、空気中は汚染物質が漂っている。
海も青い。
でも、人は海の中で生きてはいけない。
地球は青い。
でも、あの青の下では血が流れている。
ただそこにある青。
何も知らなければ、本当に綺麗な青。
でも、それは残酷な青。
三日月と半月が交互に昇る夜空に
立っていた
欲しいものばかりが増えていって
目に映るすべてが欠けて見える
たまに一瞬すべてが満たされても
すぐにまた他の欲望で影を作ってしまう
ないものねだりが私のデフォルト
だけどそれでいい
満たされ続けたらきっとその先は
怠惰で夢を描けないわたし自身になってしまうから
#ないものねだり
自分で選んだものなのに、他のひとが手にした別のものを見ると、途端にそちらの手のなかにあるものが欲しかった。手に入れた満足感が急速に萎む。
萎む、なんて柔らかすぎる。急に消えてしまう。
自分が欲しかったのはこっちではなくあっちだった! と天啓を得た気持ちになる。
そんなものありはしないのに。
幼い頃から何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返してきた。
きょうだいの買ったお菓子のほうがいい。
きょうだいの買ってもらった服がいい。
お年玉の袋はこっちじゃなくてそっちがいい。
食べたかったのはエビフライじゃなくてそっちのハンバーグ。
ランドセルはこの色じゃなくてクラスの子が使ってる色のほうがいい。
欲しかったノートは、ペンは、筆箱は、裁縫セットは……。
こんな髪型じゃなくてあの髪型がいい。
反省するはずなのに、その気持ちの前では反省の記憶なんて吹っ飛んでしまう。
気がつけば友達なんていなくて。
付き合いのある人からは私物をあまり見せられなくなって。
陰では浮気性、横恋慕のプロ、不倫するために生まれてきたと囁かれるようになっていた。
どうして最初の欲しいで我慢できないのか、他人の手にあるものがあんなにも何十倍もの魅力を放っているのかわからない。
ほんとうは。ほんとうは――欲しいと思ったもので満足できるにんげんでいたかったのに、また誰かの隣で幸せそうにしているひとを見ると、欲しくなってしまう。
#ないものねだり
引越まであと2週間と迫った。
これを機に断捨離を進めてミニマリストにでもなってみようかと思いながらも家族4人分の15年で貯まった荷物は相当だった。
「ちょっとこれ見て。」
と弟が姉を呼び止める。
「またサボって作業が進まないじゃん!どれ?」
弟は1冊のアルバムを開いて姉に見せる。
「これ!やばくない?韓国の女優さんみたいに綺麗。」
「あーなんか分かる。色白だよねぇ。めっさ美人さん。」
ひとしきり盛り上がった所で
「母さんこれ誰?」
と覗き込んだ私は二十歳の頃の自分の写真を見た。
「母さんの昔の写真だね。」
「はっ?マジで。」
「今は見る影もなくて悪かったわね。まっそこら辺で作業に戻って下さるかしら?」
弟は俺は母さん似だったのか?とかなんとかぶつくさ言いながら部屋に戻って行った。
「いーなぁー絶対モテてきたな。」
「ホラホラお母さん、あなたのパッチリした黒目大好きよ。お父さん似よね。」
と姉を褒めながら心の中の嫉妬を隠していた。
何よりも溌剌として眩い位の魅力的な若さや引越の荷物を持って何往復しても息が上がらない体力、どれを取っても自分が失ったものばかりで年を取るのに素敵な年の重ね方ってなんだろう?って考えても
自分に自信を無くした状態では素敵どころかみっともないだけだろう。
ない物をねだっても仕方あるまい。自分の弱さや醜さを認めて立ち上がり失敗を恐れず諦めずに何度でも無様だろうがチャレンジする。そんな姿を見た子どもが反面教師にするか背中を追いかけてくれるか。人の成長を応援する事が生き甲斐になっていくのだろう。
『ないものねだり』
私は髪の毛量がとても多い
いくらボリュームが収まって欲しいと願ったか
誰かにとっては贅沢な願いかもしれないが
そして自分が年老いたら若き頃を羨む
私はいまダイエットをしている
体重が減って欲しい
これもまた太りたい誰かにとっては贅沢
人間はいつもなにかを求め羨み自分を憐れに思っているらしい
自分に何が与えられているかも考えずに
自分が持っているものをもう一度見てみようよ
みんなが持っていないものをあなたは手にしている
自分に配られたトランプでやるっきゃないのさ
by スヌーピー
『魚になれないわたしたち』
水槽の魚を眺めるあなたとわたし 息をするのが窮屈だから魚になりたいとあなたは言った 魚になってもわたしたち えら呼吸に慣れなくて結局窮屈な思いをするよ とはいえ水中は一見、素敵に見える
陸に上がりたい魚がいたら ぜひともお会いしてみたい きっと話が弾むはず
ないものねだり
子どもの頃はよく、
「ふつうってどんなだろう」
とか思ってた。
周りの子は
「お姉ちゃんがほしかった」
「妹がいたらなあ」
なんて言うけど。
私には、いわゆる
「普通のきょうだい」がいない。
だから家ではいつも、ひとり遊びが大半。
トランプもなければ、サッカーボールもない。
代わりとなると、人形やぬいぐるみくらい。
その頃はきっと
「普通が欲しいか?」
なんて、聞いてくる人なんていなかったけど。
今聞かれても、私の答えは同じ。
「わからない」
なんとなく思う。
ふつうならふつうの。
こちらにはこちらの。
それぞれのねだり事があるのだろう。
そんなことを本気でねだっても、ただ虚しくなるだけで。
小学生には、なんと酷な願いか。
大人になっている今となっては。
現状を、わりかし受け入れている自分がいる。
とはいえ。
ふつうに恋焦がれ、家を離れる人も居る。
逆に、受け入れ、その道に進む人も居る。
どちらが善か悪かなんて、そんな単純な話ではない。
ないものねだりとは、とても贅沢な
「夢」だ。
若い頃は、自分に無いものばかりが目についた気がする。
一番は、可愛い容姿じゃ無い
二番は、明るい性格じゃ無い
三番は、運動神経が無い
四番は、人に話せるような特技や趣味が無い
五番は、、、
と、考えただけで憂鬱になる…挙げればキリがない。
そんなこんなで私の自己肯定感は0に等しく、
それを埋める為に、皆に嫌われないように、
イイ子を演じてきた。
昔も今も、私に対する周りの評価は『優しい人』だ。
しかし、結局偽りの自分を一生続けられるわけも無く。
社会人になって、それから何年も経ってから、
やっと、人は人。自分は自分。
自分の人生は自分で舵取りするもの、と気がついた。
気がついたというか、そう考えないと耐えられなくなった。
周りに迷惑をかけるのは論外だけど、
自分の人生は自分の生きたいようにしていいらしい。
だって皆そうしているから。
私がどんなに親切にしても、
それを利用する人が大半だったから。
人は私に無いものを持っているけど、
私も人に無いものを持っている。
しかも、結構良いものを持っている。
ないものねだりも悪くないけど、
配られたカードで勝負するほうがずっといい。
生かすも殺すも、自分次第。
▼ないものねだり
『ないものねだり』
幸せっていいな、楽しいっていいな。
おかあさんがいていいな、嬉しそうでいいな。
暖かい布団で寝れていいな、話し相手がいていいな。
なんでもないものねだり
#ないものねだり
ここでなく本当の身はどこかには
きっとあるはず想いは霧散
君の事知ってるつもりが裏切られ
持て余してるないものねだり
#ないものねだり
欲しい物があるんだよ
買えばいいだろそんなもの
買うお金がないんだよ
仕事したらいいじゃん、掛け持ちでもなんでも
そんな時間がないんだよ
じゃあ時間を作ればいいだろ
やること多くて無理だよ
やること削ればいいだろ
そんなの削ったら僕が僕じゃあないよ
ないものねだりなんだよアンタはさ
お金貸してくれないかな
嫌だお断り
そこにある日々 ただ消化
起きがけに見る かの夢は
ただ、ただそこに あるだけか
手を伸ばせれば 届くかな
力のこもる 指先は
君には無理と 呼びかけた
『ないものねだり』
ないものねだりばかりしていると、心がいつも満たされない気がしてしまう。
心が満たされないと、余裕もなくなるし、運気も下がったりしそうに思えてならない。
ないものは、ねだるのではなく、自らの努力で手に入れるべきだし、努力しても手に入らないものは、諦める決断も大切かと。
恋人がいる同僚が羨ましい。
結婚した知人が羨ましい。
子どもがいる友人が羨ましい。
絵が上手いあの人が羨ましい。
書籍化したあの人が羨ましい。
私に何かないかと。
両手を広げて、閉じて、また広げて。
何もないことに、ひとりまた、涙する。
でも、きっと。
ひとりで、自由に、やりたいことをやる。
こんな私を羨む人が、いるはずだ。
隣の芝生は青い。
隣の花は赤い。
皆、自分にないものが眩しく輝いて見えるから。
いつもいつも、何かで満たされた箱を抱いて。
何もないって、嘆いてる。
【ないものねだり】
あの子はかわいい
あの子は運動出来る
あの子は背が高い
私が持ってないものどうしてあの子が持ってるんだろう
あの子が持ってるものどうして私が持ってないんだろう
あの子が持ってないもの私が持ってる
私が持ってるものあの子は持ってない
きっとみんな同じこと考えてる
かけてるモノがあることで私になる
持ってるモノがあるから私である
完璧じゃない私だから愛される