りゃん

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引越まであと2週間と迫った。
これを機に断捨離を進めてミニマリストにでもなってみようかと思いながらも家族4人分の15年で貯まった荷物は相当だった。
「ちょっとこれ見て。」
と弟が姉を呼び止める。
「またサボって作業が進まないじゃん!どれ?」
弟は1冊のアルバムを開いて姉に見せる。
「これ!やばくない?韓国の女優さんみたいに綺麗。」
「あーなんか分かる。色白だよねぇ。めっさ美人さん。」
ひとしきり盛り上がった所で
「母さんこれ誰?」
と覗き込んだ私は二十歳の頃の自分の写真を見た。
「母さんの昔の写真だね。」
「はっ?マジで。」
「今は見る影もなくて悪かったわね。まっそこら辺で作業に戻って下さるかしら?」
弟は俺は母さん似だったのか?とかなんとかぶつくさ言いながら部屋に戻って行った。
「いーなぁー絶対モテてきたな。」
「ホラホラお母さん、あなたのパッチリした黒目大好きよ。お父さん似よね。」
と姉を褒めながら心の中の嫉妬を隠していた。
何よりも溌剌として眩い位の魅力的な若さや引越の荷物を持って何往復しても息が上がらない体力、どれを取っても自分が失ったものばかりで年を取るのに素敵な年の重ね方ってなんだろう?って考えても
自分に自信を無くした状態では素敵どころかみっともないだけだろう。
ない物をねだっても仕方あるまい。自分の弱さや醜さを認めて立ち上がり失敗を恐れず諦めずに何度でも無様だろうがチャレンジする。そんな姿を見た子どもが反面教師にするか背中を追いかけてくれるか。人の成長を応援する事が生き甲斐になっていくのだろう。

『ないものねだり』

3/27/2023, 4:15:59 AM