『ところにより雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
こころ
ところにより雨
月華
『今日の天気は、晴れ。ところにより雨になるでしょう。』
朝食を食べているとそう流れた。窓を見てみると雨が降っている。今日は、少しジメジメした空気で嫌だと思った。朝食を食べ終え支度をして家を出た。今日も、私は生きていく。雨だろうが晴れだろうが。私は、鍵を閉めて家を出た。
晴れ晴れ幸せな心の内
ところにより雨
人は誰しも矛盾を抱えてるからさ
ところにより雨
なんて天気も愛してやりたい
雨も晴れもひっくるめて愛せれば
素敵なことが起こる気がする
こんにちは
わたしの街はどんより
とまではいかないくらいの曇り空です。
あなたの街はどうですか?
『ところにより雨』
今日は卒業式。天気予報は晴れ。
清々しい気持ちで最後の下校をする。
あたたかな春の風を感じながら思い出に浸っていると、空は晴れているのに雨が降ってきた。
あたたかくて優しい雨。
「よく頑張った」
あたたかな雨がそう言ってくれている気がした。
雨。
雨が降ると少し悲しさが増す。
あの日なことを思い出すから。
雨が降ると景色が違って見える。
雨の後には虹が出る。
悲しさの後には、違ったものを見た後には必ず何かがある。
明日は晴れますように。
『ところにより雨』
いつもありがとうございます。
バタバタしてしまって下書きのままですが、供養させてください💦
ト書きガッツリ飛ばしているため、読みにくくてすみません😭
情緒がゲリラ豪雨みたいな感じで書きたかったヤツです。
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【彼女の家、寝室】
「お、俺はあなたのことがこの先もずっとずっと大好きです!!!!」
だぱだぱと涙を流し、彼女の至近距離で彼女への思いの丈を叫んだのは俺である。
しかし、対して彼女の反応はドライだった。
「うるさ」
人の一世一代の告白に対して、どういう評価をしてくれやがる。
物憂げにため息をつく彼女は、純真無垢なかわいさとははまた違ったミステリアスな魅力を醸し出していた。
「情緒どうなってんだよ」
「あなたこそ、俺の気持ちを知りながらどこに行くつもりですか!?」
「どこって……。だから、秋葉原まで行くって、この間から何度も何度も何度も言ってるよね?」
「俺は認めてませんっ!」
「あのさ。なんで秋葉原に行くだけでれーじくんの許可が必要なの?」
「あなたの恋人が俺だからですがっ!?」
忙しない時期にもかかわらず、彼女はここ数日、秋葉原に足繁く通っていた。
理由はわからない。
秋葉原にはクラシカルから萌えを追求したアイドル路線まで、あらゆるメイドが群をなしているのだ。
なにがきっかけになったのか、去年の秋頃から彼女がメイド喫茶にハマり始めていたのは把握している。
今月に入ってからは特に顕著になった。
というか、いきなりブームが大爆発したのである。
季節が移り変わり、少しずつ日が長くなってきたことをいいことに、わざわざ仕事終わりに寄り道までして秋葉原に通っているのだ。
「俺が恋人でいる限り、あなたに浮気なんてさせるつもりはありませんよ!?」
「……じゃあ、一緒に引き取りに行く?」
「はい?」
「やっとポイントが貯まったんだー」
「は? ポイント?」
「そう! 40cmの等身大ハムハムちゃんのぬいぐるみ!」
聞けば、メイド喫茶と女児向けアニメがコラボしていたらしい。
彼女は、そのアニメのマスコットキャラクターである、ハムスターを模したキャラクターを激推していた。
メイド喫茶の来店ポイントを貯める(まぁまぁな金額を使わないと貯まらない)と、ちょっとデカめのぬいぐるみと交換できる仕組みである。
「ついでにアニメの原画展示会のペアチケットも取ってあるから、一緒に行く?」
「ペアチケットって……、俺がついて行かなかったら誰と行くつもりだってんですか」
「ん?」
「行かないの?」
「行きますけどもっ!!」
「だよね」
淀みなく言い放つ彼女のキラキラした笑顔といったら。
眼鏡のマイナスレンズを介してしか彼女を捉えられないことが悔やまれる。
「3日分あるから、よろしくね」
はああぁっ!?
俺に愛されることにすっかり慣れきった彼女に心臓を撃ち抜かれ、俺は胸を押さえた。
「ありゃ。さすがに女児向けアニメだし、3回もはヤダ?」
「いえ。今日含めて、3回もあなたからデートのお誘いを受けられることに感動しています」
「そ? じゃあ早く行こ」
「今ですか!? ちょ、さすがにこの格好はちょっと……」
彼女相手に、毛玉のついたパーカーのまま出かけるなんて万死に値する。
せめて準備をさせて欲しいと訴えたら、彼女はぷっくりと頬に不満を含ませた。
「……早くして」
「5分で支度しますっ」
彼女の家に置き始めた私物の中から、俺は急いで外に着ていけそうな服を掘り出す。
メイド喫茶にてぬいぐるみを交換したあと。
いつの間にか彼女に推しのメイドができていて、見せつけるようにぬいぐるみを抱えながらチェキを撮り始めた。
「いやぁあああああっ!!!!!!」
「れーじくんうるさい」
彼女がちょろいのは俺に対してだけではなかったと知り、泣き叫ぶこととなる。
ところにより雨
「こっち結構凄い雨なんだよね、そっちはどう?」
敦は1時間半離れた寂れた地方都市へ営業車で出張中だ
ラジオからはタイミングよく『はじまりはいつも雨』が微かに聴こえていた
その日から敦からの連絡は1週間なかった
事故なんじゃないかと心配で寂れた地方都市の警察へ電話の問い合わせではなく
足を運んで問い合わせた
だけど、その日は大きな事故等無かった
敦のLINEには私の未読のLINEが続く2週間目
敦の会社まで行ってみた
敦は営業車から降りて同僚と笑いながら話して
社内へ入って行った
私のしている事ってストーカーと言うのかと
感情と世間の常識で落胆する
2ヶ月目、敦からLINEがあった
「仕事が忙しくて、不機嫌な愛想のない返信をしたくなかったんだよね」と気を使った風を装う
『どれだけ心配したのかLINEの内容で分からないのかこのバカ男』
このままスルーしようかと思ってた
また同じことをされるのに
「私…急にLINE途絶える人って無理なの」と返信した
「友だちにそんなに頻繁にLINEしないよ〜
真美にはLINEしてる方だよー」と
何度も体を重ねた男に言われた
確かにセックスしたい日はあるよ
でも私が会いたい日は
会えないセフレなんて要らないよ
「私は彼氏だと思ってたよ…だから会いたくても我慢してた、彼氏だからそれでも幸せだった、敦さんは自分のやりたい時に私と会っていたのね、都合の良い女だったのに自分で手放すなんて……」
本当は……にバカねと言いたかった
そう返信してブロックした
女に本性晒すなんてアホだ
ざーざーと、桜並木が雨に濡れる。
お花見をしようとする者はおらず、そこに居たのは、大きなリュックサックを背負った者のみだった。
人間の様な二つの腕と、二つの足。
頭があって、顔があって…殆どのパーツは人間そのもの
しかし、皮膚が泥の様に茶色く、コンクリートの様に固い。まるで傷跡の様に、灰色が身体中に刻まれている。
目は糸目で、裏切るだろ、と総ツッコミを喰らいそうな見てくれだ。
「ふぅ…天気予報を見なかったバチが当たりましたね」
小さな小屋に避難していた彼は、雨に濡れた商品達をタオルで拭いている。
一つ一つ壊れていないかを確認し、時間をかけてそれを終えた後に、自身の体を拭き始めた。
一連の行動が終わっても尚、雨は止んでいなかった。
商品をリュックサックに詰め込んでいると、服のポケットに入れていた、スマホが鳴り始めた。
急いで手に取り、通話ボタンを押す。
「もしもしアース!そっちは大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。多少雨に濡れましたが、幸い小屋があったので、そこで雨宿りをしています」
「そっか、ならいい。近くにいるから、傘持って迎えに行くからな」
アースと呼ばれた彼が、断りの言葉を伝える前に、電話は切れてしまう。
呆れと嬉しさを混ぜた微笑を浮かべ、ぼんやりと外の雨を眺め始めた。
雨に呼応するように、彼の耳に幻聴が聞こえ始めた。
それは家がミシミシと揺れる音、ブロック塀が落ちる音、遠くから聞こえた大人の悲鳴、そして自身の足が下敷きになる音。
どれほど時間が経ったのだろうか。
雨は止まず、幻聴も止まらない。
しかし、その中に知らない音が混じった。
「アース!どこだーー」
幻聴が、すっと止まる。
雨が、弱くなった。
お題『ところにより雨』
『知らずに泣いている』
「あの男が死んだ」
呼び出されてそうそう、そう言われた。
「…そうですか」
私がそう返すと彼はこちらを見た。その目はなんだか、何かを確かめるような目付きをしていた。
「…何も感じないのか?」
「…いえ、別に」
私の言葉に彼は「そうかそうか」と言葉をこぼす。その声には、楽しさが含まれているような気がした。
……別にと答えたが、それは嘘だ。「あの男が死んだ」という言葉を聞いた後から、頭の中に声が響いてるのだ。
「嘘だ!」「なんで…!」とか。今はずっと泣き声が聞こえている。
なんで、ショックを受けているのか、泣いているのか、私にはわからない。
……でも、このことを目の前の男に報告する気にはなれなかった。
「思い出してよ……」
【ところにより雨】
『ところにより雨』
人から褒めてもらえると
どこか自分がしたな気がして
美味しいと感じると
どこか不健康な気がして
幸せと感じると
次は不幸が来る気がして
この世の全てのものには
晴れてるところ雨降りのところがある
実際の天気でいえば僕は雨も好きだけど
晴れやかに生きたいと思う
今日はところにより雨
だから雨雲がないところへ
スキップで向かうのさ
梅雨の季節に近づく度に聞こえる声
もうそんな季節かと空を覗く
曖昧な色をした空は今日もいつも通り
「ところにより雨」
ところにより雨
静寂の雨には
ところどころで出会う
独り駅のホーム
歯磨き
コピー機の前
湯沸室
更衣ロッカー
運転席
電子レンジ
シャワー
長い廊下
ふと訪れたその静雨は
鎧のつなぎ目へ落ち
死にたい気持ちが流れ出す
自分を守るシャボン玉は
パチンと弾けて
死への渇望を潤す
死を露わにし
死を鎮めもする
予報は「ところにより雨」と曖昧に伝える
そんな時、あなたはきっと傘を持ってこない
そんな時、私はずっと傘を持っていく
一つの傘で歩けるように
少しだけ期待を持たせる天気予報
胸糞悪い長文↓
今が朝か夜かは分からない。
シャワーの音がしていた。
扉が閉まったような気がして目が覚める。起き上がるには身体がひたすら鉛のように重かった。
胸元には真新しいやけどの跡と噛み跡がある。特に感傷もなくじくじくと痛む傷をさするだけ。
やっとベッドから降りると毛布が落ちて、同時に昨日まで着ていた散らかった衣服が目に入る。チェストには、いつもと同様に、有名メーカーが仕立て上げた衣服が畳んでおいてあった。
あの男はビリビリに破いてから自分が購入した服を私に着せたがる。遠くで自分の選んだ服を着ている女を見てニヤつくのだろう。
意識が抜けたまま、未だに湿気のこもるシャワー室に続いて入る。体のあちこちの傷がしみるのでぬるい温度でさっと済ませた。股からいやな感触のものがどろりと落ちていく。
心は乱され限界ギリギリまで自我を奪われて破壊されていく。こんな生活、いつまで続くんだろう。
完全に油断していた。
浴室を出て、ほとんど半裸のまま部屋に戻ったが、もう1人の気配を察することができなかった。
「あ…」
謝るとかこの部屋から逃げ出すとか行動する概念がなかったといえる。
昨日のやつよりもさらに大柄で陰気臭い、髪の長い男。影響力のある華族…。私を見咎めて大股でやってくる。
「昨日サシェゼとしたのか」
喉の奥がひゅ、と呼吸が逃げていく。いつもの怯えを噛み殺す癖が出てしまった。
長髪の男がベッドをちらりと探したのを見た。途端に内臓が凍りつき、足がすくむ。
「かわいそうに。傷だらけだ」
出る言葉は優しい。
だけどこの男はそんな考えは毛頭にない。私の身体には、薄布からも透けて見えるほどにいくつもの昨日の蛮行が散っている。
強引に手を引き、先ほどまで眠っていたベッドに押し倒される。
途端にがたがたと身体が震えだした。男はまるで事務作業のように服を開き、全裸を空気に晒す。
「こんなにしたのか」
まるで子どものいたずらの成長をみるように、私の小さな乳房をゴツゴツした手が撫でる。
冷水で固まった身体は、きっと触り心地も良くないだろうに。熱い手のひらがそっと触れていく。
昨日の男は、本当はこれが正しいのだとでもいうように我が物のように乱暴に揉みしだいていくのに、こんなにそっと触れられたのは初めてだ。
だが心地よいとかはない。
「ひ…」
熱い舌が鎖骨と胸元を辿っていく。寝転びほとんど丘にもなっていない胸をゆっくりと唇で遊び、両胸を寄せては匂いを嗅いでいる。
そして火傷の跡を強い舌がなぞる。目の前で凶器をちらつかされているような恐怖だった。
少し抵抗してしまった。両手で押しのけるように長いクセの強い髪をどかした時。
「や…や!!」
普段口数の少ない男がいっきり伸し掛かり、両手を拘束し、小さな胸を唇に含み始めた。
「や…いやぁ…」
「そんな声も出るんだな」
アイツといるときはひたすら唇を血が滲むほど噛んで声を噛み殺しているのに?
ガクガクと震える身体を温めるように、男の手のひらは腹を撫で臀部をなで、恥部を撫でていく。
「かわいそうにな」
身体中の傷をひたすら舐めていく。
「アイツが戻ってくる…戻ってくるから、もう、やめて…」
蚊の鳴くような声で訴える。昨日の男が戻ってきたら、ただでは済まない。
「来ない。あいつは、こない」
腹を唇でたどり、刃傷の絶えない太ももに手が伸びていく。
「だってさっきまで浴室を使って…」
さっきまでシャワー室の音がしていた。いつ戻ってきてもおかしくない。どんな目に合わせられるか分からない。逆上して殴られて意識が飛んで、裸で放りだされたこともある。恐ろしい。
「違うよ」
それは雨の音。ひっとまた声が出てしまった。
外ではすすり泣くような霧雨が舞っている。
「だから来ない。さぁ見せて」
拘束は解けて、熱い手の平は身体中を愛撫している。
さぁ聞かせろ、媚びて屈するその声を。
長い髪の隙間から真紅の瞳が言っている。
震える足を割って大きな男の身体が仕留めに掛かってきた。
ところにより雨
雨の日は好きだ。
屋内でやる仕事な上、都心なので
ほとんど外に出ずに職場につく。
天気痛などもない。
そのうえ、客足は遠のくので、
接客の頻度は減る。
本当に気楽な日だ。
ただ、少し味気ない。
土砂降りの中を自転車で全力疾走するときの、
感情の高ぶりは何にも代えがたい。
以前は雨と戦うことが好きだった。
ただ、最近はちょっと雨の中をフードを深く被って
ゆっくりと歩くのが好きだ。
雨と遊ぶのが好きだ。
今日もどこかで雨が降る
いつも通りの見慣れたニュースキャスターが
ところにより雨と告げている
窓は曇ってよく見えないけれど
どことなく不安な空模様が見えた気がする
寝ぼけながら冷蔵庫からコーヒー豆を取り出して
座禅を組むように豆を挽き始める
なんとなく流しておいた星野源の音楽が
ほどよく私に安らぎをくれる
何にも考えられないけれど
今はただ眠いなと思う
『ところにより雨』
雨はあんまり好きじゃない
ジメジメするし、濡れてしまうし、
特に私は頭痛持ち
いい事の方が少ない
―――ただ、今日に限ってはいい
私は全てを失った
どうしていいか途方にくれて
どうすればいいか分かんなくて
どうしたいのか見えなくて
ただ泣くしかできない私……
天気予報は、ところにより雨
なんて言ってた
普段の私なら、
なんでピンポイントでここ?
って絶対嘆いてるところだけど
今日だけは……よく来てくれたね
雨が一緒に
たくさん泣いてくれた
〜シロツメ ナナシ〜
まだ十八になったばかりの青年、弥助は暇を持て余して平日の真昼間に外に出た。列車に乗って付き合いの長い田所の家にでも行こうと思ったが金がない。仕方なくいつもと真逆の道を散歩する事にした。
少しいつもの道を外れると、もう其処は全くもって自分の知らない街だった。ただ一軒程跨いだ所であるのに、空気も、色も何もかも違う様に感じた。
弥助は単純に面白いなと思った。見た事もない花が的皪と輝いていたり、家に垂れている暖簾には余り聞かない言葉が生き生きと跳ねていたりと、弥助の目を強く刺激したので少し目眩がした。
坂道に差し掛かった辺りで途端に雨が降り出した。小雨だった。傘を持っていなかったので立ち往生した後、雨宿りが出来そうな所を見つけたので、止むまで此処に居ようと思った。
知らない街が、いつも通り静寂をかき消してゆく雨に降られていても、其処はまだ弥助の目には新しく映っていた。二十分程経ったのだろうか、いい加減目の前の景色に慣れてしまったが一向に雨は止む気配を見せない。
走って帰るべきかと悩んでいたその時弥助の後ろの戸が開いた。雨にも勝る音を立てて開いた。戸の奥には痩せた男が立っていた。落ち着いた色の着物を着て煙管を吹かせていたその男の顔はとても落ち着きを纏っていた。
その男は弥助を認識しても驚いた様子を見せず、雨が降っているのかと言った。其の男は手探りで如何にも洋風の高価そうな傘を取り出し弥助の方に差し出した。彼はすまないが此処まで取りに来てくれますか、と言った。
その男は盲目のようであった。
有難う御座います、と弥助は正直に傘を受け取った。
すると男は不図、今日はとても雨の匂いがしますねと言った。雨が降っているのだから当たり前じゃないかと心の中で思いながらも、弥助は其処で初めて雨の匂いを嗅いだ。その匂いは自分の若さを自覚させるような気がして余り好きではなかったが、この匂いが今までずっと近くに居たことを知って大変驚いた。男が住むこの辺りは弥助にとって新しいものであったと同時に弥助と男が感じるこの辺りの町の表情も全く違うのだと分かった。
二言程言葉を交わして弥助は其の家を後にした。
その傘は落ち着きのある香水と煙の匂いがして、弥助の鼻にも手にも直ぐには馴染んでくれなかったがそれすらも弥助に新鮮さを感じさせた。
五分程歩いたところで急にまた雨が弱くなって止んだ。其処はもういつもの道であった。
弥助はその道すらも懐かしさを感じて心が跳ねた。
ところにより雨が降ったその日の雨は、弥助に新しい風を吹かせながらやって来た。
弥助は部屋に戻っては窓を開けて、さっきまで自分がいた方角をみた。其処にはもう黒い雲はなかった。
また明日にでも御礼と共に傘を返しに行こうと思った。
—雨の場所—
『今日は会社に泊まる』
『わかりました。無理しないでくださいね』
夫からのメッセージ。
最近、夫が家に帰ってくることが少なくなった。理由は大体想像がつく。
でも、あまり考えたくはない。
スマホが震える。電話がかかってきた。
『もしもし。今晩はどうですか?』
「……はい。空いてます」
『すぐに向かいます』
ツーツーと電話が切れる音がした。
もう私たちは、戻れない。
昔は愛し合っていたはずだったのに、いつの間にか距離が離れすぎてしまった。
チャイムが鳴った。私は玄関を開けた。
「会いたかった」
彼は私を抱きしめた。
その温もりがあたたかい。
「……どうぞ」
「はい」
夫に対して罪悪感を感じながら、同時に感謝もしていた。
目の前にいる彼との関係は、もう切れない。
いや、切りたくない。
「愛してる」
「私もよ」
私たちは寝室へ向かった。
私の乾いた心に、彼は愛を注いでくれる。
それはまるで恵の雨のように、私の奥深くを優しく潤してくれる。
窓の外では、静かに雨が降り始めていた。
『ところにより雨』——その『ところ』に、私はいるのだ。
お題:ところにより雨