—雨の場所—
『今日は会社に泊まる』
『わかりました。無理しないでくださいね』
夫からのメッセージ。
最近、夫が家に帰ってくることが少なくなった。理由は大体想像がつく。
でも、あまり考えたくはない。
スマホが震える。電話がかかってきた。
『もしもし。今晩はどうですか?』
「……はい。空いてます」
『すぐに向かいます』
ツーツーと電話が切れる音がした。
もう私たちは、戻れない。
昔は愛し合っていたはずだったのに、いつの間にか距離が離れすぎてしまった。
チャイムが鳴った。私は玄関を開けた。
「会いたかった」
彼は私を抱きしめた。
その温もりがあたたかい。
「……どうぞ」
「はい」
夫に対して罪悪感を感じながら、同時に感謝もしていた。
目の前にいる彼との関係は、もう切れない。
いや、切りたくない。
「愛してる」
「私もよ」
私たちは寝室へ向かった。
私の乾いた心に、彼は愛を注いでくれる。
それはまるで恵の雨のように、私の奥深くを優しく潤してくれる。
窓の外では、静かに雨が降り始めていた。
『ところにより雨』——その『ところ』に、私はいるのだ。
お題:ところにより雨
3/25/2026, 5:27:27 AM