『知らずに泣いている』
「あの男が死んだ」
呼び出されてそうそう、そう言われた。
「…そうですか」
私がそう返すと彼はこちらを見た。その目はなんだか、何かを確かめるような目付きをしていた。
「…何も感じないのか?」
「…いえ、別に」
私の言葉に彼は「そうかそうか」と言葉をこぼす。その声には、楽しさが含まれているような気がした。
……別にと答えたが、それは嘘だ。「あの男が死んだ」という言葉を聞いた後から、頭の中に声が響いてるのだ。
「嘘だ!」「なんで…!」とか。今はずっと泣き声が聞こえている。
なんで、ショックを受けているのか、泣いているのか、私にはわからない。
……でも、このことを目の前の男に報告する気にはなれなかった。
「思い出してよ……」
【ところにより雨】
3/25/2026, 6:57:40 AM