ざーざーと、桜並木が雨に濡れる。
お花見をしようとする者はおらず、そこに居たのは、大きなリュックサックを背負った者のみだった。
人間の様な二つの腕と、二つの足。
頭があって、顔があって…殆どのパーツは人間そのもの
しかし、皮膚が泥の様に茶色く、コンクリートの様に固い。まるで傷跡の様に、灰色が身体中に刻まれている。
目は糸目で、裏切るだろ、と総ツッコミを喰らいそうな見てくれだ。
「ふぅ…天気予報を見なかったバチが当たりましたね」
小さな小屋に避難していた彼は、雨に濡れた商品達をタオルで拭いている。
一つ一つ壊れていないかを確認し、時間をかけてそれを終えた後に、自身の体を拭き始めた。
一連の行動が終わっても尚、雨は止んでいなかった。
商品をリュックサックに詰め込んでいると、服のポケットに入れていた、スマホが鳴り始めた。
急いで手に取り、通話ボタンを押す。
「もしもしアース!そっちは大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。多少雨に濡れましたが、幸い小屋があったので、そこで雨宿りをしています」
「そっか、ならいい。近くにいるから、傘持って迎えに行くからな」
アースと呼ばれた彼が、断りの言葉を伝える前に、電話は切れてしまう。
呆れと嬉しさを混ぜた微笑を浮かべ、ぼんやりと外の雨を眺め始めた。
雨に呼応するように、彼の耳に幻聴が聞こえ始めた。
それは家がミシミシと揺れる音、ブロック塀が落ちる音、遠くから聞こえた大人の悲鳴、そして自身の足が下敷きになる音。
どれほど時間が経ったのだろうか。
雨は止まず、幻聴も止まらない。
しかし、その中に知らない音が混じった。
「アース!どこだーー」
幻聴が、すっと止まる。
雨が、弱くなった。
お題『ところにより雨』
3/25/2026, 7:05:17 AM