『それでいい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
(二次創作)(それでいい)
天空を統べるツァパランの皇帝は、音もなく現れた男に相合を崩した。昨日、馳せ参じるように命じた時、ただ一人拒否したその男は、目下、皇帝の一番のお気に入りでもあった。
「帰ったか」
「遅くなりました」
「構わん。余の命をきかぬのはそなたぐらいのものだが、余はそれを許すぞ」
男は静かに皇帝陛下のそばに跪く。右目を覆う仮面から、そのまま仮面と呼ばれていた。どこまでも上機嫌な皇帝は、御自ら仮面の男を立たせると、臣下に椅子を持って来させた。
「それで、どうだ」
「はい?」
「皆、やたらそなたにぺこぺこしてなかったか?」
皇帝の執務室に来るまで、出会った者たちは確かに、仮面の男に対して慇懃無礼なほどに礼を尽くしていた。昨日、ここを発つまではこちらに明らかに敵意を発していたのに、随分な変わりようだと感じた。
「はっはっは。そなたが余のイロだと、言ってやったのさ」
「!?」
なるほど、皇帝が仮面の男を重用する理由がそれなら、誰も文句は言えないばかりか、こちらに下手に難癖もつけられまい。断っておくと、仮面の男に同性愛の嗜好はないのだが、皇帝はその辺を気にも留めないようだ。なんなら「余が男だと誰が決めた?」と可笑しそうに笑っている。
「私には決まった相手がいると話したでしょう」
「なんだ、その女に別れを告げてきたんだろう」
「ええ、どこかの何を言い出すか見えない高貴な方にこき使われないといけませんからねぇ」
「はっはっは!そなたはそれでいい。それでいいのだ」
本当に何がそんなに楽しいのやら。仮面の男は曖昧に笑みを浮かべたまま静かに言葉を切った。会話が途切れたのを契機に、臣下が飲み物を運んでくる。皇帝が、視線だけで飲めと言ってきたので、ありがたく毒見役を引き受ければ、知らない香りの紅茶であった。
(まあ、面白い御方ではある)
最後まで皇帝はその茶に口を付けなかった。
それだけでいい
自分のことが好きになれなくても
誰かのことを好きになれなくてもいい
ただ、今を生きている自分を
盛大に褒めてあげよう
#62 それでいい
それでいい――――
ありのままでいいとか、君らしいとか、現在進行形の形を保っていればキミは喜ぶみたい。
本当の私は……醜くて胸が苦しくなる。自分の姿さえ見ていられない程に苦しい。それなのにキミは私に対していつも変わらぬ笑顔で優しく答えてくれる。
「無理に変わろうとしなくても大丈夫だよ。貴女はそのままが一番輝いて見えるから。無理に着飾ろうとしなくていいからね……って言えば言う程負担になるかな?でもね、苦しんでる貴女をいつも見ている僕の気持ちも少しは理解してほしいかな……?ありのまま――今の貴女、僕はそれでいいからね」
陽が、差し込んでいた。
ベッドの上で目を覚ました狼の獣人は、少し赤みのある金の目を瞬かせる。
ゆるやかに獣人が上体を起こすと、薄がけの布団がはらりと落ちた。麻の寝間着には、布団の中にこもっていた熱がまだ残っていた。
「朝…。私の、部屋」
女にしては少し低めの声が、ぼんやりと部屋の中に響く。まだ夢の中から覚めきらない目元をこすったあと、獣人は癖の強い青灰色のロングヘアをそっと撫で付けた。
そして、ゆっくりと窓の外を見る。彼女の視界に映るのは、いつも部屋から見ている光景だった。
街道から外れ、なだらかな山の麓で少しだけ森の中に分け行った先にある、狼の獣人ばかりが住まう少し変わった村。それが、今、彼女──名をロンドという──が住んでいる村だった。
「ほんとに終わっちゃったんだ。もう一人の私の世界との、入れ替わり」
呟いた声は、ひどく小さかった。
──彼女の住む村からさらに山の方へと分け行った先には、小さな泉がある。この泉は不思議な性質をしており、満月の夜に月から注がれる光に反応して魔力を貯めるのだという。数年がかりで泉に溜まった魔力はいつしか飽和し、淡い光と共に周囲に無差別に撒かれる事となる。その時、泉を覗き込み、水面に姿を映すものがいると、泉は可能性の世界の人物とその者を数日のあいだ交換する、という現象が起こる。
この不思議な現象は、村の民だけが知るものとされ、世には伏せられている。可能性の世界を覗く、などという不可思議が知れれば要らぬ禍を招くからだ。
そして、かつての村人たちはこの泉を覗く事を風習のひとつとし、決まりを設けた。
当日に泉を覗く権利を有するものは一人だけ。それは村の住人の中からくじで選ばれ、くじへ参加することができる者は未婚の者のみとする。選ばれた者が泉へ向かう時は、腕利きのもの数人と村長が同行する。同行者は泉を覗くことを許されず、これを破った場合はその者の孫の代までくじへ参加する権利を喪う、といったものだ。
そして、今回のくじで選ばれたのはロンドであった。
どんな世界を見るのかと周囲に聞かれた彼女は、自らが父と同じ冒険者として生きている世界を見てみたい、と思った。父のように戦う自分自身が生きる世界はどんなものだろう。胸を高鳴らせながら、淡い光を放つ水面をのぞき込んだロンドが見たものは、想像することすらしなかったものだった。
たどり着いた世界には、ロンドが知るものは何も残っていなかった。泉の周りにはエルフが一人いるだけで、村のものは誰もいない。困惑しながら村へ続く道だったものを辿って行き着いた先は、集落があった事が窺えるだけの開けた場所だった。あとをついてきたエルフの青年に話を聞くと、ここは彼が知るロンドの故郷だった場所だという。墓参りに訪れたのだ、と。エルフの示した先を見ると、不格好で簡素な木造りの十字架の群れがあり──ロンドはそこで一度気を失った。
入れ替わりのうちの一日をそうして無駄にしたロンドは、気絶した自身を介抱してくれたエルフと共に二日を過ごした。昼は周囲を散策し、夜は焚き火のもとで野営をする。ロンドはこちらの彼女が知らなかった風習の事や、自らの現在の状況、そして彼女が生きている村のことについて話をした。エルフの青年は、冒険者として生きるロンドのこと、二人が拠点にしている街のこと、二人の関係についてなどを、ぽつりぽつりと語ってくれた。
エルフの青年の話はロンドが父から聞いた話よりもりずっと過酷で、苦しくて、血なまぐさくて、でも輝いていた。
ひとりで生きる、と背筋を伸ばして、神経を尖らせて、父の持ち物だった、とても大きくて重たい、柄まで金属でできたハルバードを手に戦うこの世界の自分に会ってみたいな、と思ったのだ。
そしてそれは、入れ替わりの終わる間際に叶うこととなった。
そこはぼんやりと、すべてが淡い月光に包まれた場所だった。ロンドはあの泉の上に立っており、もう一人の人物と向かい合っていた。
同じ色の目で、長さの違う同じ色の髪で、全く違う服装で、重たいハルバードを片手で持っているのは、冒険者として生きるロンドだった。
「あなたが、冒険者の私?」
「…ああ」
村娘がそろりそろりと冒険者へ歩み寄っていく。近付くにつれて、冒険者の細かい部分がよく見えるようになる。手にしたハルバードは地下の倉庫で見たものよりも細かい傷が増えて、けれど刃の部分はよく手入れされて鋭く光っている。握る手は無骨で、肉刺や傷跡が見て取れる。短い髪の毛は手入れが行き届いているとは言い難く、顔にだって傷跡があった。そして、目元は、ほんのりと赤くなっている。
「父さまや、母さまに、会った?」
「会った」
短く答える冒険者の声は少しぶっきらぼうで、村娘のものよりも低い。
「嬉しかった?それとも、…つらかった?」
「………両方、だな。どうして自分の帰る場所にこの光景がないんだろう、って、思った」
でも、と言葉を続けながら、冒険者が少しだけ目を細めた。
「あなたの世界に、あの光景がなくて良かったとも、思った」
その言葉に、村娘は冒険者の何も持っていない左手をそっと両手で包んで瞳を覗き込む。同じ色の、同じように涙で潤んだ瞳を。
「ほんとに、入れ替われたらよかったのに。そしたら、そしたらあなたはずっと皆と」
「駄目だ」
冒険者が、柔らかな声音で言う。狼の耳を少し伏せて、困ったように笑いながら。
「あれは、あなただけの世界で、あなただけの家族だ。……自分の、父さんや母さんじゃないんだ」
「でも、あんな…あんな光景…」
「いいんだ」
はっきりと冒険者が言う。泣きだしてしまった村娘の目から、はらはらと涙が落ちていた。それは泉の水面に届くことなく、途中で光の粒になって消えていく。
「皆とまた別れるのは、正直に言うと辛かった。でも、自分にも大事なものが出来たんだ。彼らのとこにこのまま帰る。…それでいいんだ」
泉に近い足元から、光によって身体が解けるように消え始めた。これで、本当に終わりなのだと誰に告げられるでもなく二人ともが理解した。
あっという間にやってきた別れに、二人が選んだ言葉は感謝の言葉だった。
ノックの音に、ロンドが顔を上げる。入るわね、と母の声がしてドアが開いた。自身と同じように癖のある長い髪が見えて、ロンドは母の元へと駆け出して抱き着く。オーブンで焼いていたのであろうパンの匂いが染みたエプロンに顔を埋めると、彼女の目からは涙が溢れ出した。
やっぱりあなたも泣き虫ねぇ、と優しい声が言うのを聞きながら、涙で濡れた声が小さくただいまを告げた。
【それでいい】 “あの日”が訪れなかったロンド
それでいい
それでいい
と言われると
そこに妥協があるように
感じてしまう
それがいい
と言わなかったのは
何か間違っていたの?
それとも
お気に召さなかった?
小さなことに
こだわっている
面倒くさいやつだと
お思いでしょう
揚げ足取りだと
言われることもあります
ええ
自分でもそう思います
でもね
思っちゃうんですよ
だったら
最適解を示してみろ
ってね
納得できたら
今度は私が言いましょう
それがいいですね
って
気難しくなったのか、それとも淡白になったのか。
「それがいい」より、「それでいい」より、
「それしかない」と感じることが増えたこの頃。
(それでいい)
まるで暗闇の中に閉じ込められているよう
何をしたらいいのか
どちらへ進めばいいのか
分からなかった
でも今は
自分の心の望む方へ進めばいいと気づいたよ
美しい方へ
完璧じゃなくても。
「それでいい」って自分を許していこう。
あなたが、しあわせ、と。
思えるなら、
わたしの気持ちなど、
無いに等しい。
題:それでいい
それでいい
たとえそれが、俺のエゴなんだとしても。
お前が無事逃げられるなら。
これで、いいんだ。
2024/04/05_それでいい
題 それでいい
私を好きって言ってくれる人がいる。
「だから、好きじゃないんだって」
今日も私は冷たい顔であなたに言う。
「そんな事言わないで、考えてくれない?少しでいいから」
食い下がってくる相手。
どうして?どうしてこんなにしつこいんだろう。
嫌って言ったら普通引かない?
私なら引くけどな。
理解できない、出来ないけど・・・。
「無理。好きじゃない。全然好きじゃないから、考える余地もない」
私は無表情な顔を作る。
あなたは引きつった顔で私を見つめた。
懇願するような表情で。
「君の中には、僕への好意は少しもないの?」
「うん、ごめんね、少しもないんだ」
「これからも好きになる可能性はない?」
しつこいってば・・・。
「ないよ、だからあきらめて」
・・・
少しの沈黙の後、彼は悲しそうな苦笑を浮かべた。
「じゃあ仕方ないね。こんなに言っても無理なら諦めるよ」
「うん・・・そうしてくれる?」
彼が去った後、私は力が抜けたようにへたりこむ。
本当は好きになる余地、あった。
好感だってある。
でもまだ間に合うから。
そんなに好きじゃないから。
私の妹が彼を見て一目惚れしたから。
毎日どれだけ好きか私に話すから。
幸せそうだから・・・。
私はまだ間に合う。
そこまでじゃないもん。
私はこの心の喪失感に似た感情を無理やり無視した。
大丈夫、これでいい。
これでいいんだから・・・。
それでも、しばらくその何かを失ったような気持ちは抜けてくれなかった。
それでいい
やってもやらなくても
変えても変えなくても
自分で選んだなら
自分で決めたなら
それでいい
「もう全部うんざりなんだ。
放っておいてくれ。」
限界は突然来たみたいだった。
気付いた時には音を上げていた。
よりにもよって、君に向かって。
一度言葉にすれば後戻りができなくなる。
淀みは着々と私を飲み込み、ついに怪物となった。
怪物は私が眠ることさえ許さなかった。
寝転がると奴の怒号が聞こえるから、致し方なくベッドに腰掛けていた。
どれ程そうしていたか分からない。
「いつまで篭ってるつもりなの。」
痺れを切らした君が扉を叩きに来た。
「放っておいてくれと言っただろう。」
「私は、何があっても君の傍に居たい。」
実に君らしい言葉だ。
それを救いと受け取る自分がもういない事を、まざまざと見せつけられているようだった。
「簡単に言うな。」
絞り出した声の全てが情けない言葉に変わる。
見限った君が扉を開けた。
私の様子を窺わずにはいられないのだろう。
合わせる顔などあるわけもなく、ただ床を見つめていた。
しかしその努力も虚しく、口からは皮肉が止まらない。
「入ってこないでくれ。」
「私は君が想像しているような人では無くなった。」
「こんな人間に構うのは、馬鹿のすることだと思わないか。」
君は何も答えない。
やがて秒針の進む音以外、何も聞こえなくなった。
いっそ私を一思いに罵ってくれ、頬でも打ってくれと本気で思った。
沈黙を破ったのはズンズンと近づいてくる足音だった。
君は私の足元で腰を下ろし、一つ呼吸をしてから口を開く。
「私が君と出会った日のことを覚えてる?」
そんな昔のこと、ちゃんと覚えていない。
静かに首を振った。
「私は覚えてる。丁度この季節の、今くらいの時間だった。
君は全てを背負い込むみたいな、思い詰めた目をしていた。私が近づくと、その目で私を睨んだだろう。
君を好きになったのは、あの時だったと思う。」
君は寡黙な私に反して、よく喋る方だ。
しかしこういった話は一度も聞いたことがなかった。
「私は君が美味しくご飯を食べてくれたら幸せ。
君の赤子のような寝顔は、私の1番の癒しだ。
でもね、」
明け透けでいて実は強情な君が、大事に隠していた秘密。
「私はあの顔が今でも忘れられない。」
迷いのない声が私の耳を射抜く。
君は祈るようにして私の手を握った。
「顔を上げてよ。
きっと君は今、あの時と同じ目をしている。」
重たい重たい首が、自然と伸びていく。
視界が鮮明になる。
久しぶりに肺を使って息をした気がした。
君が優しく微笑みかけている。
それはいつもと変わらない笑顔だ。
悪趣味だな。
私はか細く文句垂れたあと、堰を切ったように泣いた。
「それ『で』じゃなくて、それ『が』にしてよ」
「……?大差ないだろ」
「またもー……大有りなの!」
「ふーん。了解、善処する」
「……確かに言ったけどさあ」
「ーーー何でまだ此処に居るんだ?」
「見送り。君が出たらすぐ行くよ」
「なら良いが」
「本当に、これで良かったの?今ならまだ」
「これ『が』良い」
「……そっか」
<それでいい>
【それでいい】
誰だって失敗はあるさ。
その中で何かをつかめば
それでいい。
一生懸命にやって失敗したなら、
それでいい。
どんなに落ち込んでも、
「私はやる必要があるときに、
行うことができる。知る必要がある時に
知ることができる。私は愛です。
私は光です。
私は無限の可能性を持った
素晴らしい存在です」と
自分につぶやくか言おう。
これはとてもとても高い
高次元存在からの教わった
言葉でもある。
私自身、自信を失いかけた時に、
何度か助けられた言葉のため、
皆様にもお伝えしたい。
ぜひ、自分につぶやいてみよう。
こうあるべき
こうすべき
拘りなんて捨てましょう
その方が生きやすいよ
アナタはそれでいいんです
それでいい
じゃまなひとがきた
こんやはせかいいちの
ぴざというやつをつくらなければなりません
とてもこんわくしています
なぜならば
まえにつくったぴざというやつは
おそろしくおいしかったから
きょうのはあんなものじゃない
あのよる
ままがみたことのないおけしょうをして
めざましどけいがなるころにかえってきた
あのときみたいにすごい
ともくん?ともくん?ほら
うん
うさぎがピザをもってきた...
ウサギがおとどけするピザなんて
かわいいでしょ
目覚まし時計が鳴った
──とんだ邪魔が入ったな
そう、今夜は世界一のピザを
つくらなけりゃならないんだ
超、困惑気味さ
なぜかって?あの夜
作ったピザはそれはそれは香り深くて
天にも昇る美味さだった
今日のはあんなもんじゃねーぜ
あの夜
お袋がおしろいを塗りたくり
鼻が曲がりそうな
安物のコロンのにおいで
朝帰りをキメたあの朝みてーに...
知さん?知さん?これ
おう
うさぎがピザを持ってきた...
ウサギがおとどけするピザなんて
かわいいだろ
目覚まし時計が鳴った
──邪魔がはいったわね
そう、今日は世界一の
ピッツァを作らなきゃならないの!
でもちょっと困ってるの
なぜなら
あの日あの夜作ったピッツァ…..
あの夜..作った...
あの...あ...
電池の切れそうな目覚まし時計の音と共に
映像が乱れ
視界は漆黒の闇に呑まれた
知子はヘッドディスプレイを
頭からむしり取った
会えなくなった息子の友哉が8人目
乱暴な元夫、知則が9人目
そして私が10人目
11人目...11人目...11人目
知子は赤いルージュを引き、コロンをつけた
短くなったバージニアスリムを灰皿に押し付けたとき
インターフォンが鳴った
知子は直感で、別れた知則がまた金をせびりにきたのだと思った
そろりとモニターを見ると
ストライプのジャンパーを着た
ピザ屋が大きな袋をもって立っていた
頭はウサギだった
知子はふたたびヘッドディスプレイを装着し
ゆっくりとドアを開けた
「おかえりー」
友哉が玄関まで走ってきた
ともくん?ともくん?ほら
うん
うさぎがぴざをもってきた...
ウサギがおとどけするピザなんて
かわいいでしょ
ちいさなヘッドディスプレイをつけた
友哉が笑っていた
「ともくん、誰か来たのー?」
奥から女の声がした
わたしの声だった
じゃまなひとがきた
こんやはせかいいちの
ぴざというやつをつくらなければなりません
とてもこんわくしています
#22【 それでいい 】
余りにも前の投稿が伸びず萎えているうごです。
内容がレイマシュと言う腐レンドリーな方々なら
誰しもが好きであろう投稿なのにいいねが少ない。
何故だろうと理由を考えてみたら
次のお題が出ている中、1つ前のお題で出していたから
と言う結論に達しました。
とゆう事でもう、次のお題が出る30分前なので
前回の続きは『それでいい』の次のお題で出したいと
思っています。丸1日楽しみにしていた下々の民へ
ごめんね。
前回の続きは今日中に出せるように努力します。
出るまで待っててね。
萎え萎えなうご
ついその言葉を溢してしまう。
夕飯のおかずについて尋ねられた時、会議の企画を聞いている時、買い物をする時。
「それでいいよ」
なんて他人任せな言葉だろうか。
ある時妻に怒られてしまった。
「まるで他にも食べたい物があるみたいな言い方。妥協されているみたい」
その時私はハッとした。この歳になって叱られたのもそうだが、自分の発言の無責任さにやっと気がついたのだ。
「ごめん。言い換えるよ。それがいい。私の好きなハンバーグ。君が作ってくれたハンバーグがいい」
「うん。すぐに作るね」
それから私は意識をして言葉を変えた。
『それがいい』と
「それでいい」
「お母さん。外に出ても良い?」
無理だとわかっていてもやはり外に出てみたい。
「駄目。何度言えばいいの?おとなになってから」
やはり駄目だった。
おとなになってからって結局いつなんだろう?
いつも曖昧に回答される。
どうやら外は危険だから大人のお母さんは自由にドアを開け閉めできる。
「じゃあ、お母さんお仕事にいかなきゃいけないから今日もお利口にお留守番しててね」
「うん、お母さん」
お母さんはドアノブに手をかけ私の知らないドアの先に消えていった。
物音一つしない部屋が余計に寂しさを感じさせる。
お母さんは時計の針が6を指すまで帰ってこない。
その間はテレビを勝手につけてはいけないし、お腹が空いたって冷蔵庫を勝手に開けてはいけなし、窓はシャッターが閉まっていて外を覗くことができない。
無論、ドアは開けてはいけないし、玄関に近づくことすらしてはいけない。
だからお母さんが帰ってくるまで本を読んでいるか、お人形と一緒に帰りをじっと待つ他ない。
「お人形さんは外に行ってみたいと思はない?」
当然、部屋は沈黙のままだ。
すると棚に置いてある人形が突然落ち、床に横たわっている。
「大丈夫?すぐに元の場所に戻してあげるからね」
「お人形さん?どこを見ているの?」
人形の目線の先にはドアがあった。
「やっぱりお人形さんも外の世界が気になるのね?」
そんな事を言いながらボーっとドアを見ていると、外の世界を見たいという好奇心が異様に刺激された。
「お人形さん。私、お母さんとの約束破っちゃう悪い子かも」
「ちょっとだけここで待っててね!」
人形は横たわったままだ。
「ちょっと覗くだけだからいいよね?」
自分にそう言い、罪悪感を紛らわそうとしている。
「少しだけ、少しだけだから」
そろそろと玄関へと足を運ぶ。
玄関に近づくにつれ鼓動が速くなる。
静かな部屋に心臓の音が響いていると思うほどに鼓動は速い。
とうとうドアは眼の前のところまで来た。
「お母さん。ごめんなさい。私悪い子だよね。お母さんとの約束破っちゃうんだもん。でも、悪い子になっても良い。気になって気になって仕方ないよ」
初めて鍵を解錠する。
そしてゆっくりと手をドアノブへかける。
「これを開けたら外…」
外への好奇心と期待を乗せてドアノブをひねる。
だが、自分が回す前に不意にドアノブが回った。
「あら?何をしているの?」
そこにはお母さんの姿があった。
「ねぇ?私との約束覚えてる?」
あまりの驚きと緊張に声が出ない。
「質問しているのよ?もう一度聞くわ。私との約束覚えてる?」
次はない。
そう言っているように聞こえる。
「はい…。外には…勝手に…出ちゃいけないです…」
「それでいいのよ」
人形は横たわったままこちらを向いていた。