題 それでいい
私を好きって言ってくれる人がいる。
「だから、好きじゃないんだって」
今日も私は冷たい顔であなたに言う。
「そんな事言わないで、考えてくれない?少しでいいから」
食い下がってくる相手。
どうして?どうしてこんなにしつこいんだろう。
嫌って言ったら普通引かない?
私なら引くけどな。
理解できない、出来ないけど・・・。
「無理。好きじゃない。全然好きじゃないから、考える余地もない」
私は無表情な顔を作る。
あなたは引きつった顔で私を見つめた。
懇願するような表情で。
「君の中には、僕への好意は少しもないの?」
「うん、ごめんね、少しもないんだ」
「これからも好きになる可能性はない?」
しつこいってば・・・。
「ないよ、だからあきらめて」
・・・
少しの沈黙の後、彼は悲しそうな苦笑を浮かべた。
「じゃあ仕方ないね。こんなに言っても無理なら諦めるよ」
「うん・・・そうしてくれる?」
彼が去った後、私は力が抜けたようにへたりこむ。
本当は好きになる余地、あった。
好感だってある。
でもまだ間に合うから。
そんなに好きじゃないから。
私の妹が彼を見て一目惚れしたから。
毎日どれだけ好きか私に話すから。
幸せそうだから・・・。
私はまだ間に合う。
そこまでじゃないもん。
私はこの心の喪失感に似た感情を無理やり無視した。
大丈夫、これでいい。
これでいいんだから・・・。
それでも、しばらくその何かを失ったような気持ちは抜けてくれなかった。
4/5/2024, 9:46:18 AM