『すれ違い』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
すれ違い
空がだんだんと赤く染まってきた。
腕時計を確認すると、約束の時間から二十分過ぎていた。気になる女の子の友達と、一緒に帰る約束ができたというのに。
もしかして、また迷子になっているんだろうか。
彼女はとてつもない方向音痴。半年通った学校で、道に迷っていてもおかしくない。
彼女が寄ってから来ると言っていた、図書室から行ってみようか。
どうしよう。待ち合わせの時間、過ぎちゃった。
ぱたぱたと、足音をたてて階段を降りる。
彼、待っててくれるかな。せっかく恋が進展するチャンスだもん。遅かったね、って笑ってほしい。
「ごめん、おまたせ…」
待ち合わせの昇降口についた途端、そう口に出す。
「…あれ…?」
返事がない…。っていうか、彼、いない?
私が遅れたから?それとも、まだ来てないの?
…迷ってるのかな?私じゃあるまいし。
来てないだけってことに賭けて、待ってみようかな。
ウエスト・サイドの路上にて
『ジェイクのヤツがおかしくなっちまった』
学校の連中はそう口々に言った。土曜日の午後のこと、落雷がジェイクの後頭部に直撃したんだ。それまでのヤツはすごく意地汚いヤツで、礼儀なんてまるで兼ね備えてないロクデナシだった。そんなヤツがある朝、教室に入るなり掃除を始めやがった。
「何してんだよ、掃除なんか清掃係のおばさんに任せりゃいいじゃんか」
「やあ、ルー! ちょっと教室の汚れを綺麗にしたくなってね。今日の朝は気持ちがいいな」
今すぐ病院に行って頭の手術を受けるべきなんじゃないかとか、もう一度雷にうたれて来いとか、クラスメートは口々に彼を心配した。だけど僕としてはだな。ジェイクは今のままでいいんじゃないかと思ったんだな。だけど今まで僕を見下すような態度で『お前』と言ってたヤツが『君』とか言い出すとかなり不気味だったな。でも、僕のストレスはかなり軽減されたよ。雷に感謝してるくらいさ。
だけど、ヤツはそれから数日後に死亡した。ウエスト・サイドの路上にてうつ伏せに倒れていたのを通行人が警察に連絡し、発覚したそうだ。医者が言うにはかなり重症だったそうだ。
少しでも面白がっていた自分を呪いたいね。だってジェイクはイヤなヤツではあったけど、死んで欲しいとまでは思わなかったんだから。
だけど、僕を含めたクラスの連中らがヤツの家族に『彼は本当に良いクラスメートでした』なんて言ったら僕らは最低最悪の偽善者になるのだろう。
駅前の商業施設の4階に
ゆっくり立ち読みできる本屋が入っている。
いつもはエスカレーターを使うのだが結構中の方にあり
その日はたまたまソコまで歩くのすら億劫になり、入り口付近の
エレベーターを待つことにした。
ラッキーなことに4階にいたエレベーターはどの階にも止まらず
あっという間に降りてくる。扉が開くと一人だけ乗っていた。
ちょっと目を引く華やかな女性だったが
こちらを見て、とても嫌そうというか気まずそうな顔をした。
女性は降りるすれ違い様、ほぼ駆け足で
ヒールをカツカツと鳴らし出口へ去っていく。
なんだよもーと思いながらエレベーターに乗ると
すぐ理由が分かった。
おならくさっ
まあ、彼女がなさったかどうかは知らないが
気持ちは分かる。何でいるんだよって思うよね。
いや、同情している場合ではない。
上昇を始めたエレベーターの中
同じ事態が自分にも降りかかっていることに気がついた。
おしゃべりが大好きな明るいあの子と話を振られない限りあまり誰かとはしゃべらない私。
授業中にふとその子と話してみたら、スマホのメモアプリに自作の小説を書くこと、好きな映画など(他にもいろいろあったが忘れてしまった)、意外と共通点がたくさんあった。全く真逆の存在だと思ったが案外似ていて面白かった。
すれ違い
すれ違った
出会った
逢った
笑った
繋がった
広がった
嬉しかった
楽しかった
だけど
縁、切った。
理由は
裏切った
嘲った
悲しかった
一人だった
だから
また
誰かとすれ違おうと思う
すれ違うかと思いきや目があって「あっ!」みたいなの起こんないかなー
何がどうしたらこんなカオスな事になっていくの...
何を聞いても噂を信じないで欲しい。
#すれ違い
東京に先に行ったあの子
遠距離恋愛になって2年と少し
メールをして終わり
なんだかんだすれ違いになっていた
久しぶりに合うと随分雰囲気が変わっていっていた
会ってみないとわからないこともあるもんだ。
すれ違い
地球という同じ空間を共有しているのだから
根っこでは繋がっている
必要なときに
必要な場所で
たった少しのすれ違い
たった一つのボタンのかけ違いで、関係は崩壊する。
それは本当は少しではなくて、前々から見えないところから徐々に解れていったものであると理解ができなければ、関係を取り戻すことはできないのである。
0ではない。だが、遅すぎたのだ。
『すれ違い』
ネット恋愛が流行っていると聞きました。
ネットでは基本的に、話している時お互いの表情は分かりません。
そしてそれは相手の感情の読み取りづらさに繋がります。
ですからネットでは、リアルよりもより"強い言葉"を使う方が多いのです。
例えば『尊敬』
例えば『大好き』
例えば『愛してる』
ネットでのこれらの言葉は、リアルよりも大きく価値が下がります。
それは当然の帰結であり、悪い事ではないのですが、この事を意識出来ていないままに親密になると、お互いの感情に齟齬が生まれてしまいます。
……簡単に言えば、ネット恋愛は上手くいかない事が多いのです。
『大丈夫?』
ネットでそう言って貰えた時、とても心配そうにしている相手の顔が、思い浮かんではいませんか?
『愛してる!』
ネットでそう言って貰えた時、とても真剣で優しげな相手の顔が、思い浮かんではいませんか?
イメージによって、不足している情報《表情》を補足する。
これがネット恋愛が流行る理由の、主になる部分であるように感じます。
コンパクトでいてカジュアルな恋愛。
けれど相手は理想のパートナー。
はてさて、リアルの相手は……自分と同じくらいの熱量が本当にあるのでしょうか?
すれ違い。人間というものはわかりあえないものなんだろう。世の中には理解できない人間ばかりだ。
それが他人なら関わらないようにすればいいけど家族だったら最悪だ。縁を切って一人で生きる、なんてのは中々できることじゃない。
身元保証人やらなにやらでどうしても関わらなければならないこともある。ラインで少しやり取りしただけで殺したくなるようなくずとだ。
すべてがめんどうで死にたくなって相手を殺したくて憎悪で頭が埋め尽くされてなにもできずに一日を無駄にする。最悪だ。
なぜあんなくずと関わらなければならないのか。それは俺が弱いからだ。金を稼ぐ力がないからあんなくずと未だに関わらなければならない。
強くなりたい。一人で生きていけるくらいに。金がほしい。一人で暮らしていける程度でいいから。
すれ違い。
すれ違いを言い訳にしたのは好きではなかったんだと。
すれ違いを言い訳にしたくないのは好きなんだと。
それを知れたのは嬉しい。
だけど、すごく苦しい。
全く別の人同士が、全く同じ気持ちで寄り添いあうなんて、そもそも無理な話だったんだよ。口にしてきた分かってるっていう言葉は、辞書を開いて読んだばかりみたいな意味なんだから、仕方なかったんだ。開かれない辞書よりは有意義だった。それだけを受け入れていくしかないんじゃないかな。
何千年の歴史ある建造物とかだって、人に晒されて数週で朽ちていったりするでしょう。一人同士で生きられる人たちしか、多分本当には一緒に居られないんだろうな。って。
渇望を真実味とあんまり混ぜたらいけないよ。お腹が空いていたら何でも美味しくなるのと一緒なんだから。紙面が擦れる音はやけに耳に障る。辞書でも一緒なんだからね。いつか一人になれるって、最後の1ページ分、信じておくからね。
例えば、すぐそこですれ違った誰かが、小学校の頃の同級生だったとして、「クラスが一緒だった〇〇くん!」と気づけるものだろうか。
歩きながら、自分と同じく道行く人達を観察してみる。この人達に一人ずつ人生があって、どこかで出会ったことがあるのかも知れない。
自分と同じ道を行く彼らは、数秒だけ同じ時間を共にしている、と考えると、ちょっと運命的なような気がした。
ええ、テーマがテーマすぎる。すれ違い、か笑
私はそれをドラマチックだと思って望んでいたのかもしれない。でもそろそろ中二病は卒業しよう笑
日常が、素敵だと気づいたからだ。自然体の普通の日常ほど豊かなものはない!!!
「個人的に、『すれ違い』つったら、某3DSゲーム機の某すれ違い機能が第一印象なんよ」
発売日、2011年だったのな。某所在住物書きは感嘆のため息を吐き、携帯ゲーム機の電源を入れた。
昔々のドット絵ゲームの移植版、とっくにサービス終了したソーシャルゲーム、猫ゲーにパズルゲー。
思えば懐かしい思い出が、プレイの可不可問わず、保管されている。
「改造クエストとか懐かしいわ」
当時やり込んでいた狩りゲーは、「すれ違い」によって、本来取得し得ないデータが紛れたり、いちいち手動で消したり。
懐かしい。ただ懐かしい。物書きは昔々に思いを馳せて、再度ため息を吐いた。
「戻りてぇなぁ。皆でマルチで狩りしたあの頃……」
――――――
唐突にお肉食べたくなって、某最大バリュだかトップ価値だかのスーパーに、値下げの鶏肉探しに行ったら、店内で職場の先輩とすれ違った。
向こうは私に気付いてなかったみたいで、挨拶も何もなく、お菓子コーナーに消えてっちゃった。
いっつも低糖質・低塩分メニューばっかり作ってる先輩が、普通のお菓子を見に来るなんて、珍しい。
お肉コーナーの巡回もそこそこに、半額豚バラブロックをカゴに入れて先輩のとこに行ってみると、
右手で口元を隠して、左手に持った袋をじっと見て、額に少しシワ寄せる先輩が、何か長考してた。
「先輩。せーんぱいっ。何買うの」
「ただの下見だ。お前、どうせ今年も私の部屋に、ハロウィンの菓子をたかりに来る予定だろう」
「去年のアレは面白かったから、私、たまに自分で作って食べてる」
「クラッカーは意外と塩分糖分が詰まっているから、ほどほどにしておけよ」
先輩が手に持ってたのは、ここのオリジナルブランドの、プチクラッカーだった。
「去年、これにホイップクリーム絞っただろう」
先輩が言った。
「さすがに今年、二番煎じは飽きるかなと」
別に、美味しかったから、飽きる飽きない気にしないけどな。私は少しだけ、首を否定に傾けた。
去年のハロウィンの話だ。
職場の先輩が、当日即興クオリティーで、チャチャッと材料買ってチャチャッと作ってくれたのが、プチクラッカーで作ったスイーツだった。
「アレね、七味普通に美味しかった」
「そりゃどうも」
「ワサビ、ツンと来たけど、しょっぱかった」
「食塩入りだったからな。あの、おろしワサビのチューブは」
100円の塩味クラッカーに、甘さ控えめホイップクリームを絞って、
そのホイップの上に低糖質な小さいキューブチョコを置いたら、できあがり。
いわゆるデザートカナッペとか、そういうやつ。
味変に、ホイップに七味振ったり、ジンジャーパウダー振ったり、シナモンもアリっちゃアリだった。
クラッカーの塩っ気と、チョコ&ホイップの甘さ、それからピリっとした七味だのジンジャーだのが、面白く混ざってたのはよく覚えてる。
ちゃんと事前予約を入れていれば、故郷の田舎からイタズラクッキーを取り寄せていたものを。
先輩は当時、ちょっとだけ楽しそうに言ってた。
見た目が完全に炭みたいなクッキーらしい。
なにそれ。
「プチタルトのタルト台に、カボチャだの紫芋だので色付けしたホイップを絞るのも考えたんだが」
「タルト台 is なんで?」
「ディップボウルの代わりだ。クッキーだから、使い終わったら食えばいい。食器を洗う手間が省ける」
「例の炭クッキーをディップするの?」
「……食いたいのか、炭クッキー?」
お前も物好きな食いしん坊だな。
先輩はゆっくり、優しい大きなため息を吐いて、プチクラッカーの袋を棚に戻して私から離れた。
「今年はちゃんと、アルコールも用意しといてよー」
背中向けて鮮魚コーナーの方に歩いてく先輩に声を放ると、
検討だけはしてやる、って意味なのか、単なる別れの挨拶なのか、先輩はプラプラ、右手を振った。
「すれ違い」
なかなかタイミング合わず
うーん
もしかして避けられてる?!
すれ違い
一緒に住んでいるのに
いつもすれ違いばかり
私達が起きる前に仕事に出掛け
寝てから帰宅する
仕事が休みの日は昼過ぎまで
部屋でゆっくりしてうらから
顔を合わせるのは休みの日の
夕方からほんの数時間かな
だからこそ
この時間を大切にしたいと思う
パパと過ごす貴重なひとときを
『すれ違い』
思えば、二百五十年以上生きているというのに、お前と語り合った時間はほんの僅かであったのぅ。
儂が黄金聖衣を賜って間もなく聖戦が始まった。そして聖戦が我々の勝利で終わると、儂は仮死の法を受け冥闘士どもの監視をすることとなり、お前は新たな教皇となり、聖域の復興と後進の育成を一手に引き受けることとなった。言葉を交わすことはおろか、顔を合わせることもなかった。
そうこうしている内にお前は死んでしもうた。人はいつか死ぬ、我々はちと長く生きすぎたとはいえ、その死に目に会えんかったのは残念じゃった。
そして、久しぶりに会えたと思ったら敵味方に別れることになるとは想像もせんかったわい。昔からお前とはすれ違ってばかりじゃ。運命とは皮肉なものじゃのぅ。
――だが、顔を合わさずとも、言葉を交わさずとも、お前と志を違えたことは一度もない。二百五十年以上も共に生きた間柄じゃ、それだけは確信を持って言える。
お前は一足先に塵に帰ってしもうたが、案ずることはない。儂もすぐに後を追うことになるだろう。勿論、復活した冥闘士どもをすべて片付けてから、であるがな。
しばしの間だが、さらば、友よ……