『すれ違い』
思えば、二百五十年以上生きているというのに、お前と語り合った時間はほんの僅かであったのぅ。
儂が黄金聖衣を賜って間もなく聖戦が始まった。そして聖戦が我々の勝利で終わると、儂は仮死の法を受け冥闘士どもの監視をすることとなり、お前は新たな教皇となり、聖域の復興と後進の育成を一手に引き受けることとなった。言葉を交わすことはおろか、顔を合わせることもなかった。
そうこうしている内にお前は死んでしもうた。人はいつか死ぬ、我々はちと長く生きすぎたとはいえ、その死に目に会えんかったのは残念じゃった。
そして、久しぶりに会えたと思ったら敵味方に別れることになるとは想像もせんかったわい。昔からお前とはすれ違ってばかりじゃ。運命とは皮肉なものじゃのぅ。
――だが、顔を合わさずとも、言葉を交わさずとも、お前と志を違えたことは一度もない。二百五十年以上も共に生きた間柄じゃ、それだけは確信を持って言える。
お前は一足先に塵に帰ってしもうたが、案ずることはない。儂もすぐに後を追うことになるだろう。勿論、復活した冥闘士どもをすべて片付けてから、であるがな。
しばしの間だが、さらば、友よ……
10/19/2023, 11:48:00 PM