『さよならは言わないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
冷たい風が頬を刺す。
波が岩に打ち付けて星のように弾ける。
暗い海に、引き摺りこまれそうだった。
「やっぱり、私達の最後は桜の樹の下なんかじゃなかったね」
彼の言葉に頷く。
もとより、俺達の最期は桜の樹の下なんて所じゃなかった。
暗く深い、海の上、もしくは中。
靴を脱いで、隣同士で並べる。
遺書なんて堅っ苦しいものは書かなかった。
どうせ哀しんでくれる友達も親も居ないのだから、必要ないだろうと言ったのは俺だった。
手を繋いで、指を絡める。
「じゃあ、また。どこかで逢えたらいいね」
「ああ、そうだな」
そう言って、二人海に向かって一直線に飛び込んだ。
体が水面に打ち付けると、大きな飛沫とくぐもった自然の音が耳を塞ぐ。
「さよならとは言わないで」
冷たくなる指先、体。
朦朧とする意識の中、いつかの彼が言った言葉を思い出した。
さよならは言わないで
もうお別れだね。
これで最後。
また会えるのかな。
会えないなんて思いたくない。
だから、さよならは言わないで。
私も言わないよ。
言ったら会えなくなりそうだから。
もう、時間だね。
またね。
65さよならは言わないで
ちょっとだけ
ちょっとだけの
お別れ
また今度
笑顔で
そう言って
さよならは言わないで
もう一度
虹の向こうで
会おうね
―11月に急逝したうみ(ネコ)に捧ぐ―
いつも同じ場所で、同じ言葉を交わして別れる。
大切な親友がいた。
小学生の時からずっと同じ学校で、同じ時を過ごしてきたから。
私達は、
卒業式の日でも、言わなかったから。
それが続くんだと思っていたけど。
もう違うみたいで。
おとなになったあの子は、もう「またね」とは言わなくて。
散りかけの桜の中、彼女はゆっくりと口を開いた。
――さよならは言わないで。
さよならより、またねのほうが、
私は好きだよ
「さよならを言わないで」
「さよならは言わないで」とかけまして
「違います! 1+1=2 です! 」と解きます。
その心はどちらも「別れ/分かれ」でしょう。
『さよならは言わないで』
さよならは言わないで。
またねって笑って。
さよならなんてわからなくなるくらい愛するから、どうか。
きっと虹の橋の向こう側でまた出会うから、終わりじゃなくて合間の言葉で笑いましょう。
マーシャは久々にニルヴァーナ修道院に立ち寄っていた。
それはこの近くに用事があったついでであったが、彼に久々に会えるという期待が、彼女を嬉しくさせている。
近場のドニの街で泊まった翌朝、彼女は意気揚々として修道院の門をくぐった。孤児のマーシャは、昔、この修道院で過ごしていた時期があった。修道士ではないただの孤児が、修道院長に面倒を見てもらっていたため、修道士には目の敵にされていたが。
立ち入りを禁じられていたところはあちこちにあった。そんな言うことを聞くような年頃ではなかったので、あちらこちらに忍び込んではつまみ出されてよく怒られていたものだ。お転婆な時分だった。
礼拝堂に入ったとき、裏口からニルヴァーナ修道院付属の修道騎士団――通常ニルヴァーナ騎士団の面々が姿を現していく。彼らは簡易な礼拝を行うと、外に出て行ってしまう。少しずつ彼らの姿は少なくなって――やがていなくなってしまった。
彼の姿も見れるかもしれないと思ってじっと見ていたが、彼の姿はなかった。既に出て行ってしまっていたのかもしれないし、それともまだ彼の自室にいるのかもしれない。
マーシャは彼を直接訪ねることにして、修道士たちの宿舎へと向かった。彼を含む修道士の面々が過ごす宿舎は、関係者以外立ち入り禁止となっているが、彼女だけは例外だ。
門番が一人立っていた。門番は彼女を見て、嫌そうに顔をゆがめた。
「また来たのか。団長に何の用だ」
「少しお話したいことがあって。取り次いでいただけますか?」
門番はなお苦々しい顔を隠さない。
「団長からは、お前が来たら、通すようにと命を受けている。だから通れ」
そう言いながら門番は扉を開けた。礼を言いながら中に入ったマーシャは、勝手知ったる様子で院長室――今は院長代理として執務するマルスがそこで過ごしている――に向かった。
「マルス!」
勢いよく扉を開けながらマーシャは言った。
部屋の奥で書き物をしていたらしい彼が、顔を上げた。彼女の姿を認めると、彼の険しい表情が緩んでいく。
「マーシャ、直接会うのは久しぶりだな。どうしたんだ?」
「王都に用事があって、こちらに戻ってきたんです。みなさんが王都に行ってる間、無理を言ってわたしだけ修道院に」
そうか、と彼は破顔した。
「君に会えて嬉しいよ」
『さよならは言わないで』
「さよならは言わないで」
そう言ってあなたは泣きそうに笑いながらここを出て行った。
「きっとまた戻ってくるから」
でも、私はその言葉を信じられなかった。そう言って出て行って、戻ってきた人なんて1人もいなかったから。
ファスナーが開き、ジャラジャラとコインの音が壁越しに聞こえてくる。
あちら側の出入りは激しいようだ。こちら側は出て行くばかり。もう1週間もそんな感じだ。気づけばここには私1人。
お前もそろそろ怖くなってきただろう。そろそろ人員補充をしたほうがいいんじゃないか?
財布の隙間から覗くそいつの目に光はない。
後先考えずにバイトを辞めてしまうからだ。貯金もないくせに馬鹿なやつ。
さよならは言わないで
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2023.12.4 藍
さよならの時間はわからないようにするから
【さよならは言わないで】
曖昧の中に浮遊していたい。だって、物事を終わらせるのにそんなにつまらない言葉ってないよ。これまで何を頑張りましたか。って言われて、受験勉強です。って答える時空みたいに歪んでいなくて。
どこまでも遠くへ逃げられるようになってきたけれど、世界の果てまでも追いつけるようにもなってみたらしい。時空間移動なんてしないまでも、世界の端から端まで随分近しくなった。
同じくして、さよならの言葉が重力を失ってから随分久しい。二度と会えないなら、それは意思だった。つまり、二度と会わないということだ。あまり強い言葉は使わないでいたい。不可能という宇宙を失って、随分自由でなくなったから。
さよならは言わないで
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密かに心を寄せている友達がいる
学校で出会って、卒業した今でもたまに連絡をとっている
連絡の頻度はまちまちで、よくメッセージを送り合う期間もあるし、お互いに音信不通の期間もある
今は音信不通の期間
学校の時は普通の友達だったのに、今では心の支えの一つになっているぐらい大切な友達になった
きっと親友って呼んでも大丈夫なぐらい
友達は誰かに自慢したくなるぐらいすごい人で、
つい自分と比べてしまって劣等感を抱いたこともある
ある日のメッセージで、「私なんかと友達でもったいないと思う時がある」的なことを言われた
友達に対して抱いていた劣等感を、友達も私に対して抱いていた
そのとき察した
ああ誰もが無いものねだりなのだと
あんなにすごい友達も、こんな私に対してそう言う感情を抱くのだと知った
どれだけすごいと思われている人も、自分に無いものを強請っていて、私が持っていているものをねだる人もいるのだと知った
言葉を交わし、お互いに様々な気づきを得た
文面越しに、音声越しに、言葉を交わしていくうちに
気がつけば、友達は私の中で大きな存在になっていた
隠しているつもりだけど、この気持ちはもう気づかれてしまっているかもしれない
今は音信不通の期間
そう言う期間があることはお互いに承知している
でも本当は、少し怖い
言葉を交わし終わったあと、
その日の最後のメッセージで、その日の最後の一言で、それが発せられるのが怖い
それを言われてしまうと、なんだかもう完全に縁が切れてしまうような気がするから
だから自分からその言葉を使ったことはない
なるべく、またねとかじゃあねとか、他の表現を使う
完全に縁を切ったりなんか友達はしないことを、よく分かっている
それでも、やはり怖いのだ
だからどうか
さようならだけは言わないで
♪また会う日まで
会える時まで
別れのその理由は話したくない
でも、だから。
さよならは言わないで。
「さよならは言わないで」
言いたいことはありすぎた。
でも、言い残せる時間は残り少ない。
ごめんね、先に逝く僕を許してほしい。
僕のことを愛してくれて、ありがとう。
君の心に生き続けたいから、さよならは言わない。
「…ずっとずっと、大好きだよ」
さよならを言われると
別れたくないなぁ
待ってよ
きっとまた明日も会えるよ
「さよならは 言わないで」
お見舞いに行った時、君はそう言った。
本当に会えなくなそうだからって、君は泣いていた。
「さよならは 言わないで」
元気になってから学校から帰る時、君はそう言ったね。
また病気をしそうで怖いからって、君は泣いていた。
「さよならは 言わないで」
高校の卒業式の時、君はそう言った。
離れたくないからって、君は泣いていた。
「さよならは 言わないで」
デートのとき、君はそう言った。
一人は寂しいからって、君は泣いていた。
「さよならは 言わないで」
プロポーズのとき、僕は君にそう言った。
もう離さないからって、君は泣きながら笑っていた。
「行かないで、」
そこにいたのは熊の人形を抱えた小さな少女だった。少女は窓の外から逃げようとする俺を今にも消えてしまいそうな声で強く引き留めた。きっと他の泥棒なら見られたのが子供だと分かった瞬間すぐに窓から退散する所だろう。しかし俺はそれができなかった。きっと幼い頃の言い馴染みのある言葉をはじめて他の奴に言われたからだろう。俺はその動揺を隠すように「やー!サンタさんだよ」と見え見えの嘘をついた。それでも少女は赤い服でもない白い髭もないただの四十すぎたおっさんをサンタクロースと本気で思い込んでいるようだった。「うわあ!やっぱりそうなんだ!絵本で見たことあるもん」少女があまりにも無邪気に喜ぶもんだから俺は咄嗟に風呂敷の中から綺麗なダイヤの指輪を取り出し、まだまだ小さい少女の指にそっとつけた。きっとこれがプロポーズだったら最悪の仕上がりになっていただろうが少女を声を上げて喜んだ。その指輪は少女の家から盗んだものだったことを後々になって気づくほどきっと俺は動揺していたのだろう。それから俺と少女は1時間ほど話した。少女の家にはほとんど親が帰ってこないことや俺がはじめてのサンタクロースだったこと、いつも1人で絵本を読んでいることや友達がいないこと。俺と少女は家が豪邸か貧乏か以外ほとんど似た境遇だった。あんなに妬ましくうざったらしかった豪邸に自分と同じような苦しみを味わっている少女が住んでいたなんて考えもしなかった。ただ、俺と少女には決定的な違いがあった。それは、
「はい、サンタさん!これ!」
「え、これはなんだい?」
「サンタさんへのプレゼント!今年は来るかなって思って一応手袋作ってみたんだ!本当に来るとは思わなかったけど」
俺は少女にダイヤの指輪をあげた。それはダイヤの指輪なんて高いものをもらったら嬉しいだろうと思ったから。少女はそのお返しに手袋をくれた。それはきっと手袋をもらったら手が温まるだろうと思ったから。きっとこういう所なんだろう俺と少女の違いは。少女には俺みたいに悪い人間になって欲しくない。そう思い、俺はそろそろ家を出ようとした。少女はもう引き留めなかった。きっと来年の12月24日も来てくれるだろうと思っているからだろうか。もしそうだとしたら「さよなら」なんて口が裂けても言えなかった。今「さよなら」なんて言って家を出たらきっと少女は去年俺を引き留めなかったことを後悔するに違いない。だから俺は一夜限りのサンタクロースになりきって「さよなら」の代わりにこう呟いた。
「メリークリスマス」
「さっむーい」
バスを降りて開口一番に彼女が言った。だから家の前までで良かったのに。そう言ったら頬を膨らませて僕を睨みつけてきた。
「なんでそゆこと言うの」
「だって、これで風邪でもひかれちゃ悪いと思って」
「そうじゃないでしょ。見送りに来てくれてありがとう、でしょ?」
「……はい」
「全くもう。も少し感傷に浸りなさいよね。暫く会えなくなるんだから」
そうなんだよね。君のテンションがいつもと変わらないからこれがこのままずっと続くと錯覚してしまう。僕はこれからこの国を旅立つ。それなりに遠い異国へ行ってしまう。つまり、君とは明日にはもう会えなくなる。早起きが得意でない彼女だけど、今日だけは頑張って起きて駅までついて来てくれた。その気持ちが本当にありがたいよ。それを思ったら、なんだか、ようやく寂しい気持ちが溢れ出てくる。
「元気でね。たまには手紙ちょーだいよね」
「うん、分かった」
「あんまりぼーっとしないようにね。隙を見せるとなんかの事件に巻き込まれたりするよ」
「そんな物騒な国じゃないから大丈夫だよ」
「肉ばっかり食べてちゃダメよ。魚も食べなさいよね」
「あはは。何それ、お母さんみたい」
「あのね!本気で言ってんの。あんたの食生活すぐ偏るんだから」
きっと、どちらも会話が途切れるのを恐れてる。少しでも間ができれば次に言うのは別れの言葉だ。それを知っているから、今になってお互いにどうでもいい話をするんだろうな。
けれど時間は無限じゃない。とうとう僕が乗る列車の発車時刻になってしまった。汽笛の音がやたらと心臓に響いた。言わずもがな彼女の顔はさっきまでと打って変わって引き攣っていた。
「見送り、ありがとう。君も体には気をつけてね」
「……うん」
「じゃあ、」
「ダメ」
僕の口を彼女が両手で押さえた。その時には既に、彼女の両目から涙が流れ落ちていた。
「サヨナラは言わないで」
震える手が僕の口をおさえている。僕はその細くて冷え切った手をそっと掴む。彼女は涙でぐちゃぐちゃになった顔で僕を見上げる。ありがとう、優しい君と出会えて本当に良かった。その気持ちを込めてぎゅっと抱き締める。
「その代わりに違う言葉を言うよ」
「……なぁに」
「大好きだよ」
僕のその言葉を聞くと、彼女は声を出して泣いた。人目もはばからず、わんわんと大泣きをした。そして、ずるいよ、と僕に訴えながら抱きついてきた。そうだよね、ずるいよね。こんな、最後の時に言うなんて。でもサヨナラは言わなかったから。僕らまた会える。約束するよ。また君のもとに戻って来るから。その時までのしばしのお別れだ。
君は僕の大切な人。離れても、それは変わらない。
そんな君に、サヨナラの代わりにありがとうと大好きを。
請不要說再見
人類的話語對我來說難以理解。
特別是關於情感的詞彙,我一個也不認識。
要是不完全理解的話便無法回答……
不管什麼樣的對話我都必須查字典,就連最基本的日常對話也是,要是不仔細咀嚼那厚重書本裡的字句,我便無法和人正常對話。
因此除了那個人以外沒有人願意和我說話。
他在我旁邊的時候我的心跳會變快。
他總是願意等我慢慢地思考、慢慢地回答。雖然我們之間的話題也僅限於簡單的單詞組合。
他最常問我的是:「今天開心嗎?」
今天。現在、當下、說話的這一天。我好像懂了。
開心。快樂、高興。我不懂。
他做出了一個表情,眼睛彎彎的、嘴角上揚。「這個是開心。」他說。
我看向鏡子,回想了一下,我好像做過一樣的表情。
「開心。」我說。
他又做出了剛剛的表情,摸了摸我的頭。我覺得心裡暖暖的,想要好好記得他教我的詞語,可是總是會忘記,只留下薄薄的印象。
那一天他來找我的時候,雖然我的心跳變快了,可是感覺不太一樣,好像有黑色的東西壓住我的皮膚。
「再見。」他對我說。
這是陌生的詞。
我翻開字典,一個字一個字的慢慢讀。
「希望以後再相見的客套語。」
希望。我不懂。
客套語。我不懂。
組合起來的句子。我不懂。
不知道為什麼,這些詞讓我覺得好重好重,好像有人壓著我的感覺。又像不小心掉進水裡的感覺,心臟似乎沉下去了。
雖然我不太明白,可是我突然覺得有點冷、好像被黑色的黏液給包圍了。空氣的感覺跟平常不太一樣。
「不要。」我脫口而出。
可是當我抬起頭,他卻已經走了。
這是我回答得最快的一次了,可是他沒有等我。我不知道為什麼。
我不敢翻開字典,也不敢思考剛才讀到的那句話。
鏡子裡的我眼睛濕濕的,我還是不知道該用什麼詞來形容。