『この道の先に』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
この道の先に何があるの?
なんか歌の歌詞にありそう。
なんだろう。
とりあえず、進むしかない!みたいな?
そんな感じです!
この道の先には何々がある、と決まっているんだろうか。決まっている道もあるだろうが、決まっていない道もあるだろう。私は後者が人生だと良いと願っている。
「道の先に」
家を出て、真っ直ぐ。
すぐ隣のコンビニも、幾つかの曲がり道も、公園も無視して夜を行く。
雨の音に囲まれ自分以外が居なくなった様な錯覚をしたり、雨が街灯や店の光を滲ませて、いつもより少し明るい様な気がしたり。
いつも見ている店や街灯の水溜まりに反射する光が何故かとても美麗に、新鮮に見えたり。
これで星が見えればなぁ何て、叶わない事を妄想出来る。
家からどれくらい離れたか、雨の日の散歩は心なしか足取りが軽くなって、傘をくるりと回して次へ次へ。
自分が住んでる街なのに、知らない景色を探しに。
雨なのに飛んで鳴く、鳥を探しに。
道の先に期待して、まだもう少し、歩いてみる。
この道の先に
この道の先に何があるのだろう。この道はどこに続くのだろう。散歩をしていると、そんな思いで遠くまであるいてしまう。
予想が当たると何かすっきりする。
地図の掲示板がある街は、迷う可能性が減るはずであるが、高いビルがあると見通しが利かないので、油断をすると迷ってしまう。
高いところへ登り、俯瞰することができれば、迷うことが少なくなる。
最もいいのは、先逹がいることだろう。少しのことにも、先逹はあらまほしけれ。
自身で移動と探索むを行うことが、自信をつけていく。
知らないところに進む者は迷う。迷ったら初心に帰る。
道を捨てたわけじゃないの、今更気づいた私を
誰もが咎めても。
それでも信じるしかない私には。
苦しい中を曲がりくねりながら生きてきた私だけど
涙をこらえて。
私にはこれしかないことを、
信じ、
そこへ向かって膝を擦りむいてもただ走っていくしかない。
心の中のことは私が一番分かってるし、
難しくて、物凄く痛いこともあるのに。
目を閉じて、前の光だけを見つめながら走る。
それでも、まだ怖いけど‥
世界は私を見てくれなくても、終わりまで見てくれなくても。
遠すぎるそこへ。
ただ走るだけなの、それなのにこれが私の命綱で。
もう信じて行くしか。
私への信頼。
それを信じている。
本当は私に心底失望しているところだったのに。
よく悪いところは知っているのに。
どうしても行きたい。
あの頃見ていたそこへ。
涙をこらえて、譲れない場所へ。
私のことをどれだけ笑ったって、折れることのできないものがある。
嘘みたいに、形が見えない。
それでも足は必死に前へ。
君のその瞳が私を見る時、どう見えるのか。
不格好な私が風を切る理由がここにあることを覚えていて。
この言葉の全てを体に刻んで脳に刻んでいる。
これこそ私が今も走っている理由。
長くなりそうなこの道をただ進むだけ。
先に何があるかなんて知らないけど、
私は行きたい場所を描く。
走ってきた私の足を信じているから。
一歩一歩選んできた私を知っているから。
描いた場所への道を必死に自分なりに作ってきたのだから。
私は走る。
この道を先に進むと何があるのかな?
きっと素敵な未来だね、完全な道が用意されているよ、あなたのために。
だから、ゆだねていたらいいんだよ、そうしたら、思いもよらない、奇跡が起こるからね。
奇跡はそういう風に起こるんだよ。
この道の先に死神がいる。
それぞれの道は短いか長いかの違いだけ。
どれだけ道のりが単純であろうと複雑であろうと
行き着く先は 皆同じ。
いつもの道の脇にある小道の向こう。まだ一度も行ったことがなく、この道の先には何があるのだろうと想像をかき立てられる。
小道の先は小高くなって曲がっており、その向こうは見えない。
道の先には何があるのだろう。行ってみようか?
この町の裏側? はたまた全然知らない不思議な世界? いやいやそんなものが存在するはずはないけど、なら、もしかしたら隠れたお洒落なお店とか。猫の溜まり場もいいなぁ。
いざ、広がる景色を確かめに。想像にわくわくしながら。
――本当は知っていた。
こういうものは、想像で済ませておいた方がいいことを。現実なんて、そんなものだってことを。
目の前に広がるよく見知った通りを見て、溜め息を吐いた。
『この道の先に』
生きたくない。絶望しかない。でも進まなければならない。
分かりきっているのに、私は願わずにはいられない。
キミが進んでいくこの道の先に、幸あれ。光あれと。
酷く険しくなるかもしれない。つまづき、泣きわめくことになるかもしれない。
それ以上に、楽しい道になって欲しい。
色々な景色を見て、色んな人に出会って、笑顔になれる道であってほしい。
私はいずれいなくなってしまう道だけど、いつまでも願うよ。
大切なキミへ
お題【この道の先に】
わたしの心が満たされたらゴール。
「この道の先に」
萌花side
「…っ、あっ、…だめぇ…
イッちゃぅ、…ああっ…‼︎」
私の首にしがみ付き、全身を痙攣させながら達した彼女は、恥じらいながら私の胸にグリグリと額を押し付けてきた。
「気持ちよかった?」
膣に突っ込んでいて、彼女の体液が纏わりついているのとは反対の手で、そっと彼女の長い髪を優しく撫でるとくすぐったそうに笑った彼女は「…いじわる。」
と少し恨めしそうに上目遣いで睨みつけてきた。
「…ごめんね?」
対して悪いとも思ってない私は、チュッと彼女の額に軽く口付け、グッと抱き寄せた。
彼女は嫌がる素振りも見せず、自分の足を私の足に絡めて1mmの隙間もなく抱きついてきた。
私の太ももに押し付ける様にびしょびしょで温かなソコを押し当ててくる。恥ずかしがりながらも、その表情は妖艶で明らかに相手を誘う様なものだった。
「んっ…!」
薄く開いた唇を塞いで、わずかな隙間から舌を差し込み、ピチャピチャと絡めた。ぎゅむ、と少しいたいくらいに彼女の尻をつねるとそれだけで感じたのかドロっとした温かな彼女のものが溢れてきて、私の太ももを濡らしていった。
「萌花さん…好き…」
激しいキスの合間に、うっとりとした表情の彼女の口から紡がれた告白を塞ぐ様に口付けて、第二ラウンドへ突入した。
「…もう帰るんですか?」
あの後、感じすぎた彼女は潮を吹きながら達してそのまま気絶したように眠ってしまった。
私もシャワーを借りて浴びようと思ったけど、体が流石に疲れていてそのまま泥の様に眠っていた。
目が覚めると時計は朝の8時を指していて、今日のお稽古はお昼からなので随分と余裕があった。
だが、側から長居するつもりはなかった。本当は昨日も一回だけ彼女を抱いたらそのまま帰るつもりだった。
穏やかな寝息を立てて、まだ眠っている彼女を起こさない様に注意しながらベットから抜け出すと予め聞いておいた場所からバスタオルとミニタオルを一枚ずつ取ってそのまま浴室に向かいシャワーを浴びた。
タオルで髪の毛を拭きながら、身体にバスタオルを巻き付けて寝室に戻ると、ベットに寝転がったままスマホを弄っていた彼女が嬉しそうに笑いながら、挨拶をしてきた。私も優しく微笑みながら彼女に挨拶を返し、そっと頭を撫でた。
ベッドの下に脱ぎ捨てた自分の服と下着を拾って身につけていくと、嬉しそうにしていた彼女の表情がだんだんと曇っていった。
その様子に気づかないふりをして身支度を終えた私はカバンを持ってそのまま彼女を残して部屋を出ようとした。
「あの…っ、萌花さん」
ドアに手をかけようとした時に後ろから少し戸惑いがちに名前を呼ばれて振り返ると、タタっと駆け寄ってきてギュッと体当たりする様に抱きついてきた。
「…また、私の事を昨日みたいに抱いてくれますか…?」
不安そうに、縋り付く様に抱きついて来る彼女の華奢な腕をそっと引き離し、頬にキスを落とすと耳元で「また気が向いたらね。」と囁いた。
「っ、は、い…///」
顔中を真っ赤にして照れている彼女にもう一度微笑みかけて、部屋を後にした。
「削除、っと…」
彼女の部屋を出てちょうど来ていたエレベーターに乗り込んだ私は、尻ポケットに入れていたスマホを出してそっこーで彼女の連絡先を削除した。
もう2度と抱くつもりもなければ、会うつもりも話すつもりもない。
何故なら、何度も会ったりしてお互いに本気になったりしたら後々めんどくさい。
…もう、あんな思いするのは2度とごめんだ。
だから、一度寝た相手とはなにがあっても2度目はない。ずっと、そう決めていた。
「おはよう、萌花」
「あぁ、おはよう。ほってぃ」
一旦家に帰ってから、新しい服に着替えて化粧もして近くのカフェでご飯を食べてからお稽古場に向かった。少し早く着きすぎて、誰もいないお稽古場でストレッチをしていると、同期のもえこがやってきて隣にどかりと座り込んだ。
「で?どうだったの?昨日の子とは。
確か星組で、めっちゃ可愛いって有名な子でしょ?
すごい抜擢されてて次期ヒロインじゃないかって噂されてるんじゃなかった?」
「あぁ、まあね…。でも、別に何もないよ。
ただ、誘ってきたからそれに応えただけ」
「…そっか。そーなんだ。」
「まぁ、確かに顔はけっこう可愛かったし、おっぱいもかなりあってセクシーでタイプではあったけど。
でも、それだけ。…私はもう、誰にも本気にはならないから」
ふと脳裏に過去の嫌な記憶が蘇ってきて、それを振り切り様に最後は自分に言い聞かせる様に呟いた。
「…ねぇ、もういいんだよ。萌花はもう充分苦しんだでしょ。心も体もボロボロになって…もがいてもがいて、必死に耐えたんだよ…?
もう、自分を許してあげようよ…!」
必死に訴えかけてくるもえこの瞳には、私のことが心配で堪らない、という色が写っていて。
初めて出会った時からいつも優しくて、真っ直ぐに私を包み込んでくれる1番の親友。
この子がいてくれたから、私は劇団を止める事なく、立ち直ることが出来たんだ。
あの時も…。
ー…ー
「ほってい…お願い。私を抱いて…。
もう全部、リセットしたい…。忘れたいの…。
お願いだから、私を壊して…?」
びしょ濡れになりながら、必死で迷子になっていた私を見つけてくれた彼女。そんな彼女に私は縋り付く様に抱きついて、気づいたらキスしてた。
もえこは優しいから、全てを知っていても私を責めずにそのまま何も言わずに抱いてくれた。
「っ、…ー…!」
もえこに抱かれながら、別の女の名前を呼んで求める私を咎めることもせず、最後まで優しく抱いてくれた。
「…萌花が悪いわけじゃない。誰も、悪くない。
ただ神様が意地悪をしたんだよ…。
だからもう、そんな風に自分を責めないで…」
ー…ー
あれから私は、一度も本気で人を好きになることができなくなった。
本気になったらいつか、裏切られる。
身をもってその事を知ってしまったから。
だけど、もえこが側で支えてくれたから、どん底まで落ちずに這い上がれた。
初めて会った時からずっと、今も私の心の支え。
「…ありがとう、ほってぃー。」
「萌花…」
そっと頬に手を添えられて、ふわりと彼女の香水が香る。気づいたら唇を彼女のそれで塞がれていた。
窓には鍵がついてないから、いつ誰が入ってきて見られるかも分からない。
心の中では振り払わないと、って思った。いくら節操のない私でも、神聖なお稽古場でこんなことするべきじゃないって…。
だけど私には、この温かくて心地よい熱を振り払うことはできなかった。
せのside
初めて会った時から、ずっと好きだった。
「えっと…せのさんだよね?私は、佐伯萌花です。
よろしくね」
そう言って差し出してくれた手を私は緊張しながらも、握り返した。
ー…ー
受験会場で初めて萌花を見た時、こんなに綺麗な子がいるんだって思わず見惚れた。
スラットした背丈で、どちらかと言うとクールビューティといった感じの大人っぽい美人。その時はまだ髪も長く綺麗なシニヨンにまとめていたから、正直男役志望なのか娘役志望なのか分からなかった。
残念ながら一次試験から最終試験まで、彼女とは別のグループだったので、それっきり彼女を見かけることもなかった。
だから、入学式の日にバッサリと髪の毛を切って短髪になっている彼女を見た時、ホントに死ぬほど嬉しかった。
これから彼女と一緒に立派なタカラジェンヌになるために芸事に励ことも、同じ男役を志せる事も。
仲良くなりたい。会話をしてみたい。
そう思いつつもクールビューティな見た目に反して人懐っこくて、甘えん坊な彼女の周りには常に同期が誰かしらいて、なかなか話しかけられなかった。
ただ遠くから見つめるだけで、話をする事もできないままあっという間に春が過ぎて夏が来た。
そんなある日のことだった。
バレエの授業で、4から5人のグループを作ってテーマを決め、創作バレエを発表する、という課題が出た。
その時に運良くくじ引きで私は萌花と同じグループになった。
私の手を握りしめて、嬉しそうにはにかむ萌花を見た瞬間に、私は今までに感じたことが無いくらいに胸が高鳴るのを感じた。
それからは本当に、幸せな日々だった。他に2人の同期もいたけれど、授業が終わった後や休憩時間など空いた時間があればみんなで案を出し合って、練習に打ち込む日々が続いた。
萌花は運動神経がめちゃくちゃ良くて、ダンスもバレエもすごく上手かったから、苦手な私にアドバイスをくれたり夜遅くまで練習に付き合ってくれた。
この出来事がきっかけで、わたしたちの中は急速に深まり、お互いに親友と呼べる存在になった。夏休みなどの長期休みにはお互いの地元に帰省して家族にも紹介し合った。
本当に楽しくて、幸せであっという間な時間だった。
『これからは離れ離れになっちゃうかもしれないけど、お互いに頑張ろう』
音楽学校を卒業して、組み回りと初舞台を終え、いよいよ組み配属が発表される前日の事。私は緊張と不安でなかなか眠れなくて、萌花の部屋を訪れていた。
萌花は少し寂しそうな顔をしながらも、不安に押しつぶされそうな私を励ましてくれて、離れていても心はずっと近くにいるから、と言ってくれた。
その言葉に私の不安は一気になくなって、たとえ萌花と離れ離れになってしまったとしても、死に物狂いで頑張ろうって心から思えたんだ。
でもやっぱり神様はいるんだって思った。
組み配属の発表日当日。萌花と私は同じ花組に配属されることが決まった。
「ほってぃー、これからもよろしくね」
そう言ってはにかみながら抱きついてきた萌花を私もぎゅーっと抱きしめ返した。
それからは本当に毎日が幸せだった。しんどい時も嬉しい時もいつも私の隣には萌花がいた。
萌花は音楽学校をかなり上位の成績で卒業した事もあり、歌もダンスもお芝居もすごく上手かった。だから、取得するまでに時間がかかる私の自主練にいつも付き合ってくれた。
お互いの家に遊びにいってお泊まりしたり、休日には2人で話題のカフェに行ったり映画を見に行ったり、近所を散歩したりして過ごした。
同組同期の男役、ということでライバルとして扱われがちだった私たちだけど、険悪な雰囲気になってしまったことは一度もなかった。
むしろ萌花は私が新人公演で名前のある役がついたり、初めて主演が決まった時も誰よりも喜んで応援してくれた。
萌花がいてくれたから、私は何があっても頑張れたんだ。
きっとこれが"恋“というものなんだろう。
だけど、気づくには遅すぎたんだ。
「実は…恋人ができたの」
ある日、オフの日に萌花から話があると言われて待ち合わせたレストラン。そこには萌花と萌花の隣に見知らぬ綺麗な女性がいた。
艶やかな癖のない黒髪をポニーテールにした、ビシッとした薄いストライプのグレーのぱんつスーツを来た女性。
その女性が、萌花の恋人だと本人の口から告げられた時、私は地獄に叩き落とされた気分だった。
私以外の人に笑顔を向けて幸せそうにしてる萌花を見るのはすごくしんどくて、耐えられなかった。
その時に行ったレストランは萌花も私も大好きなお店でよく行ってたけど、正直何を食べてどんな味がしたのか何も覚えてない。
ただ家に着いた瞬間に枯れるんじゃないかってくらい大泣きして、萌花が好きで同時に玉砕したって事を思い知った事だけはいつまでも忘れなかった。
それから私は自然と萌花を避ける様になっていた。お稽古や自主練以外の時間には他の同期や下級生達と過ごして萌花を徹底的に避ける様になった。
そんな私に対して萌花は寂しげな視線をいつも向けていた。
そんな日々が1年近く続いた大劇場公演の集合日の日。
萌花が専科に行くことが発表された。
大千秋楽の日に当時のトップだった明日海さんを始めとして、組子皆んなが萌花に色んな激励を送る中、私はただ遠くからその様子を複雑な気持ちで見ているしかなかった。
萌花と離れてからの日々は散々だった。何をやっても上手くいかなくて、気分もどんどん沈む一方だった。
私にとって最初で最後の恋を忘れるために、告白してくれた組子と何回か付き合ったりしてみたけれど、どうしても萌花のことが忘れられなくて、上手くいかずに終わってしまった。
「…萌花…」
いつも、お稽古の時や舞台に立ってる時以外には肌身離さずつけている音高時代に萌花がプレゼントしてくれた私の誕生石のネックレス。萌花に恋人が出来て、私にも恋人ができる度に何度も捨てようとしたけれどどうしても手放すことが出来なかった。
だって、どうしようもないくらい好きになっちゃったから。
離れ離れになって、改めて自分の中で彼女がどれだけ大きくて大切な存在なのかを自覚した。
会いたい…今すぐ。それから、あの時にすれ違ってしまった事をちゃんと謝りたい。
私のことをもう嫌いになってしまっただろうか?忘れちゃったかな?
何度も彼女にメッセージを送ろうとしては消してを繰り返していた。
「萌花…ごめん…ごめんなさい…」
何度も彼女を想い、泣きながら眠りにつく夜を過ごした。
そして、1ヶ月、2ヶ月…気づけばあっという間にまた次の年を迎え、萌花と出会った季節がやってきた。
ある日のことだった。
「ほっていー、お願い!萌花を助けて…!」
久々に他組の同期から連絡が入って出てみると、かなり切羽詰まった声で萌花の様子がおかしいと言われた。その子は私と萌花がすごく仲良いのを知ってたから何か知ってるんじゃないかと思って連絡してきたらしい。
「昨日までは普通だったんだけど、今日のお稽古の時に目がすごい腫れてて明らかに泣いた後だったの。いつもだったらしない様なミスを連発してて、先生もすごい心配してて…」
同期の話を聞いた私は、なんだか嫌な予感がして車のキーと携帯、鍵をつかむとそのまま外に出て車に乗り込んだ。
一先ず萌花のマンションに向かって呼び鈴を鳴らしたけど、反応はなし。他の住民が入るタイミングで一緒に入りオートロックを突破して部屋まで行ってみたけど電気は消えていた。
胸騒ぎを感じながら私は必死で萌花のいきそうな場所や近所を回った。突然降り出した、バケツをひっくり返したような大雨の中、1時間ほど車を走らせていると、近所の割と大きめな公演のベンチにポツンと座っている見慣れた背中を発見した。
「っ、萌花…!」
慌てて近くに車を止めて彼女に近づくと、この雨の中傘をささずにベンチに座っていて、全身がびしょ濡れになっていた。随分と長い時間ここにいたのか、びしょ濡れで張り付いた布越しに感じた体温は氷の様に冷たく、私は彼女を抱き上げて車に走った。
「…別れたの。」
抜け殻の様な状態の彼女を私の部屋に連れてきてとりあえず一緒にシャワーを浴びて湯船に浸かって体を温めた。
ドライアーで彼女の髪の毛を乾かしている時にポツリと、独り言の様に彼女の口から語られたのは余りにも受け入れ難い現実だった。
なんと彼女が恋人だと思っていた相手は同性婚をした外国人のパートナーと養子縁組で引き取ったら子供もいたのだ。年齢も名前も仕事も出身地も国籍も全て偽りのものだった。
さらに最悪なことに萌花と二股をかけていた事がバレて離婚する羽目になったらしく、本命だった相手が萌花のことを泥棒猫だと罵って家まで来て暴れ、警察沙汰になったようだ。
「2人の仲を壊すつもりなんて無かったの…。ただ私は彼女と一緒にいたかっただけ…。まさか、結婚してて子供がいるなんて、本当に、知らなかった…っ」
「萌花…!」
私はこれ以上彼女に辛い記憶を思い出させたくなくて、気づいたら抱き寄せていた。
お風呂に入ったばかりだから、彼女の体は熱を取り戻して温かくなっていた。けれど心は氷のように冷たいままでその氷を溶かすように強く抱きしめて、彼女の体をさすり続けた。
「っ、ほってぃ…。
…すき、だったの…。どうしようも、ないくらい…
でも、彼女は違った…
私は本命の相手に会えない間の…性処理の道具…っ
都合のいい女だっただけ…っ」
「萌花…」
恋愛経験が全くない私にはどうすれば彼女の傷を癒せるのか分からなくて、ただただ彼女を抱きしめる事しかできなかった。
そのまま萌花は泣き疲れて寝落ちしてしまい、ベットに運んで一緒に眠りについた。
翌朝目を覚ますと腕の中にはスースーと寝息を立てている彼女がいて、ほっと安心した。だけど顔は浮腫んで目元は泣いたとすぐに分かるくらいに腫れ上がっていた。
そんな彼女が痛々しくて、そっと目元を撫でるとくすぐったかったのか、目を覚ましてしまった。
「あ、おはよう…萌花。起こしてごめんね。
今日は、お稽古休みだし何かつくるからゆっくり休んでて」
そう言って布団から出ようとすると後ろから強い力で引っ張られて、押し倒されて気づいたら萌花が私の上に乗っかって唇を塞がれていた。
突然のことに私にはなす術もなく、ただただ萌花とのキスを受け入れていた。
「…お願い、ほってぃ…。私のことをめちゃくちゃにして…。抱いてほしいの…。
もう、全部忘れたい…っ」
虚な瞳で私の瞳を見つめながら懇願してくる萌花を突き放すことなんて私には出来なかった。
本当はこんなやり方間違ってる。頭のどこかでわかっていても、萌花のことが好きで、愛しくてたまらない私にはたとえそこに愛がなかったとしても、いっときの感情だったとしても彼女と体を重ねられることに、体が反応していた。
本当は私も、こんな形じゃなくて、お互いに想いを伝え合って愛し合いながらしたかった。
「っ、好き…ー…ー」
萌花の口から何度も呼ばれる恋人だった相手の名前を聞きたくなくて、でもそんな彼女をを抱いて喘がせているのは自分だと思うと、寝取っているようなどうしようもない背徳感があって、私はあえて彼女がその名前を呼ぶのをやめさせず、彼女の体を隅々まで愛した。
何度も何度も私を求めてくる彼女を抱き潰して、気絶してしまった彼女の頭を撫でながら、
私は一度は感謝した神様がこんな運命に誘ったことを恨んだ。
それから萌花は、壊れてしまった。でも他の人達はそのことに気づかなかった。ずっとそばにいた私以外には普段通りの明るい彼女に映っていたと思う。
その当時の次の大劇場公演で萌花が専科生として出演することが正式に発表され、私は心の底から喜んだ。
また、彼女と一緒に舞台を作れることがすごく嬉しかった。
「ほってぃと一緒にいたい。…またキスしたい」
そう言って甘えてきた萌花を私が拒めるはずもなく、ほぼ同棲状態って感じで私の家には彼女の服や日用品、スキンケアグッズなど私物が増えていった。
夜は一緒のベットで抱き合って寝て、彼女が求めてきた時にはキスもした。
だけどもう2度と身体を重ねることはきった。
萌花は一度寝た相手とは一緒に寝ない。理由は単純に本気になって、裏切られるのが怖いから…。
だから彼女は誘ってきた相手なら誰でも、組子でもスタッフでも、外部の人間でも…節操なく抱いたし、抱かれもした。
そんな彼女を私は止めようとしなかったし、止めることもできなかった。
だってきっと、彼女をこんな風にしてしまったのは私だから。
あの日、私が無理矢理にでも抵抗して彼女に流されず抱いていなければ、こうはならなかっただろう。
「ほってい…大好き…」
そう言って抱きついてキスしてくる彼女を私はそっと抱きしめた。
節操がなくてもいい。誰と体を重ねてもいい。
だからお願い…。もう2度と誰のものにもならないで。
私だけを見てて…。
スヤスヤと心地の良い寝息を立てている彼女を、まるで閉じ込めるように抱きしめて、眠りについた。
【この道の先に】
この道の先に何があるんだろう。きっと俺が目指すべきはこっちじゃなくてあっち。この矢印の先には何がある?
「喉が渇いたから、水が飲みたかっただけなのに。」
更地に何かがあるなんておもっちゃいなかったけどただこの道の先にオアシスを見つけたかっただけ。
いつもは真っ直ぐ通り過ぎる少し寂れた郵便局のある角を初めて曲がった。寄り道しないようにと口酸っぱく言い聞かせてくる大人達の声を思考の外に追いやって、小さく確実に歩みを進めながら塾の重たい教材の入ったカバンの紐をぎゅっと握りしめる。
ドキドキと胸が高鳴るのは見慣れない景色のせいかイケナイことをしている自覚があるからか。どちらも、かもしれない。
郵便局の角を曲がって直ぐに住宅地に入った道は長らく一本道だが、次に曲がり角が来たら、分かれ道が来たら、どちらに行こうか。そう考えるだけでワクワクする。
気持ちの高揚に釣られるように段々と歩調を上げながら進んだ先、漸く見えた曲がり角は残念ながら右しか選択肢がなかったけれど。それでも曲がった先に見えるだろう新たな見知らぬ景色への期待を胸に大きく足を踏み出した。僕の冒険はこれからだ!
「あら。うちに用かしら?それとも迷子?」
大きな勇気で始まった僕の小さな冒険は、突き当たりに住む斎藤さんの言葉で静かに幕を閉じた。
/この道の先に
歩く靴先に導かれるまま、藪を縫って歩いてきた。ここがどこかも知らないが、低く飛んでくちょうちょを追いかけ、昨日は左に歩いたし、今日は駆け抜ける風と一緒に右へ走った。ここかどこかなど、知る気もなかった。
草木に擦れた腕の傷、小石に転んだ膝の傷。懐かしさを痕にして、忘れてしまった痛みは寝た子のままに。どこへいけばいいかなど、わかるはずもなく。
暮れる夕日を前にして、途方に暮れて足を止め、うつむいた目が涙に歪む。すっかりくたびれた靴紐が、可哀想にもほどけていたから、しゃがみこんで直してやった。
ぴったりと、この足に添う汚れたこの靴。
立ち上がって、振り返ったのは初めてだった。黄金色にそよぐ草波に、どこからきたのかなんて、もう分からない。それほど遠くへきたのだと。
いびつに細く続いてきた足跡が、先を求めて道になる。その先頭で、今夜はあの明るい星を目指すのだと、また藪の中へ、私は足を踏み出した。
【この道の先に】
在宅勤務って私にとって良いのか悪いのか
この道の先にあるのは肥満だ
いったい何日外出してない?
『道』
果てしなく続く道。
この先に明確なゴールはあるのだろうか。
…きっとない。
分からないまま、ただ進んでいく。
真っ直ぐな道じゃないその道を、
何回も分かれ道に遭遇してたまに
こっちでよかったのか不安になる。
いつかこの道の突き当たりがあったとき、悔いが無いようにいられているといい。
お題:《この道の先に》
ー この道の先に ー
この坂を越えたら君に会える。
私は学校へ行く際毎回そう思ってしまう。どうしようもないほどに大好きな彼女に会うためであれば坂など軽いと思えてしまう。
私は「友人の女」である彼女に恋をし、会うことを願いながらこの坂を毎朝登るのだ。私の胸は毎度チクリと痛む。だが、それでもこの思いは留まることなど出来ない。
人は愛の前では無力である。
私は時々後悔する。
友人と彼女との縁を繋ぐ手伝いをしたことについてだ。そして、後悔してすぐ後悔したことを後悔するのだ。私は友人と彼女が別れれば良いと思ってしまう。だが同時に別れず今のまま幸せに暮らして欲しいとも思ってしまう。
私の心は矛盾を抱えたまま、結論のつかぬ道をぐるぐると回り続けている。
ぐるぐる、ぐるぐる。
馬鹿みたいに、自身のしっぽを追う犬みたいに、私はいつまでも迷い続けている。
人は非合理的である。
生物としての考えを優先するのならば、友人の女であろうと奪い取ってしまえばいいのだ。
そして彼の目の前で彼女の体を心を奪ってしまえばいいのだ。
生物界で見てしまえばそんなこと、些細なことである。よくあることであるのに何故か人間はそんなことが出来ないのだ。
人間は実に馬鹿である。
私も同じ馬鹿である。
私が歩く道の先は真っ暗で何も見えない
でも、あなたはきっと一筋の光になってくれる。
私を暗闇から連れ出してくれる
スーパーヒーローなんだ。
「どうして?」
ぱちくり、と音がしそうなほど大きな目を瞬かせて、少女は少年に問うた。
「だから、だめなんだ。僕と君はもう一緒にはいられないんだよ。」
少年の家は裕福な中流階級の家庭だった。つい先日までは。
よくある話だ。父親の事業が失敗し、本人はそのまま首を吊ってしまった。
母親はショックで倒れ、生活はままならない。
少年は学校を辞め、親戚の工場へ奉公に出なければならなくなった。
それだけの、陳腐なよくある話だった。
「わからないわ。お家が近所じゃなくなっても、学校で会えなくなっても、会いに来たらいいのに。私だって会いに行くわ」
お馬鹿さんねえ。そういって無邪気に笑う顔が眩しい。
苦労なんてなんにも知らない顔だった。
それが可愛くて、愛しくて、憎らしい。
少女の家も裕福な家庭だ。学校にも通っていない、格の違う家の男に会うなど許されるはずもなかった。
「会うことは許されない。君が幸せになるためだよ。そして僕が幸せになるためだ」
なおも拒否をする少年に、わからずやね、と言わんばかりに少女は鼻を鳴らした。
「あなたが私に会えなくて幸せになることなんてありえないわ。ねえ、一言助けてって言えばいいの。あなたの幸せはどこにあるの?正直に答えないと許さないわ」
少女がいたずらっぽく尋ねる。
少年は一度くしゃりと顔を歪ませ、しかしそのまま無理やりに笑ってみせた。
この子の夢が、このまま覚めなければいいのに。
少なくとも、今だけは。
「―――それは君とゆく、この道の、先に」
「妄想癖」
君とふたりで歩く
この道の先には
何があるのだろう
何も無いまま永遠と道が続いているのなら
ふたりの時間が永遠と続くのなら
何を話そうか
何を覚えようか
考えた時には
もう家だった