『ここではない、どこかで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「ここではない、どこか…そうだな、この近くにオススメのカフェがあるんだ。君に時間があるならそこで話そう、桜樹くん」
相変わらずの穏やかな声で、好きだった人は頬らかに言う。
今にも泣きそうだ。偶然でも逢えたことが嬉しくて、苦しくもある。そして、辛くもある。
泣くのはまた後ででいい。今はこの人をもう二度と忘れないように記憶に刻んで、役割を終えよう。
「先生、お元気そうで何よりです、急にすみません」
さようなら、今でも忘れられない人。
_運命みたいな人
ここではない、どこかで先輩は私のことを考えてくれているだろうか?
ここではない、どこかで幼馴染くんは本当に私のことを想ってくれているのだろうか?
今日は少しだけ、先輩の学校について調べた。別に先輩がいるからとか先輩を追いかけるためとかそんなんじゃない。ただ、私が持っているパンフレットで紹介されていただけ。元々、先輩の行く学校の名前は知っていた。結構有名だったはず。サッカー部のキャプテンがイケメンでテレビにも出たという噂も…。今日調べてわかったのは、その学校はやはり、陸上が強いらしい。特に長距離。…本当は今日調べてわかったわけじゃないのだけれど。長距離が強いってこともわかってた。でも、その学校は外国人を取り入れている。黒人が多いらしい。別に差別している訳じゃない。それでも、黒人と日本人だとどうしても黒人の方が有利になってしまう。そういう血なのだから。私は先輩に行って欲しくなかった。そんなの…勝てる確率だって、正々堂々と闘えるわけだってないじゃないか。だから私は止めたんだ。
先輩は笑った。そのまま、その学校に行ってしまった。先輩は闘いに…行ってしまった。
先輩らしいよ。私を置いて行ってしまうんだもの。
#002『帰る場所』
現代/ややFT
春は出会いと別れの季節、らしい。近々必要になるからと、滅多に着ないスーツを出し入れするご主人にくっついてクローゼットを出たり入ったり。荷物の隙間がほどよい塩梅で、気に入らない客が来た時にはここにこもると決めていた、のだが。
つがいを見つけたご主人が別の家に移るとかで、居心地のいい狭い隙間が妙な具合に広がってしまった。また別の場所を探さなくてはいけない。
「さくらー。さくらー?」
散らかった段ボール箱で遊んでいたら、階下からご主人の呼び声が聞こえた。
にゃーん、と階下にも聞こえるくらいの鳴き声で応え、階段を駆け降りていく。
「今日はもう行くね。近いから、またすぐに来るからね」
すでに靴を履いた足もとにすり寄り、ぞんぶんに匂いをつけ直す。ここではないどこかで、別の匂いにすり寄られてしまわないように。
「あんた、もう行くって、二階ひどい状態じゃない!」
入れ替わりに二階へ上がった母親の声に、ご主人はごめーん、と舌を突き出した。
「犯人はさくらだよー。ねー」
とんだ濡れ衣と言ってやりたいところだが、ご主人にひょいっと抱き抱えられてうれしかったので、ゴロゴロ言って聞き流すことにした。
「ごめんねー、さくら。旦那がアレルギーじゃなかったら、マンションでも連れて行けたのになぁ」
「連れて行ったって、あのマンションじゃさくらには狭いでしょ。はいはい、二階は片付けておくから、さっさと帰りなさいな」
ご主人を追い払うその手がこちらに伸びてきたので、しぶしぶご主人を離れて移る。物分かりのいいふりも楽じゃない。
ご主人の新しい住まいはマンションと言って、狭いらしい。狭い場所は好きなのだが、連れて行ってはもらえないようだ。
抱える腕を蹴って飛び降り、玄関を出るご主人の足にもう一度じゃれついた。
外は危険だと言うから、出てはいかない。
代わりに、いつでもここにいる。
《了》
お題/ここではない、どこかで
2023.04.16 こどー
『届かぬ想い』4/15
↓
『ここではない、どこかで』4/16
大切な人を裏切ってから、
どれだけ、経っただろう。
私の友人は聖女と呼ばれるようになった。
だけど、その正体は『不老不死の化け物』
不治の病を治す奇跡を起こしているが、
実際は、患者を化け物に変えているだけである。
「あの娘が、自分の罪を知ったら、
どんな反応をするんだろう」
自分の無力さか、罪悪感かは分からないが
瞳から、熱いものが溢れていく。
「会いたいよ、神様、、、」
────本音が溢れる。
あの時、友人を見捨てていれば、
あの、邪神がいない世界なら、、、
下らないIfを妄想して、私は眠る。
【ここではない、どこかで】
はっきりと聞こえた
貴方が友達と話している声
私への評価の声
世界が止まった
嘘だと思いたかった
考えられないくらい思考が停止した
呼吸を忘れないために走った
走ったら否応無しに息は出来る
この鼓動も胸の辛さも走ったせい
そうだ、このまま遠くへ行こう
ここではない、どこかでまた呼吸しよう。
【ここではない、どこかで】
ここではないどこかで、私ではない誰かが…いや、必ずしも私ではないとは言い切れない人物が、さまざまな人生のストーリーを紡ぐ。それが、小さい頃から現在にいたるまで続く、私の真夜中の過ごし方だ。
物心ついたときには既に、もう1人の自分のような少年が傍に存在していた。可愛いガールフレンドとただただ無邪気に遊んでいる子だった。自分に近い、それでいて自分ではない少年は、現実には同じ年頃の子どもが近くにいなかった自分にとって唯一無二の存在だった。
それからずっと、夜は彼の人生を歩むための時間となった。家族との縁は薄く、ひょんなことからラジオパーソナリティとして採用された彼は、大好きな音楽から役者の世界へ足を踏み入れる。さまざまな役柄を演じることとなった彼の姿を、毎夜ベッドの上で追い続けているのだ。
彼を取り巻く人もまた、現実に存在する人にかぎりなく近い別の人だ。限られた時間の中で、無限に広がる「ここではない、どこかで」の物語。今宵も彼らがまた新しいストーリーを紡ぎ出すのだろう。
あぁ、今から寝室に行くのが楽しみだ。
〜君や知る レモン花咲く国
葉陰のオレンジの輝き、青空、風
ゲーテが描いた明るい南の国の情景は
いまも旅への憧れをかきたてる
〜かなたへ、かなたへ
君とともに行かまし
あわれ、わがいとしき人よ
ここではない、どこかへと
いつも心が瞬時に吸い寄せられる
(高橋健二訳による)
「ここではない、どこかで」
#78
お題《ここではない、どこかで》
生者でも死者でもいい。
永遠でも玉響(たまゆら)でもいい。
笑顔でいられるのなら。
大切な誰かの隣に、いられるのなら。
手首を掴まれた。
放課後、誰もいない図書室。
友達の誘いも断って
★ここではない、どこかで
今はまだ
あなたを懐かしいとは思えない
あなたがこの世界からいなくなって
私の中にある感情がなんなのか わからない
哀しくも 悔しくもない
もういい子を演じる必要はないのだと
安堵した
あなたの子として生まれ育って
幸せと感じたことはない
今でもまだ
あなたの子として生まれたことを
後悔してる
発せられた言葉も 示す態度も
何もかも親としては最低の親だった
自身が親となってから
本当にそう思っている
けれど憎んではいない
恨んでもいない
なにもかも間違っていたかもしれないけれど
あなたが私たちを愛していないわけではない
そこに想いがなかったわけではない
だから
愛したくとも愛せなかった母と
いつかまた親子として出会いたい
ここではない どこかで
そしたら今度は
笑って さよなら と言えるだろう
テーマ《ここではない、何処かで。》
今日は友達と家で遊んでいる。
イツメンのこいつと俺で。
「お前本当ゲーム下手だなぁ。」
「うるさい!絶対僕が勝つし!!」
今日もコイツは声が大きい。
〝ケーン ケーン〟
「ん?これは雉の鳴き声、、?」
「よーし。次こそ勝つぞ!」
〝ガタガタガタガタ〟
「!!、地震だ!」
「今度こそぉ、」
〝ガタガタガタガタガタガタガタガタ〟
揺れが強くなる、、、嫌な予感がする。
「おい、ゲーム一旦辞めるぞ!」
「えー!こんくらい平気平気。」
〝ガタガタガタガタガタガタ〟
後ろの棚が倒れてきた
「馬鹿!!!」
〝ガッ〟
俺は友達を突き飛ばし、棚を支えた。
「ごめん!!!」
棚を元に戻し、俺たちは一旦外に出ることにした。
その直後、ものすごい地震が来た。地面に割れ目ができた。
町の人たちも外に出てきて、みんな山に行こうと言うことになった。
「おい。山に行くぞ!」
「、、、、、。」
コイツは状況が追いついていなさそうだ。
「来い!」
山に登る途中、俺は迷子になった子供を見つけた。
放っては置けなかったから、友達を町の人達に預け、その子供の元に戻った。
予想どうり、津波が起きた。山のふもとはもう海に飲まれてしまった。俺は子供を探した。
「うぁぁん!助けてぇ!!」
「見つけたっ!!」
俺は泳いで子供の所に行った。
子供は足が何かに絡まっているようだ。
「じっとしてろよ、」
俺は水の中に潜り、絡まっているものをどかした。そして子供を山に連れていこうとした。
、、いこうとした。
動こうとしたら、今度は俺の足が引っかかってしまった。
「サラちゃん!サラちゃん!」
女の人の声が聞こえた。
「お母さん!!」
良かった。合流したようだ。
「お母さん!早くサラちゃんを安全な所へ!!」
俺は早く自分の足元の物を解こうとした。
でも、それは叶わなかった。
すぐに津波が俺を飲み込んだ。
、、、ごめんな。翔太。
俺は明日からゲームが出来なくなっちまうかもしれない。
お前は学校に来た時から変なやつで、本当にお前といるのが好きだった。負けず嫌いで、声がでかくて、自立できてて、
あーあ、あいつの声する。
気のせいだろうけど、なんか嬉しいや。
、、、またここじゃない、どっかでもいい。
また会おうな。
ひとつのものを
守るために
もうひとつを
切り捨てる
どれほど悲しく
どれほど辛く
どれほど惜しんでも
歩き出すためには
ひとつしか
持てなかった
守るべきものは
ひとつだけだった
わたしの心は
選んでしまった
✩ 選択 (108)
人というのは、いつも心のどこかで自分の居場所や本当の価値というものを探しているものだ。
かくいう私もそうである。真に必要とされる場所、求めてくれる存在というのを探している。私には得意なことが、これといって思い浮かばない。趣味も仕事もパッとしないのは、私自身が中途半端に生きてきたからだろう。起業して多くの従業員を雇用し、共に汗を流したこともあった。経験のないことにいつも全力で臨み、全力で楽しんで覚えてきた。だが、私には何も無いように感じている。培ってきたこと、得てきたものなど、いざと言う時にまるで役に立てていないように思えてならないのだ。私は私自身を正しく評価してやれていないのかもしれないが、それを理解していても尚、自分を過小評価してしまう。どれだけ職場で他人から評価され、必要とされていても私の心の中では「私は何もしていないし、役に立っていない。なのに、なぜそんなことを言うのだろう。気を使っているのならやめてくれない」、そう思ってしまうのだ。
先月、とある業者の班長と一週間だけ仕事を共にした。班長は私の仕事や、仕事に対する姿勢や考え方や人間性を評価してくれた。そして、「お前と一緒に仕事がしたい。俺の会社に来てくれ。俺の後継者になって欲しい。お前が好きや」、と声までかけてくれたのだ。連絡先は交換していたので、LINEで中身のない会話をしたりする。今日も、10時頃に電話があったのだが、会話の中身はまるでない。ただ、冗談を言い合ってゲラゲラ笑って二十分ほど話をした。この時も、今の仕事をやめたら来て欲しいと声をかけられた。
私はこの班長が大好きだ。人としても、職人としても、上に立つものとしても。班長はわたしと仕事に対する考え方が非常に良く似ているだけでなく、優しく朗らかで非常にユニークで面白い人だ。仕事中に怒ることはないし、いつもニコニコと笑顔で冗談を口にしては皆を笑わせて雰囲気作りに徹している。仕事の中で危険なことがあれば厳しく注意はするが、それは事故防止ためでしかなくいつもでもネチネチと口撃するようなことはしない。ミスをした時もミスを責めることは無い。一度、班長の部下の新人さんが本来必要である材料とは別の材料を積載してきていた。現場から事務所まで片道30分以上かかるのだが、班長はその誤りを指摘せず、別の若い子(入社半年)を連れて行って必要な材料と交換してくるように指示を出して見送った。一時間後にふたりが戻ってきて作業が開始するはずだったが、載せ替えてきたものがまた違うものだった。直ぐに班長が新人さんを連れて事務所に戻って行った。
夕方、事務所に戻ったときに新人さんの元気がない様子をみてミスについて自責しているのだろうと思った。班長に「ミスについて凹んでる?」と聞いたところ、そうだという。しかし、班長はそのミスについて「もう終わったことや。いつまでもクヨクヨすんな!誰も怒ってないし、お前のことを責めてないやろ?それに、あれは俺のミスでもあんねや。お前がクヨクヨしとったら、俺はどないしたらええねん」と、新人さんに声をかけた。しばらく経って、私が帰るころに様子を見ても落ち込んでいたので再度励ましの言葉をかけて班長と冗談を言い合ったが、やはりどこか自分のミスとして自分を責めているようだった。しかし、その気持ちは私には痛いほどよくわかる。というのも、私は自分のミスをとにかく引きずるからだ。立ち直るのに5分もかからない時もあれば、1日悩むこともある。吹っ切れてしまえばなんてことの無いものだったりするのだが、それがなかなかに出来ないのだ。こういう性格だからこそ、仕事において良くも悪くも強く影響する。
ミスについて「あのミス、ミスというかあれはミスやないんやけどな。そもそも、俺が材料を積ませて確認を怠ったのが悪いし、若い子ら二人に取りに戻らせたのも間違いだった。最初から俺が行けば良かった話やねん。そしたら、あいつも落ち込まんですんだんや」と、肩を落としていた。さらに、「仮にな?仮にやで、誰かがミスをしても絶対に怒らへんし責めたりせぇへんで。そんなことしてもつまらんし、おもろないやん。仕事もやりにくくなるだけやしな」と、続けた。
班長は仕事は楽しく、いつまでもダラダラ、ズルズルせず、やる事をやって早く仕舞って帰るというのが仕事上の考え方だ。人間なんて、集中できる時間は限られている。ならば短期決戦でチャチャッと仕舞いにすればいいし、そのために全力で仕事をすればしんどいのも大変なのも短時間で済む。そして、どうせ仕事をするならメリハリをつけて楽しく面白おかしくしようと言うのがこだわりでもあるという。事実として、私も班長や班員の方を見ていて強く楽しそうな雰囲気を感じた。私も班長と同じ考えを持っているため、仕事は楽しくてなんぼと思っているし、そうなるようにしてきた。しかし、この班長の会社ほどストレスフリーで、皆が生き生きしているところは見たことがなかった。だから私も惚れたのだ。
私自身も、班長の元で楽しく、馬鹿みたいに女歌を言い合いながら仕事をしたいと強く思っている。こう思うのは、目にした様子がとても良かったからだけでは無い。未経験分野であるにもかかわらず、私を評価して、期待してくれているからだ。「お前と仕事がしたい」、「俺を助けて欲しい」という私を必要としてくれる言葉が、私の心に響いたからだ。私は今の職場を楽しいと思っている。分からないことも、いつでもなんでも聞けば暖かく優しく教えてくれる。職人さん達もいい人たちばかりで非常に良い雰囲気だ。
だが、途中にも触れたように、私は自信をもてず過小評価をしてしまう性格だ。いつも心のどこかで、私がいるべき場所はここでは無いどこかなのかもしれないとなやんでいる。そして、これは仕事でなくプライベートな面でも全く同じことが言える。
私が性別問わず、懐いてしまうのは、惚れ込んでしまうのは恋愛感情とは少し違う。私を求めてくれるから、その声に惹かれるのが要因だろう。しかし、これでは単なる風見鶏だ。私には、まだまだ課題が山積しているようだ。
ここではない、どこかへ。
ここではない、どこかへ
当て逃げして逃げた
おばあが
早く掴まれ。
ここではない、どこかへ。
早く怪我も治れ。
「ここではない、どこかで」
ここではない、どこかで
僕は何かを成し遂げられるだろうか
君の息が止まった日。
君がベットに横たわって動かなくなったあの日。
僕の目からはとめどなく涙が零れ落ちて、
震える手でナースコールを押して、
君の傍に蹲って声を殺して泣いていた。
君の主治医と看護師さんが来るまでずっと。
ただただ、理解が追いつかなかった。
さっきまで弱々しかったけど話してたのに。
深呼吸をするように、深く息を吸って、
眠りにつくように息を引き取った。
葬式が終わった。
僕がまだ中学生だった事もあり、誰が引き取るかで
少し揉めていた。
僕はそれを遠目に兄さんのことを考えた。
今頃父さんと母さんに会えたであろう兄さんに、
贈る言葉はこれしかないだろう。
-兄さん、また逢いましょうね。
ずっと先の未来で、皆と幸せに暮らせるような、
ここではない、どこかで。
ビー玉の向こうの見えない宇宙
巡る星の輪郭をなぞって丘を行く
夜の帳は降りて 迷子たちのささやく月
秘め事のように 揺れるかけらを集めて
夢のように 現のように
たよりない影を落として 泣いて
枯れた花を憂うように水を注いで
再び生まれいづる種子を待つ
ここではないどこか。
そこは、ほとんどの人にとってはどうでもよくて、気にも留めないところでしょう。
名称すら関心を抱かないかもしれませんね。
しかし、ある人にとってはとても大切な場所です。
ここではないどこかで、生まれた人がいる。
ここではないどこかで、亡くなった人がいる。
今日は特別な日です。
そして、ここは特別な場所です。
ここではないどこか、特別な場所で、特別な日を過ごした人がいます。
私は小説が好きだった。
どうしてもやりきれないことがあったとき、
ここではない何処かへ行けるから。
本は私の心のシェルターだった。
でも今はもっと好き。
やりきれないことがあったとき、
小説を書くと自分が何をしてほしかったのか、どうしたかったのかわかるから。
小説が大好き。
またここに来てしまった。
君と出会った公園。
君と最後に会った公園。
もう君はここには来ないとわかっているのに足は勝手にここに向かってしまう。
5年たっても分からない。
君と次に会えるのはどこなのか。
ここ以外にあるのか。
君の最後の言葉を思い出す。
「また、いつか会いましょう……
─ここではない、どこかで─