『お祭り』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
履き慣れぬ 私の下駄の代わりを 持参する君
君の肩に腕に すがっちゃダメかな
君の優しさに 甘える勇気はでなかった
___________
"踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損"
徳島の阿波踊りの出だしのこの歌詞が、好きだ。
阿波踊りの起源は、死者を弔う盆踊りだとか、築城記念の祭りだとか色々あって、肉を祭壇に捧げて神と交信する儀式である本来の漢字の成り立ちからするお祭りとは少し違うものなのかもしれないが、非日常を味わうお祭りの本体はやはり踊りなのではと思っている。
人混みも行列も暑さも高すぎる屋台も履き慣れない下駄も、正直苦手だ。だけど、非日常を味わうには仕掛け人にまわるか、積極的に参加して楽しむしかない。暑いけど浴衣を着て、お気に入りの扇子を差して、絆創膏を貼って下駄を履き、屋台は食べたことのないものか、祭りでしか食べないものだとより嬉しい。りんご飴を片手に格闘して、ヨーヨーを吊り下げて、できればなんやかんやと面白がって、笑って、やっぱり最後は踊りたい。
同じ阿呆なら踊らにゃ損損。
遊び疲れた子どもも、もう抱き上げなくても良くなった。
同じ行くなら大人用の浴衣を買おうかな…鼻緒ずれする下駄を履いていったら家族を困らせる気もするから、鼻緒ズレしない草履でも探そうか。少しは年甲斐もない阿呆にならなきゃ損ですよね、お祭りですもの。
“お祭り”
久々に、みんなで集まらないか。唐突に届いた先輩からのメッセージに乗せられて顔を出した俺は、ニコニコ胡散臭い顔を浮かべたその先輩に肩を組まれてあれよあれよと言う間に夏祭りの屋台に連れ込まれラムネの売り子をさせられていた。
夜の花火大会のオマケだと思っていたこのお祭りも、年々来訪者が増えている様でまだ昼過ぎだというのにかなりの盛り上がりを見せている。
お前はラムネ持って突っ立ってりゃいいんだよと、せめて裏方に回ろうとした俺の背中を押す先輩の圧に押し負けて屋台の前面でぼんやりとしていると次から次に浴衣姿の女の子がやってくる。
人と話すのは、苦手だ。なぜか執拗に連絡先だとか名前だとかツーショットだとかを強請ってくる着飾った女の子たちになんと返事をしていいのかわからず困惑しているうちに日が傾いてきていた。
屋台の後ろ側に置いてあったラムネの入っていた段ボールは全て畳まれていて、残りは数え切れるくらいだ。
無理矢理に掴まされた、顔も覚えていない誰かの連絡先の書いてある紙を握り潰す俺の横で先輩はやけにすっきりした顔をして額の汗を拭っていた。
「いやあ、持つべきは顔の良い後輩だわ」
「……みんなで集まろうって話じゃなかったんですか」
じとりと睨みつけても先輩は悪びれる様子もなく笑っている。一発殴っても俺は悪くないだろ、とせめての優しさとして左の拳を振り上げたところでコロン、と下駄の音がした。
「なんだ、もうラムネないの?」
「お、結構早かったな。他の奴らは?」
「知らない。変な男に話しかけられて不愉快だったから先に来た」
むっつりと口をへの字に結んだ彼女は、いつもよりしっかりと化粧をしているうえ見慣れない浴衣姿になっている。密かに想いを寄せている相手の物珍しい姿に頭が真っ白になった。固まった俺の横で、元々来ることがわかっていたらしい先輩は普通に会話をしている。
「俺は後片付けがあるからさ、ナンパ避けにコイツ持っていけよ」
「……はっ?」
先輩と話をしている彼女の浴衣姿をさり気なさを装ってチラチラ見ていた背中が急に押されて、体制を崩しながら先輩を振り返ると、清々しい顔でサムズアップをしていた。
こいつ、最初からこれを狙っていたのか。というか彼女への気持ちはずっと隠していたはずなのに、いつから気づかれていたんだ?どっと背中に汗が吹き出す。というか彼女が嫌なのでは?と恐る恐るその顔を覗き込んだ。
「……何?」
「いや……俺と二人は、嫌かなって……」
化粧のことは全くわからないけれど、普段よりずっと大きく見える猫目には想像していたほど不機嫌な色はなかった。知らないやつにナンパされるよりずっとマシだから、と言って踵を返す彼女を追いかけようとする俺を引き止めて先輩がラムネを二つ押し付けてきた。
「バイト代、な。楽しめよ」
「……いつから気づいてたんすか」
「ナイショ」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
滑り込み
安定の尻切れトンボ
『お祭り』
一年中何かしらお祭りあるよね。
地域独特のものも合わせるとホントたくさん。
今の季節は、夏祭り。
何浮かぶ?
花火 屋台 食べ物 ヨーヨー釣り 射的 金魚すくい
考えるだけでもウキウキワクワク。
何着て行く?誰と行く?
何時に待ち合わせよう♪
あぁワクワクが止まらない。
LINEで友達誘って〜
夏祭りまでのこの期間のソワソワ感も堪らない😄
あ!そうそう!予算はいくらあるかな〜?
財布の中みて固まる
先日買い物でストレス発散したんだった…
一人で爆買い祭り…したなぁ〜
後悔しても あとのまつり
お祭り
浴衣から覗く柔い手、紅を引いた顔はまだあどけなくてめかし込んだ浴衣はちょっと大人っぽくて、私が綺麗だと独り言のように囁けば君のほっぺに花火が咲いた
・お祭り
部屋に持ち込まれた母親お手製の焼きそば。
景品代わりにプレゼントされたプラスチックのヨーヨー。
今日は特別、と先生が作ってくれたイチゴ味のかき氷。
妹がテーブルに転がした小さな飴玉たちはリンゴ飴の代わりらしい。
窓から見える景色はいつもと変わらず。
それでも家族が用意してくれた小さなお祭り会場が、今まで参加したどのお祭りよりも楽しかった。
どうかこの思い出が明日を生きるお守りになりますように。
お祭り2人で行きたいね!
花火 一緒にみたいね!
夏になったら行こうね!
と約束したね。
1番最後に上がる大きな花火を
見せたかった…
一緒に綺麗だね!って言いたかった…
喜んでる あなたを見たかった
きっと2人で花火を見たら
花火よりも あなたを見てたかもしれない
2人で花火を見れた事に 涙してたかもしれない
花火と言う言葉を聞くと
あなたを想い出す
露天で買った金魚がつがい
子供を産んで
成長とともに水槽を大きくし
そうして数年
残った2匹の金魚は20cmほどに
そりゃあもう
かわいくてかわいくて
最期は人間と同じ
白内障だろうか目玉が濁り
身体もなんだか骨っぽくなり
餌もあまり食べなくなって
からっぽの今や糧となる思い出のひとつ
祭りの日、それは私が唯一お客さんとの間の壁を取り払う日だ。
お客さんと喋るタイプの接客業をしていると、あくまで「客」と「店主」という違う立場であることを意識しなければならない。こちらがお客さんに感情移入しすぎたり、逆にお客さんがこちらに特別対応を求めすぎたりを防ぐためだ。
他にも、お客さんの持ち込む負の感情、家庭や仕事の不和や悩みに、私自身が飲み込まれないよう我が身を守るためでもある。カウンターを境界として、私は常にお客さんとの間に一線を引き、帰られるとともに頭をリセットしている。
だが、祭りの日は別だ。
模擬店といういつもと違う店構えの中で、私はいつもの常連客に大きく手を振り、ハイタッチをしたり一緒に呑んだり、敬語を外して話したり。「何だか今日はいつもと違うね」と言われるのは、ラフな服装のせいだけではないはずだ。
敢えて粗雑に、適度に適当に。祭りの日は街全体に「楽しさ」を纏っている。浴衣を着て出かけてくる街の人々だけでなく、店もまた、楽しさを享受する側の人間になる日。
いつもよりたくさん笑って、汗だくになりながらもそれがまた楽しい。
日が落ちて、祭囃子が聞こえてきたらそろそろ店じまいだ。さっさと片付けて、段ボールや空き缶だらけの店内でひとり涼みながら休憩する。太鼓も神輿も盆踊りも、遠くから音だけで楽しみながら残った酒を飲む。
「何やってんの」突然、いつもの常連客が店に入ってきた。「お神輿見ないの?」
「疲れたからもういい」と笑う。「残ってるお酒、飲む?余りもんだからサービス」
「いいの?」
「いいよいいよ」
普段座ることはない客席に、お客さんと並んで座り、人多いねと外を見ながらのんびり語る。たまにはこんな日があってもいい。
祭りの日。私とお客さんの垣根を外す日。
お祭り
幼少期より、あまり、馴染みが、なく、今でも、好んで行く気にもならない
育った環境が、お祭りとの接点が、希薄であったのかもしれない
なんだか、損をしているのかもしれない
でも、オリンピックも、お祭りだ、
現地へ行かなくても、TV等で、結構、楽しめ、心熱くなったり、
やっぱり、お祭りは、楽しまなきゃ
必死のパッチで仕事を終わらせ、帰宅し、子どもたちの手を引いて夏祭りに行く。
はしゃぎ楽しそうな子どもたちの顔に安堵する。
泣き出しそうな私の気持ち。
豊穣を祈り
収穫を祝い
人々は集う
舞いを奉納
地も、人も
豊かであれ
個々の願い
束になりて
色彩豊かで
心すら豊か
賑わいの音
祭囃子の音
見紛う程に
夜は更ける
ー 祭り ー
数十年前、金魚を飼っていた。
今思えば、何匹飼っていたかは、定かではない。
覚えているのは、4匹だ。
私の記憶の内にあるのは、私が屋台で貰えた2匹で、雌雄もわからないのに、名前を「オス」「メス」と付け、呼んでいた。
今では個体名にとって名前というものが重要なことを知っているが、当時は幼いながらに残酷だった。
ある程度育っていても2匹とも個体差すらなかった(と当時は記憶している)ので、名付けたその翌日、どっちがオスでメスなのかわからなくもなっていた。
しかしある夏の日に、虫籠に水を張っただけの水槽にて、1匹プカプカと浮いていた。のっぺりとした眼は曇っていて、死んだ魚の目をしていた。スーパーに売られている現状を目の当たりにしても何も思わないのに、その時はとてもリアルで、自分のしてしまった事実に当時は少し落ち込んだが、今思うと当時の私を叱りたいほど、本当に申し訳ないという思いが強く胸を打つ。
金魚とは、とても敏感な生き物で、飼い始めの水槽に水を張る時や、掃除をする場合でも、新しい環境に馴染ませる為、慎重に水の温度調整をしっかり測った上で環境を整えてあげねばならぬ、と…知ったのは最近になってからだった。
私は庭の土に埋め、手を合わせた。
雌雄判別もつかない、名である「オス」なのか「メス」なのかもわからない2匹の内の…1匹を。
実のところ、死んだ金魚は川などに流してあげる方が良いということだったが、なんだか急な川の流れに身を投げさせるのも可哀想に思ってしまい、土葬を選んだ。
そして、オスかメスかのどちらかが死に、そしてまたメスかオスかのどちらかが天国に逝ってしまった。
思うところ多分、水の中の酸素が陽によってなくなった酸欠死ではないかと思うとさらに胸が痛い。
それからは、とにかく暑い中で放置するのはダメだというのを学んだのだった。
そしてあと2匹は、特徴のある強く横に長い金魚と、ヒラヒラした尾を持つ観賞用の金魚だった。
やはり知識の無駄にない私には、
死ぬ前まで両方雄だと思っていたが、頭が丸く削げている形の一番強い金魚の方が、雄だと判明。
そして、長いこと飼っていたのに、初めて卵のようなものを産みつけたのが、ヒラヒラした尾の子だった。どうやら雌だったらしい。
金魚もテリトリーがあったのだが、横60センチくらいの小さな水槽に2匹入れて飼っていた。
両者とも居心地がさぞ悪かったことだろう。
そして、金魚の知識がない家族に拾われて、13年も生きた。私がマミーに怒られている時も、廊下で正座させられている時も、ヒステリックな人間の叫びはさぞ恐ろしかったに違いない。
…申し訳なかった。
もっとも小さき、か弱な生き物たちの事を考えてやるべきだった。
私でさえもマミーの怒涛は、怖かった。
多分宇宙一だと思う。あの銀河系で超有名なダースベーダーよりも怖いと思っているので、当時ガラケーの自宅の着信音は、ダースベイダーのテーマソングを指定していた。
本屋で立ち読みしていると響く、ダースベイダーのテーマ。
横の人の視線が痛い。…変な事を思い出してしまった。
もう誰にも邪魔されることなく、
先に天国で、綺麗な蓮見の池の下で
悠々と泳いでいて欲しい。
この2匹の出会いとは、ある祭りの日、ある程度泳げる程の水が入った、小さなビニール袋が木の枝に吊るされていたらしい。すくう網が破れた場合、おまけとして2匹貰えるあの小さなビニール袋だ。
うちの親がそれを見つけ、「あらまぁ、可哀想に。」と拾ってきたらしい。神社のお祭りだったから誰かが拾ってくれるだろうという事だったのかも知れない。…今も昔も人のすることは変わってはいない。
だが、拾ったのはどうしようないほどの知識のない家族であった。特に金魚知識は皆無だった。水道水からカルキを除去する透明な錠剤を2粒入れるだけで良い、と思っていた知識と時代だった。
そこから13年生きた。
最期は寿命だったと思っていたのだが、最近ある金魚の動画で知った。マツカサという名の病だった。放っておけば鱗が逆立ち、身体が溶けていく病気だ。金魚でいうところの難病だった。
何もかも知識のカケラも無くて、本当にすまなかった。
もう思い出すことしか出来ないが、なんとか成仏して欲しい。動物はあまり長く思いを留めると、成仏出来ないと父に言われたことがある。…こうして、たまに思い出すくらいがちょうどいいらしい。
屋台に並ぶ金魚を見ると、小さくて可愛いと思うと同時に、なんだか切ない、可哀想だという思いも抱く。長いこと生きられるのは、ほんの数匹かもしれないということを知っているからだ。
華やかに見えるその裏で、小さな命を売ってるテキ屋のおじさんたち。悪意は感じないけれど、あまり良い想いを抱かなくなってしまった。それは私も大人になったということだろうか。
それでも屋台を見ると、胸が躍る無邪気さは忘れてはいないけれど。
お題: お祭り
可愛らしい浴衣を着て、小袖を靡かせている。いつもとは違い、髪型もお団子に結われている。
ひらひらと舞う様に歩く姿が金魚掬いの金魚の様で、手を伸ばせば伸ばす程、逃げてゆく様に感じる。
現に僕の隣にはいない。
彼女の隣はいつも別の誰かだった。
虚しい想いをするくらいなら、一度くらい遊びに誘ってみれば良かった。
今更悔やんだところで、後のまつりにしかならない。
今年もまた、一人虚しく味のついた氷を食らうのだ。
2024/07/29 #お祭り
ただ気ままに描いた
カンバスの中は心模様
春から夏へとアクリル絵の具
雨粒で描いて
何度も上書きした
カンバスの中は心模様
秋より冬へと油絵の具
木枯らしを燃やして
ただ気ままに描いた
色は今日の心模様
塗り重ねるほど濁る水彩に
斑の極彩を焼き付けて
今日の心模様(4/23お題)
好きなあの子を誘いたかったけど、
あの子には私より大事な人がいるから
思い出つくってきてね
「あ、ねぇ型抜きやってる。しない?」
「珍しいね。うん、やろう」
俺達は一人一枚ずつ、傘模様の型を取っていた。
「.........」
「.........」
やっている間は二人とも集中して無言のままだった。
俺が傘のハンドル部分を取っていた時、ぺき、と音がして割れた。
「あ」
「わっ」
俺が思わず声を出すと隣の肩がビクッ、と動き、ぺき、と音がした。
「......割れちゃった」
「...なんかごめん」
「ん?あぁ!お嬢ちゃん惜しかったね!またやってくれよ!」
ほれ!と屋台の人は飴をくれた。
「うぅ......悔し...」
「あはは…」
俺達は飴を放る。昔ながらの苺味が口の中に広がった。
「お、射的ある。次あれやろ~」
「ん、いいねー」
彼女が指差す屋台に、二人で向かっていった。
お題 「お祭り」
出演 玲人 葉瀬
先輩はお祭りが嫌いだ
一人の時間が大好きで人混みが嫌い
体育祭も文化祭もほとんどいない
『夏休みの間も先輩に会いたいです!
一緒に夏祭り行きませんか!』
夏休み前に約束を なんておもって誘ってみるものの
『ん~、夏休みは受験勉強かな~
人混み苦手だから行かないかな~ごめんね』
と断られた
ところが今目の前いや、手の中にある自分のスマホに
先輩からメッセージが来た
『明後日、空いてる?
君が言ってたお祭り行かない?』
まさか先輩からメッセージが来るとわ…
もちろんすぐに返信する
『空いてます! 行きます!!行きたいです!!』
お祭りに一緒に行ける!!
これはつまり、告白出来る!!
花火の時かいや、聞こえないなんて事があったらダメ
待ちに待った、当日
どんな服が良いかな~ 先輩は何を着てくるかな~
『ごめんね。待たせちゃったよね?』
かわいい浴衣を着こなした先輩
なんで、誘ってくれたのか聞いてみる
『ん?なんでって…それは…ねぇ』
後でね と笑って誤魔化す先輩
花火を見に人が集まってくる。僕達は人が少なく花火も見られる場所を探す
『さっきの質問の答え教えよっか』
聞きたい!けどもし、僕と同じ気持ちで居てくれているなら… 悩む僕に近づき耳元で囁く
『君とならお祭りに行っても良いかなって思ったの
私いつの間にか君のことスキになってたみたい』
僕はその言葉の後から記憶がない
多分、何か言ったんだろう
夏休みの思い出が思わぬ方へ…
夏休み、勉強も大事だと分かっていても遊びたくなる
勉強ばかりの記憶より楽しい思い出を増やしていきたいものだ
#お祭り
花咲いて(番外編)⑭の続き
お祭り(番外編)⑮
●特別な笑顔
夏の暑い蒸し蒸しした夜
ハイネは、お祭りの屋台で、焼きそばを
焼いていた。
(はぁ~ 何か俺....この夏は、焼きそば
ばっか焼いてる気がする...)
視線の先には、浴衣を着た男女が
指を絡めた 恋人つなぎで楽しそうに
お祭りの屋台を回っていた。
(そう言えばあいつら来るって言ってたなあ...)ハイネは、いつものメンバーの
三人を思い浮かべる。
(浴衣....着て来るのかなあ....)
ハイネは、浴衣姿の___を思い浮かべる
自然と口元が緩んでいた。
「ハイネ君焼きそば三つ!」
「あっ....はい!」ハイネは、促され
焼きそばを作り始める。
「ハイネ君 本当に料理上手ね!」
「いえ...普通です....」ハイネは、
一緒に屋台をやる事になった先輩の
女性に答える。
「ねぇハイネ君この後 交代だよね
良かったらこの後一緒にお祭り回らない?」先輩の女性に腕を組まれ体を
密着され何だか不自然に胸を当てられるが
ハイネは、特に気にせず答える。
「あ~ すみません この後 友達と
約束があるんで....」とハイネやんわりと
断る。
しかし女性は、諦めず
「じゃあその友達と合流するまでで
良いからお願い!」女性は、上目遣いで
ハイネを見て、胸の谷間を強調させる様に
ハイネにくっ付く
しかしハイネは、そちらに視線をやって
いなかったので気づいていなかった。
「あ~そうすっね...じゃあ友達と神社の
方で待ち合わせしてるんで....
その道を行きがてら他の屋台も見てみます」ハイネとしては、此処までお世話に
なった先輩に気を遣って言ったつもり
だったのだが....何故か先輩は、更に
ハイネにくっ付く
(何だか歩き辛いんだが...)
「あの~先輩ちょっと歩き辛いので
ちょっとだけ離れてくれます....」
「カゴメ!!」「はあっ!」
「カゴメ先輩って言って!」
「ああ....はい....」(この人そんな名前だったっけ....)ハイネ基本的に初対面の人の
名前は、すぐ覚えられない
けれどこの先輩には、祭りの準備中に
いろいろと教えられお世話になったので
ハイネとしては、恩返しのつもりで
しかも年上なので相手を立てるつもりで
気を遣って「カゴメ先輩 何食べます?」とハイネにしては、精一杯に愛想を
良くしていた。
「じゃあたこ焼きとお好み焼きと
リンゴ飴とチョコバナナ」
「はぁ...」(結構食べるなあこの人)
「ハイネ君も食べよう大丈夫 大丈夫
私がおごるから!はいあ~ん」
カゴメがたこ焼きを楊枝に挿して
ハイネの口元に持って行く
ハイネは、屋台で焼きそばを作っていて
お昼を食べていなかった
加えてカゴメがいろいろ屋台で買った
物を気を遣って持っていたので
両手が塞がっていた。
だから、反射的に口を開けてしまい
カゴメがそれを見逃すまいとハイネの
口にたこ焼きを入れる
そこを....「ハイネ!」と眉を吊り上げ
浴衣姿で仁王立ちになっている
ミーナに呼び止められ
その後ろからナイトとシズクも顔を
覗かせていた。
「どう言う事よ!待ち合わせ場所に
なかなか来ないから迎えに来てみれば
綺麗な人とデートなんかしてこの
浮気者」
「お前誤解を招く様な事を大声で言うんじゃねぇよ!」ハイネ ミーナに抗議する
「誰 この美人な子ハイネ君の彼女」
カゴメがミーナを覗き込む
「違います!ミーナは、僕の彼女です」
ナイトがやんわりと訂正する
「ふ~ん」とカゴメが意味深な笑顔を
浮かべる。
「ねぇハイネ君 私もこのまま
ハイネ君の友達と一緒に居ていいかなあ」
「はあ!!」ハイネよりミーナの方が
大きな声を上げる。
こうして、五人で、お祭りを回る
事になった。
どうしてこうなった。
ハイネは、自分の行動を顧みる。
さっきからこのカゴメって女が
俺の隣を歩いて離れない
こんな風になるとは、思わなかった。
ミーナが俺を何やってんのよと言う
視線で、見て来る。
ナイトもミーナの隣でため息を付いていた
シズクに至っては、初対面の相手が居るからかいつにも増して大人しかった。
しかもいつもの四人で、居れば
自然とシズクが俺の隣を歩いて居るのに
今日は、後ろで静かに一人で歩いていた。
しかもこの並びになる前にさっきミーナに
『何でシズクに優しくしないで
他の子に優しくしてんのよ!馬鹿っじゃ
無いの!』と言われてしまう始末
その通りだった 何で.... 俺は
いつも いつも....
「シズク 何 食べる?」
ミーナがシズクに話し掛ける
「あ....えっと....リンゴ飴....」
「リンゴ飴ならさっき私
ハイネ君と食べたよ!
案内して上げようか?」
カゴメがにっこりとシズクに微笑む
「あ....は....はい....」
シズクが困惑しているのを見かねて
すかさずミーナが「私も」と声を上げるが
「いいよ いいよ 座ってて
ミーナちゃん 人多くなってきたし
皆で動くの大変だよ
だから 私達で買って来るから
じゃあ行こうか」
カゴメに促されシズクは、
「はい....」と答える。
シズクは、不安だった....
初対面の人と二人っきりで歩いているのも
そうだが 人が多くなって来て
シズクは、小柄なので前を行くカゴメを
見失いそうになって怖かった。
カゴメは、シズクの事を振り返らずに
どんどん前に行ってしまう
これで、ミーナが居ればシズクは、
ミーナの手に掴まるのだが
初対面のカゴメには、安易に手を繋げない
シズク それでもシズクは、
勇気を振り絞って....
「あ....あの....ちょっと待って下さい
と.... 止まって...下さい」
シズクの声が聞こえたのか ぴたりと
止まるカゴメ シズクは、安堵したのだが
「良かったあミーナちゃんがハイネ君の
彼女だったら諦めようと思ったけど....
そうじゃなくて....」カゴメがシズクの方を
向くシズクはカゴメの表情を見て背筋が
ぞわっと凍った。
「あっ....」気が付いたらシズクは、
カゴメにドンっと押され
人混みの中で尻もちを付いていた。
「痛っ!」シズクは、膝と手を擦りむく
シズクは、気が動転した
自分は、何かカゴメに嫌われる様な事を
してしまっただろうか....
初対面の相手だからとあまり喋らないのが
気に障ったのだろうか
シズクは、まず謝ろうと口を開きかける
「ハイネ君がこんな色気も何も無い
小学生みたいな子本気で相手するとは
思え無いけどね!」カゴメが口元を
歪ませる。
何故 ハイネの名前が出て来るのか
シズクには、分からなかった。
カゴメは、何か誤解しているのだろうか
誤解ならちゃんと解けば分かって貰えると
思いシズクは、痛みで涙が出て来そうに
なるのを懸命に我慢して口を開いた。
「ハイネは、仲間で、友達だよ....」
これで分かって貰えるとシズクは、
思ったのだが....
「私 ハイネ君が好きなの!」カゴメの言葉にシズクは、目を丸くする。
いつの間にかシズクとカゴメの周りは、
人だかりになっていた。
「だからハイネ君の周りに女の子が
居るだけで嫌なの嫉妬しちゃうの
この気持ちあなたも誰かを好きになったら
分かるでしょう! すごく嫉妬で
苦しいのだからあなたみたいにパッと
しない子ハイネ君に近付かないで」
「えっと~ぉ」シズクは、カゴメの言葉に
何も返せ無い だってシズクは、
まだ恋をした事が無いから だから嫉妬の
苦しさも良く分からなくて....
だけど ハイネに近付くなと言われて
はい、近づきませんとは、シズクは
言えなくて..... だからシズクは、
カゴメに対して黙って居るしか
ないのだった。
そうして何も返さないシズクを
見限る様にカゴメは、尻もちを付いている
シズクをそのまま無視し立ち去ろうとする
しかしそんなカゴメを呼び止める様に
「おい 人を突き飛ばして置いて
そのまま立ち去る気かよ!」
そこには、不機嫌そうに視線を鋭くして
カゴメを睨み付けるハイネの姿があった
「ハイネ君この子が自分で、転んで
私は、助け起こそうとして....」
「じゃあ今此処に居る 野次馬の奴らに
何があったか事細かに聞いてやろうか
お前とグルじゃ無い限り本当の事を言って
くれそうだしなあ....」
「っ・・・」カゴメは、舌打ちをし
最後にハイネに言い縋ろうと腕を伸ばすが
.... ハイネは、その腕を無視し
シズクの元に掛け寄る。
カゴメが頭に血が上りハイネに叫ぶが
「テメェまだいたのかよ さっさと俺の
視界から消えろ 十秒以内に消えねぇと
殺すぞ!」ハイネが、射殺す様にカゴメを
視線で刺すとカゴメがびくんとなり
そのままハイネの視線に恐怖を感じ
逃げ去った。
ハイネは、シズクを横抱きに抱いて
ベンチに座らせる。
「ハイネ....カゴメさんと仲直りしなくて
良いの?」シズクが心配そうにハイネを
見上げる。
「カゴメ....誰 そいつ!」
「? ?」シズクは、ハイネの返答に
疑問符を浮かべていたが ハイネは本気で
もうカゴメの名前を忘れていた。
「人の事心配して無いでテメェは、
早く自分の怪我治せ」
「うん....」シズクは、治癒術で
自分の擦り傷を治す。
傷は、治っても地面についた手や膝の土の
汚れは、そのままだった。
ハイネは、シズクの手や膝に付いた汚れを
自分の手で、払い
そうして、浴衣姿のシズクの髪型が少し
崩れて髪の毛が一筋シズクの頬に
くっ付いていた。
ハイネは、その一筋の髪の毛を自分の指先で、優しく払う
シズクが擽ったそうに「んっ....」と身じろぐ ハイネは、シズクのその表情に
口元を緩ませる。
そうして心の中で(浴衣姿....可愛いっ!)と
勝手に萌えていた。
しかしそんな事をシズクには、
悟らせない様に振る舞い....
「ほら ミーナとナイトの所に戻るぞ!」と
シズクをぶっきらぼうに促して....
シズクもハイネの言葉に「うん!」と素直に
頷き二人で自然に隣を歩いて
ミーナとナイトの所に戻るのだった。
【お祭り】
小さい頃は楽しみだった
が、
綿菓子を買ってくれるのは祖父母だけ
別にお祭りだからと
お小遣いをくれるような毒母ではなかった
から
だんだん、友達と行くのさえ楽しくない
そして
大人になると行かなくなる
と言うより
行けなくなる
子どもが小さい頃は連れて行ったが
大人になって行く友達もいない
それに
大人になったからこそ
買えるはずの綿菓子も…
大人ひとりで買う勇気もない
そして、大人になったからこそ
屋台のぼったくり感が
買う気を失せさせる
結局
【お祭り】も花火も海も
誰かと行くから、
見るから楽しいのであって
ひとりで楽しむものではない
今年は行けるだろうか?
夏の風物詩を感じぬまま
今年も終わるのだろうと
どこかで思っている私なのである
浴衣を着て
好きな人と並んで歩いて
ヨーヨーと金魚すくいとりんご飴
花火を見て花火に見惚れる君を見る
そんな事は20年生きて一度もなかったけど
まぁそれはそれで良いとしましょう