『お祭り』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
《お祭り》
夏も盛りのある日の事。
僕は魔術と学問の国を治める導師から、ある祭に参加しないかと招待を受けていた。
ただ、闇に魅入られし者として僕が監視をしている少女も名指しで招待をされていた。
本来ならば同席出来る立場ではないために何故招待されたのか、彼女と二人で首を捻りながらも話を受けて、応じる事にした。
「ようこそ我が国へおいでくださいました。」
宮殿で導師が歓迎をしてくれたので、彼女と揃って礼をする。
導師は見た目は僕よりも若く、三年前と全くお変わりない。
噂では数十年とそのお姿が変わられていないとも言うが、どこまで真実なのかは知る由もない。
ただ、全てを見通す力があると言われ、その能力に幾度も国が救われてきたそうだ。
その導師が、僕の隣の彼女をじっと見つめている。
妨げるもの全てを許さないようなその眼差しは、その後すっと緩み、細められた。
「お二人に来ていただいたのは他でもありません。国同士の交流の一環として、我が国の祭を楽しんでいただそうかと思いまして。」
そう発言された直後、脇の従者が素早く前に出て、僕達に仮面を一つずつ手渡してきた。
「若者がその祭に参加する際は、民族衣装を纏いこの仮面を着けるのが為来りなのです。」
仮面は顔の右が白、左が黒で塗られていて、男女の区別はあるが被れば顔の見分けが全く付かないような物だ。
そしてそれはこの国にあるジャングルにのみ生える木で作られ、独特の意匠が施されている。
祭の内容は、かつて手紙でのみ心を通い合わせていた男女が偶然人混みで出会った際、お互いを会話のみで見つけ合いやがては結ばれたという伝説になぞらえているのだそう。
これに参加出来るのは若い男女に限られ、顔が分からぬように仮面を被り民族衣装に身を包み、その状態で会話から相手の名前を当てる事が出来れば願いを一つだけ叶えてもらえると説明された。
なるほど、伝説を利用した男女の出会いの場の提供というわけか。
方向性としては気が進まないが、他国の文化を学び国同士の交流を深めるには良い機会だ。
彼女の招待は、女性側に知った顔があれば気を張り過ぎずにすむだろうという導師の計らいだろう。
「ありがとうございます。喜んで参加させていただきます。」
僕は導師に参加の意を告げ、礼を述べる。
合わせて隣の彼女も頭を下げた。
導師はそんな僕と彼女の顔を交互に見やり、にこやかな表情でこう告げた。
「仮面を被った際は、多少心が緩むかもしれません。それも合わせて楽しんでくださいね。」
導師の話が終わると、僕らはあれよあれよという間に男女に別れた控室に連れて行かれ、民族衣装を着付けられる。
上は、前開きのゆったりした生成りシャツ。全体にシャツと同じ生成りの糸でレースのような刺繍が施されていて、熱帯の華やかな植物の色彩を損なう事なく霽れの日を演出している。
下はこれまたゆったりとした黒のボトムスで、シャツは外に出して着付ける。上下とも素材はパキッとしてて艶があるのに、通気性が良いのか暑苦しくならない。気候に良く合った作りに感心した。
そして最後に仮面を着ける。
すると驚いた事に、鏡の中の自分の髪が短く刈り込んだダークヘアーに変わった。
それは祭の醍醐味である、男女が目的の人物を探し当てる事に見た目という要素を加えないようにする為に施された魔術の力だそうだ。
「これは…!」
鏡に向かって発した声を聞き、更に驚愕した。
自分の発した声の筈なのに、まるで赤の他人の声だ。
さすが守りを魔法のシールドで固めている国だ。魔術の使い方も質も徹底されている。
が、これではますます彼女を探し出すのは容易ではないな。
他国にまで公にはしていないが、彼女は闇の力を持つのではと僕が疑いを掛けている人物だ。
今回は導師のたっての希望で同席させているが、本来ならばここに来れるはずのない立場。逃亡や騒ぎを起こす可能性がない訳ではない。
普段の生活ぶりからは想像は付け難いが。
…そして、あの満月の夜の元で見た彼女の言葉が真実であるのならば。
過った心配に頭を悩ませていれば、控えの者から声が掛かる。
「どうしましたか? もしやお連れ様の事でございますか?」
そのとおりではあるので頷けば、控えの物は訳知り顔でこう答えた。
「大丈夫です。導師様からのお言い付けもございますれば。お連れ様の”身の安全”はこちらで確実に保証致しますので。」
そうこうしているうちに時間が過ぎ、僕は祭の場に案内された。
彼女は別の出口から祭に案内されているそうで、見つけ出せるといいですねと案内人から言葉を掛けられた。
見れば会場は同じ民族衣装、同じ仮面、仮面の魔術により性別ごとに同じ髪色で髪型の男女でごった返している。
判別が付くのは、年長者と子供。要は祭の主役ではない、この仮面と衣装を着けていない者達だ。
この中から彼女を探し出すのは至難の業ではないのか。そんな心配を抱きながら歩き出す。
祭の趣向なので仕方はないが、あちこちからやってくる同じ衣装で同じ仮面の女性達に話しかけられる。
「一緒にお酒でも飲みませんか?」
「特産の美味しい果物を分けてさしあげますよ。」
「あちらで二人でお話しませんこと?」
「私、ダンスのパートナーを探してまして。」
次から次へとグイグイ押し迫ってくる女性達。
祭の無礼講という空気も手伝ってはいるのだろうが、この強引さにかなり辟易した僕は一度集団から抜け出して、宮殿へ続く道を彩る鮮やかな花のアーチの影に身を潜めた。
落ち着いてよく見れば、声を掛けられているのは男女ともに体格の良い者だ。
体格の良い者は病に罹っている可能性は極めて低い。これなら健康な者同士が出会いやすい。伝説を利用した合理性もあるわけか。
参加してみると理解出来る他国の文化に感心していると、背後からかさりと音がした。
「あ…すみません。」
そこには一人の女性がしゃがみ込んでいた。
服は薄手の艶のある生成りの生地に、生成りの糸で丁寧な花の刺繍が刺されているブラウスに薄手の絹のショールを羽織り、白いスカートの上からは艶の良い布が巻き付けられている。この祭の民族衣装だ。
髪はダークヘアーを首のすぐ上で一つにまとめている。被った仮面による魔術で女性の皆が同じ髪型になっている。
そしてその顔には白と黒の仮面が被せられているため表情は分からないが、今少し覇気のない声だった。
「大丈夫ですか? もしや具合を悪くされているのでは?」
もしもという事もあるためしゃがみ込んでいる女性に聞いてみたが、
「ごめんなさい、大丈夫です! ちょっと人混みに酔ってしまっただけなので。」
言うなり女性はすくっと立ち上がった。
突然現れた僕に驚いてしまったのではと心配したが、それでも女性は「いえ、大丈夫なので。こちらこそご心配おかけしてすみません。」と謝るばかり。
「いえ、お詫びはいりません。そのまま休んでいてください。」
そう告げると、ホッとしたような声音で
「ありがとうございます、そうさせてもらいますね。」
と言いその場に留まり、またしゃがみ込む。
後から来たのは僕の方なのだ。謝らなくていいのに。
しばしの沈黙を遮るように、女性が話し始めた。
「…実は私、このお祭りには誘われて来たんです。」
それは密やかなそよ風のように。まるでひとり言を呟くかのように。
「ここに連れて来てくれた人なんですけど、私を多分好きではないんです。私が…悪い人間だって疑っているから。
けれど、いつも私の事を優しく一人の人間として扱ってくれて。私は、そんな彼を直接出会う前からずっと…凄い人だなって思ってました。」
俯きながら話す女性からは、喜びと悲しみが綯い交ぜになった空気が滲み出ている。
その語り口だけで、相手を大切に想っているのだろうと理解出来る程だ。
静かに聞いていた方が良さそうだと、僕は黙って耳を傾けていた。
「…ごめんなさい、変な話をしちゃって。貴方はお祭りに戻らなくていいのですか?」
すると気持ちを切り替えると言わんばかりに勢いを付けてその場に立ち上がり、女性は僕に聞いてきた。
逆に気を使わせてしまったか。
「いえ、構いませんよ。他人の方が話しやすい事もありますから。
僕ももう少し人混みを避けていたいですし。」
そう返すと、女性はふっと笑った。
「確かに貴方の背格好を見ているとモテそうですからね。」
「ありがた迷惑ですけれどね。」
そしてお互いにクスクスと笑いあった。
何故だろう。他国の異文化の祭に混ざりながら、ここには日常の空気が流れている。
そんな安らぎに背中を押されてか、僕は思った事を口にした。
「多分ですけれど、聞く限り貴女の同伴者は貴女を大事にしていると思いますよ。貴女の話しぶりには、その彼の思いやりが背後にあるように伺えました。
…僕も相手の方と似たような心境なので、率直にそう感じました。」
これは本音だ。
この女性は大切にされているからこそ、その相手に絶大な信頼を抱いているのだろう。
あの短い言葉とその口調からは、その信頼が溢れ出していた。
…僕は果たして彼女を丁寧に扱えているのだろうか。
すると女性の仮面の下から、息を飲む音がした。
そして詰まるような声で話し始めた。
「…あ、ありがとうございます…。励ましてくれて嬉しいです。」
女性は一度しゃくりあげると、夜空を見上げて続けた。
「…でも、もう決めてるんです。絶対に出会える筈のないあの人に出会えた時から。
何が起こっても構わない。絶対に傍にいる。彼に引き金を引かれるなら死んでも本望だって。」
その言葉を聞いた瞬間、幻が見えた。
目の前の空を見上げる女性の髪はまとめたダークヘアーではなく、いつもの見慣れた白に近い銀の流れるような髪で。
沈みかけた三日月ではなく、天の頂にほど近い満月が女性の視線の上で煌々と輝いている。
『私がこの世界に来た理由が裁きを受ける為ならば、私は貴方に裁かれたい。
貴方が黒だと言うのなら、喜んでこの生命を捧げます。
だからその時にはいつでもその引き金を引いて下さい。』
あの満月の夜の、彼女の密かな誓い。僕が見ているとも知らずに立てられた、固い決意。
それが今、はっきりと脳裏に蘇った。
「ごめんなさい、本当に。じゃあ、私は失礼しますね。」
そう断り駆け去ろうとする彼女の手首を掴んで引き止める。
…本当に、いつも貴女はそうだ。そんな必要はないのに。
「謝る必要はないですよ。」
彼女の口癖。
いつも何も悪いことなどしていないのに謝る彼女。
それを止めるためのいつもの言葉を、僕は口にした。
その言葉を聞いて、弾かれたように彼女は振り向いた。
そして僕達は、同時にお互いの名前を口にした。
乾いた仮面が落ちる音が、二つ鳴り響く。
目の前の少女のダークヘアーは、見る間に輝く流れるような白銀に変わる。
赤くなった目尻には、大きな涙の粒が溜まっている。
ああ、いつもの彼女だ。
こんな僕を見つけて、名前を呼んでくれた。
いつも僕を見て気遣ってくれる、いつもの彼女だ。
目の奥に来る物をぐっと堪えながら、空いている方の手でハンカチを取り出して彼女の目元に当てる。
こくりと頷いた彼女はハンカチを受け取り、目元の涙を拭った。
そのまま僕は手を繋ぎ直し、彼女を連れて祭に戻った。
すると祭の広場は大きな盛り上がりを見せていた。
据え付けられた舞台の上で、仮面が外れた男女が口づけを交わしていたのだ。
舞台下には、年配者や一人で出歩ける程度の年齢の子供、そして仮面を着けたままの若者達で賑わっていた。
その観客達は、男女に舞台下から祝いの声を掛けながら花吹雪を散らしていた。
仮面が外れたら願いを叶える、という趣旨ではなかったのか?
その喝采の中、頭が真っ白になった状態で二人立ち止まっていると、背後から年配の男性に声を掛けられた。
「おお、お二人さんも互いの名前を当てられたか、おめでとう。
今は仮面を外した者の願いを叶えるとなっておるが、古くは心を通わせ合った二人の誓いの口づけが慣わしだったんだよ。」
どうかね、お前さん方も?
そう話を振られ、顔が焼けてしまうのではというくらいの熱が帯びた。
慌てて振り向けば、彼女の頬もこの南国に咲く花のように真っ赤に染まっていて。
握り合った手から伝わる互いの熱が混じり合い弾けるかのように、舞台上の夜空に大きな花火が咲いた。
お祭りの最中のようだった。
自分を中心点として、半径数百メートルは自分の領域であると錯覚できるほど。闘争心の焼却具合である。
自分に近づく、ありとあらゆる者どもの駆逐するためのキャンプファイヤーの熱気が。
獰猛な突進をする野生のイノシシのような。
そういった熱気。温度。空気感。
それを心に感じる。
速く速く速く。
焼べなければならない。
逸る気持ちを押さえて、燃焼スピードだけを早める必要がある。
一方、辺りは静かなように思えた。
当然だろうか?
そうだ。
誰に言われたわけでもない自問自答。
意味不明な思考の暴虐。
慌てるな。
乱心具合。胡乱な目つき。
超過する集中力。溢れそうになる。
標的は一つのみである。
気を散らせる必要はない。
必要のない不要。
確認するまでもない不要。
他はどうでもよい。
その通りだ。
手首の動きを確かめる。
可動域はどうか。最大限の駆動感はどうか。
手首パーツのひねりはどうか。
それらを確かめるように、こきりと関節の音を唸らせて、精査する。
――いまだ。
彼は水音すらもなく、ポイを沈めた。
獲物である赤いヒレを透過するように、水面下ですべてを捕らえるかのように。
ポイを沈め、ひょいと持ち上げる。
お祭り
この夏
我が家は
◯ロナ祭り
皆様
どうぞ
気を付けて
熱を持つ夜に電車の走る音 僕だけに見える夜のお祭り
「お祭り」
もう関係の無いはずの君を
無意識に探していた。
見つけたって苦しい思いをするだけ。
お祭りなんて半分しか
楽しめなかった。
きっとなくした思い出を
心のどこかでずっと探してる。
「お祭り」
今日は楽しい"お祭り"。
祭囃子が響き渡り、
まるで虚構のように、朧にしか見えない宴。
宵の宴、"お祭り"が始まる。
踊り狂い、とおりゃんせ?
いきはよいよい かえりはこわい
それすら刹那に消すように、さぁさぁおどりゃんせ。
祭りだ祭りだ"お祭り"だ。
きっと運命な終焉も、最後笑えば大丈夫。
とおりゃんせ、おどりゃんせ、
今日は楽しい"お祭り"だ .
さぁ、祭りを始めよう
叫べ、はしゃげ、お前がお前である限り
狙え、撃つんだ、お前の目的のために
噛んで、味わうんだぞ、せっかくの祭りなのだから
さぁ、今日という日を楽しもう
煌びやかな光が、お前たちを照らすだろうから
やあ、やあ、今夜はお祭りだ!足を運ぶ億劫を追い越して、一夜の夢ふと気付けばお釣りに残るは切ない郷愁だ。
それでもいいんだろう?蝉の音の途絶えた山下にぞろぞろ群れる人、人、人じゃない、人、ぽつりぽつり外灯にとおく群がる虫。
ああ、暑い暑い、狐面で素顔を覆った影に隠れて、「あーした天気になーあれ!」
今年は花火が上がりますように!
再来!
囃子太鼓の音が聞こえる
祭り囃子に囃子太鼓の楽しくも賑やかな音
ここは半径数メートル民家のない山の中
時間は午前2時
楽しいな。
お祭りっていいよね。なんか儚くて。
私は大好き。…命って儚いよね。尊いよね。
…なのに自殺を選ぶ人がいる。だから私は
人の多いお祭りの中で命の電池を無くしてあげるの。
#今日のお題
#りさのタイトル
#お祭り
よく、幼い頃親戚のおばちゃんとおじちゃんの家に行って夏祭りに行っておばちゃんと手を繋いで花火見てたなぁ。おばちゃんは、私にスーパーボールや
りんご飴、それから焼きそば、フランクフルト、
かき氷、ヨーヨー、色んなことをしてくれた。
おばちゃんの家に泊まりに行っておばちゃんの家の
娘さんと息子さん(どちらも結婚して子供いて実家出てる)けどが居て、いつもりさがくるからかーちゃん
りーのためにカルピス買っておいたーよ
と言ってくれた。それに、離れに住んでいた
おばあちゃんにもりーちゃん、大きくなったねぇ
ばあちゃん、元気か…??と言われてうん、ばあちゃんねおばちゃんに会いたいけどあの体だと無理だと思う。そのおばあちゃんも10年後にこの世を旅立っている。そしておばちゃんには今4人くらい孫がいて
そのうちの孫ふたりに会っている。男の子だけど
すごく、すごくかわいい。今は懐かしい気持ちに誘われて
早くおばちゃんに挨拶に行きたい
そんな気持ちでいる
今日この頃。
お祭りで君は私だけと過ごした
他にもたくさん友達がいるのに
私だけ連れて歩きまわる
だから私は君のことが好きになっちゃうの
勘違いさせるようなことしないでよ
もっと好きになっちゃうじゃん
「君さ、ヴォーカルをやってよ」
それが音楽フェスという今日の祭りのきっかけだ。
友達とたわいのない話をしている俺にその子、りんは
いきなりスカウトしてきた。
始めはただの逆ナンかと思った。
歌に自信なんてないし、
もっぱらの聞く派だから歌詞もろくに覚えてない。
バンドのライブに行ったことなど一度か二度くらい。
それなのに、りんはのちにわかることだけど
俺のポテンシャルを掘り当てた。
数日後、顔を合わせたバンドメンバーは全員女だった。
本名を伏せる代わりにニックネームで呼び合っているらしい。
りんも本名ではないと本人が言った。
俺はハルキという偽名を名乗った。
初めて入ったスタジオに入ったとき、
その場にいる楽器たちに圧倒された。
初めてだった。
ドラムのどっしりとした佇まいをこんな間近で見たのは。
「早速だけどハルキ、何か歌って?」
ギターのルリが言った。
でも、俺が覚えているのはJ-POPの有数の一番の歌詞とそのサビだけ。
それでもいいと彼女たちは口を揃えていった。
俺が適当に曲名を告げ、演奏が始まる。
本人のように思い切って歌える自分に歓声が上がった。
そして、満場一致でヴォーカルの担当が俺に決定した。
俺はりん達の足を引っ張らないよう必死になって練習した。
カラオケにも行ったし、バンドのライブの映像を見て真似をした。
インディーズのバンドのライブにも参加してイメトレもした。
最低でも週に2回はみんなで音合わせをした。
スカウトされ、バンドのヴォーカルという役割を与えられた三ヶ月後の初夏。
初めて音楽スタジオでルナが作詞、作曲した曲で披露した。
そのときの歓声に対する喜びに俺は達成感を感じた。
りんの本当の目的は、それではなかった。
その一ヶ月後の夏にオーディションを兼ねた音楽フェスに挑んだ。
結果は残念に終わったが、今までのどんな夏祭りよりも
この音楽フェスは俺にとっては、忘れられないお祭りだ。
お面の踊り子
その内側は笑いか怒りか悲しみか
知ることはできず、不気味に思う
見たいような見たくないような
気分がコロコロ変化する
鳥居をくぐれば、違う世界に
手招きするひょっとこが
確かに私は怖いと恐れている
お祭り
お祭り(屋台無双デート)
「リンゴ飴おいしー!」
「おう。そりゃ良かった」
境内の隅に座り、彼女が美味しそうにそれを頬張る。
履き慣れない下駄に苦戦しながら、何とかここまで辿り着いた頃にはもう真っ赤に擦れていた。
―――歩けない。
涙目で駄々を捏ね、うるうると自分を見上げた彼女に、仕方ねえなと彼がリンゴ飴を買ってきて隣に座り直したのが今しがた。
「ごめん、下駄なんて履くの久し振りだったから」
何かしらの為に常備していた絆創膏を擦れた箇所に貼り、彼女が意気消沈して呟く。
彼はぽんぽんと頭を軽く叩くと、気にすんなと自分も買ってきたペットボトルを飲み干した。
「俺も疲れてたし、丁度よかった。今日もあっついから、すぐ体力奪われちまうな」
「うん。今夜は過去最高の熱帯夜になるでしょうって予報でも言ってた」
「げ」
彼がうんざりした面持ちで舌を出す。
「―――で、これからどうする? 痛いなら無理すんな。帰るか?」
「やだ」
食い気味の即答。思わず彼が苦笑する。
「だってまだ、射的も輪投げも金魚すくいもしてない!!」
やだやだ!
ぶーと膨れるその姿に、彼は声を上げて破顔する。
「あっはは。わかったわかった、やりたいの全部終わるまで付き合うって。お供しましょう、どこまでも」
敵わないよ、お前には。
優しい眼差しに頬を染めながら、彼女はさらにこう言葉を続ける。
「射的も輪投げも金魚すくいも、得意だもんね?」
「え」
俺? 俺がやんの?
自分を指差す仕草に、彼女は真顔で頷いてみせる。
「だって足痛いし」
「ああ………、まあな」
………確かに射的も輪投げも金魚すくいも得意だけれども。一年経って、なまってないといいけどなあ。
どこか不安を覚える俺に、彼女はあ、と何かを思い出す。
「金魚すくいはわたしやるね。隣で見てて、いっっぱいすくうから」
そうして何匹か貰ったら家に持って帰って、去年すくった時に買った金魚鉢にすぐに一緒に入れてあげるの。
わたしとあなたみたいに、ずっと仲良くいられるようにって願いをかけて。
―――彼女は彼を促して立ち上がる。
既に痛みの引いていた足にホッと胸を撫で下ろすと、まずは手始めに射的の屋台へ、彼の手を引き歩き出すのだった。
END.
お祭り騒ぎで
血祭りに上げられた
後の祭りよ!
お祭り一緒に行く人なんか居ない。
自分なんて所詮、普通か興味ないかの二択で、好きか嫌いか判断してもらえる土俵に居ない。
例えば、私がすごく性格が良くなったとして、いい人になったとして誰に好かれるんだろう。
いいように利用されて終わり。
いい人になる理由なんにて見つからない。
好かれたい。認められたいすら思えなくて、
自分が思ったより心の底からクズで泣いてる。
・お祭り
お祭りは人がたくさんいて苦手である
そんな理由で今年も家にいることにした私
外から聞こえてくるのは打ち上げ花火
その音を聴きながら
私は推し達とお祭りをするの
寂しい?そんなわけないよ
私はひとりじゃないの
推しがいるんだから楽しいの
これが私のいつものお祭り
お祭り
単純に言えば苦手…
でも、子供の頃は好きだった…
金魚掬いや楽しいものは
ワクワクするよね
だんだんに、人混みが
苦手になったり…
騒がしいものが苦手に
なったり…
今でも、お祭りの最後の
花火は好き
遠くから見える微かな花火
近くから見るより…
綺麗に見える
夏の風物詩
お祭り
石造りの階段、さん、にい、いち──
鳥居の前でお辞儀をして、端を通り、手を口を清め。前坪の間がじくじく痛むのを堪えて、踏ん張りながら歩いた。
目的地は神社の奥の公園。あそこは花火が、頭の天辺に落ちてきそうなくらい、迫力満点で近く見える。
「……まだ1時間もある」
時計を見ると、花火大会まで時間に結構余裕があることがわかった。
そう急いで来ても、なんの意味もない。
なんとなく恋愛小説のように想い人に会えるものと想っていただけだ。
「凪里くんに会いたかったなぁ」
お盆まで二週間以上ある。凪里くんはまだまだ帰ってこれない。
露店で売っていた、ソースでぬめるジャンクな焼きそばを乱暴に口に入れ、涙で味を濃くした。
何度も落ちてくる袂に苛立ちを感じる。
「見て、夕焼けが、綺麗だね」
彼の言葉を思い出してみても、苛立ちは止まらない。
「日は落ちてても空、ずうっと真っ青なの」
思い出の再現をしてくれない。
風だって去年はこんな悲しげじゃなかった。
ハンディファンで乾いた涙は、拭っても、張り付いて離れてくれなかった。