お祭り
石造りの階段、さん、にい、いち──
鳥居の前でお辞儀をして、端を通り、手を口を清め。前坪の間がじくじく痛むのを堪えて、踏ん張りながら歩いた。
目的地は神社の奥の公園。あそこは花火が、頭の天辺に落ちてきそうなくらい、迫力満点で近く見える。
「……まだ1時間もある」
時計を見ると、花火大会まで時間に結構余裕があることがわかった。
そう急いで来ても、なんの意味もない。
なんとなく恋愛小説のように想い人に会えるものと想っていただけだ。
「凪里くんに会いたかったなぁ」
お盆まで二週間以上ある。凪里くんはまだまだ帰ってこれない。
露店で売っていた、ソースでぬめるジャンクな焼きそばを乱暴に口に入れ、涙で味を濃くした。
何度も落ちてくる袂に苛立ちを感じる。
「見て、夕焼けが、綺麗だね」
彼の言葉を思い出してみても、苛立ちは止まらない。
「日は落ちてても空、ずうっと真っ青なの」
思い出の再現をしてくれない。
風だって去年はこんな悲しげじゃなかった。
ハンディファンで乾いた涙は、拭っても、張り付いて離れてくれなかった。
7/29/2024, 5:21:12 AM