リジー

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1/6/2025, 11:33:50 PM

君と一緒に

 頑張るあなたの後ろ姿を、僕はずっと見てきました。よく、僕をからかうあなただけど。それは大抵僕があなたを褒めた時の照れ隠しですよね。
「急に何言いやがるんだよ……」
 彼は僕の頭を軽くはたいた。照れ隠し。頭を掻いて頬をピンクにするのも変わってないんですね。
「はあ、もー何なんだよ。あっ、分かった」
 んっと彼は両手を広げた。
「おかえり、オットー」
「ただいまです、ナツキさん」
 僕達は互いを抱きしめあった。もう二度と離れることがないように、強く。
 二人ボッチの酒の席は続く。この優しい空間は、素面に戻れば恥ずかしくなってしまうものだけど。でもこんなに、あなたと一緒にいれてよかった。と思う日を大事にしたいなあ。

1/4/2025, 2:08:36 PM

幸せとは

「幸せって、なんなんだろーな」
 いつかの夜にそんな言葉を零していましたね、ナツキさん。僕はようやく分かりましたよ。愛する人の笑顔と、言葉と、声と、未来と……つまり、誰かを愛する気持ちじゃないかなーって思います。あなたが何度も辛い夜を超えてこれたのは、愛する人がいるからでしょう?僕だってそうです。
 愛する友人がいて、支えたい人がいて、仲間がいて……
 だから、これでいいんです。愛する人が傷つくなら、僕が傷つけばいい。それで愛する人が守れたなら、幸せでいてくれるなら、それが僕にとっても幸せです。
 だから、泣かないでください。このくらいで思い詰めないでください。ナツキさん。

1/4/2025, 7:32:24 AM

日の出

 あおーい冬の空、透き通った風、波の音、温かい人の手の温もり。最高の新年の始まりだ。
「そうは思いませんか?」
 チラリと彼の顔を見ると、普段はキリッとしたつり目が、今は眠たそうに、眩しそうに目尻をさげていた。
「そーだなあ。でもこういうのって初日の出見に来るんじゃねえの?もう昼になりそうなんだけど」
 彼はジャージの袖から腕時計を出して確認する。
「いいんですよ。新しい年を二人で迎えることが出来たって思えたら何だっていいんです」
「そーいうもんか?」
「そーいうものです」

11/13/2024, 2:41:36 PM

また会いましょう
 長い黒髪の人がいた。真っ黒なカーテンの様に、俯くと目がチラリと覗くだけになってしまう。恨めしい、あの人の髪を分けて梳いてやりたい。私にその臆病な瞳をもっとよく見せて。
 昔その人は私のヒーローだった。当時、私よりも身体が大きいガキ大将に蹴られていたとき助けてくれたのは君だった。擦り傷だらけの腕を広げて、いじめっ子と私の間に立って守ってくれたね。昨日の事のように思い出せる。私を守り、気遣い、少しでも見てくれたのはあなただけ。優しく「頑張ったね」と撫でてくれたのもあなただけ。
 好きです。昔も今もあなたは変わらない。あなたの内面の清らかさは誰にも汚す事ができないんですね。
 今、あなたがいじめられていることを、私は知っています。芯の強い目で睨みつけるあなたを見ました。女の虐めというのがねちっこくて陰湿というのは知っていましたが、こうも男が介入できないことは知りませんでした。
 もし私があなたの前に立って腕を広げても、昔のようにはいかず、さらなる火種になるだけですね。
 私得意の小細工しましょう。そうしましょう。あなたのために、全て私が、終わらせますから。
あなたが笑顔になれたなら、また会いましょう。ね。

11/12/2024, 3:22:19 PM

スリル

 肝試し。いるはずのないものに自ら近づく、危険な行為。を何故コイツらはしようとしているんだ!
「なあ深夜4時ピッタリにだけ現れる廃神社があるんだって。行ってみよーぜ」
 にやりと笑って結真はスマホの画面を見せた。そこは隣町の山にあり、何人もその神社に迷い込んだらしい。だが一度入って出たあとは、もうその神社を見つけることはできない。一期一会な神社だという。
「ふらっと行くにしては遠くね?」
 と言ってもなんだか目をキラキラさせて、行きたそうにしている幸之助。
「チャリで行けばスグよ、ほら」
 見せられた立体マップの予想移動時間は30分。そこまで遠くなく、神社が出現すると噂の場所も山の麓に近い。難なく行けそうなのが判断を僕の鈍らせる。マップに神社など写っていない。噂が正しいわけもないし、とズルズル考え込んでいた。

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