『お祭り』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私はお祭りなんてものに縁がない
お祭りに行っても何も買えない
何も食べれない
花火を見ても腹は膨れない
どうして純粋な
子供になれない
お祭り、と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、神社への参道。両端に所狭しと軒を連ねる屋台。
リンゴ飴、綿あめ、金魚すくい、射的…
子供の頃に、どうしても欲しかったものがある。
それはベビーカステラ。リンゴ飴は買って貰えたのに、ベビーカステラは買って貰えなかった。
微妙に値段が高かったのかも。
大人になった今。その頃の鬱積を晴らすかのように、ベビーカステラの屋台を見つけては必ず買うありさま。
そうして毎回買ってると、「あ、卵減らしたな」とか「小麦粉に何か混ぜてるな」とか、最近の材料費の高騰を思わせる変化に気づく。
そして、ベビーカステラの屋台時代をあまり見なくなった。
余計なものが余裕を作る。
(お題:お祭り)
バン、と1回音がして、真っ暗な空に赤い花が咲く。
そうして夏祭りの最後を飾る花火が終わりを迎えた。
ぞろぞろと祭りに来た人達が帰って行くのを横目で見ながら、私はもう何も打ち上げられない空を眺めていた。
「お祭り、楽しかったね!ねぇ、また来年も行こうよ」
ふと、隣からそう声をかけられた気がしてそちらに目を向ければ、そこには誰もいなくって、ただ静寂が広がっているだけだった。
去年までは、隣にいたはずの存在。花火が終わった後、彼女が言うお馴染みの言葉だった。
「……おまつり、」
また、いっしょにいこう。
二度と叶わない約束を、きっと私は来年もこの場所でするのだろう。
お祭り
どんな由来かはわからないけど
雰囲気とか屋台とか
そういうのが好き
毎年、思い出作りに、誰かのためになるならばとイベントを開いているそんな時、空から神様が舞い降りてきて、こう言った。猫を崇める夏フェスを開くのですと、涼しい部屋で猫をもふりながら猫を称えるお祭り。なるほど、猫カフェか。
お祭りが好き
小さい頃は好きじゃなかったのに、いつの間にか好きになっていたのは、心が解放されるすばらしさがわかったから
今年の夏も始まった
「左乃(さの)、それはどうした?」
「迷子のようだ。今、管(くだ)に親を探させているところだ」
「本部に連れて行け。案外すぐに見つかるやもしれん」
「そうか。ならば、そうしよう」
始まりは村の小さな社だった。
人の争いに巻き込まれ、命を落とした子狐を祀ったのだと伝わっている。
心優しい村の人間が、粗末ながらも建てた社を、祀られたお狐様は大層気に入った。
お狐様は感謝の印に村人を見守る事にした。
作物がよく育つよう天に祈りを捧げ、日照りが続けば雨を、長雨にはお天道様を願った。
純粋な子狐の願いは、数多の神々により叶えられた。
やがて村は裕福になり、人が増え、同時に社も徐々に大きくなり、遣えるものも増え、神事が行われるようになった。
さすれば、お狐様の格も上がり人々の願いを自身で叶えられるようになる。
それでもお狐様は変わらずに純粋で、数多の神々に可愛がられている。
故に年に一度の豊穣の大祭には、人のみならず、人でないものもチラホラと混ざっている。
「それにしても、また人が増えたな」
「そうだな」
迷子の兄妹の兄を左乃が抱き抱え、妹を右乃(うの)が抱き抱え並んで人混みの中を歩く。
兄は5歳で『トオノ ホトリ』、妹は3歳で『トオノ アヤ』と言うらしい。
迷子だと言うのに泣きもせず、左乃の問い掛けに淡々と答えるホトリは、年齢よりも随分と大人びた印象を受けた。
アヤは年相応、色々なものに興味を示し目を輝かせていた。
どこかへ駆け出しそうになるアヤを、ホトリが繋いだ手をぎゅっと握って止める、そんな光景が左乃の前で何度も繰り広げられた。
豊穣の大祭は三日三晩行われる。
何のことは無い、人も人でないもの達も、どんちゃん騒ぎが大好きなのだ。
呑んで歌って踊って食って、体力と気力の続く限り騒ぎまくる、ただそれだけの事がこんなにも楽しい。
神々の力でこの三日間は良い天候に恵まれる事が決まっている。
故に皆、何を心配することなく騒ぎまくるのだ。
人の中には村を出ていった者達も多いが、この三日間のために帰ってくる者も多い。
「始めた頃は100人もいなかったのにな」
「今年は5万人を超えたらしいぞ」
「そりゃすごい。あ、お狐様だ」
「あぁ、また神輿を担いでいる。神輿は乗るものだと言ったのに」
神輿の担ぎ手の中に、自分たちの遣える主がいる。
小柄故、周りの男たちにもみくちゃにされているが、弾けるような笑顔で担いでいる。
「ん?神輿に乗っているのは⋯篠倉の山神様か?」
「そのようだな。あぁ、すっかり出来上がっておられる」
神輿の屋根にどっしりと胡座をかいて座っていれば良いのだが、屋根に覆い被さるようにぐでっと乗っかり半分目は虚ろ。
そんな状態にもかかわらず、手にはしっかりお猪口と徳利を持っていて、チビチビと酒を口に運んでいる。
「人間がトンネルを掘ったとお怒りのようだったが⋯ご機嫌だな」
「お狐様が陽録(ようろく)に伝えたらしい」
「伝えた?何をだ?」
「篠倉の山神様は酒が滅法お好きだと。日本酒、焼酎、ビールにワイン、特に珍しいものがお好きだと」
「つまり⋯」
「賄賂だな。世界中の色々な酒をお供えすれば良い、と陽録が篠倉の社守に伝えたんだ」
「なるほど」
人間の生活の利便性のため、自然に手を入れるのは致し方ない。
しかし、やはり神にも心はある。
篠倉の山神はその気持ちを、工事の邪魔をする事で現した。
無論、人は奇っ怪な現象が起きる、工事が進まないで困り果てていた。
そこに手を差し伸べたのがお狐様、ということだ。
因みに陽録とは、お狐様を祀る社守の末の息子の名前だ。
近年珍しく、人ならざるものの姿や声を聞くことができる。
当然、お狐様や左乃、右乃とも話せる。
今はお狐様も左乃、右乃も人に見えるよう力を調整しているが。
「あ、リンゴ!」
迷子の妹アヤが右乃の腕の中から手を伸ばし落ちそうになる。
その様子を見て、左乃の腕の中にいる兄ホトリもアヤに向かって腕を伸ばした。
「危ないから、動くな」
左乃にがっしりと掴まれたホトリは、それでも妹から目を離そうとしない。
アヤはと言うと、リンゴ飴に夢中になっている。
屋台の照明の下で、キラキラと輝く飴を纏ったリンゴが気になってしょうがないようだ。
右乃はそんなアヤの様子を見て笑い、屋台の店主にリンゴ飴を二本くれるよう話している。
店主は一本をアヤに、もう一本をホトリに手渡し右乃から代金を受け取っている。
早速リンゴ飴にかじりつこうとしているアヤを静止し、右乃はリンゴ飴を覆う透明な袋を外してやる。
その様子をじっと見守っているホトリに左乃は声をかけた。
「今食べるか?」
するとホトリはフルフルと首を振った。
「そうか」
そして右乃と左乃は、迷子の兄弟を抱えて また歩き出す。
笑って走り回る子供たち、懐かしい顔に話の花が咲く大人たち、手を繋いで屋台を覗いて歩く恋人たち。
人の間を走り回る人ならざるもの、木の上や岩の上、はたまた屋台の上等で、酒盛りをしている神々。
皆が皆思い思いに楽しい時間を過ごしている。
「左乃!右乃!」
その声がした方へ首を回せば、祭りの法被を着て頭に狐の面を着けた青年が、運営本部とでかでかと文字の書かれたテントの前でブンブンと手を振っている。
「陽録、ここにいたか」
「おうよ、あれ、お狐様は一緒じゃないのか?」
「あー、神輿を担いでる」
「えっ、今年も?一体いつになったら乗ってくれるんだろう」
「一緒に騒ぎたいんだろ、その方が楽しいからな」
今も心から喜んでいるはずだ。
おかげで、周囲の空気が清々しい。
「で、その子達は?」
「あぁ、迷子だ。二ノ池近くで保護した。こっちが兄でトオノ ホトリ5歳」
「こっちが妹でトオノ アヤ 3歳」
「親は来てないか?」
「トオノ⋯今の所来てないね」
スマホの画面をスイスイとスライドして、陽録は答える。
迷子情報は、運営のLINEで共有し探すようにしている。
何せ祭りの会場は村全体、一箇所で集約していては対応できない。
迷子センターは村全体で20箇所近く、神社敷地内だけでも4箇所ある。
因みに昨年の迷子の数は378人と、大人が祭りで羽目を外すので迷子が多く出る。
故に警察の協力無くしては、この豊穣の大祭は行えないのも事実。
まぁ、人間のみならず、人ならざるものたちも大勢参加している祭りなので、迷子にもしもの事は起きないのも、この祭りの特徴だ。
「よし、じゃぁこっちで預かるね。二人はお祭り楽しんで来て!」
「陽録、お前は?」
「俺は今日は忙しいんだ。あー、でも夕方にはちょっと時間とれるかな」
「そうか、ならその頃に楓を連れて来てやる」
「へっ?」
楓とは、陽録の幼馴染で村長の娘、そして恋人。
陽録同様、左乃達を見ることが出来る貴重な人間だ。
そして、お狐様はじめ大勢の方々から好かれる稀な人間だ。
「お前もいい歳だしな。いい加減身を固めろ」
「左乃?」
「そうだな、いい頃合いだろう」
「右乃?」
「逃げるなよ、陽録」
「お狐様は既に認めているから、問題ないぞ」
「え、ちょっと」
「ではな」
左乃と右乃はそう、言い残し人混みの中へと消えて行く。
その後ろ姿に戸惑いの言葉を投げつつ、陽録は思う。
何だかんだと言いつつも、やっぱり人ならざる者達は自分勝手だ、と。
「俺にだって、計画ってもんがあるんだよ⋯」
今年の彼女の誕生日、今日からひと月と6日後にプロポーズしようと思っていたのに。
でもそんな陽録の思いとは裏腹に、事は進んでいく。
3人の話を耳にした、陽録の友達が、親戚が、人ならざるものが、夕方に向かって準備を始める。
他人の恋バナは最高の酒のツマミ。
夕方、何故か陽録の手の中には先週買って部屋に隠しておいた指輪があり、右乃、左乃に連れられて楓は人垣の割れた、花道を静かに歩いてくる。
何故自分がイベント用のステージの上に立っているのか分からないまま、陽録は楓が自分に近づいて来るのを待っている。
たくさんの人と人ならざる者達に囲まれて、一生に一度の思い出にしたいプロポーズを強制的にやらされる事に僅かな怒りを感じるが、これもまた思い出となるだろう。
大きく息を吸って、静かに吐き出して、丹田に力を込める。
楓の笑う顔、頷いた仕草、その全てを目に焼き付けて、楓を腕の中に包み込む。
「おめでとう」
方々から聴こえる祝いの言葉は、そのまま喜びの声に変わり村全体を包み込む。
今の今から、三つの夜、人も人ならざるものも、歌い踊り呑んで食べる。
さぁ、最高の思い出になる、お祭りを始めよう!
━━━━━━━━━
(´-ι_-`) 兄妹のお話もある⋯のです。
僕は姉ちゃんがきらいだ。
すぐにいじめてきて笑ってるし、
僕の大好きな唐揚げも横から取る。
夏休み。僕たちはおばあちゃん家に遊びにきていた。
僕はおばあちゃん家が好きだ。
川で遊んだり、採れたてのとうもろこしを食べたりできるから、毎日が楽しい。
それに、姉ちゃんも楽しいからか、いつもみたいにいじめてこない。
おばあちゃん家にいる時の姉ちゃんは好きだ。いつもこんな感じならいいのに。
今週、近くの神社でお祭りをやってるって聞いた。
おばあちゃんが僕と姉ちゃんにお小遣いをくれた。
浴衣を着せてもらった僕たちはワクワクしながら神社に行った。
たくさんの人で賑わってて僕もその騒がしさにテンションが上がった。
「姉ちゃん!どこから行く?」
振り返ると姉ちゃんはいなかった。
さっきまでのワクワクした気持ちがぐるんってひっくり返された感覚がした。
頭の中もグルグルしてて、どうしたらいいのかわからなくなった。不安で気持ちが押しつぶされそうになった時、グッと僕の手を引く人がいた。
「ほら、こうしてたらはぐれないでしょ?」
そう言って引っ張ってくれたのは姉ちゃんだった。
「泣かないの。お祭り楽しもうよ!」
「…うん!」
「こんな事もあったな…姉さん」
こんな絵日記が姉さんの部屋から出てくるなんて思わなかった。
あれから20年…いや、18年くらいだろうか。
あの後、姉さんに買ってもらった風船から手を離してしまって、大泣きしながら帰った。
「今頃あの風船でも探してくれてるかな…」
「また来るよ…姉さん」
また来年、暑い夏のこの日に会いに来ると伝え、
姉の仏壇に手を合わせた。
あれだけいじめてきた姉は、28という若さでこの世を去ってしまった。
いくつになっても、姉は俺を困らせる。
すぐにいじめて笑っていた姉さん。
友達にもちょっかいをかけて恥ずかしがっている俺を見て面白がっている姉さん。
受験に合格した時も結婚した時も、一緒に涙を流してくれた大好きな姉さん。
両親よりも先に逝ってしまったそんな姉さんが…嫌いだ。
お祭りの
喧騒に乗じて
ひとり
消えたって
誰も気づかないよ
「お祭り!!」
「はいはい」
はしゃぐ息子に甚平を着せる
自分は動きやすさ重視でワンピースにした
「ママ、まだー?」
玄関でサンダルを履いた息子が待ち切れずにいる
「おまたせ!」
そう言って玄関に駆け足で向かうと「ん!」と息子が手を差しだす
いつ覚えたのか 気が付いたら靴を履く時に手を貸してくれるようになっていた
「ありがとう」とお礼を伝え、息子の手を借りながらサンダルを履く
「「いってきまーす!」」
鍵をかけてから息子と手を繋いでお祭りに向かう
息子が食べたいものと見たいものを話してくれる
それに相槌を打ちながら自分も食べたいものを考える
(今年も食べ尽くすぞー!)
息子に負けず劣らず食いしん坊な私は心の中で固く握った拳を突き上げる
お祭りとは、大勢の人々が一つ一つ協力していき、一つの舞台が完成して全員が楽しく交流する場だと私は思う。食べ物ではかき氷、わたあめ、たこ焼きなど。遊びではヨーヨー、射的、くじ引きだったりすべての人がワクワクするような楽しみ(思い出)が詰まっている。家族も友達もみんなが楽しく笑えるそんなお祭りが私は好きだ。私は、お祭りに参加すると毎回、歴史を感じる。このお祭りは昔から続いていてみんながその文化を無くさないように一つ一つ(少しずつ)進化していきながら受け継がれていると、そう思う。最後の打ち上げ花火では、一つ思うことがある。それは、みんなが同じ風景を見ていて、その気持ちは全員が共通するのではないのかと。花火は大きな音だから一人一人が一斉に同じところを振り向く。その時、そこにいるすべての人と顔も名前もわからない人達でも一つになることができる。今まで、違う景色を見ていた人達が花火の時だけ自分と同じ景色をみることができる。私は人と人が繋がるこの瞬間が大好きだ!夏祭りは笑顔が絶えない。自分の大切な人と過ごせる人生で大切な時間だ。私は、この時間を大切にしたい。これが私がお祭りで大切に感じていることだ。
「さてと…、このパーツを付けたら完成だわ…」
夏実の目の前には「夏祭り」の風景を模したジオラマが広がっている
数年前に心の病を発症してから、夏実は多くの人が集う場所には行くことが出来なくなった
多くの人どころか、3人ほどで話をしていても夏実にはその話し声が不快な騒音にしか聞こえなくなった
次第に人との接触を避けて家に閉じ籠もるようになり、窓のカーテンはきっちり閉じ、心の扉も閉じるようになった
発病前の夏実は活発な性格でアクティブな毎日を送っていた
特に「お祭り」のあのエネルギーがたまらなく好きで、日本全国のお祭りを追いかけ、金銭的にも時間的にも余裕がある時には海外にまで出掛けていった
人々の生み出すあの躍動感に満ちたエネルギーの中に、夏実は湧き出る命の源を感じ、何度見ても鳥肌が立つほど感動した
その一瞬を逃すまいと、独学でカメラの技術を学びアマチュアカメラマンとしても活躍し始めていた
そんな矢先の発病だった
以前とは真逆のひとり閉じ籠もる生活を支えていたのはジオラマ作りだった
それまでの感動の記憶をひとつひとつを形にしながら、いつかまた「お祭り」を撮りに行きたい…
その思いが唯一彼女をこの世界に留めていた
夏実が今手掛けているのは「夏祭り」の1日をテーマにした地元の賑わいを表すジオラマだった
奇しくも今日は地元の夏祭りの日だ
遠くからお神輿を担ぐ子供達の賑やかな声も聞こえてくる
腰に手を当ててラムネを飲み干す少年の人形の手に、最後のパーツのラムネの瓶をピンセットで優しくつまみ上げ、そっとその手に持たせた
『お祭り』
夏の一夜。山の麓の神社で出店が出され、提灯や灯籠で照らされる。
年に一度だけの祭りの日。私が、ひとりの友人に会える年に一度の日。
その子は小学生ぐらいの身長で、肩ほどの長さでおかっぱに切られた綺麗な黒髪に、赤い可愛らしい着物を着ている。何年経っても同じ背丈、同じ髪型、同じ服。
あの子は人間じゃない。
お祭りの日にだけ、神社の裏で私を待っている。他の人にもちゃんと見えているようで、最近は中の良い姉妹だなんて言われている。
お祭りが終われば私以外の記憶からあの子は消えてしまう。私に妹なんていないけれど、そのおかげで「あの子は誰?」となることはない。
「お待たせ! 遅くなっちゃってごめんね。」
「いいのよ、待ってる時間も楽しいから! また背が伸びたのね。たった一年なのに、どんどん遠くなっちゃう。」
「そうだね、初めて会ったときは同じぐらいの身長だったのに。」
「ちょっとさみしいけれど、まあ良いわ! 今日はお祭りだもの、ねぇ、早く屋台に行きましょう!」
射的に金魚すくい、瓶ラムネに綿菓子にりんご飴。
気になったところは全部遊んで、食べて、二人で短い時間を全力で楽しむ。
お祭りが始まる午後6時から人がまばらになる午後10時まで。毎年毎年、学校の友達と遊ぶよりも何十倍も楽しい4時間を過ごす。
長いようであっという間で、気がつけばお別れの時間が迫ってくる。
「また来年だね……もっと一緒に入られたら良いのに。」
「……なら、もう少しだけ、一緒に遊ぶ?」
「え……でも、お祭りはもう終わっちゃうよ?」
「こちらへついてきて! 貴女、今年でもう16歳になるでしょう? 特別に秘密の場所を教えてあげるわ。」
「え? あ、まっ、待って!」
彼女に手を引かれるまま、神社の裏へ、山の中へと入っていく。獣道のようなところを進んで、草木をくぐって、どれだけ歩いたかわからない。
暫くすると「着いたわ!」と彼女は足を止めた。
そこは、幼い頃から決して立ち入るなと教えられ続けた小さなきれいな池のそばだった。
「ここは駄目だよ! 来たらいけないって、おばあちゃんが……」
「あら、それは貴女が幼かったからよ。だから私も貴女を連れて来ることができなかった。でも、もう大丈夫よ。」
しゃがんでそっと水に手をいれる。こちらを振り返り、優しい笑顔で彼女は続ける。
「ここの水はとても澄んでいて、冷たくて気持ちがいいのよ。ほら、こちらへおいで。大丈夫だから、私を信じて?」
恐る恐る、彼女のそばへよる。
池の底が見えるほど透明な水が彼女の手の動きに合わせて波紋を描く。綺麗でしょう? と笑う彼女に、うん、と短い返事を返す。
それなりに深い池のようだから、落ちないようにとおばあちゃんはああ言っていたのかもしれない。
彼女の真似をして私も水に手を付ける。
冷たくって、とても気持ちがいい。
「ふふっ、捕まえた。」
「え……、っ?!」
瞬間、彼女に水の中へ突き落とされた。いや、彼女も一緒に水中へ沈んでいく。両腕を掴む力は強く、振りほどこうにも振りほどけない。苦しい。どうして。
「駄目じゃないの。名前も知らぬ子と仲良くなって、こんなところまでついてきて。」
「ふふっ、可愛い子。可哀想な子。貴女はこれから贄として私の糧になるのよ。よかったわ。16になるまで私と遊んでくれて。私を気味悪がらず、逃げずにいてくれて。」
水中だというのに彼女はなんともないようで、その声ははっきりと聞こえてくる。
「楽しかったわ、ありがとう。そして、いただきます。」
────────
年に一度、山の麓にある神社で祭りが行われる。
それは元々、山に眠るとされる水神を鎮めるための儀式を行う場だった。
齢16になる生娘一人を生贄として住処の池へ捧げる。
何年もの年月を経て水上の存在を知るものは減っていき、ただの夏祭りとなってしまった。
数十年に一度、16になる少女が姿を消すという都市伝説だけを残して。
#6『お祭り』
お祭り
書きたいのに心身しんどくて、
色々立て込んでいて19時までに書く自信がない。
あとで書けたら書くのでとりあえず保存。
お祭り
人よりも耳がいいせいか、お祭りなどの場所へ行くと楽しむ事が出来ない俺。
まだ子どもの俺は、親に毎年のように連れて行かれる恒例行事。
そんな恒例行事の中でも一番の楽しみは脱走だ。隙をみてはこっそりと離れ、自由気ままに回っていく。人混みから離れ、近づき、どうするかは俺次第。美味しそであれば買っていく。
だが、人混みの中の一人は、一人の時よりも寂しく思ってしまう。楽しくはあるが、ずっと人の声がする。俺には苦痛だ。
そんな俺にいつも寄り添ってくれていたのが、動物だ。動物はただ傍にいて、人の事なんかお構いなし。そんな姿に癒やされる。
一人でも、動物がいなくても、今度は夜空がいる。
そして今は、彼らだけではなく、寂しがっている俺に気づいて追いかけてくれる友達がいる。もう寂しくないよ、ありがとう。
2
I'll write it later.
◦─────────────────────◦
⚠️Warning
20歳未満の飲酒は法律で禁じられています
2人で来る初めての夏祭り。
僕はシャツにジーンズといういつもの格好だけど、ヒカルはなんと浴衣で来た。
「お祭りとか、僕、子供の時以来でさ、ましてその…デートでしょ?嬉しくてさ張り切っちゃったよ。おかしい?似合わない?」
「おかしくないし、似合ってる。」僕が答えるとヒカルは安堵した顔をした。
似合うどころか。
紺の浴衣からのぞく白い首筋が…。
ヒカルの耳元に「めっちゃエロカワ」とささやくと、すぐにヒカルの耳と首筋が紅潮した。
夜店を見て回り、しばらくすると「ごめん、履き慣れない下駄でちょっと疲れた。」とヒカルが言った。
「わかった。気付けなくてごめん。ちょっとそこに座ってて何か飲み物買ってくる。」僕が言うと、ヒカルは「助かる」と言って石段に腰掛けた。
「さて」夜店の間を戻りつつ飲み物を探していると、ペットボトル飲料とともに、ビールが売っていた。
店のお兄さんに「ノンアルビールもありますか?」ダメ元できくと「あるよ、1つ?」ときかれたので、「ビール1つとノンアルビール1つ。」と注文した。
「はい、お先ノンアル。はいこっちはビールね。彼女とデート?いいねぇ。」彼女じゃなくてと言いそうになるのを抑えて僕はお金を払って、右手に持ったビールに口をつける。プラスチックのカップだけど、冷えたビールは美味しい。
ヒカルのところに戻り、左手に持っていたノンアルビールのカップをヒカルの頬につけると、「ひっ?冷たいよ。え、あ、ビール?」といいながらヒカルが受け取った。「違法じゃ?」ときくので僕が「大丈夫。」と答えると、「お祭りだし…。」と言ってヒカルがカップに口をつけた。
「にがっ!僕初めてなんだ。酔ったらよろしくね。」
「う、うん。」それノンアルだから酔わないけど。やっぱり飲んだこと無かったか。ノンアルにして正解だったな、と思っていたのに。
しばらくすると、ヒカルが「暑い」と言って、きっちりと着付けていた浴衣の胸元をゆるめはじめた。白い肌のあらわになる面積が増えて、僕はついついいろいろ妄想するところだった。
「え?酔っ払ってきた?」僕が少し慌ててきくと、
「わかんないけど、いい気分♪」とヒカルが言った。
嘘だろう?
ビールって思いこんでるから、暗示にかかった?
どうしよう。ノンアルだってこと言いそびれた。
そのうちヒカルは、カップにノンアルビールがまだ半分も残ってるのに、僕にもたれかかって寝息を立て始めた。
なんて可愛い生き物!
僕のいたずら心が招いたこととはいえ、この状態でオアズケをくらうとは。でも、15分だけこのままでいさせてあげよう。いや僕がこのままでいたい。あぁ、ここがお祭りという公衆の面前でなければ。僕は下心と幸せな気持ちの狭間で、自分のすでにぬるくなったビールをあおった。
お題「お祭り」
祭囃子がピーヒョロロ
赤い提灯が立ち並び、賑やかな様子を見せる
その陽気に踊る中では、猫も杓子も関係ない
人混みにふと目を凝らしてみれば、陽気な音に誘われて
人ならざる物の怪も居てるかもしれないね
高いところから祭りを見物しながら想像する。あの中に大きなくす玉を投げ入れてやったらみんなどんな反応をするだろう?びっくりして逃げるだろうか?それとも歓声をあげて出てきたものを拾い始めるだろうか?考えただけでわくわくしてきた。
カランコロン 下駄鳴らす
気になるあの娘がやってくる
僕の前に立つ君が 乱れた御髪を直す姿に
一人ソワソワソワ 胸踊る
手を伸ばし 手を繋ぎ 汗ばむ互いの熱感じ
人混み揉まれ 綿菓子買って
聴こえる夏の夜空から 花火と一緒に盆踊り
あの娘のしなやかな踊り姿眺め ふと気付く
(あぁ なんて日だ やっぱりあの娘が好きなんだ)
帰りに言おう “君が好き”
2024年7月29日 SIVA5052
夏のお祭りは
ある人にとってはいい思い出で
ある人にとっては悲しい思い出。
告白して、成功する人も
成功しなかった人もいるだろう。
でも、落ち込む必要は無い。
人は、世界に何十億といるんだから。
前を向いて。
後ろは向かないで。