お祭りの最中のようだった。
自分を中心点として、半径数百メートルは自分の領域であると錯覚できるほど。闘争心の焼却具合である。
自分に近づく、ありとあらゆる者どもの駆逐するためのキャンプファイヤーの熱気が。
獰猛な突進をする野生のイノシシのような。
そういった熱気。温度。空気感。
それを心に感じる。
速く速く速く。
焼べなければならない。
逸る気持ちを押さえて、燃焼スピードだけを早める必要がある。
一方、辺りは静かなように思えた。
当然だろうか?
そうだ。
誰に言われたわけでもない自問自答。
意味不明な思考の暴虐。
慌てるな。
乱心具合。胡乱な目つき。
超過する集中力。溢れそうになる。
標的は一つのみである。
気を散らせる必要はない。
必要のない不要。
確認するまでもない不要。
他はどうでもよい。
その通りだ。
手首の動きを確かめる。
可動域はどうか。最大限の駆動感はどうか。
手首パーツのひねりはどうか。
それらを確かめるように、こきりと関節の音を唸らせて、精査する。
――いまだ。
彼は水音すらもなく、ポイを沈めた。
獲物である赤いヒレを透過するように、水面下ですべてを捕らえるかのように。
ポイを沈め、ひょいと持ち上げる。
7/29/2024, 7:16:46 AM