『あなたに届けたい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
オフィスビルの広いエントランス。ソファが想像よりふかふかで、気持ちがよかった。
天井が高いなー、なんて考えながらぼんやり待っていると、向こうのエレベーターから降りてくる父の姿が見えた。
「はい、お弁当。もう忘れないでよ」
父に、母お手製のお弁当が入った袋を手渡す。これでわたしの仕事は終わり。
「おう、悪かったなぁ。……というかお前、今日学校は?」
「休んだよ。お父さんにお弁当届けたくって」
もちろん、嘘だ。
今朝は、どうしてもだめだった。
学校に行こうとすると、胃がぎりぎりと痛んで吐き気がした。
原因はよくわかっている。だけど、家族には絶対相談したくない。
父は一瞬何か言おうとしたように見えた。
けれども、その言葉は飲み込んだのか、いきなりわたしの髪をくしゃっと撫でた。
「そうか。お前が届けてくれるなら、またお弁当忘れようかな」
「……やめてよ、めんどくさい」
その手は鬱陶しくて、とてもあたたかかった。
『あなたに届けたい』
"大好きです"
恋愛的な意味じゃない
尊敬の念を込めたあなたへの想い
昨日も今日も明日も明後日も
大好きでいます
会えなくなっても
あなたを思い続ける
あなたとの日々が
思い出になったとしても
大好きを伝え続けます
「あなたに届けたい」n
大丈夫。あなたは愛されているから。
いつもあなたのしあわせを願っている。
言葉もなく遠くからただ想うだけど
その愛が人を守ると
私は信じている。
私のことには気づかなくていいから
想いだけは届いてほしい。
しあわせでいて。
『あなたに届けたい』
買ったもののまったく手を付けてくれないおもちゃが家にけっこうあるというのに、ペットショップで新しいおもちゃをまた買ってしまった。ちなみに戦績はあまりよろしくない。
喜ぶかどうかわからないものをなぜ買ってしまうのか。それは、ねこがどこからか狩ってきた虫や小動物らしきものをわざわざ持ってきてくれることに通づるものがある、と思う。喜ぶかどうかは関係なく、持ってきてくれたことが自分には嬉しい。掃除は少し嫌だけれど。
新しいおもちゃと保険のちゅーるを手に家路を急いだ。
伝えたいのに伝わらない。
うまく言葉に表せない。
だけど、あなたに届けたい。
あなたがいかに素晴らしいか、
わたしがあなたにどんなに救われたのかを。
産まれてありがとう白い子いぬ本当にありがとうもし良かったらずっと一緒にいよね
遥かなる思い、歌声に乗せてあなたに届けたい。
時間を超えて、空を越えて、永遠に続く愛の調べを奏でよう。
星屑の夜に宿る願いを抱きしめて。
あなたに届けたい。
あなたに届けたい
この気持ちを誰に届けよう
好きな人? 友達? それとも家族?
そんなことするほど人生は暇じゃない
この気持ちは誰にも届かない
「ごめんね」
謝らせてよ
「ありがとう」
感謝させてよ
「また明日ね」
言っても叶わないもんね
「だいすきだよ」
言いたい
なんでどの言葉ももうあなたに届かないの
先に行かないで
置いていかないでよ
『あなたに届けたい』
あなたは何も知らない。
私があなたの前では薬を飲まないようにしている事も。
あなたの前でだけは笑って元気に振舞っている事も。
あなたの前ではどんなにお腹が痛くても「美味しいね」って食べた事も。
倒れ込みそうなほど辛い時も、泣き叫びたい時も、あなたを抱きしめて泣きたくても、そうしなかった。
あなたは私の弱い姿を見るといつも不安そうだったから。
あなたは元気なのにどうしてと言う。
あなたの前だから元気でいられただけで、目に見えるものが全てではないわ。
尽くされてるエピソードが思い付かないとあなたは言う。
そのまま何も知らないでいて。
寂しくないとあなたは言う。
私は寂しいのにね。
何故あなたは私を好きなのですか?
私はあなたが私を好きな理由が分かりません。
きっとあなたが気付く頃には、手遅れになっているでしょうか。
私がもし「辛い」と「助けて」とあなたに縋ったら、あなたは助けてくれますか?
手を掴んで離さないでいてくれますか?
背負わせたくない私と、背負いたいあなたがいるのだとしたら、きっとそれは私が勝ってしまう。
どうかあなたを好きなまま、この世を去ることが出来ますように。
考える。考える。考える。
「これを、貴方に、と」
差し出した一通の手紙を白魚のような指が宝物を扱うような手つきで受け取った。
「これ……」
差出人の名前を見た彼女は困惑の眼差しでこちらを見ている。
「私は死者専門の郵便配達員です。」
この世界の人間は、死ぬ前に一通だけ手紙を残すことが出来る。親へ、子供へ、恋人へ。誰に書くかは様々で、その最期に残す手紙を受取人の元へ確りと届けるのが、私の役目だった。
手紙を読み始めた彼女は、はらはらと涙を流して何度も何度も涙を拭っていた。
私は、その手紙に何が書かれていたのか推し量れない。差出人と彼女の関係性すら、予想がつかない。しかし、最期に手紙を書く位、彼女を大切に思っていたことは、誰の目から見ても明らかだ。
「無事に届けられましたので、私はこれで」
一礼。ありがとう、と小さな涙交じりの声を背に私は帰路についた。
私は少しだけ羨ましくなった。彼女に送られた手紙は彼女のためだけに差出人が書いた唯一無二のものだ。
考える。自分が手紙を書くとしたら。
誰へ、どんな言葉を紡ぐか。
私は、考える。
工場地帯の端、山と防波堤の間に走る道にぽつぽつと置かれた外灯が逆に薄気味悪さを演出している。
工場と道路の間にある、工業排水を流す為の凹んだ
区域は、排水処理設備の陰になっているせいか、車のライトがなければ真っ暗闇になるだろう。
ここ数日に起きた連続不審水死体事件の手がかりを掴むべく、検視官の鳶田と鑑識官の守山は、この場所に訪れた。
SNSを騒がせている『海神様』それが今回の事件の手がかりなのだが…
「ここが海神様に願いを出せるって噂になってる海。でもまあ、本当はこっち。」
探偵の目黒が山の方へ足を向けた。噂の海神様について我々をこの場所に連れてきた探偵が向かったのは、擁壁が途切れて簡単なアルミ柵を張った先の山道だった。
アルミ柵をすり抜け、人が踏みしめただけであろう山道を進むと、ぽっかりと拓けた場所に出た。
そこには、苔むした小さな小さな石祠。柱には簡素だが細工がされており、小さいとはいえ整えればきちんとした祠になりそうな代物だった。祠の中は空で、しめ縄もないが、荒れ果てた風でないのは“参拝者”がいるからだろうか。
祠のかかる石台の下には、水溜まりがあり、海水が流れ込んでいるようだった。
その水溜まりに、夥しいほどの木片が詰め込まれていた。どの板も赤黒く変色し、鉄さびの匂いに満ちている。
「海神様のおわす汀に打ち上げられた木の板に、己の血で願いを書いて黄昏時の祠に捧げる。それが海神様への正しい呪いの願い方。」
張こめた空気をゆったりと割くように目黒が呟いた。肺にこもっていた空気をぶはっと吐き出す。知らないうちに、息を詰めていたようだった。
「どうしても…届けたい想いがあったんだろうな…」
鳶田は喉を詰まらせながら、なんとかそれだけ絞り出した。
つい、祠を前に手を合わそうとした守山を目黒が止める。
「やめといた方がいい。何に祈りが届くかわからないから。」
空っぽの祠には、ナニが住んでるかわからないんだから…
「狂おしい程の想いは、届いちゃいけないところに届くこともあるんだ。」
これを、と手渡された小さな箱に首を傾げた。小綺麗に包装されたそれは日常的に貰うには気張りすぎているし、記念日の贈り物としては控えめに見える。何より軽い。
「開けてみて」
促されて、リボンを引っ張る。するすると解けていったリボンを楽しげに見つめて、彼女はうふうふと笑う。包装紙を剥がし、姿を表したのは白い無表情な箱だった。さあさあ、と先を急かされるままに蓋を開ける。
「何も入ってないじゃん」
「そう、まだ何も入ってない」
「まだ?」
彼女は目を細めたまま、細い、しかして柔らかな腕を首に絡めてきて、まつげが触れ合いそうなほど顔を近づけてきた。
「これから一緒に入れていくの。嬉しいことも、楽しいことも、嫌なことも。たくさんの思い出を貴女と入れていくの」
彼女はそう云ってピンクに彩った唇を少しだけ突き出した。強請られている。可愛らしいおねだりに応えてあげたいが、それよりもまず彼女の意図を正しく組み取れているかどうかを確かめなければならない。
「ねえ」と自身の上着のポケットからベルベットに包まれた箱を取り出した。「もしかしてわかってた?」
「あら、私の気持ち、ちゃんと届いていたの?」
「もちろん」
あなたに届けたい
あなたには、届いているだろうか?
私たち家族が、あなたさまのことを
いかに大事で、尊敬しているか。
大切な家族になってくれたことを
とても感謝していることを。
私を暗闇から救いだしてくれた
あなたに心からの感謝と愛を。
そして、何より幸せな時間に感謝を。
ありがとう あなた。
我が愛猫も、ごろごろと喉を鳴らし、
甘えていた。
にゃんざぶろう
「着払いで」
「えっ」
それまで丁寧に対応してくれていた店員さんが、ぎょっと私を見た。
それもそうだ。バレンタインチョコを着払いで送るやつなんかいない。私以外には。
「ち、着払いって、その」
可愛らしい店員さんは、笑顔を取り繕うも動揺は隠せないようで、swimming eyes。そういえば小学生の時にスイミングスクール通ってたな、あいつ。
「届けた相手に送料を請求する仕組みですが、それで宜しいでしょうか」
「よろしいです」
「は、はあ……」
「大丈夫ですよ。本命じゃないし、むしろ縁を切るために送るので」
私は本心からそう言ったつもりだったが、自分の喉から発せられた声は少し硬くてうわずっていて、やっぱり強がっているのかな、なんて他人事みたいに思った。
昨日あいつと通話した時も、私はこんな声になっていただろうか。
だってあいつが、好きな人できたって言うから。
店員さんは一番奥の引き出しをごそごそして、着払いの送り状を持ってきた。
お届け日、2月14日。私があいつに告白した日。3年前、お互い高校生の時に。
お届け先、東京都杉並区。一度遊びに行ったけど、見知らぬ住宅地にあるあいつのアパートは、どこか冷たくてよそよそしく見えて。でも部屋の中の雑多な感じは、あいつらしくてほっとしたけど。
棚には私が生まれて初めて贈ったバレンタインチョコの空き箱が飾ってあって、いつまで飾ってんのって笑ったけれど。
あの箱はもう片付けちゃったかな。
品名、チョコレート。あいつ、お酒飲んでみたらめちゃめちゃ弱かったって聞いたから、この店で一番アルコール強いやつ、度数500%くらいあるやつ、いやちょっと盛り過ぎた、本当は8%、でもこれでもめちゃめちゃ強いらしいんだ、これでも喰らえって、喰らって酔い潰れて新しい彼女とのデート失敗してしまえって。
「お客さま?」
優しく肩をたたかれる。顔を上げると、店員さんがこちらを見ている。
そこで私は、手元の送り状が雨漏りで濡れていることに気付いた。
「お品物、取っておきますので。少し休まれたらどうですか」
ああ。こんな風に、あいつに優しい言葉を掛けてもらえたらなあ。
「そこの向かいのジュースバー、おすすめですよ。よく行くんです。あっ」
店員さんはポケットを探り、他の店員さんの目を盗みながら、一枚の紙を差し出した。ジュースバーの100円割引クーポン。
「飲み終わったら、また来て下さいね」
何か言ったらまた雨漏りしそうで、私は黙ってうなずいた。
べしょべしょに濡れた送り状は文字が滲んで、このままでは届きそうになかった。
【お題:あなたに届けたい】
私は自分の思ったことや感じたことを表現することが苦手だ。というよりも、曲や映画をみたり聞いたりしたところで心が動かないので、感想を求められたとしても「ギターかっこいいと思ったよ」だとか「作画綺麗だったよね」といった冷めた返答しかできない。
こんな冷めた私がこれまで人間関係のトラブルがなくやってこられたのはきっと周りの環境に恵まれていたからなのだと思う。なので、今まで出会った人たちに感謝している。
あなたに届けたい。小説向けのお題って感じだな。
届けたいと言えば最近やたらと物流やらのドライバーが不足してるってのが言われてるな。タクシーとかバスとか。
ああいう仕事って給料どれくらいなのか知らんけど危険だし大変そうだな。
まず車だから常に交通事故の可能性があるわけだ。俺は集中力ないから運動中にぼーっとして事故る確信があるわ。ああいう仕事は絶対できない。
ドライバーってのは車とか運転が好きじゃないと務まらないよな。あるいは手足のように動かすのに慣れてないと無理だろう。
んで車の運転だけでも大変なのに更に客の相手とか積み込みとかやらなきゃいけないわけだ。考えただけで吐きそうな仕事だ。
ああいうなくちゃいけない仕事の給料はもっと高くあるべきだと思う。でも現実は芸能人やらユーチューバーの方が金持ちだという現実。
まぁあれはあれで大変だろうしリスクもあるし必要な職業ではあるんだけど心情的にむぅ、となっちゃうんだよな俺は。
あなたに届けたい
俳句
君
に
降
る
六
花
全
て
を
食
べ
て
や
る
季語 六花 りっか 雪のこと
冬の季語
あなたに届けたい
あなたは私に大好きをくれたけれど…
私はまだあなたに何も返せてない…
それならば…
私は私の感じる幸せを…
あなたに届けたい
あなたに届けたい、と思ってもためらってそのままになってしまう状況として結構多いのが、街中で見かける人にちょっとした、しかし実は本人にはかなり気恥ずかしい点があった時。
例えば、スカートの腰のところにタグが出ているとか、真ん中のチャックが結構左右にずれているとか、右だけシャツが出ているとか、ズボンが開いているとか…
バッグからものが落ちそう、持っているコートの端が地面を擦っているとかは、実害があるのできちんと伝えるけど、女性にスカートずれてますよとかは、誰かが伝えなければいけないはずだけど、自分が気恥ずかしい思いをさせてしまうのかとか躊躇うと、そのままタイミングが遅れてしまう。