『あじさい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「あじさい」
通学路にあるあじさい
まだ咲いてる途中のあじさい
友達ときれいだねと語り合うあじさい
色違いでどれも綺麗なあじさい
湿気、気温、全て最悪な時に最高な状態になるあじさい
どれもきれいなあじさい
「…暑つすぎ」
生い茂る木の葉のおかげで直射に熱されていないだけで、風無し整わないの永遠サウナ状態。
簡単に言っても簡単に言わなくても地獄。
学校裏の小高い山には、毎年紫陽花が咲く。
「綺麗らしいから見に行こうぜ!」
と友達に誘われたが夏風邪を拗らせたらしい。
近いし見舞いがてら写真でも撮っといてやるかと登ったが、太陽が張り切っているらしくこの有様だ。
風も頑張って働いて欲しい。
10分ほど経って目的の場所へ登り着いた。
すぐの距離なのにもう汗だくだ。
水を飲みながら紫陽花が咲いているであろう場所を見た。
「…マジか……枯れてる」
時期が少しズレてしまったのか紫陽花は花が茶色く萎れていた。
これまでの暑さを乗り越えて来た為、ショックだったがこれ以上いても仕方がないと帰りに足を向けた時、足元の枯れた紫陽花の上にアマガエルが飛び乗り、少しだけ雨粒が残っていたのか体が水を吸っていた。
枯れた花と濡れた緑色がなんだか綺麗でおもむろに写真を撮る。
「…これはこれでいいかも」
猛暑に近い暑さの中で少しだけ涼しい息が吸え、また帰りに足を向けた。
“あじさい”
お題:あじさい
タイトル:回り道?
先日、乗るバスを間違えたので家までいつもと違うバス停から歩いて帰った。
道中、一軒家の庭にきれいなあじさいが咲いていた。
あじさいって熱と乾燥に弱いらしいですね。
私は雨が好きじゃないけどあじさいのために一雨降らないかなー。
蛙の声は
雨乞いの歌
濃い靄が山を覆って
灰色の世界
晴れ間を探して
歩いてみても
憂鬱になってしまいそうだ
光が見たい
鮮やかな色彩が見たい
青と紫
目立たない色
普段なら埋もれてしまいそうな
その2色に
心を奪われる
赤のような情熱は無い
黄のように鮮やかでも無い
緑のような温かさも無い
ただ儚く、凛とした2色
灰色の世界
だからこそ輝く
「悪くないな」
可愛い雨傘を買いに行こう
お洒落な雨靴を履いて出掛けよう
ただそこに在る
美しい色彩に出逢うために
──────────────────あじさい
あじさい
家族と顔を合わせるのも、家に帰るのも面倒。
仕事終わりに軽く食べて、そしていつものバーへ。
ゆったりとした、音楽が流れる店内で、何となくいつも座るカウンター席に向かう。
流れるように注文をして、強めのウイスキーを頼む。
帰りたくないと、そう思う日もある。
けど、帰らなければ妻がきっと激怒するし、娘の冷ややかな目もだいぶキツイ。
少しは優しくして欲しい。
仕事もキツイし、何もいいことがない。
とりあえず酒で誤魔化す日々。俺の癒しは一体どこに消えていったのだろう、と思う。
結婚当初は優しい妻だったのに、どうしてこうも変わってしまったのか。
勢いで二杯目を頼み、これで終わらせて帰ろう、とそう決意した。
していた、んだけど。
バーともなれば知らない人達と楽しく話をすることも、よくある事だった。
同じような境遇の男性のこともあれば、優しい女の人と話すこともあって。
そう、日本人って身内に厳しくても他人には優しいよなって、そう思う。
これっぽっちも、そんなつもりはなかったのに、アルコールの力とストレスは怖いと思う。
気付けばホテルなんかに入ってたりして、お互いに気楽な感じで話せて、そう、とても気楽だった。
頭の中でこれって浮気、じゃなくて不倫になるのかな、と冷静な自分が言うのに何も止まらなかった 。
☆
少しの二日酔いと、家族への罪悪感と、絶対に妻に怒られるのだろうという恐怖が全部一気にやってきて、死にそうな気分で帰路に着いた。
最低な気分で帰った家では特に何事も起きなかった。
明らかに顔色が悪かったのだろう。過去にないほどに妻に心配された。
そして俺は一夜の過ちとして、何も無かったことにした。
それが精神衛生上、いちばん良いと、今でも俺はそう思う。
あじさい
花言葉、浮気。
ある年の母の日。
相変わらずなカーネーションや、ミニ薔薇は、もうなんとなく飽きてつまらないかなと考えていた。
そー言えば一昨年の母の日は、デリカシーのない義母から
『アンタ達にもらったカーネーションの鉢植えは、3日で枯れた』と言われた事があったな。面白い事を言って笑わせようとしてるつもりなのか、声高らかに笑ってそう言った。あの人は悪意はないが、考えてモノを言わない所が多い。
母の日専用に店頭で売られていたカーネーションの鉢植えは、沢山の花達の中から、1番蕾を多くつけ、葉もイキイキとしていた花。花屋を営む店主が、
『あ!これは良いのを見つけたね!これは長持ちするよ!』と自信満々に応対してくれたのに。3日で枯れるのはアナタの育て方がいい加減だったからでしょ?!
いくら買ったばかりの花でも、さすがに母の日の季節ともなれば、毎日水やりをしなければ3日で枯れますとも。
この人には、生き物はあげられない。
そーね。靴下でいい。
怒りを超えて呆れた一昨年の母の日を忘れる事などない。
何をあげてもたいして喜び感謝してくれる人ではない。靴下でさえ惜しくもなる。
自分の母には紫陽花をプレゼントした。
新しい配合の紫陽花で、花びらの形が変わっていて華やかな紫陽花だった。
花が大好きな母は、枯らす事など絶対になく、常に庭を花で埋め尽くしたい人。
花を植えるととても綺麗だから、見に来なさいと呼び寄せる。
あんなに喜んでくれると、何をあげても良かったなと思う。
今年は少し遅ればせながら、リクエストの黄色いカラーと濃い赤のカラー2つを上げる事にした。
楽しみが溢れてるのか、まだ??と何度も聞かれる。もう少しで届きますよ。
毎日ワクワクして待っている様子。
あの年の紫陽花はもっと大きくなり、今もまだ手入れをしてくれている。
あげた甲斐があったなと思う。
全然タイプの違う母2人を見て、染み染み思う。人の気持ちを考えて見せる姿の違いは、すべて自分に返ってくる。
人がしてくれた事を大切にすれば、その人からも大切にされる。またお返ししたくなる。この繰り返しが、信頼関係を築き、よい関係になる。
誰かが自分にしてくれる事は、自分のために時間も労力も遣って自分の事を思ってしてくれた貴重な瞬間。
言葉ひとつで簡単に崩す事も出来てしまう。言うべき言葉はどんな言葉なのか。
咄嗟に適当な雑な言葉しか出せないのは、経験値の低さからくる情けない姿。
『学のない姿』を曝け出すしか出来ない人は人間とは呼べない。何故なら、人と人の間で学びのない人だから。
本日のテーマ『あじさい』
そのお題を前に、俺は部屋の中で頭を抱えて思い悩んでいた。
「あじさい…あじさいかあ…」
数十分ほど考えてみたものの、『あじさい』のテーマに関するアイデアがなにひとつとして降りてこない。当たり前である。
俺には誰かと一緒にあじさいを見に行った思い出などないし、あじさいを見て美しいなあと思う感性もないし、そもそもあじさいってどんな感じの花だったのかすらネットで画像検索するまで忘れていたのだから。そんな俺に『あじさい』について思ったことを書けと言われても、そんなの読んでもいない本の読書感想文を書けと言われているのと同義である。はっきり言って無茶振りだ。
「だめだこりゃ」
本日のテーマについて考えるのを放棄した俺はベッドの上に寝転がると、大人気携帯ゲーム機の電源を入れた。
「うわ…これは酷いな…」
買うだけ買って満足して、いっさい手をつけていない大量の積みゲーがずらっと並んでいるライブラリーを見て呟く。気分転換のつもりでゲームをやろうと思ったのに、ゲームを始める前の段階でげんなりしてしまった。
(ダルいけど積みゲーは少しずつでも消化していかないとなあ…とりあえず、これをやってみるか…)
そう思い、パッケージにロボットが描かれていること以外は内容のよくわからないソフトを起動する。
タイトル画面に浮かび上がってきたNew Gameの項目に選択カーソルを合わせてコントローラーの決定ボタンを押すと、早速ゲームが始まった。
昔の俺なら新しいゲームを始める時は気分が高揚したものだが、今となってはちっともワクワクしない。加齢によって感受性がすり減ってしまったのか、あるいは疲れているのか…それは分からないが、少し眠いのだけは確かだった。
あくびしながらボタンを連打してオープニングムービーとキャラクタークリエイトの画面をスキップすると、ゲームの進行を手助けしてくれるナビゲーターと思わしき女性が俺に語りかけてきた。
やはりボタンを連打して会話をスキップしたので、女性に何を言われたのか断片的にしか理解できていない。たぶん、目の前にあるロボットを改造して襲ってくる敵と戦え!みたいな話、だと思う。
とにかく…右も左も分からない時は勝手を知る人物の指示に従うのがセオリーである。そういうわけで、女性に言われた通りロボットを改造してみることにした。
ここがそのロボットを改造できる場所ですよ、とでも言わんばかりにナビゲーションアイコンが表示されているところにあった端末を調べてみると、文字入力用のウィンドウが自動的に開かれた。どうやらカスタマイズに移る前に、俺の乗機となるロボットに機体名をつけろということらしい。
「そう言われてもなあ…」
実家で飼っていた猫に、ニャーと鳴くからにゃあ、カメには亀吉、ハムスターにはハムハムと名付けてきた絶望的ネーミングセンスの持ち主の俺に、急にそんなことを言われても困ってしまう。
俺は悩んだ。先刻、本日のテーマの『あじさい』について考えていた時のように…
そこでハっと閃いた。ここにきてようやくアイデアが降ってきた。
「そうだ、あじさいだ!」
俺は愛機となるロボットを『あじさい』と命名することに決めた。その時、ふと思った。
(……なんだろう、なんか絶妙にダサいぞ。あじさいて)
戦闘用ロボットというより、耕うん機とかトラクターなどの争いとは無縁な農機具を連想させる名称に近い気がする。
なんだか弱そうだ。『あじさい』に搭乗して出撃したら、根拠はないが、簡単にやられてしまいそうな予感がする。
どうにかしなければいけない。
(横文字にしてみるか…? あじさいって英語でなんていうんだろ)
タブレットを使ってネットで検索すると、すぐに答えが見つかった。あじさいの英語読みはhydrangea(ハイドレンジア)というらしい。
「うん、いいじゃないか」
入力画面にハイドレンジアと打ち込んでロボットに名前をつける。ついでにロボットのカラーリングも、あじさいを思わせる淡い紫色で仕上げてみた。なかなか良い感じだ。
そして……
「ふう……」
やりきった、という表情でゲーム機の電源を切る俺であった。
本日のテーマ『あじさい』
こんなのでいいのだろうか…そんな思いが頭をもたげたが、ゲーム画面を見続けたせいで目がしょぼしょぼしていたし、なにより眠くてしかたなかったので、まあいっか…と自分に言い聞かせて眠りにつくことにした。
あじさいは植わっている土で色が変わるという。
花も環境で変わってしまうのだ。
何事にもぶれず、一定に。
あまりに遠い夢かも。
あじさいの花が咲いているよ
そういうことに気づくのはいつもきみの方だった。
自分はそんなきみの言葉を聞いてやっと季節の移ろいを感じるくらいには鈍感な自覚はあった。
「ね、あじさいの花ってどうして色違うか知ってる?」
それは流石にきいたことがあったから頷きを返す。
「たしか、土によるんだよな。アルカリと酸…?」
さすがに知ってたかぁ、
なんて、うろ覚えの知識にすら笑ってくれる。
じゃあ、あじさいの花言葉は?さすがにこれは知らないでしょ
【思いついたら地味に続けていきます!】
2024.6.15追記
「紫陽花の花言葉…」
「わからないんでしょー?教えてあげよっか?」
楽しげに言うきみの表情があまりにも訊いて訊いてって語るから思わずニヤける口元に手を当てて隠す。
「移り気、浮気、冷淡…は聞いたことある」
そのまま昔何かで知った知識を引っ張り出すと、そういう捻くれたの覚えてるのきみっぽいよね!と無邪気に笑われた。
悪気はないんだろうが、地味に傷つく。
「そういうのもあるけど、あじさいの花言葉はそれだけじゃないんだなー。知りたい?」
「後で調べるからいいよ」
ニヤける口元と思わず可愛いと思ってしまったことを誤魔化したくて、突き放すような言葉を吐いてしまう。
「じゃあ、いまから言う花言葉合ってるか調べてよ。私はきみに教えたい、きみは自分で調べたい。これならお互い嬉しいでしょ」
雨の日に紫陽花の花を見ると、どんよりした空気の中で、キラキラと輝いて見える。
それは、雨が降りかかっているからなのか、紫陽花そのものの色が綺麗なのかどちらかは分からない。
僕はこの紫陽花のように雨の中でも、
きらきらと美しい姿をしているものが好きだ。
#あじさい
『あ!見て見て、あじさい!』
学校の帰り道、急に君が大きな声で叫んだ。
『私あじさい好きなんだよね〜、綺麗じゃない?』
こちらを振り向き笑顔で話しかける君。
「…確かによく見ると綺麗だね」
『でしょぉ?』
そう言われふと顔をあげると、笑顔が素敵で僕が大好きな君がいた。
「…君の笑顔見るの、僕好きだな。」
素直な気持ちを伝えると、数秒後には顔を真っ赤にした君がいた。
……ああ、もう、僕は自分が思っているより君に惚れ込んでいるらしい。
お題『あじさい』
母とは長いこと会ってない。父が他に女をつくって出ていって以来、家は居心地が悪く、母は常に情緒不安定だった。
子供のころはなんとか母を元気づけようと頑張っていたが、年が経つにつれ疎ましくなり、成人して仕事を見つけて出ていった。それ以来帰っていない。
反抗期のそれとは、違う。父がいない寂しさから僕に「どこにも行かないで」とすがるか、父に容貌が似てきた僕に暴力をふるうかのどちらかだった。
それが今、どうしてか帰郷している。僕と同郷の友人が母の様子を知らせに来たからだ。
「お前の母さん、倒れて今寝たきりだって」
母とは随分疎遠だ。もう長くないかもしれない。そう思って、列車に乗って都市部からかつて住んでいた村まで行き、僕は入口で足を止めた。
黒い傘をさしながら、通路の両側に咲く青や薄紫のあじさいを見て、きれいと思うより気が重くなった。
雨ばかり降る大嫌いな故郷だ。そこのあたりで何度母に投げ飛ばされて泥まみれにされただろう。
いやな記憶を頭からぬぐいさりながら実家へ続くぬかるんだ道を行く。
白い家の扉を開けると、母が眠っているのが見えた。僕は傘を傘立てに置いて母のもとへと向かう。コートを脱がないのは、様子を見たらすぐ帰るためだ。
「母さん、帰ってきたよ」
母は、目を見開く。
「あ、あな……あなた……」
母は、言葉がおぼつかない様子だった。思ったよりも状況はかんばしくない。昔のようにすがられたり、暴力をふるわれる心配はないが、母の様態を見て複雑な気持ちになる。
ふと、母がふるえる指でどこかを指した。そちらに視線を向けると、テーブルの上に花束が置かれている。たしか、緑から白へと変色するアジサイ――アナベルだったか。
「これを僕に?」
母に問いかけると、よわよわしく頷いた。アナベルの花言葉は、知ってる。とてもきれいで不思議な花だから覚えていた。
『辛抱強い愛情』
僕はなんともいえない気持ちになった。愛してくれていたのか、母のことだから「あんたがいなくなったから私は」とすがっているのか、言葉を話すことが難しい今はもう分からない。
だけど、僕が帰ってくると聞いたからわざわざ用意してもらったのだろう。
「ありがとう、母さん。また来る」
僕は花束を抱えて家を出る。黒い傘を広げて、グレーの空を見上げる。結局、僕は母さんをほうっておくことはできない。
アナベルの花言葉には、もう一つある。『ひたむきな愛』、僕は母さんからの愛情を信じることにしようと決めた。父がいなくなる前、ただ僕に優しかった遠い遠い記憶に想いをはせた。
色えんぴつでいちど描いたことがあって、そのまま
月ごとの花々を担当することになって、
6月のスケッチはあじさいだったのですわ
複雑に集まったカタチがイヤなぁと思って、
ちいさなしかくの集合体に再解釈することにした
『あじさいは小さなしかくの集合体である』
そのあとで微々調整しては、花らしくまとめてやればいいんだよと、それらしい色も手に取って水紫青紺…。
以来視界には入っても見えなくなって今日この日、また!
ひらがな4文字でちょこんと座っていらっしゃる
あんなに見つめあって久しいが変わらずに、
どこの花よりも雨と結びついて離れずに、
寒色の、ともだちはカタツムリと思っている
ほんとうにあじさいをみたことはないのかも
ほんとうにあじさいをみたことはないのかも
きっとしかくい集合体なんかでも、本当はないだろう
晴れるような、きいろい紫陽花ってあるかしらぁ。
アジサイは
まだまだ咲かない
寂しいね
学校に
アジサイ植えて
いないんだ
だからちょっぴり
寂しいものだ
アジサイ、小学校には植えてあったんですが
中学には植えてないんですよね……寂しい。
「なんだい、これは」
団地の近くにある咲いていた花は、普段生えているのとは全然様子が違くて思わず僕はそんな独り言を言ってしまった。
いつもはパステルカラーの色とりどりな花が咲いている花壇が、別の種類と思われる青色の花で覆われていた。
一本一本咲いている、というよりも沢山の花が集合で咲いているようなもの。どこでも見たことがなかった。
「⋯⋯あれ? 演奏者くんじゃん」
軽快な声が彼女のものであることは確認しなくとも明らかで、だから僕は尋ねたのだ。
「⋯⋯これは、なんだい?」
「あじさい」
そのままこちらに歩いてきたのか、隣に立った彼女はそう言った。
「⋯⋯あじさい」
「地面の成分? とかによって花の色が変わるんだって」
「なるほど」
「アルカリ性だとピンク、酸性だと青だっけ。よく知らないけど」
彼女はそう言って笑った。
「⋯⋯じゃあ、ここの地面は酸性なんだね」
「まぁ死体って酸性らしいしね」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」
「じゃ、ボク、住人の見回り行ってくるね」
彼女は平然と言って僕の目の前から去っていく。
『死体って酸性らしいしね』って言ったか? 死体って何の話だ?
まさか彼女はこの下に死体が埋まってるとでも言いたいのか⋯⋯?
『あじさい』
あじさいが枯れても落ちずに
しがみついているように
あなたがいなくなっても
わたしは
あなたとの思い出を手放せないでいる。
梅。桜。藤。菖蒲。紫陽花。
美しいものを愛でるのが好きな貴女は、よくご伴侶と花を見に出掛けられます。
そうやって、お二人の時間をゆっくり穏やかに、幸福に過ごしてください。きれいだねとお互い微笑みながら、その静かな幸せを味わって生きてください。
俺たちは、貴女に幸福をもたらせます。
けれど、味わってくださることがなければ、どんな幸福もそこに在る意味がないのです。
2024 6/14(金)
今日はついてない。
嫌なことの連続だ。
目の前には梅雨のシンボルが咲いている。
普段の見え方は、雨に強い、綺麗な花。
でも今日は、そんな紫陽花ですら
無情に降りしきる雨に打ちひしがれ苦しんでいるように見える。
「……お前さんも辛いかい」
勝手に紫陽花を仲間にした私は、
それきり項垂れるように地面に視線を落として帰路についた。
#29 あじさい
あじさい
あじさいは雨が似合う花
花言葉色々あるけれど…
移り香な魅力のある花
あじさいの花になるには
私自身もっと人生経験を積まないと
素敵な花ですね。。。
薔薇には棘がある。
菊の花粉はアレルギーを起こす。
そして、あじさいには毒がある。
誕生日祝いに、彼女が手作りのチーズケーキを振る舞ってくれた。
琥珀色に焼かれた表面にフォークを通すと、中からしっとりとしたクリーム色の生地が姿を現して、チーズ特有の豊かな香りが漂った。
溢れる唾液を飲み込んで、私はそれをゆっくりと口元へ運ぶ。
「……これは!」
上品な甘味と濃厚なチーズの香りが口中に広がって、思わずため息が溢れてしまう。
なんだこれは、美味すぎるぞ。
チーズの香りがふんわりと鼻を通り抜けていくたびに、とても優雅な気持ちになる。
「しかも、この表面に乗っている紫色の花びら。ほどよい苦味がケーキの甘味へのアクセントとなっていて、全く飽きがこない」
彼女は私がケーキを食べる様子をじっと眺めていたが、目を合わせると、嬉しそうに目を細める。
「ほんと?よかった。頑張って作った甲斐があったわ」
このケーキを作るのに、一体どれだけの時間を費やしたのだろうか。
こんな素敵な女性に巡り会えた私は、本当に幸せ者だ。
うっとりとしたケーキの味わいに酔いしれた私は、
その幸福感とともにゆっくりと目を閉じた。