「なんだい、これは」
団地の近くにある咲いていた花は、普段生えているのとは全然様子が違くて思わず僕はそんな独り言を言ってしまった。
いつもはパステルカラーの色とりどりな花が咲いている花壇が、別の種類と思われる青色の花で覆われていた。
一本一本咲いている、というよりも沢山の花が集合で咲いているようなもの。どこでも見たことがなかった。
「⋯⋯あれ? 演奏者くんじゃん」
軽快な声が彼女のものであることは確認しなくとも明らかで、だから僕は尋ねたのだ。
「⋯⋯これは、なんだい?」
「あじさい」
そのままこちらに歩いてきたのか、隣に立った彼女はそう言った。
「⋯⋯あじさい」
「地面の成分? とかによって花の色が変わるんだって」
「なるほど」
「アルカリ性だとピンク、酸性だと青だっけ。よく知らないけど」
彼女はそう言って笑った。
「⋯⋯じゃあ、ここの地面は酸性なんだね」
「まぁ死体って酸性らしいしね」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」
「じゃ、ボク、住人の見回り行ってくるね」
彼女は平然と言って僕の目の前から去っていく。
『死体って酸性らしいしね』って言ったか? 死体って何の話だ?
まさか彼女はこの下に死体が埋まってるとでも言いたいのか⋯⋯?
6/13/2024, 3:34:33 PM