紫乙

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ある年の母の日。
相変わらずなカーネーションや、ミニ薔薇は、もうなんとなく飽きてつまらないかなと考えていた。

そー言えば一昨年の母の日は、デリカシーのない義母から
『アンタ達にもらったカーネーションの鉢植えは、3日で枯れた』と言われた事があったな。面白い事を言って笑わせようとしてるつもりなのか、声高らかに笑ってそう言った。あの人は悪意はないが、考えてモノを言わない所が多い。

母の日専用に店頭で売られていたカーネーションの鉢植えは、沢山の花達の中から、1番蕾を多くつけ、葉もイキイキとしていた花。花屋を営む店主が、
『あ!これは良いのを見つけたね!これは長持ちするよ!』と自信満々に応対してくれたのに。3日で枯れるのはアナタの育て方がいい加減だったからでしょ?!
いくら買ったばかりの花でも、さすがに母の日の季節ともなれば、毎日水やりをしなければ3日で枯れますとも。

この人には、生き物はあげられない。
そーね。靴下でいい。
怒りを超えて呆れた一昨年の母の日を忘れる事などない。
何をあげてもたいして喜び感謝してくれる人ではない。靴下でさえ惜しくもなる。

自分の母には紫陽花をプレゼントした。
新しい配合の紫陽花で、花びらの形が変わっていて華やかな紫陽花だった。
花が大好きな母は、枯らす事など絶対になく、常に庭を花で埋め尽くしたい人。
花を植えるととても綺麗だから、見に来なさいと呼び寄せる。
あんなに喜んでくれると、何をあげても良かったなと思う。
今年は少し遅ればせながら、リクエストの黄色いカラーと濃い赤のカラー2つを上げる事にした。
楽しみが溢れてるのか、まだ??と何度も聞かれる。もう少しで届きますよ。
毎日ワクワクして待っている様子。

あの年の紫陽花はもっと大きくなり、今もまだ手入れをしてくれている。
あげた甲斐があったなと思う。

全然タイプの違う母2人を見て、染み染み思う。人の気持ちを考えて見せる姿の違いは、すべて自分に返ってくる。
人がしてくれた事を大切にすれば、その人からも大切にされる。またお返ししたくなる。この繰り返しが、信頼関係を築き、よい関係になる。

誰かが自分にしてくれる事は、自分のために時間も労力も遣って自分の事を思ってしてくれた貴重な瞬間。
言葉ひとつで簡単に崩す事も出来てしまう。言うべき言葉はどんな言葉なのか。
咄嗟に適当な雑な言葉しか出せないのは、経験値の低さからくる情けない姿。
『学のない姿』を曝け出すしか出来ない人は人間とは呼べない。何故なら、人と人の間で学びのない人だから。

6/13/2024, 4:12:01 PM