薔薇には棘がある。
菊の花粉はアレルギーを起こす。
そして、あじさいには毒がある。
誕生日祝いに、彼女が手作りのチーズケーキを振る舞ってくれた。
琥珀色に焼かれた表面にフォークを通すと、中からしっとりとしたクリーム色の生地が姿を現して、チーズ特有の豊かな香りが漂った。
溢れる唾液を飲み込んで、私はそれをゆっくりと口元へ運ぶ。
「……これは!」
上品な甘味と濃厚なチーズの香りが口中に広がって、思わずため息が溢れてしまう。
なんだこれは、美味すぎるぞ。
チーズの香りがふんわりと鼻を通り抜けていくたびに、とても優雅な気持ちになる。
「しかも、この表面に乗っている紫色の花びら。ほどよい苦味がケーキの甘味へのアクセントとなっていて、全く飽きがこない」
彼女は私がケーキを食べる様子をじっと眺めていたが、目を合わせると、嬉しそうに目を細める。
「ほんと?よかった。頑張って作った甲斐があったわ」
このケーキを作るのに、一体どれだけの時間を費やしたのだろうか。
こんな素敵な女性に巡り会えた私は、本当に幸せ者だ。
うっとりとしたケーキの味わいに酔いしれた私は、
その幸福感とともにゆっくりと目を閉じた。
6/13/2024, 3:23:18 PM