『あじさい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「紫陽花好きだなー」
近所の家の庭に咲いているのを見て彼女がいう。
『こうもたくさん咲いてるとやっぱ綺麗だね確かに。』
僕たちはコンビニに行くついでに散歩している。
いわゆる良い休日だ。
たまには家でまったりみたいな、そういうやつ。
「この梅雨時に咲く花だからさ、
なんか良いよね、頑張ってる感じが。」
私も頑張らなきゃー!!
と繋いでる手をブンブンする。
『ははっ、ちょっと!笑笑』
ね、今日良い休日だよね。お花とか眺めちゃったりしてさ。
さぁさ、
『夜ご飯は何作ろうか?』
「ハンバーグ!!」
走れー!!とお家まで競争と言って急に走り出した君を僕は笑いながら追いかけた。
その薄紫色を目にするたび、記憶の底に滲む声がある。
──金魚鉢にあじさいを入れると、触れられる世界のすべてが、ここにあるんだって気持ちになるの。
昔、そんなことを繰り返しては、懲りずに母に注意されていた姉の年齢を追い越して、もうどれくらい経つのだったか。
(あじさい)
梅雨の時期に咲く紫陽花。
いろんな色があるね。
パッと咲いて綺麗だ。
「君は紫陽花のような人だね」
昔言われた言葉。
ずっと褒め言葉だと思っていたけれど、数年越しにとんだ思い違いだとわかった。
あれの真意は「君は八方美人のくせに、本心は絶対に誰にも見せないね」だ。
四方八方に花開いているように見せているあの花びらのようなものは、本当は萼だという。
そして皮肉を言われた花びら(誰にも見せない本心)は、萼に守られるようにして中心にある集合体のひとつひとつだ。
花言葉は『移り気』『無常』。
(無常ね。自分に振り向いてくれなかったからって、遠回しに嫌味言うかね?)
カフェの窓際の席で肘をつきぼやく。
降ってきた小雨が外の紫陽花の花々を叩く。
「きっとそういうトコが、アンタに振り向かなかった理由だわ」
青い紫陽花は静かにこちらを見ている。
/6/13『あじさい』
好きとか嫌いとか、思ってるならいいでしょ。
ライクでもラブでも関心があるわけだし。
好きも嫌いもない、どうでもいい人なら
Lの文字すらもないくらい
何の感情も動かされないの
/6/12『好き嫌い』
真っ赤でもなく、真っ白でもない。
周りに染まるけど、自分の色を持っている。
遠くから見るとダイナミックなのに、
近くで見ると可憐。
雨が止んで日が差すと、色っぽい。
桜よりは、もてはやされない。
敵を作らないし、あざとくて一番モテるタイプ。
あじさいが咲く季節になった。
あじさいを漢字で書ける?
私は、書ける。
お父さんに教えられたから。
お母さんには教えられてないけど。
クロール
深夜のプールに飛び込む
無数の泡が昇っていく
三日月が波の中に砕け散る
水の音以外に何も聞こえない
不安は存在しない
瞼を閉じる
淡い淡い闇が降りてくる
クロールをすると波が顔を洗う
無心に泳ぎ続ける
夜風が荒れた心を慰める
インディゴブルーの世界に入っていく…
お題 紫陽花
紫陽花は土壌の性質によって色が変わると聞きました。もしも紫陽花が私たちの心に生えていたとしたら、あなたの紫陽花は、今何色だと思いますか?
「紫…とかじゃないか?」
「普通ですね」
幸薄そうな女性は、真っ白な手を口元に添えて上品に笑っている。
「紫陽花なんて、他になんの色があるんだ?」
「何色でもいいんですよ、思いつく限りの色で描くんです」
「そうか、それなら僕は本当は…」
その時、カツンと音がしてクレヨンが落ちたのに気がついた。先生がそれをゆっくりと拾い上げるが、残念そうな顔をしている。
「赤のクレヨンは使えなくなっちゃいましたね……」
教室の外ではきゃあきゃあと園児が騒いでいて、ついに目の前の女性も「ちょっと待っててくださいね。待っている間に今ある色で塗っておいてください」と俺を置いて出ていった。
この教室には俺しかいない。しかしシーンと静まり返っているかといえば、先ほどから周りの園児がうるさくて敵わない。
「先生早く帰ってこないかな……」
先生に恋心を抱くなんてことが、1度はあっただろう。俺もきっとそうだ、あの先生……美恵先生に淡い恋心を抱いている。
「ごめんなさい!遅くなっちゃいました!紫陽花は上手に……っ!」
机に突っ伏していた俺に話しかけた先生の声が聞こえた。俺がゆっくりと顔を上げると、怯えた瞳の先生と目が合う。あぁ、なんでそんな目をしているんだろう……。せっかく、せっかく綺麗に塗ったのに……。
紫陽花の書いてある紙には赤色がぽたり、ぽたりと滴っていた。
「先生!患者さんが自傷行為を!出血が酷い状態です!」
先生は意味のわからないことを言いながら教室から出ていった。
先生に恋をしている俺の紫陽花は、赤色でなくてはいけなかったのだ。
ざあざあ、雨が降る。
視界は単色に染まり、耳は白色雑音に包まれる。
そんなぼくの世界に現れる、鮮やかなきみ。
花のような歌声、眩いほどの青紫。
ぼくの中に色が現れる。
「……あら、またあなたなの」
「何度でも」
ぼくは、やはりきみが。
「ぼくの傍に居て欲しいのです」
「いいえ、だめよ、だめ。わたしはわたし以外の何者にだってなりたくないの」
「どうしても」
「どうしても。それとも、いっそ、ねぇ、」
きみが、顔を寄せる。
「わたしを食べて、しまってみる?」
—————
あじさい
彼から紫陽花を送られた時、失望してしまったの。
ジメジメした空気の中で彼はソワソワ
どうしたの?って聞くとフワっと現れた紫陽花の花束
嫌になってしまった
僕の気持ちだと言われて
知らないわけじゃなかった
紫陽花の花言葉
彼はおろおろしながらピンクの紫陽花を渡してくれた
大丈夫 ちゃんと調べたよ。
私の頬も紫陽花みたいに染まった
#あじさい
紫陽花
日頃はほんわかした印象の
紫陽花が、雨露で艶っぽく
色気が出るところがステキ。
そういう二面性のある人、
モテるよね。
あとは、かすみ草タイプと
百合、向日葵もステキ。
薔薇タイプは……
近付く際は刺に要注意だな。
#48 あじさい
風は弱く雨も止みかけ、しっとりとした天気の中。
私たちは、紫陽花を見に来た。
「ここの紫陽花は、いつもキレイだよねー」
「うん、色も種類もたくさん植えてあるね」
「色は、土壌の酸で溶けたアルミニウムと紫陽花の中のアントシアニンが反応すると青くなるんだってさ」
「ブルーベリー…」
言われてみると、なんとなく色味が似てるような。
「…食べたら目が良くなる?」
「あー、毒があるって言うから食べられないんじゃないかな。ほら、カタツムリとかいないでしょー」
「…確かに見当たらない」
勝手にイメージだけで居るもんだと思ってた。すまん、カタツムリ。今後見かけても紫陽花の葉には連れて行かないよ。そもそも触れないけど。
「カタツムリは、コンクリートを食べるからブロック塀の方が見つかると思うよ」
振ったつもりはなかったが、いつも通り情緒のない雑学に付き合いながら足を奥へと進めていく。
「すごい…」
青、紫、ピンク、たまに白。緑に囲まれた色彩は絵画のよう。
でもそれは、完全に人の手でコントロールされたものではなく、努力と自然の駆け引きによって出来上がったもので、だから来年はきっと違う色合いになっているはずだ。
感じ入った私に珍しく空気を読んだのか、彼も黙っている。と、思っていたのだが。
「人は、この色が移り変わるのを見て、無常って言ったり移り気って貶したり、逆に高嶺の花だと持ち上げたりしたんだってさ」
どうも次に話す雑学を考えていただけらしい。
「ふぅん、そうなんだ…」
だがしかし、無常か。
この切ないような気持ちは、それを感じているのかもしれない。
私は、なんとなく差していた傘を閉じて、
隣に立つ彼の傘の中に入った。
彼は何も言わずに傘を私の方に寄せてくれた。
別に、傘を持つのが疲れただけだし。
こんな時に限って用意していた言い訳の出番がない。
相変わらずの彼にため息をつくフリをして、
私は火照りを逃した。
「顔赤いよ?」
「気のせいじゃないですかね」
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(#25、#18の二人…のつもり)
以前みなさまの投稿の中で、アジサイの花を題材にしたものを読みました。
その方の書かれた通り、花が咲いているところを見たことなかったので、少々足を止めて観察しました。
建前で武装された小さな本音のような、
ひっそりと、でも確かに咲いていました。
「あじさい」
ザーザー
1年ぶりに聴く。
私にとっての目覚ましであり、久しぶりの声。
綺麗な姿だと、人は私を褒める。
こんなにもグチャグチャして寂しいと思っているのに。
動くことも出来ない、話すことも出来ない。
誰か私を見つけて欲しい。
テーマというか今日の表題が紫陽花なので…
たまたま見つけたんだけどね…最近流行っている揺れるンブラ…これを見てちょっとエロい気持ちになったときに偶々小脇に紫陽花がたくさん咲き乱れてる…そこに目を移すと一気にすけべな心が完全消去される。
これはすごい発見だと思った。
以上。
紫陽花の花言葉には、浮気という意味があるそうだ。紫陽花は、雨の中でこそ、美しく雪洞の灯りのように咲き誇る。
そんな美を持つ儚い存在に、一体どんな想像をふくらませたら「浮気」という意味が付随されるのだろうか。激おこである。
「あじさい」
雨にそぼるあじさいをみて
えもいわれぬ情緒を感じるボク。
まだちょっと自分をあきらめるには
早いかもと思いなおした今朝の出来事
あじさい
一昔前、あじさいはまさに6月の花だった。
令和の今、母の日の贈り物としても人気がある。
梅雨入りが毎年早くなっていくにつれて、あじさいの時期も早くはじまるようになった。
新種が増えて、より華やかになって。
だけど、たいていの人が花だと思っているのは、形を変えた萼で、花弁ではない。
君が本当に咲かせている花を私はちゃんと観ているのだろうか。
本当の君は強かで、たくましいね。
あじさいと愛は似ている
暗い空から
降る雨に
打たれて なお美しく咲く
心に降る雨に
あじさいのような
花を咲かせ
ひっそりと雨のなか
輝いて
あじさい。あざさいって昔はその辺で見かけた気がするけど大人になってから見た記憶がないな。
住んでる場所が変わったのが一番の理由だろうけど、なんというか大人になってからは周囲の景色を楽しむ心の余裕がなくなったのも理由の一つな気がする。
あじさいってどんな花だったかな。なんかカタツムリがいそうなイメージがある。なんでだろ。雨の日の花の印象があって、雨といえばカタツムリ、みたいな連想してるのかな。
カタツムリといえばエスカルゴを食べたことないんだよな。一度食べてみたいものだ。なんかサイゼリヤで食べられるというのをなにかで見たけど近くにサイゼリヤないんだよな。
そもそも一人で外食ってなんか行きづらい。それに外食は金がかかるからな。結局金よ。資本主義の現実がここにある。
つっても行こうと思えば余裕で行ける程度の値段だからな。借金があるとかではないし単に俺がけちってだけの話だ。
とはいえそこまで懐に余裕がないのもまた事実。世の中大抵のことは金で解決するのにこの程度のことも解決できない人間も日本にいるんだよ。
格差社会ってやつだな。嫌な世の中だよ。
雨が絶え間なく降ってくる季節がやってきた。
じめじめとした空気を全身で感じながら、僕はお気に入りの場所――あじさいの葉の上に身を寄せる。
ほのかに甘い香りを漂わせるあじさいの香りを嗅ぎながら、僕はぼんやりと空を見上げた。
すると僕の隣にやって来た子供のアマガエルが、喉を鳴らしながら「よぉ」と声をかけてきた。
「おいっす。今日もご機嫌だね、カエルくん」
「まぁね。カタツムリくんは、相変わらずボンヤリしてるようで」
僕らは黙って灰色の空を見上げた。
どれほど見上げ続けていたのか――気がつくと、土砂降りの雨が降ってきた。カエルは嬉しそうに声を上げて鳴いている。
そういや僕が昔、カタツムリに転生する前――人間だった頃は、大雨の日にわざと外に出て濡れる遊びをしたなぁ……と思いにふける。
しかし、僕はなぜ人間だった時、死んだのだったっけ。よく覚えていない。ただ、首をきつく締められたような……人間の手が食い込む感覚は覚えている。
「カタツムリ。お前、またボンヤリしてる。まっ、ボンヤリするのも大事だけどな。俺もボンヤリする時があるし」
ふぅん、と返すと、カエルくんは丸々とした目を細めた。
「変な夢……というか、残像が頭の中に浮かぶのさ。俺が人間になっていて、とある男を追い詰めて首を絞めるのさ」
「何それ、怖い」
「なっ。怖いよな」
再び僕らは空を見上げる。
後に判明する僕らの関係。
転生した、殺人者と被害者。そして彼が並々ならぬ執着心を抱いて、僕を骨の髄まで愛していることを。